デュエル・マスターズ Éclair   作:なかムー

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 皆さまお待たせしました。

 今回もゆるりとデュエマの小説を更新していきます。

 あと、今回も引き続き『咲野 皐月』様考案のオリキャラを新キャラとして登場します。ですが、今作の主人公のかすみは登場しないという事態となっております事、ご了承くださいませ。

 それでは、どうぞ。


私情裁判

 「さて希美と颯樹……特に希美、何か言い残す事はありませんか?」

 「待て待て、気が早すぎる」

 

 アイドルなのに体調管理を怠った希美と、チームの新人(かすみ)の初デュエルの見学を放り出した上に、見知らぬ外国人と密会(まが)いな事をしていた颯樹に対して、怒りを露わにした千歌は彼に正座をさせて今までの経緯を問いただしているが、一周回って処刑宣言をし始めたため京介に止められていた。

 

 ちなみに今この場にいるのは正座をさせられている颯樹と希美、京介と千歌と咲恋…この一件の本題であるレグナスで、場所はというと…この場にいるレグナス以外の全員が暮らしているシェアハウスで、彼がいるのはリビングにあたる場所であった。(かすみと莉々は晴也が家まで送って行った)余談だが、このシェアハウスにはもう1人の住人がいるのだが…それはまた別の話である。

 

 「ちょっと!なんで私まで怒られているの⁉︎颯樹くんの裁判じゃなかったのっ⁉︎」

 「黙りなさい。被告人に発言する権利などありません。それと早く座りなさい、即刻この家から摘み出しますよ?」

 「理不尽っ!」

 

 だが颯樹はおろか、何故自分も正座させられているのかと希美には不服だったようで、立ち上がって千歌に異議を申し立てるも、即座に一蹴されるのであった。

 

 しかし……

 

\ガチャッ/

 

 「五月蝿いですよ愛川さん。人が寝ているのに大声で喋るとは何事ですか……」

 

 そこに誰かが希美に対して注意しながらリビングに入ってきた。その人物は濃紺色のロングヘアで黒眼の女性であった。しかし寝起きだったためか寝ぼけ眼で、服装はTシャツとルームウェアというラフな恰好で、髪も少々乱れていた。

 

 「お休みのところ申し訳ない。俺からあとで希美に言い聞かせるので、この場で怒りを抑えて下さい」

 「なんで私が悪いみたくなってるのっ⁉︎」

 「元はといえば、貴女の所為でしょう」

 「理不尽っ!」

 

 目の前の女性を起こしてしまった事に対し、京介は申し訳無さそうに頭を下げながら謝るも、言い方を変えれば希美に非があるようになっていた。

 

 勿論希美は文句を言うも、千歌に即座に一蹴されてしまった。

 

 「……京介さん、私がまだ仮眠から覚めたばかりで、少々頭の整理が追い付かないのですが…… 1人多いように見えるのですが、何かあったのですか?」

 

 辺りを見渡すと、レグナスを一目見た女性は眉間に手を当てながら今の現状に頭を悩ませていた。

 

 「すみません、優奈(ゆうな)さん。今からイチから説明するので聞き漏らしがないようお願いします」

 

 唯一、目の前の女性…優奈(ゆうな)と呼ばれた女性は今までの経緯を知らないため、京介は手短に何があったか、彼女に説明した。

 

 ちなみに余談だが、この優奈と呼ばれた女性は長瀬(ながせ) 優奈(ゆうな)と言って、京介らとは1つ年上であり、このシェアハウスの住人の1人である。

 

 「……なるほど。だから水澄さんがあんなにご立腹なのですね」

 「はい、そんな所です……」

 

 京介の説明を聞いた優奈は現状を理解したからか、頭を抱えながらため息をついた。

 

 「ひとまず水澄さん、それは流石にやりすぎだから控えなさい。それだとただ権力を振りかざしている独裁者と変わりませんよ?」

 「……はい、分かりました」

 

 とりあえず詳細をハッキリとさせたいところなので、優奈は今の千歌を咎めた。千歌も自分がやりすぎたからか、あるいは相手が悪いと感じたからか大人しく引き下がった。

 

 「さて、ひとまず騒ぎが収まりましたが……何方(どちら)の裁判から始めましょうか?」

 「「あのー、やらないといけないの?」」

 「当然です」

 「「ですよねー……」」

 

 騒ぎが収まったからと言って、大元の原因であると見抜いた颯樹と希美を逃すはずがなく、そのまま裁判に持ち掛け始めた。

 

 「まずは颯樹くんからでお願いしますっ!」

 「いやレディーファーストという事で希美から始めてくれ…下さいっ!」

 「それズルいよっ!此処は男らしく魅せるのが流儀ってものでしょ⁉︎」

 「いーや、この際男女平等ですー!そんなの関係ありませんー!」

 「ちょっと!ついさっき『レディーファースト』って言ってた人がそんな事言っても説得力が無いから!ていうか支離滅裂になってるよ!」

 「なんの事かな?僕は知らないなー」

 「酷いっ!鬼!悪魔!外道!男前っ!」

 「なんだとっ⁉︎それと男前はありがとう!」

 「どういたしましてっ!」

 

 そして裁判が始められる事になるが……その際颯樹と希美が先に何方(どちら)からやるかで揉め始めた。希美はともかく、普段から年相応に落ち着いている颯樹でさえ、子供のように騒ぎ始めた。

 

 しかもしれっとしている颯樹に対して、希美も彼を罵倒するも、途中褒め言葉が入っていた事は聞いていた(レグナスと颯樹以外の)全員が呆れたのは言うまでもない。

 

 「五月蝿いですよあなた達。ご飯抜きにして家から追い出されたいのですか?」

 「「ごめんなさい……」」

 

 2人が口喧嘩を始めた事に対し、優奈は何処からか取り出した竹刀を構えながら2人を睨み始めた。勿論2人は即座に土下座して謝罪した。

 

 「あの少しよろしいでしょうか……?」

 「なんでしょう?」

 

 此処で、レグナスがおそるおそる手を上げながら裁判に割り込んできた。

 

 「実は颯樹様には事情がありまして……」

 

 そう言ってレグナスは優奈に何やら耳打ちをし始めた。

 

 「……そうですか。貴女も大変でしたね」

 「いえ、颯樹様のおかげです」

 

 レグナスの事情を聞いた優奈は、納得した表情で相槌を打った。

 

 「さて颯樹……貴方の事情は彼女に聞きました。彼女からの頼みで貴方の事は不問にしたいところです」

 

 今度は颯樹の方を見ると、優奈は彼の事情を汲み取ってくれたのか、情状酌量の余地を与えると宣言した。しかし、その直後に「ですが……」と言って話を付け加えた。

 

 「チームの新人の門出となる初デュエルを最後まで見届けずに放り出した事に対しては流石に見過ごすわけにはいきません。それに関してのペナルティは受けて貰いますよ?」

 「……はい」

 

 新人の初デュエルを最後まで見届けなかった事に対しては流石に不問に出来ないようだ。颯樹はチームのリーダー…それなら自分のチームに入った新人の初デュエルを最後まで見届ける義務はある。その責務を果たせなかったのはリーダーとして流石に問題である。

 

 「それでは颯樹。まずは彼女…最後まで責任を取るとして、レグナスさんを客人として対応して下さい」

 「……分かりました」

 

 まずはレグナスの対応を颯樹が担う事…それも客人としてだ。確かに最初に関わったのは颯樹である。だからその責任を取る必要があると優奈は判断したようだ。

 

 「次に……明日1日の掃除洗濯などの家事と庭の草刈りは全て貴方1人で行なって下さい。以上が貴方の罰です、いいですね?」

 「……分かりました」

 

 それと行われるのが、多少の雑用である。情状酌量があるとはいえ「これは軽いのでは……?」と戸惑う颯樹であるが、これ以上追及したら罪状が増える恐れがあるので、そこは口を塞ぐしかなかった。

 

 「よかったですね、颯樹様♪」

 「あ、ああ……」

 

 自分の温情で颯樹の罪が軽くなったレグナスは、彼の右腕に抱きつき始めた。

 

 「あ────ーっ!ズルいよ、颯樹くんは私のモノなのにっ!」

 「五月蝿いですよ希美。それと颯樹は貴女のモノではありません、私のモノです」

 「千歌はどさくさに紛れて何言ってるのっ!それと颯樹くんは渡さないからね!」

 「それは此方のセリフです」

 

 レグナスの行動に対して希美は空いている颯樹の左腕に抱きついた。それに便乗してか、千歌もさりげなく颯樹の背中に抱きついた。その後は周りをお構いなしに口喧嘩が始まった。

 

 「五月蝿いですよ貴方達?」

 「「‼︎」」

 

 それを見兼ねた優奈は床を竹刀で強い力で叩いて2人の口喧嘩を黙らせた。2人は優奈に対して恐怖を感じたからか、颯樹に抱きつくのをやめてお互いに抱きつき始めた。

 

 「愛川さん。貴女の裁判もある事をお忘れでしょうか?忘れたらダメですよ?」

 「……ごめんなさい」

 「水澄さん。貴女は先程の凶行を改めたと思ったら……そこから短時間で口喧嘩をするなど当然褒められる事ではありませんよ?」

 「……申し訳ありません」

 

 優奈は竹刀を構えながら希美と千歌の痛い所を突き始めた。これを形のある物で例えると傷口にナイフを(つつ)く行為であるが、この場合だとらナイフが刀に変換されているように見えた。

 

 「でも優奈ちゃんだって今部屋着じゃん!それを言うなら少しは身だしなみを考えようよ!」

 「そうです!それだと説得力に欠けていますよ!」

 

 今の優奈の服装は、変わらず部屋着のままであった。だが、最低限の配慮としてか、髪はちゃんと整えられていて、肩には京介から借りたシャツを掛けていた。

 

 「黙りなさい。貴女方のお陰で此方は着替える時間もなかったのですよ。それと貴女方がとやかく言う権利などありません」

 

 しかし、そう指摘された優奈は毅然とした態度で2人を一蹴すると同時に竹刀を2人に当たるスレスレの距離で振り払った。当然竹刀は当たらずに床に叩きつけられた。そんな優奈の行動を見てか、2人は無言で土下座するしかなかった。

 

 「さて……貴女方は少し罰をハードにしないといけませんね……」

 「「‼︎」」

 

 反省する素振りを見せない希美達に対して優奈は、この2人の罰を重くすると宣言した。もちろん2人は驚き、目を見開いた。

 

 「颯樹っ!長瀬さんを説得して下さいっ!」

 「お願いっ!颯樹くん!颯樹くんならこのくらい朝飯前でしょ⁉︎」

 

 優奈の死刑宣告を食らう寸前で、千歌と希美は涙目になりながら颯樹に泣きついてきた。希美はともかくとして、千歌までもが涙目になるのだから、優奈の罰は相当厳しいと見受けられる。

 

 「ごめん、泣きつく相手が悪かったね。僕にはどうすることも出来ない。京介ならワンチャンまだ望みはあっただろうが、もう手遅れだよ……」

 

 しかし、颯樹も先程判決が出たばかりなので、その望みは叶えられないのだ。2人は今度は京介の方を見るが、『ごめん、無理』という感じで首を横に振った。しかもその表情は呆れていた。

 

 「往生際が悪いですよ、2人とも。そんなに見苦しく醜態を晒すと更に罪状を追加しますが、よろしいでしょうか?」

 「「ごめんなさい」」

 

 希美達の行動に心底呆れた優奈は、2人に圧力を掛ける事で黙らせた。希美達は逆らえば下手すれば命の危機になると感じたからか即座に土下座をした。

 

 「さて、2人には判決を下しましょう……まず愛川さんは今日から食事制限、明日から仕事がOFFの日は私の実家の道場で『特別門下生』として稽古をつけて貰います。それも1ヶ月で。水澄さんは内容は愛川さんと以下同文ですが、期間は2週間です」

 

 優奈の判決に2人はげんなりしていた。優奈の実家は道場で、しかも彼女自身師範も担っている……そんな人物が稽古をつけるのだ、『特別門下生』としての期間は地獄になると分かりきっていた。

 

 「ねぇ優奈ちゃん、1ヶ月もやるの……?」

 「不満なら期間を増やしても構いませんが?」

 「ごめんなさい」

 

 優奈も本気で言っているようで、判決内容も捻じ曲げる気は無かった。更にそこにダメ押しをするかのように期間延長を宣告しようとしたが、希美は土下座して謝った。

 

 「それでは、時間も時間ですし早速夕飯の準備に取り掛かるとしましょう。颯樹、香月さんとレグナスさんを連れて近くのスーパーで食材の買い出しをお願いします」

 

 判決を終えて裁判を続けずに終える事にするのか、気持ちを切り替えて夕飯の支度をする事になった。優奈は颯樹にエコバッグと買い物のメモを渡して買い出しに行くよう促した。

 

 「いいけど、優奈達はどうするんだ?」

 「客人がいますので、買い出しから帰る前に最低限の掃除を済ませておきます。ですが…それは愛川さんと水澄さんを中心にやらせて、私と京介さんは彼女達がサボって貴方を追いかけないかその見張りをしておきます」

 

 しかし判決が下されたからといって希美と千歌をそのまま野放しにする気は無いのか、颯樹が不在の間、雑用までやらせる気でいるようだ。最悪な現実を突きつけられた2人の目には光が消えていた。

 

 「それではあとはお願いしますね。京介さん、私は一度着替えてきますのでその間此処は任せました」

 「了解しましたー」

 

 扉に振り向く際、優奈は自分の肩に掛けていた京介のシャツを彼に手渡した。その時、2人が逃げないように牽制するためか、麻酔銃も同時に手渡した。

 

 「それと……これはシャツを貸してくれたお礼です♪」

 

 そう言って優奈は京介の頬にキスをした。それを見た咲恋はワナワナと震えるも隣にいた颯樹は呆れていた。一方、颯樹の近くに控えていたレグナスは「これが日本のキス……!」と目を輝かせながら関心していた。

 

 「優奈ちゃん、完全贔屓してるじゃん。これ私達が怒っても文句ないよね?」

 「ホントに。これではどちらが独裁者か分かりませんね……」

 「ほう?2人とも、期間を半年程に延長して差し上げましょうか?」

 「「ごめんなさい」」

 

 その傍らで、希美と千歌はヒソヒソ話をしながら優奈に文句を垂れた。しかし優奈は会話の内容を聞き取ったようで、竹刀の矛先を2人に向けた。希美達は即座に土下座して優奈に謝った。

 

 そんな2人の様子を見た優奈は一度ため息をついて、リビングを出た。颯樹や京介達は、遅くなったら後が酷くなる事が目に見えているため、優奈に言われた事を即座に実行するのであった。

 

 

 颯樹達の裁判が終わって早数時間、少し遅くなったが漸く夕飯にする事が出来た。テーブルにはパスタやロールキャベツ、グラタン等の洋食が並べられていた。これはまだ来日して24時間も経ってないレグナスは日本の料理に馴染みが無いための配慮であるのは窺える。

 

 しかし……

 

 「なんで私達だけ……」

 「これは流石に不当です……」

 

 京介や颯樹達が座っているテーブルの傍らで、小さな卓袱台(ちゃぶだい)に座りながら涙ぐんでいる希美達の姿があった。しかも希美達の席には小さな茶碗に盛られているご飯と沢庵3枚が2人分用意されていた。先程優奈の言っていた『食事制限』というのはこれであるのが窺える。

 

 しかし食事はこれだけしかないため、希美達はこれ以上涙が流れないように堪えながらご飯を食べるのであった。




 まずは読んでくださった方、お気に入り登録をしてくれた方、こんな拙作を応援いただきありがとうございます!こんな拙作読んでくれるだけでもありがたいです。

 次回の更新は未定ですが、今回の続きをお送りする予定です。

 それと一つ告知しますと、今年の夏(時期としては7月〜8月の何処か)に今作で水着回を投稿しようかと思います。詳しい内容は後日発表しようと思いますので楽しみにしていただけたら幸いです。

 それでは、また次回。




 ※前書きでお伝えした通り、今回も『咲野 皐月』様考案で、今回初登場しました長瀬(ながせ) 優奈(ゆうな)さんのプロフィールを掲載します。

【名前】長瀬(ながせ) 優奈(ゆうな)
【性別】女性【年齢】21【学年】大学3年生
【誕生日】12月25日
【在籍校】八十葉大学 【専攻】教育学部
【性格】真面目で冷静沈着
【身長】172cm 【体重】 (本人の意向で非公開)
【血液型】A型
【イメージCV】橘未來
【設定】
 私立八十葉大学に通う大学3年生。専攻は教育学部で、理由付けとして『私は学校が好きで、そこから生徒会にも立候補をしたし、教職を志そうと決めたから』との事らしい。

 デュエマチームには在籍して居らず、教員免許取得に向けて猛勉強の傍らで先祖代々から長年続く道場の師範をしている。基本スタイルは『相手を圧倒する』事らしく、《禁時混成王 ドキンダンテXXII》を主軸とした『ディスペクター』デッキで相手の行動を大幅に制限して攻めるのが得意。

【服装】
 黒い薄手のカーディガンを羽織り、その下に白 い長袖シャツを着ている。下は紺色のジーパンでキチリとしている。

 濃紺色のロングヘアで黒眼。コンタクト等は使っておらず、化粧もしていない。

【使用デッキ】
 ①:《禁時混成王 ドキンダンテXXⅡ》を軸に据えた火光水の【ディスペクター】デッキ。

【エースカード】
 《禁時混成王 ドキンダンテⅩⅩⅡ》
 《龍風混成 ザーディクリカ》

 
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