痣のある少女が鬼を狩るお話   作:レイサン

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柱稽古編STARTですわ〜。


柱稽古編
果てしなく遠い場所


上弦の伍 肆 弐の襲撃によって大打撃を受けた刀鍛冶の里。

しかし、竈門炭治郎や柱達の活躍によって刀鍛冶の全滅という最悪の事態は防ぐことができた。

そして、竈門炭治郎の妹であり鬼である竈門禰 豆子が、なんと太陽を克服したのだ。

 

そしてその情報は、鬼の王である鬼舞辻無惨にも伝わってしまっていた。

禰豆子が太陽を克服したと知った無惨は、日本中に散らばった鬼共を無限城に集め、自身の血を与え戦力強化を測っていた。

 

しかし、鬼が突如姿を消したため、鬼殺隊の仕事は一気に減少。

その結果、柱が直々に稽古をつける『柱稽古』を行う時間を与えてしまったのだった。

 

そして、柱である月宮明日香も当然稽古をつける側の立場である。

 

音柱 宇髄天元が行った第一の試練は基礎体力向上稽古だ。

険しい山の中を何度も走って上り下りを繰り返すという内容だ。

遅いと宇髄によって竹刀で叩かれ、休憩のタイミングも宇髄が許した時のみに制限される。

終了のタイミングは宇髄天元が体力の向上を認めた時である。

余談だが、訓練中の我妻善逸と嘴平伊之助が温泉を掘り当て、それ以降は温泉に入ることも許可されたらしい。

 

霞柱 時透無一郎が行った第二の試練は高速移動稽古だ。

無一郎に何度も打ち込みながら、相手を翻弄する歩法を学ぶという内容。

それだけならさほど辛くはないだろうが、達成できなければ無一郎の冷たい対応で心を抉られることになる。

 

恋柱 甘露寺蜜璃が行った第三の試練は柔軟だ。

体の関節や動きを柔らかくすることが目的の稽古だ。

しかし、何故か全員がレオタードを着せられ、リボンを持って音楽に合わせて新体操を踊れるようになる事を目指すという癖の強い内容だった。

それに加えて甘露寺の最大の特徴とも言える常人の8倍の筋力で、関節や筋肉を無理やり解される地獄の柔軟が行われた。

だが、彼女の稽古を受けている間は、蜂蜜を塗ったパンやパンケーキや紅茶が振る舞われたので、まだ気は楽な方だろう。

 

蛇柱 伊黒小芭内が行った第四の試練は太刀筋矯正稽古だ。

その内容は、多数の障害物がある稽古場で、その障害物を避けながら伊黒に打ち込むという非常に難易度の高い物だ。

しかも、恐ろしいことに覚えの悪い隊士は障害物に縛り付けられて障害物にさる。

なので伊黒に打ち込んでいる隊士は、仲間の体に木刀をぶつけないように気を使いながら伊黒と手合わをせしなければならないのだ。

 

風柱 不死川実弥が行った第五の試練は無限打ち込み稽古だ。

耐久力向上を目的とした稽古であり、広い庭で隊士が全員がかりで永遠に不死川に打ち込み続けるという単純明快な稽古だ。

しかし、この稽古は不死川の攻撃で反吐をぶちまけて失神するまでが一区切りであり、それまで休みは一切無い。

ちなみに、炭治郎と善逸は風柱と揉め事を起こしたため強制的に次の稽古へ移されたそう。

 

岩柱 悲鳴嶼行冥が行った第六の試練は筋肉強化稽古だ。

足腰と重心を鍛えて体を安定させる事で、正確な攻撃と崩れぬ防御を身につける事を目的とした稽古。

まず、異様に冷たい川で念仏を唱えながら一刻(約2時間)の滝行を行う。

その次に丸太を3本担ぎ、最後に人の背丈程もある岩を一町(約109メートル)先まで押す事でやっと合格となる。

言うまでもなくこれまでの稽古で一番過酷な内容だが、悲鳴嶼もそれを理解しており、辞めたければ山を降りても構わないという規則になっている。

 

ちなみに虫柱の胡蝶しのぶは、鬼でありながら鬼舞辻無惨の呪いから抜けた珠世と合同で研究を行っていたため、柱稽古には不参加となった。

 

また、元炎柱の煉獄杏寿郎は流石に稽古を付けられる状態では無いため、こちらもまた不参加となった。

 

水柱の冨岡義勇は案の定「俺は水柱じゃない」と訳の分からないことを言って柱稽古を放棄した。

 

そして、最後の柱稽古として月柱である月宮明日香の柱稽古が行われる。

その内容は単純明快。

これまでの稽古で学んだありとあらゆる技能を駆使して、明日香を本物の鬼に見立てて実践訓練を行うという内容だった。

 

一見すると蛇柱や風柱の稽古内容に近いようにも思えるが、明日香は十二鬼月の上弦の弐を単独で撃破するというとんでもない実績を持っている。

 

つまり彼女と本気で戦うということは、上弦の弐以上の相手と本気で戦うという事を意味するのだ。

一言で言うなら恐怖である。

 

一応ハンデとして参加者は何人同時に攻撃しても構わないというルールを設けているが、正直言って人数でどうにかなる問題では無い。

 

そして、柱稽古開始から二週間程度が経過した頃、早速明日香の柱稽古に到達する物が現れた。

 

「おーい!月柱 月宮明日香!俺はお前の同期の朔間斑尾だ!岩柱の柱稽古を突破したのでお前の元で稽古を受けにきた!手合わせ願う!」

 

「おお、ようやく一人目か!さてと、どんな奴かな……てあなたは同期のでっかい人!なんか見た目前よりゴツゴツしてない!?」

 

「当たり前だ!上弦の参にボコボコにされて以来、生まれて初めて本気で体を鍛えたからな!さあ、遠慮はいらないぞ?本気でやろう!」

 

「言われなくてもそのつもりだよ!」

 

そう言うと明日香は木刀を構えた。

対する斑尾も拳を構えた。

 

「あれ?刀は使わないの?」

 

「俺の武器は俺の肉体その物だ。この場に来た時から既に準備はできているのさ。」

 

「やる気十分だね!では行くぞ!」

 

そう言うと明日香は斑尾の視界から消えた。

 

「な、消えた!?」

 

「こっちだ!」

 

いつの間にか斑尾の真横まで接近していた明日香。

斑尾は咄嗟に防御の構えを摂るが…

 

「遅い!!」

 

 

スパパパパァァン!!

 

 

早い。

明日香の動きはあまりにも早すぎた。

斑尾が防御の構えを摂ろうと脳で考えた時には、すでに四発もの斬撃が加えられていた。

 

「うぐおぉぉぉ!!!いっっってぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ほぼ同時に四方向から襲いかかる激痛。

全ての柱稽古を突破してきている強者でも、たった一度の攻撃で圧倒的な実力の差を思い知らされる。

 

「安心して、骨は折れないよう加減してる。一々攻撃する度にシャルを呼ぶ訳にもいかないからね。」

 

「クッソォォォ…加減してこれかよぉぉ…。」

 

「どうしたの?さっきまでの気迫はどこいっちゃったのかな?」

 

「まだ終わらねぇぞ!俺はまだやれるはずなんだぁ!」

 

「良い気迫!さあかかって来なよ!私が何度でも相手になるからさ!」

 

そんな調子で二人の稽古は丸一日続いた。

 

「ぜぇ……はぁ……流石に……もう……無料だ……ガク…。」

 

「え〜もう終わっちゃうの?私まだ息切れ一つしてないんだけど。」

 

明日香の柱稽古のためだけに作られた稽古場は、斑尾の拳で穴だらけになっていた。

休憩場所としての建物は明日香の気遣いで無傷だが、稽古を行った庭はもはやまっすぐ歩くことができないほど荒れていた。

 

「アスカー!ワタシも柱稽古突破してきたヨー!ってナンジャコリャー!?」

 

「あら?シャルも柱稽古受けてたの?てっきり隠の人達と同じ扱いで稽古は受けない思ってたけど。」

 

「いやいや舐めてもらっちゃこまるよ。ワタシだって鬼殺隊の隊員だよ?それに治療係がやられちゃったらみんな困るじゃん。」

 

「そりゃそうだけど…私の所まで来たってことは悲鳴嶼さんの柱稽古突破したの!?」

 

「アレはジゴクだった…。川の向こうのパパとママに追い返されなかったらヤバかった…。」

 

「三途の川渡りかけてるじゃんか…。まぁ、斑尾さんがすぐにへばっちゃって困ってたから丁度いいや。シャルの光の呼吸で元気にしたら今度は二人がかりで来てよ!」

 

「二人がかりで!?流石にアブナイよ!」

 

「万が一にも十二鬼月に遭遇したらそんな事は言ってられないよ?鬼がいなくなるなんて絶対何か起こる予兆なんだから、お互いその何かに備えないと!」

 

「その通りだ……。俺たちがやらないといけないんだ……俺たちが鬼を……鬼舞辻無惨を倒さないといけないんだ…!!」

 

「まだ動けるの!?バケモノじゃんか!」

 

「その歳で私の所までたどり着けるシャルも十分凄いと思うよ。さあ、きっともう何日かすれば炭治郎くん達も来るだろうし、それに備えてガンガン鍛えよう!」

 

「オー!!」

 

「おぉー!!」

 

 

 

そこからさらに数日後……

 

 

 

「竈門炭治郎です!月宮明日香さんはいます…か…?」

 

「あら、随分と時間かかったみたいだね。見ての通り、斑尾とシャルは気を失ってるよ。もう夜も近いし仕方ないかな?それで、炭治郎くんはどうする?このまま夜までやるか、休んで明日の朝から三対一でやるか。」

 

「もちろん今すぐやります!よろしくお願いします!」

 

「良いね、気合十分。その気合いが何分持つかな?」

 

 

五分後。

 

 

「はぁ……はぁ……つ……強い……!俺と明日香さんでは……強さの格が……違いすぎる……!」

 

「はっきり言うけど今の戦い、私が本物の鬼なら50回は死んでるよ。単純に考えるなら一分につき10回死んでる事になる。日の呼吸もまだ完全では無いみたいだし、私との柱稽古でしっかり自分の問題点を把握するように。私は今から型の素振りをするけど、君はもう休みなさい。」

 

「は…はい。ありがとうございました。」

 

明日香の言葉に嘘は無い。

明日香がその気になれば、木刀だろうと炭治郎の命を奪うことなど簡単な事だった。

しかし、これまでの柱稽古を突破してきた実力者なだけあって、明日香は彼らの実力を『もう少し鍛えれば柱にも匹敵しうる実力』と判断している。

 

 

さらに数日後

 

 

鋼の呼吸 弐の型 鋼連拳

光の呼吸 壱ノ型 サンシャイン

日の呼吸 肆の型 灼骨炎陽

 

三方向から同時に繰り出された技、しかし明日香には届かなかった。

 

スパッカカッカンッ!!

 

明日香は一瞬のうちに、斑尾の拳をはたき落とし、シャルロットの木刀を折り、炭治郎の木刀を明後日の方向へ打ち上げた。

 

「速さは以前より成長しているし、威力もかなりのものだよ!でも私が上弦の弐を切った時の力はこんな物じゃなかったよ?まだまだこれからだ!よし、新しい木刀の準備ができたらもう一度頑張ろう!」

 

(日の呼吸も体に馴染んできて、前までの柱稽古の学びも活かせるようになってきた!でも、月宮さんに勝つ俺の姿が全く予想できない!俺が一歩二歩前進したところで、月宮さんが歩いている場所は今俺がいる場所より遥かに先!他の柱の方々も強かったけど、この人は他の柱とは何かが違う!)

 

「おや?どうしたんだい炭治郎くん。もしかしてこの稽古の厳しさにとうとう音を上げたくなったのかい?無理強いはしないから、君は冨岡さんに声をかけてきてくれないかな?あの人君の兄弟子なんでしょ?なんとか説得してきて欲しいんだけど。」

 

(うう、音を上げるつもりは無いけど、でも冨岡さんが気になるのは俺も同じ。仕方ない、ここは一度冨岡さんを説得しに行こう。)

 

「分かりました!俺がなんとか冨岡さんを説得してみます!ありがとうございました!」

 

「うん、任せたよ!」

 

月宮明日香。

柱の中でも明らかに別格の実力を持つ存在。

そして彼女は柱の中でも特に異質な存在でもある。




大正コソコソ噂話

シャルロットと斑尾が柱稽古を突破できたのにはわけがある。

なんでも斑尾は猗窩座に敗北した後、無限列車を引っ張る筋トレや、わざと折った骨を光の呼吸で治す骨トレを繰り返して筋肉と骨が鍛えられた結果、なんと体重が10kgも増加したそう。

そのトレーニングに付き合わされたシャルロットも必然的に体が鍛えられて今の強さに至るんだとか。

やっぱり十二鬼月にタイマン勝負挑む奴らはヤバいね!
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