というか鬼は皆嫌われてますね。
里を訪れて十日以上が経ち、ようやく明日香の新たな日輪刀が完成した。
他と比べて入隊から日が浅い新人とは言え、柱である事には変わり無く、その日輪刀を手掛ける刀鍛冶も当然達人の腕前である。
流石に岩柱や恋柱の日輪刀に比べれば形が普通な分見劣りするが、刀としての品質で見れば最上級とも言えるだろう。
「今日はもうすっかり日が暮れてしまっているけど…はい、これが君の新しい日輪刀だ。私も君のような才能溢れる柱のために刀を作れることを誇りに思うよ。」
「いえ、こちらこそこんなによく出来た日輪刀を用意していただいて、ますますやる気が満ち溢れますよ。我々鬼殺隊が戦えるのは鍛冶師の皆様のおかげです。ありがとうございます。」
「そう言って頂けると助かりますよ。何せ刀一本作り上げるだけでもめちゃくちゃキツいですからねぇ……いや、こんな弱音吐いてる場合じゃないですね。」
「いずれまたお世話になる事もあるかもしれません。その時はまたお会いしましょう。それでは。」
ドゴォォォォォッ
担当の刀鍛冶と話をしていると、つい先程夕飯を食べていた場所の方向から凄まじい轟音が聞こえてきた。
「ひやぁぁぁぁ!な、なな、なんですかァァァ!!」
「鬼の襲撃!まさかこの場所が鬼に見つかったのか!?」
「明日香!竈門炭治郎ト時透無一郎ガ鬼ト戦闘中ダ!応援ニ迎エ!」
「鴉か!分かった、お前はこの里の近くにいる鬼殺隊の隊員に報告をするんだ!もしかしたら誰かが応援に来てくれるかもしれない!」
「マカセロ!」
鎹鴉に報告と増援を任せ、明日香は新しい日輪刀を持って炭治郎達の元へ向かおうとした。
しかし。
血気術
明日香の真上から無数の氷柱が降り注いだ。
明日香の優れた五感のおかげで何とか反応し、高い身体能力と優れた剣術で何とか全て防ぎ切る事ができた。
「こんな時に邪魔が入るなんて、今夜はいい夜にならなそうだ。」
「へぇ俺の血気術を無傷で防ぎ切ったかぁ。流石に柱は強いねぇ。」
「誰だ…?」
「やあやあ初めまして。俺の名前は童磨。いい夜だねぇ。」
「童磨…その目は上弦の弐か…。流石に一人で相手にするのは骨が折れるか…?どの道
「しかし、この里は男ばかりであまりいい気分ではなかったけど、君みたいな可愛い子もいて良かったよ!今夜はご馳走が食べられそうだ!」
「なるほど、確か胡蝶が憎んでいた鬼も貴様だったな。女を好き好んで食う気色の悪い鬼だとも聞いていたから間違いない。勝てる保証は無いが情けなく死んでやるつもりも無い。片腕ぐらいは奪ってやろう。」
明日香が覚悟を決め刀を強く握ると、ついさっき受け取った刀は前の刀と同様に赫くなった。
(この冷気、普通に呼吸をすれば肺が凍る。奴の血気術のせいだろうな。だがこの程度の冷気ならどうとでもなる。)
血気術
童磨は血気術によって無数の氷の花びらを飛ばしてきた。
この花びらの一枚一枚が鋭い刃物のような切れ味を持っており、広範囲の弾幕攻撃を避け切るのは至難の業だ。
(流石にあれを全部避け切るのは少し厳しいか。なら。)
月の呼吸 参の型
光のような速さで至近距離まで到達し目にも留まらぬ速さで四連撃を繰り出す技。
そしてこの型を使用すると、凄まじい暴風が発生するため、小さな氷の花びらならば容易に吹き飛ばすことができるのだ。
上弦の弍である童磨ですら視認できない速度で接近し、四連撃を繰り出した。
最初の一発で童磨の片腕を切断することができたが、その攻撃で明日香の攻撃に気がついたら童磨が、残りの三発を扇で防いだ。
童磨が血気術を放った際に腕が邪魔で首を切る事が出来なかったのだ。
そして鬼は首を着られなければすぐに傷を癒すことができる。
しかし、それは普通の状態の日輪刀で切断された場合の話である。
明日香の日輪刀は赫くなっている。
赫くなった日輪刀、通称赫刀は鬼に焼けるような痛みを与え、再生能力を阻害できる。
万力のような握力で握ったり、刀同士をぶつけ合うことで刀を熱くすることが発動条件であり、明日香は初めて自分の刀を手にした時から、すでにこの赫刀を顕現させていた。
(切られた腕が治らない。どうやら俺は少し相手を甘くみていたのかもしれないな。これは流石に本気を出した方が良さそうだ。)
「いやぁ強いねぇ。今まで戦ったどの鬼狩りよりも強い。ますます君を食べるのが楽しみになったよ。」
「煽っているつもりなのか?それとも本心で言っているのか?ふん、どうでも良いがな。童磨って言ったな、次は貴様の首を切り落とす。」
再び動き出した両者。
先手を取ったのは童磨だった。
血気術
童磨の姿を模した氷の分身。
その強さは童磨本体とほぼ同じであり、御子自体も血気術を使えるという厄介極まりない術。
分身の得た経験は童磨本体に直結しており、分身が受けた技や見た光景はそのまま童磨の記憶に刻まれる。
そして恐ろしいことに、童磨はこの分子を六体も作ることができる。
単純に考えても上弦の弐七体を同時に相手しなくてはならないのだ。
(数が増えたか。動きを見るに強さは本体と変わらない。だが体は氷で作られている。それなら切れないことは無い。)
先手を取られつつも再び動き出した明日香。
こちらも負けじと技を繰り出した。
月の呼吸 肆の型
この型は霞の呼吸を参考に考案した型であり、特殊な動きによって相手を撹乱することができる。
これにより、最初に攻撃を仕掛けた二体の御子の攻撃をすんなりと回避し、反撃の二振りで御子を粉々に粉砕した。
赤熱した刀の凄まじい熱気によって氷は溶けて、粉々になった御子は消滅した。
しかしその先には残りの四体の御子が待ち構えていた。
血気術
冷気をまとった扇を連続で振る事で、氷の斬撃を生み出す血鬼術だ。
今度はこの攻撃を防がなくてはならない。
しかし、これも明日香の想定の範囲内だ。
月の呼吸 漆の型
数や大きさで攻めてくる相手を突破する事を目的として開発した、移動しながらの連発が可能な斬撃。
この型だけでも前方と側面に対応可能だ。
そして、御子の
月の呼吸 捌の型
漆の型 初走・幾望から連鎖的に繰り出すことができる、攻撃を目的とした強烈な斬撃。
流れを重要とする技で、漆の型に合わせて使わないと体制をを崩しやすい。
御子を全て破壊し、童磨の前までたどり着いたが、当然本体である童磨が分身同様にあっさり倒されるはずが無く、片腕だけの不完全な状態で大技を繰り出してきた。
血気術
童磨は扇を振って巨大な氷の仏像を生成した。
単純にその巨体で叩き潰されれば、生き残ることは不可能。
そして氷で作られた巨大な菩薩は、周囲に冷気を漂わせており、無数の氷が明日香の動きを邪魔するように立ち塞がっている。
そして、完成した氷の菩薩はその掌で明日香を潰そうとした。
しかし。
月の呼吸 玖の型
捌の型 連斬・天満月の後に発生する隙を補うために編み出した、あらゆる体制から繰り出せる斬撃。
他の型と比べると見劣りする威力だが、赫刀と明日香自身の力が合わされば、菩薩を粉砕するには十分な威力を引き出せる。
菩薩が粉砕されて、隙ができた童磨に対して、明日香はその僅かな隙を見逃さなかった。
明日香はこの緊迫した戦いの中で、相手の攻撃を見透かす力に目覚めていた。
しかし、童磨もまた明日香の攻撃を予測しており、残っている方の腕で首をしっかりと守っていた。
だがこの隙を逃せばまた御子や菩薩で攻撃をされるうえに、童磨は既に御子を通して明日香の一連の動きを観察している。
この一撃で決めるしかない。
明日香が放つ渾身の一撃。
月の呼吸 陸の型
下方向から上方向に向けて切り上げる技。
明日香はこの技で童磨を脇腹から肩に向けて腕を切り裂き、そのままの勢いで首を切り落とした。
(あれ?俺の首が切られたのか?という事は俺はこの子に負けたのか?)
童磨は一瞬、自分が敗北したことに気が付かなかった。
十二鬼月の中で二番目の実力を持つ自分が、たかが人間一人にこうもすんなりと首を切られるとは思っていなかったからだ。
「まさか鬼狩りの柱の中にここまで強い者がいるとは思わなかった。まるで黒死牟殿を相手しているようだった。まあ目的は刀鍛冶を虐殺する事だったし、俺が柱を引き止めている間に他の鬼達が全員倒しているだろう。」
灰になりながらも一人でブツブツと話していた童磨。
「黒死牟…十二鬼月の内の一人だろうか…。実力が童磨に近い…そして上弦の参が猗窩座である事を考えれば…黒死牟が上弦の壱であると考えて問題無いだろうな。」
上弦の壱 黒死牟。
鬼舞辻無惨を除けば最強の鬼である。
明日香にとってその正体は未だ謎であり、上弦の弐を倒した明日香にとって今最も警戒すべき存在だ。
「と言うか、こうしている場合では無いんだったな。上弦の弐の消滅はこの目で確認した。音の数からして鬼は複数いた可能性が高いが……どう言うわけか今は鬼らしき音は一体分しか聞き取れない……。炭治郎と禰豆子、それと玄弥に無一郎がいたはずだ。それに恐らく蜜璃も一緒に戦っているはずだ。とりあえず音の大きかった方に向かうとしよう。」
童磨との戦闘の最中も周囲の音を聞いていた明日香は、戦闘終了から瞬時に状況を整理し、次の行動に出ていた。
全速力で音の聞こえた方角に進んでみれば、案の定そこには上弦の肆 半天狗の分身体である憎珀天と戦う甘露寺蜜璃の姿があった。
「蜜璃、加勢に来た!」
「明日香ちゃん!良かったぁ来てくれたのね!」
(昼間の元気いっぱいな明日香ちゃんも可愛いけど、夜にしか見れない冷静沈着な明日香ちゃんもとってもステキだわ!女の子同士だけどちょっぴりキュンとしちゃう!)
「あれは…十二鬼月で間違いないか…。まさか十二鬼月が三体がかりで襲撃とは…やっぱり偶然ではなく狙って攻めてきたのか…。」
「はっ!明日香ちゃん攻撃来るよ!」
恋の呼吸 壱の型 初恋のわななき
月の呼吸 壱ノ型
憎珀天が操るトカゲのよう物体、血気術 無間業樹を切り倒し攻撃を防いだ。
「あの子供みたいな鬼は本体じゃなくて分身なの!炭治郎くん達が本体を倒しに行ってるから私たちはこの分身を足止めしないと!」
「なるほど、防ぎ続けるだけならそこまで大変でも無さそうだ。」
(えぇぇぇぇぇ!?今そこまで大変でも無さそうって言った!?ちょっと頼もしすぎるわ明日香ちゃん!)
「次の攻撃が来る!」
二人が身構えたその時、分身の鬼は動かなくなり、少しづつ塵になっていたった。
「何だ…?って空が明るくなってる!まさかもう日の出の時間なのか!?」
「でもまだ日が登りきってないわ!きっと炭治郎くん達が本物をやっつけてくれたのよ!」
「なるほど、その可能性は有り得る。甘露寺さん、まだ走れる?」
「大丈夫!明日香ちゃんが来てくれたから何とか体力持ったよ!」
炭治郎達の安否を確認するためにも、急いで炭治郎達の元へ走っていった明日香と蜜璃。
優しい笑顔を見せる無一郎や玄弥にも多少驚きはしたが、何より驚くべきは禰豆子である。
「禰豆子ちゃん、太陽の下に出られるようになったの!良かったぁぁ!!本当に良かったねぇぇぇ!!」
「よ、よかった、ね。」
「喋ったぁぁぁぁぁ!!!!」
禰豆子は太陽を克服し、そして言葉を話せるようになっていた。
この事を知って喜ぶ者は炭治郎達だけでは無かった。
「ついに、ついに太陽を克服する者が現れた……!」
鬼舞辻無惨は長年この時を待ち望んでいたのだ。
壱と参を除く全ての十二鬼月の撃破に加え、痣物の剣士の登場と禰豆子の太陽克服。
様々な有り得ないことが重なり、自体は急速に動き出すことになった。
大正コソコソ噂話
半天狗のいた方角に向かう途中で玉壺の存在に気がついた明日香は、一旦無一郎の援護に向かったものの、到着した頃には既に無一郎が玉壺を倒した後だった。
自分に似た痣が出ている事には驚いたが、無一郎の事は小鉄くん達に任せて甘露寺さんの元へ向かいました。
そのため到着が夜明け付近になってしまったようです。
ちなみに太陽を克服して喋れるようになった禰豆子とはすぐに仲良くなれました。