でも日本語をこれだけ流暢に喋れるんだから英語ぐらい使えてもおかしくないでしょ?
内容重めの文字数少なめ回です。
鬼殺隊の剣士であり医療班の重要人物でもあるシャルロット・ミシェル、現在その階級は
上から四番目の階級とかなり上位だが、これは他の隊士と比べての戦闘能力の高さと、医療班の中でも替えがきかない人材である事からの総合評価だ。
何せ、人間の治癒能力を大幅に強化しつつ、鬼の血気術や鬼そのものを弱体化、延いては無力化さえも可能とする光の呼吸を扱える唯一の人材なのだから。
月宮明日香や朔間斑尾ぐらい強い剣士がこの呼吸を扱えるのが理想なのだが、シャルロットの実力は後輩である炭治郎達にも及ばない。
まぁ炭治郎達が強すぎるだけといわれればその通りなのだが。
なので彼女の主な役割は蝶屋敷に住んで怪我人や病人の治療を行うことと、事後処理部隊である隠の手伝い兼護衛役である。
この日も彼女は、その唯一無二の呼吸法で人々を助けていた。
「ふぅ、昨日の夜の仕事は大変だったなぁ。アスカとかマダラオのせいで感覚狂ってたけど、普通は鬼なんて人間が真正面から勝てる相手じゃないんだ。私がいないかったら何人死んでるか分からないぐらいだよ。」
「シャルロット様!いらっしゃいますでしょうか!?負傷者です!大至急治療をお願いします!」
「
休む暇が無い。
炭治郎達は今や上弦の鬼でもなければ重傷を負う事は少ない。
だが一般の隊士からすれば、相手が血気術を使える鬼というだけで命懸けの戦いなのだ。
「何とか止血は成功したのですが、傷が深く塞ぐのは困難でして…。」
「頼む!こいつは俺の同期ですげぇ良い奴なんだ!どうにか助けてやってくれ!」
「うーん…内蔵は無事だから傷さえ塞げば助かるよ。でもこの腕じゃもう刀は握れないだろうね。」
「助かれば何でもいいんだ!頼む!」
「わかった!上手くいく保証は無いけど頑張ってみるよ!」
コオォォォォ…
以前より呼吸音がより大きく力強い音になっている。
ここ最近怪我人が増えてきているので、その分光の呼吸を使う機会が増えたからだ。
以前より光の呼吸の練度が増したのだ。
「人間の体の治癒力で治らない怪我はどうにもならないけど、この傷ならひとまずこれで大丈夫なはず。でも傷口を塞いだだけだから、後で蟲柱様にも見てもらって。薬の調合とかは専門外だからね。」
「あ、ありがとう!本当に!」
「負傷者を移動させます。また傷口が開いてはいけないのでゆっくり行きますよ。」
その後彼は回復し、命に別状は無かった。
しかし腕の傷が深く、再び刀を持って鬼と戦うことはできないだろう。
当人達からすれば役に立てずに悔しい思いをするかもしれないが、この先に待ち受ける戦いの激しさを考えれば、むしろここで前線を退くのは幸福な事なのかもしれない。
「お疲れ様ですシャルロット様。」
「ホント疲れちゃうよ。昨日の夜も事後処理で一般の人も含めて五十人は治療したよ?光の呼吸は厳密には全集中の呼吸とは違うんだから使うと疲れるんだ。…ってもういなくなってるし。」
隠の者達も暇では無い。
鬼殺隊は常に鬼から人々を守るために全力を尽くしているのだから、当然ゆっくり世間話に付き合う時間もそう多くは無いのだ。
「ハァァァァァ…替えがきかない人材だから休む暇が無いってコトだし、誇らしい事ではあるんだケドさぁ。私って本当に役に立ってるのかなぁ?」
「どうしたの?随分と卑屈じゃないの。らしくないよシャル。」
「はぁ…誰かと思えば月柱様じゃん。上弦の弍を倒したんでしょ?ご立派ですこと。」
「なに不貞腐れてるの?シャルに限って嫉妬なんて事は無いでしょ?」
「だって私が居なくたって上弦の鬼は倒せてたでしょ?」
「え?そりゃまぁ現場に居なかったんだし直接は関係ないわね。」
「人助けだとか何とかって役に立ててる気になってるけどさ、私が助けた命だって何度も失われてるんだよ?先月直した先輩が先週戦死した。私が助けた意味ってあったのかな?」
「こら!何言ってるの!貴方その人の命を何だと思ってるの!?」
「でもさ、私ですら十二鬼月が相手だったら死ぬかもしれないんだよ?私が私より弱い人を一人二人多く救ったところでさ、何か変わるのかな?」
パチッ!
「いい加減にしてよ!それ以上言ったら殴るよ!」
「……グスッ…ううぅ…。」
「……ッ!なんでアンタが泣くのよ!アンタが馬鹿みたいな事言うから…」
その時明日香は少し冷静に考え直した。
シャルロットがそれまで見てきた光景は明日香とは違う物だっただろう。
七歳の頃、家族旅行中に両親を鬼に殺され、異国の地で見知らぬ人達に育てられてきた。
そこでは度々酷い怪我を負った人々が担ぎ込まれ、苦痛に顔を歪め、もがき苦しむ悲痛な声が聞こえてくることもあっただろう。
自身に目覚めた特別な力も、弱い鬼を倒したり、死ぬかもしれない十数人のうちほんの二,三人を救える程度。
結局何十人,何百人もの救われない人々を見る事に変わりは無いのだ。
そして何より、彼女はまだ十二歳の少女だ。
「…ごめんなさい。私、貴方の気持ちも考えずに。」
「こっちこそごめん。私、心がどうかしちゃってるみたい。」
しばらく静寂が訪れた。
「私ね?列車の時も遊郭の時も刀鍛冶の里の時も、医療班の人達と一緒に現場に向かったの。明日香や炭治郎のお陰で被害は抑えられてたけどさ、それでも数え切れない程の怪我人が出た。死者も出た。私はその中のほんの少ししか救えなかった。煉獄さんも宇隨さんも時透さんも甘露寺さんもみんな命を張って守ったのに、結局助からない人はいたんだよ。そう思うとさ?私はすっごく辛いよ。」
「……私だって辛いよ。でも、私たちの世代で流れは確実に良い方向に進んでるんだよ。長年変わらなかった上弦の鬼の数を変えたんだ。そして禰豆子は鬼でありながら太陽を克服した。痣の出た柱達はそれまで以上に強くなった。そんな中で私達が安心して任務に迎えるのは、シャルロット、貴方がいてくれるからなんだよ?」
「私が…いるから…?」
「怪我をしてもきっと彼女が直してくれる。その気持ちがあるからみんな全力をだせるの。」
「でも、もし直せなかったら…」
「シャルロット。貴方が失敗しても誰もあなたを憎まないよ。貴方はね?無いに等しい救いの道を少しでも照らしてくれる光なの。」
「…わかったよ。もう少しだけ、あと少しだけ頑張ってみるよ。」
「うん。辛くなったら柱である私を頼って?きっと何とかしてみせるから。」
「うん。」
鬼殺隊医療班の希望の光、彼女の名はシャルロット・ミシェル。
夜空に光る月の明かりには遠く及ばない小さな光だが、その光は確かに人々の進む道を照らしている。
大正コソコソ噂話
シャルロットは何気にフランス語と英語と日本語のマルチリンガルです。
フランス語は母国語、日本語は鬼殺隊に来てから学んだのですが、英語は昔親から教わったのだそう。
英才教育の賜物ですね。
おかげで鬼殺隊からは英語が母国語だと勘違いされたとか。
呼吸も医療に向いてるので鬼殺隊が解散しても職には困らなそうですね。