後方腕組親面変態シスコンニチャ顔盗撮魔双子妹   作:防虫剤

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プロローグ的ななにかです。

よろしくお願いします。




#1 太陽と月 (責任……取ってよね……?)

 

 2月21日。

 その日2人の命がこの世に舞い降りた。

 紆余曲折ありながらも結ばれた夫婦。後藤美智代と後藤直樹。その2人の子供が遂に誕生したのだ。

 

 

 「おめでとうございます!元気な双子の女の子ですよ!」

 

 「良かった……頑張ったな美智代……ううぅ……」

 

 「今日からお父さんね……ほら抱いてあげて」

 

 「か゛わ゛い゛い゛…………2人とも美智代にそっくりだ」

 

 「もう、鼻水垂れてきてるわよ。あなた……」

 

 

 母譲りの碧眼の娘が姉『ひとり』父譲りの黒目の娘が妹の『こくり』と名付けられた。更に数年後、もう1人の娘『ふたり』が産まれ、愛犬の『ジミヘン』もやってきた。

 子供たちと愛犬に囲まれながらこの家族……後藤家は幸せに幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし…………。

 

 

 

 とは問屋が卸さない。

 

 

 

 娘が産まれてから神奈川県に一軒家を建てた後藤家は正に家庭円満、無病息災、明朗快活。

 これらの言葉が相応しい理想的な程に幸せな家庭だった。

 

 

 しかし最近夫婦の間に1つの難題が出てきた。

 それは3歳を迎えた双子の娘、その姉の方である()()()のこと。

 

 

 それはひとりの人見知りである。至って普通の誰もが通るような悩みであるがしかし。3歳になりこれから幼稚園の入園に向けて準備を進めている中、その悩みは初めての子育てをする新米夫婦への巨大で強大な壁だった。

 

 

 「ひとねぇ、あそぼ」

 

 「う、うん!いいよ。こくり。なにする?」

 

 「モデルさんごっこ。ひとねぇがモデルさんになってぼくが撮る。」

 

 

 3歳にまでなるとかなり個性も出てくる頃合いだ。しかし2人はいつも仲睦まじく、未だに喧嘩などもしたことはなかった。

 妹のこくりは落ち着いていて淡々としているように見えるが、その実は表情に出にくいだけで誰よりも好奇心旺盛で感情豊かな姉想いの娘だった。

 こくりは写真に興味を持ったらしく、家でも外でも関係なく常にカメラを首から下げていて、暇さえあれ家族の写真を撮っていたり自分から外に出て風景の写真を撮る程に熱中していた。更に外で出会う人たちにもしっかりと挨拶も出来たり、既に店員に商品の場所を聞いたり、1人で買い物が出来たりと3歳では立派すぎる程の逞しさが目立つようになっていた。

 こっそりひとりを連れて親に内緒で2人だけで外に出掛けた時はかなり肝を冷やし、あんなにも子供に叱りつけたのは初めてだった。こくりの活発さと自分達が外の危険さを教えておらず、目を離したことを反省したのは記憶に新しい。

 

 

 一方で姉のひとりは家に居る時だけの元気な姿を見ると、落ち着いているこくりのよりも活発に見えるが、基本的に自分からは外に出たがらず、外ではいつもこくりに引っ張られていた。いざ外に出るとひとりは借りてきた猫のように大人しくなり、常に親の後ろに縮こまるかこくりと手を繋いでいないと歩くこともままならなかった。家族との会話は何の問題もないのだが、他人との会話になると一気に敷居が高くなり、大人だけでなく同年代の子からの挨拶すらも上手く返せない。

 

 

 それらはこくりとは基本的に真逆のもの。双子でもここまで変わるものなのかと。勿論得手不得手はあるのだろう、しかしこのままだと幼稚園だけでなくその先、いずれ送る学校生活などの集団生活で上手く馴染めなくなってしまう。その事実が夫婦の悩みを大きくさせていた。

 

 しかしそこに救世主が現れた。

 付き合いの長さは家族一番、誰よりもひとりの傍にいた双子の妹。後藤こくりだ。

 

 

「ぼくにまかせて。ひとねぇのそばにいてずっとささえるから」

 

 

 グッと力強いサムズアップをあげるこくり。そう……姉妹、家族の絆は何処までも深く暖かいものだった。

 聡いこくりは幼心ながら、ひとりの人見知り具合を把握し2人の不安を汲んでいたのだ。

 

 

「ありがとうこくり。ひとりを頼んだよ!」

 

「こくりちゃんが気にかけてくれるのなら安心ね」

 

 

 物心付く前、産まれる前からずっとひとりの傍にいた双子だからこそ感じる何かがあるんだろう。その夜空のように黒い眼には、姉を慮る気持ちが込められていた。

 こくりなら親がいない幼稚園でもきっとひとりを支えてやっていける。そう胸をなでおろし、やがてこの問題はこくりによって解決…………しなかった。むしろ複雑、悪化した。

 

 

 結論から言うと12年後。晴れて高校生となった後藤ひとりは、幼少期とは比べ物にならない人見知りを超えた存在になっていた。それは『超ド陰キャ拗らせコミュ障ネットにしか居場所がない承認欲求モンスター』。…………しかし幸いにもいじめに合うような事はなく、状況だけを見れば滞りなく普通の学生としての生活を送れている。充実してると当人が感じているのかは別の話だが。

 そしてもう1つ……水面下になってる問題があった。それは妹の後藤こくり。『写真を撮ることが好きな家族想いのクールな妹』と、これが彼女に対する後藤家の認識。しかしそれは()の顔。後藤ひとりの()()に関しては包み隠さず晒していて、家族も理解している裏表のない姿なのだが実は後藤こくりには裏の顔がある。『後方腕組親面変態シスコンニチャ顔盗撮魔双子妹』これが後藤こくりの本当の姿、裏の顔だ。後藤家の認識で合ってるところといえば家族想いなところぐらいか。実際それだけは間違っていないのでそこは安心してほしい(?) まぁ、その他は…………。どこで歯車が狂ってしまったのかそれは本人しか知る由がない…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 5月。

 忙しい新春を終えてやっと新しい生活に慣れ始めたと思いきや、五月病といわれる病が流行し始めるこの季節。

 刺すような厳しい風はなくなり少しずつ風通しの良い服が好まれ始め、布団からも出やすくなる過ごしやすい気温。

 

 

 そんな今日日、僕は花の女子高生となった。

 と言っても既に5月。入学式から何日か経ち、クラスのみんなが少しずつお互いの距離感を理解し詰め合う段階(フェーズ)になっているが……遂に始まった高校生活は今までとは違って地元の人や顔見知りは居らず、全く知らない先生、着慣れない制服で過ごす時は一瞬だった。

 

 そしてなによりも電車で片道2時間の通学。

 これがまだ慣れず、正直不便極まりないがこれは仕方のないこと。なんせひと(ねぇ)に付いていく為ならばたとえ火の中、水の中、あのコのスカートの中……ひと姉のスカートの中に入り込みたいなぁ(?)――――――ゆりかごから墓場まで付いてくと僕は魂に刻み誓ったのだから。

 

 

 

 シャツの皺……ヨシ!学校のリボン……ヨシ!ズボンのベルト……ヨシ!寝ぐせ……ヨシ!カメラ……ヨシ!ひと姉とお揃いの謎キューブヘアゴムで纏めたお団子……ヨシ!

 うちの高校は制服私服どちらでもOKとイマドキらしい自由さ。私は動きやすくてラフな格好が好きなのでこの学校の白シャツにワイドズボンかトランクスが普段着になっている。女子高生といえばスカートと思うだろうが………私はとある事情で履かないのだがそれは別の話なので割愛。

 

 

 と、まだ自己紹介をしていませんでした。

 僕の名前は後藤こくり。15歳。神奈川のとある一軒家に住む5人家族、後藤家の次女。長女の後藤ひとりとは双子で僕は妹。趣味はカメラ、好きなものは家族。チャームポイントは父譲りの黒眼と母譲りの桜色の髪とお揃いのお団子セット。

 

 まぁ至って普通の写真好きな家族想いの女子高生………………が僕だ。

 

 

 

 

 

 さてと、今日も「摂取」しますか。

 

 

 我が家後藤家の一軒家は二階建ての家屋で、一階はダイニングキッチンやリビング、風呂やトイレがあり、二階はそれぞれの個室部屋がある。その一室、6畳ぐらいの僕の部屋があるのだが、その半分近くは図書館のような2メートル近くある大量の本棚が鎮座している。

 ひと姉……僕の姉であるひと姉は押入れがいる時間の方が長いため、最低限の収納棚と姿見しかない殺風景な部屋。それと変わり僕の部屋は圧倒的な威圧感、ひと姉は威厳まである言っていた僕の部屋だが、本棚に囲まれた中あるのは勉強机とベッドだけと、本棚のせいで紛れているだけでそこまで大差はない。あの姉にしてこの妹、同じ血が通っていると沸々と感じる次第。

 そんなこの部屋の主とも言える本棚達にぎっちりと収納されているのは勿論全て本………………型のアルバム達だ。

 

 その中から一冊、迷うことなくNo.0と書かれた背表紙を取り出す。

 表紙の右下には、ミミズがのったくったような平仮名で「ごとうこくり」とある。これは私が最初に作ったアルバムだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 No.0のアルバムには当時の後藤家……12年前から撮り始めた家族写真達がある。

 

 僕は家族が大好きだ。お父さんとお母さん、妹のふたり、愛犬のジミヘン。そして産まれる前からずっと一緒にいるひと姉。

 僕は写真が好きだ。大好きなみんなの色んな顔を、一緒に行った綺麗な風景を、その一瞬一瞬を余すことなく保存できるから。

 

 そしてアルバムを開くと一目瞭然だが、僕は昔からひと姉をよく撮っていた。

 後藤ひとり。僕たちは双子だからか似ている所も多かったけど、正反対な所もまたあった。

 ひと姉はよく表情がコロコロ変わり、僕はあまり顔に出なかった。ひと姉は後藤家の太陽のよう天真爛漫に輝いていた。そんなひと姉の隣で僕は月のよう静かに付いている。そんな関係が僕は居心地がよくて、気付いたらいつもひと姉の隣にいた……

 

 まだ20代のピチピチでほやほやな両親(決して今が冷え切っているわけではないが)、まだ幼稚園にも通っていない膨らんだ餅のような頬の小っちゃいひと姉。一切のシミがない新築の我が家……………………

 

 

 そんな何気ない日常の写真達が並んでいる。

 何度この懐かしさに触れても変わらず自然と笑みが浮かんでしまう。

 

 

 

 

 

 ゆっくりと本棚へアルバムを戻す。

 そしてもう一冊――――表紙がNo.1と書き込まれたアルバム。

 

 

 ……そう、さっきのはNo.0。あくまでも0だ。

 

 

 

 「フヒッ………フフフ……」

 

 

 

 No.1のアルバムを捲り始めた僕の顔は、最初(No.0)の懐かしさに想いを馳せる微笑みではなく、禁忌を読み解く魔術師の様な邪悪と喜悦に満ちた笑み(ニチャ顔)だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひと姉は太陽と評したが、誤解を恐れずに嫌味なくはっきりと言うと実はただの内弁慶だ。それもかなりの。

 

 

「ひとねぇだいじょうぶだよ。ぼくとおなじきょうしつだからね」

 

 

「あっ、う、うん……ねぇこくり?わたしおともだちできるかな……?」

 

 

「ひとねぇならすぐにできるよ!ぼくもそばにいる」

 

 

 4月になり僕達は幼稚園に入園した。

 始めての集団生活。ひと姉が人見知りなのは既に理解していた僕は、両親に買って出てなんとしてでも妹としてひとりを立派な幼稚園生として成長させるんだと意気込み、まずはゆっくり慣れさせようと計画していた。

 

 

 僕がここまでひとりの人見知りを何とかしようと思っているのは理由がある。

 勿論ひと姉が心配だから――――――もあるがそれだけではない。

 何故か家では太陽のひと姉が、外に出るとその輝きが翳り弱ってしまう姿を見ると…………こうなんていったらいいのだろう。背筋がゾクゾクして自然と顔が破顔(ニチャ顔)して……思わずその曇った顔(輝き)を勝手に撮ってしまうのだ。最近では外に出る度気が付いたらひと姉の写真ばかり撮っていて、64ギガあるメモリーカードが容量一杯になるまで無意識に撮っていた。あげく予備のカードを買ったものの結局2枚じゃ足りないほどまで重症化していた。

 何より大好きな実の姉が困っている姿を笑いながら盗撮なんて、そんなの人として間違っているし酷いことだって分かっている。でも辞められないんだ。だから、もうこんなことはしないと決心しひと姉の人見知りを直そうと思い立ったのだ。

 

 

 

 

 

 …………そんな決心も虚しく、あの日それは呆気なく瓦解してしまった。

 

 

 

 

 

 入園してから2ヶ月ほどが経ち梅雨に入り始めた6月。

 少しずつひと姉も幼稚園に慣れてきたので、計画を第二段階へ移行しようかと考えていた時それは起きた。

 

 あの日、僕は諸事情で幼稚園に遅刻しひと姉は先に行っていた。

 

 勿論不安だった。今までひと姉は1回も1人で教室に入ったことがない。だから前日一緒に行こうとひと姉へ声をかけたのだが「だいじょうぶ。もうなれたからよゆー」と余裕をぶっこいていたのが少しムキになって分かったと了承してしまった。

 

 幼稚園に着いた時には朝から降っていた雨が止み終わっていた。

 合羽を脱ぎ、泥塗れの長靴を下駄箱に揃え教室へと向かう。ドアの前に突っ立って中に入れていないんじゃと心配していたが流石にそれは杞憂だった。しかしまだ安心はできない。そっと教室のドアに付いているガラス窓から覗き込みひと姉を探してみる。

 

 

 

 

 

 ……………………いた

 

 

 

 

 

 教室という小さな世界の隅に…………いた。

 敵情視察をしている斥候兵の如く息を潜めて、時折不意打ちを狙う忍者の如く大胆に声をかけようとするも、ひと姉の足元に転がっている積み木達と同じように無残に散る。そして諦めたかと思いきや、迷子になってしまった子犬のように、構ってほしい猫のように周りを見渡している。

 

 

 その姿を見た僕は、一切の迷いなくひと姉に駆けつけ――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニチャァァァァァ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぼかぁ気付いてしまった。自覚してしまった。目覚めてしまった。

 

 

 

 

 

 足はとっくに止まっていた。

 

 

 

 

 

 時すでに遅し。

 

 

 

 

 

 窓に反射していた幼顔は歪んでおり、ただひたすらにその()()を逃がさんばかりと瞳に、心に、カメラに焼き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ………………ふうぅ。

 

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛…………ヒトリニウムはまだガンには効かないがそのうち効くようになる…………」

 

 

 危ない意識が飛びかけた。やっぱりこの写真は危険すぎる。これからは自重しよう、具体的には3日に1回のペースで。

 

 

 …………本当はNo.2からNo.150ぐらいまでは見返したいけどそろそろひと姉を起こして学校にいかないといけないし我慢我慢。

 

 

 しっかりと本棚に戻して……ヨシ!

 

 さて、ひと姉を起こしにいきますか。

 

 

 

「あ、顔がニチャ顔から戻ってない」

 

 

 

 ヒトリニウムの過剰摂取を行うと稀にニチャ顔から戻らなくなる時がある。適当に頬を抓ったり伸ばしたりしたら自然と戻るのだが、鏡を見なければ自分では気が付けないところと、こうしないといつまでもこのままなのが困るところ。一応クール系で家族にも通っているのでこれは頂けない。

 

 

「うん。ヨシ」

 

 

 気を取り直してひと姉起こしますか。

 

 

 

 

 

 

「あれ?ひと姉おはよう。今日は起きれたんだ……それギター?」

 

 

 ひと姉の部屋の襖へ手をかけた瞬間、まさかの1階のリビングからひと姉の声がしたので覗いてみると、あの学校嫌いのひと姉が自分からは起きて既に朝食、着換え、歯磨きを済ましていた…………。そして背負っているのはギター……まさか……。

 

 

「おはようこくり……うん。こくりもカメラ持っていったら友達も出来て写真部に入れたし……高校ならギター持っていけるし…………ウヘヘヘ、困っちゃうなぁ……フフフ、どうしよう何の曲弾いちゃおうかなぁ」

 

 

 中学に入った頃。ひと姉が突如バンドを組むと言い出し始めたギター。動機は陰キャでも輝けるから、チヤホヤされるからと中々に不純で、煩悩まみれのものであったがその熱意は本物。

 中学3年間毎日6時間ギターに注ぎ込み、僕は音楽素人だけど身内贔屓なしにプロレベルで上手いと思う。実際にひと姉はオーチューブで弾いてみた動画を投稿しており、最近チャンネル登録者数10万人を突破、ミリオンを達成している動画もいくつかある。

 

 しかし、どんなに上手でもメンバーを集めなければバンドはできない。メンバー集めなど友達すら1人も居ないひと姉に出来る筈がなく……結果いつの間にか中学を卒業し高校生となっていた。

 てっきりこのままネットだけで活動していくものかと思っていたが……実際にコメントでチヤホヤはされているし。だがひと姉の欲求はそれだけでは到底満たされない……。

 

 ひと姉の業は強い。海よりも深く広い重く、山よりも高く険しい……更に質の悪いことにその欲望のコップには穴が空いていて、注いでも注いでもキリがない。そこがひと姉の強さと言えなくもないが……物は言いようってやつだ。

 

 

 とにかくこの言動を見るに……うん。この姉貴コミュニケーションに関しては中学時代からなにも成長していないっっっ!!!

 

 

 一応ひと姉なりに努力はしていた。

 CDやバンドグッズを持って机の上に置いてアピールしたり、給食中のリクエスト曲にデスメタル流したり……どれも話しかけられて待ちではあるが。

 そして玉砕。いやぶつかってはいないから玉砕ではないか。粉砕……自爆?なんでもいいか。とにかく悉くが失敗に終わったのに……。あ、勿論その雄姿はしっかりとカメラに収めていますよ。

 それに懲りず今度はギターと…………()()()()()()()なんだよなぁ……。

 

 

だーじょっぶ(大丈夫)っしょ。バッチリ決まっているし、ひと姉超上手だし勝ちまくりモテまくりになる日も近いかも」

 

「えっ……ウヘヘヘヘ……そうかなぁ……こくりはやっぱり優しい自慢の妹だなぁ……ヘヘヘヘ」

 

 

 未だにコンビニに1人で入る時は5分のイメトレした後、決死の覚悟で突入する程のクソ雑魚ナメクジコミュ障のひと姉が、同年代が沢山いる教室で咄嗟に本領発揮出来たらの話だけどね。嘘はついていない。

 それにしてもホントすぐ調子乗る……きっと脳内では教室でギターを弾き語りクラス全員から羨望の眼差しを浴びて、ひと姉の正体『guitarhero』に気付いた1人のバンド少女がバンドを組もうと声をかけてきて、そこから快進撃を重ねに重ねて成り上がり最終的に武道館でライブをしているんだろうな。

 

 

「そうと決まれば行こ、ひと姉。いってきまーす」

 

「はーい。気を付けてね、ひとりちゃん。こくりちゃん。」

 

「ンフフフフ……勝ちまくり……モテまくり……」

 

 

 ひと姉がスキップしている……!!?…………スキップなんて出来たのかこの子……それにしてもこの足取りの軽さ、不思議と今日の世界の風は何かが違う、植物達の彩度も上がっているように見えるし、僕のカメラも疼いている……!?これは…………今日こそは…………!…………気のせいでした。うん多分無理でしょう。なんでもないいつも通りの日常です。

 

 

 

 

 

 ――――でもひと姉は()()()()

 

 

 

 

 

 誤解無きよう言っておくが、僕は決してひと姉が苦しんでいる姿が好きな訳ではない。…………全く好きではないといったら嘘になるけどそこはアクセントとしてだ。

 

 

 ドが付くほどのコミュ障で寂しがりや。ちょっと見栄っ張りで褒められるとすぐに調子に乗る。

 そんなひと姉が不器用ながらも勇気を振り絞りながら努力し、空振りながら何度も何度も挫け、そして藻掻きながらもゆっくりと前へ進み続ける。

 それは眼が眩むほど眩しくて、その雄姿を未来永劫語り継ぎたくなるほど誇らしくて、思わず壊れるぐらい抱きしめてたくなるほど可愛くて、ずっと傍に居たいぐらい愛しいんだ。

 ひと姉の太陽は今なおも翳り続けている。でも決して途絶えない。どんなに弱くてもその灯は掻き消えない。そしてその炎に僕が薪を入れてはいけない。手出しは無用。ひと姉は己の力で輝ける。()()()()()()がぼかぁ昔から大好きなんだよ……その姿を見ると思わずニチャつき写真に収めてしまうほどにね。

 

 

 これからも妹として、月としてずっと傍にいるから。

 いつか来る()()()を待っているから。

 

 

 

 

 

 ホント……僕をこんな風にした責任……取ってよね……?ひと姉。

 






ちなみに64ギガのメモリーカードはカメラにもよりますが、2400万画素クラスでも最低5000枚撮れるそうです。

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