YGGDRASIL ーARKー コラボ 作:だいだろすちひろ
前回のあらすじ
ぺロロンチーノ死す!
デュエルスタンバイ!
♦
―――ぺロロンチーノさんがkillされました―――
その血で綴られたかの様な赤い文字の意味をギルメン全員が理解し終えた後に、辺り一面から絶叫が沸き上がっていく。
「はあ!?どういう事だ!?一体誰に!?」
「周囲には人影はありませんでした、恐らくはPK等ではないと思いますが...モモンガさん、これはもしかすると侵入出来なかった者へのペナルティか何かではないでしょうか?」
余りの事態に混乱しているモモンガに対してたっちが自分の考えを伝えていく。
確かにたっちの言う通り、周囲には他のプレイヤーの影は無かったし、PKも当然警戒していた。なので他のプレイヤーにぺロロンチーノが害されたと言う線は薄いように思える。
そう考えていくと、ペナルティと言う言葉が一番しっくり来るような気がして来る。
「嘘だろ...周囲にいるだけで殺されるなんて滅茶苦茶じゃないか...しかし、ぺロロンチーノさん抜きで攻略を進めなければならないのか。」
今回の攻略はギルメン達での―――このメンツでの過去最高の舞台である。
そんな最高の舞台でぺロロンチーノが抜けた状態で攻略を行わなければならない事への寂しさがモモンガの中に押し寄せてくる。それも自分が起因で起こってしまった事態なら猶更悔やまれるだろう。
しかし、本当の問題はそこではないのだ。
確かにぺロロンチーノが居ないのは寂しいし悲しい。しかし、本当の大きな問題はそこではない。
悔やまれるにはもっと大きな理由がある。
「あのガチ勢のぺロロンチーノさんが抜けるのは...痛いなんて物ではありませんね、モモンガさん。」
たっちの言葉を聞き、モモンガが項垂れていく。
たっちの今発した言葉こそが、先程言ったもっと大きな理由である。
ぺロロンチーノ―――ふざけた言動とお茶らけた行動で勘違いされがちであるが、彼の実力はギルド内でも上位に食い込むほどだ。
つまりは、非常に強いのである。
それも只強いだけではない、空中から相手の攻撃が届かない距離で、正確に狙いを射抜く程の実力を誇っている。
ここから先は激戦が予想される為に、後方支援最強と言っても過言ではない人物が抜けていくのはとんでもない痛手だと思えた。
「どうすれば...はぁ、これ俺の所為だよな...頭痛くなってくるよ...もう一度最初からやり直すか?しかし、デスペナ入ってるだろうし、そんな簡単には―――」
「なぁなぁ☆モモちゃん☆モモちゃん―――」
「―――いかないよ、何ですか?るし☆ふぁーさん。今色々と考えてるんですよ。」
「―――思ったんだけどよ☆これさぁ、出れんのか?」
これから先の事に思いを巡らせていたモモンガに対してるし☆ふぁーが軽い口調で話しかけてくる。
若干イラっと来てしまったモモンガであるが、会話の中に在ったるし☆ふぁーの疑問に対して思考を移していく。
出れるのか?というちょっとした疑問に。
「は?出れんのかって...?え?」
「いやさぁ☆どう見てもこれ、もう開かなくない?どうやって出るんだ☆」
「~~~――!!」
るし☆ふぁーの疑問に対し言葉を返そうとしたモモンガが言葉に詰まっていく。
出る筈もない冷汗が出そうになるのを感じながら慌てて周囲を散策していく。
そしてある事に気づいていく、ないのだ、辺りを探しても出る為の手段が、脱出の為の方法が―――扉を開く為のコンソールパネルが。
そう、モモンガは―――ギルメン達はまだ少しもこの洞窟の怖さを理解出来てはいない。
ここはTEK洞窟である。
The・Islandの最後のダンジョンにして最難関の―――最高難易度のダンジョンだ。
かつて、ARKと言うゲームに魅せられたプレイヤー―――サバイバー達がいた。
囚われてしまった世界に―――無慈悲な世界に溺れて狂わされて行ってしまった哀れで、そして鋼の精神を持った者達。
その者達は死と言う概念ですら、己が快楽とし嬉々として死にまくっていた。
そんな者達ですら―――死と言う概念ですら快楽としてしまった者達ですら、恐れて二の足を踏んでしまう場所。
それがこの―――TEK洞窟である。
この場所に足を踏み込んでしまったが最後、ここから脱出する方法は二つだけしかないのだ。
それは。
この洞窟を攻略するか―――死ぬかだけだ。
そして、もしこの洞窟で死んでしまった場合、その時は全てを奪われる。
装備しているアイテムも、BOXに入っているアイテムも全て。
もう一度言おう、この洞窟は幾多のサバイバー達を恐怖のどん底にまで落とした最難関のダンジョンである。そんな場所に足を踏み入れて簡単に外まで出れる訳はないのだ。そんな甘い話はこの洞窟には―――ARKにはない。
出る方法はたった二つ―――攻略達成するか、死ぬかだけだ。
全ての難関を突破し―――栄光を掴み取るか。
奈落の底に落ち―――絶望に飲まれるか。
―――その二つだけだ―――
♦
「嘘だろ...出れないとか...そんなんありかよ。」
慌てて周囲を散策していたモモンガが、再度項垂れていく。どれだけ探しても脱出の為の手段が見つからないのである。
心のどこかに在った、最悪の場合撤退と言う文字が消えていく感覚が押し寄せてくる。
そしてそんな項垂れているモモンガに対して、たっちから言葉が投げかけられる。
「モモンガさん...これ以上考えても時間の無駄かと思います。賽は投げられました。このまま攻略を決行するしかないでしょう。」
「...そうですね、ここで立ち止まっていても始まりません。...すいません、たっちさん、ギルマスとして情けない所を皆に見せてしまいましたね。」
「そんな事はありませんよ、モモンガさ―――」
「ぶっふぇ☆モモちゃんダッサ☆ダッサ―――ぎゃん☆」
「―――ん、ふん!...モモンガさん、士気がこれ以上下がる前に攻略を開始しましょう。」
「...そうですね...皆さん、情けない姿を見せてしまいましたが、私はもう大丈夫です。ぺロロンチーノさんが抜けたのは痛いですがこのまま攻略に臨むとしましょう。」
たっちの言葉に気持ちを奮い立たせながら、モモンガがギルメン達に向かいそう言い放つ。
情けない姿を見せてしまったが、もう大丈夫だ。ぺロロンチーノの犠牲を無駄にしない為にも絶対に攻略を達成しなければならないだろう。
「おうよ、最初っから出る気なんてないぜ!モモンガさん!言ったろ、全て斬るってな!」
「僕も同じ意見だよ、攻略を成功させて、ぺロロンさんの件は最後に皆で笑おうよ!」
ギルメン達各員から覚悟の言葉がモモンガに返ってくる。その言葉を聞き、再度先程遠吠えてしまった自分に対する恥ずかしさが押し寄せてきたがぐっと堪えていく。
気持ちを注入し直し、モモンガを先頭に洞窟内部に侵入して行った。
洞窟を進んでいくモモンガ達。洞窟内部の道は狭く、集団で進んでいくには酷く窮屈に感じられた。進んでいった感じからするに、この道は洞窟の下層迄続いているのだろう。火山の頂上から開始されたダンジョンである、恐らくは火山内部の下層―――最深部まで到達しなければならない様に思えた。
そんな中、皆が一様に緊張感を持って進んで行っているが、不思議な事に未だなんの脅威も現れてはいなかった。
そして、不思議に思いながらもしばらく進んでいたモモンガ達の目の前に映し出されてきたのは、凄まじい熱気を上げながら、赤々と燃え滾る灼熱の溶岩の姿。
その溶岩は、頭上からボトボト振り注ぎ、下層までまるで滝の様に流れ落ちている。ここが火山内部であると言う事を再認識させられると共に、少しの好奇心に突き動かされ、モモンガが道の―――通路の端まで歩みより、下層を確認しようと通路の端から下を覗き込んでいく。
「うわぁ~、真っ赤だな。これ全部マグマか?落ちたら俺一撃だよ、多分。俺火が弱点だし。」
覗き込んだ視線の先―――洞窟下層には溶岩の湖が広がっている。幻想的にさえ思える赤さが存在をこれでもかと主張し、ゴポゴポと音を立て溶岩が波打っている。
モモンガは自分は火が弱点だから~とか言っているが、誰がどう見ても弱点とかそういうレベルではない。炎に対する完全耐性を持たないメンバー全員に、安全な今の内に装備を交換し、耐性を確保していく事を促していった。
モモンガの言葉を聞きながら、納得していったメンバー達が各々装備を交換して行っている。その光景を見た後に、モモンガが再度、下層迄目をやる。目の前に広がる圧巻の光景を見ながら、自分も持参してきた様々な耐性付与アイテム群の中から、炎に対する完全耐性のアイテムを取り出していき、装備していく。
そして、全員の準備が終わったのと同時に、少し先の方―――通路の先から大きな声がモモンガに向け放たれてきた。
そちらの方向に目をやれば、るしふぁーが何やら一人でワイワイ騒いでいる。集団行動中に勝手に一人で先に進む協調性の無さに、モモンガが呆れと、若干の苛立ちを含んだ雰囲気を纏いながら、言葉を投げつけながらるし☆ふぁーの元まで歩いていく。
「はぁ~、もう、何で勝手に先に進んでるんですか。状況を見て下さいよ。今もし敵にヘイト取られたら一大事ですよ?」
「うししし☆モモちゃん、見ろよ☆不細工がいるぞ♪」
「はぁ?不細工?」
その言葉を聞き、モモンガの頭の中に少し思い当たる物が在った。先程の森林地帯に入る前に、何やらそういう言葉を聞いた様な気がしたからだ。
そして、るし☆ふぁーの前方に目を向ければ、森林地帯にはいる前に目撃した不細工な恐竜―――爪の長い恐竜が、こちらをジッと見つめながら立ち尽くしているのが目に飛び込んできた。
その姿を見て、モモンガがの記憶が完全に蘇ってきた。そう言えば、コイツをぶっ叩くとかなんとか言ってた筈だ。そんな事を思っていたモモンガの目の前では、るし☆ふぁーがスキップをしながら爪の長い恐竜の前まで進んで行っている。緊張感の欠片もない男だとモモンガが思っていると―――一つ疑問が頭の中に沸いてくる。
この恐竜は恐らく草食恐竜である。草を貪っていたのだからその線は固いだろう。そして実際に、るし☆ふぁーが近づいて行ってもなんの攻撃行動も取らなかった。草食恐竜の特徴である温和な性格であると思われた。そう、非常に安全な生物だと。
そう、非常に安全な生物だと思われた。そこが頭に引っかかる。
ここは最難関ダンジョンのTEK洞窟だ。これから先地獄が待っているであろうこの場所に、なぜこんな安全な生物が配置されているのかと。
油断させる為と考えれば辻褄は合いそうではあるが、どうにも違うような気がする。頭の中の引っかかりが取れない。歴戦の猛者であるモモンガの頭脳がこの状況に対して警報を鳴らし出した。ギュルンギュルンと危険センサーの警報が鳴り続け、その音はどんどん大きくなっていく。しかし、明確な答えは出ない、だがこの状況は不味いと思い、近づいて行くるし☆ふぁーを止めようと言葉を発しようとした。
そして言葉を発しようとしたモモンガの目の前には、その恐竜の目と鼻の先まで到達していたるし☆ふぁーと、そのるし☆ふぁーに対して巨大な爪を振り上げ、先程まででは考えられもしない様な恐ろしい顔をした恐竜の姿が映し出されていた。
その顔はとても恐ろしく―――邪悪に歪んでいた。
「るっ!るし☆ふぁーさん!」
「んあ?んっひゃーーーー☆」
ARKと言うゲームに置いて、基本的には草食恐竜は大人しく、こちらから害を成さない限りは襲ってはこない。そして、襲ってきたとしても大抵は肉食恐竜よりは弱く、難なく対処できてしまう―――ある恐竜を除けば。
その恐竜は、明らかに草を食べている仕草をし、また近づき過ぎない限りは襲ってはこない。
そう、近づき過ぎない限りは。
ARKと言うゲームの中で、初心者を騙し、切り刻み殺していく恐竜。その本質は穏やかそうな見た目に反して凶暴であり、一度狙われたが最後殺戮の限りを尽くしていく。その姿は正に、ARKの死神にして殺し屋。
The・Islandに置いて最強の―――最凶の草食恐竜、その名も。
―――【テリジノサウルス】―――
テリジノサウルスの振るう爪が死神の鎌の如くるし☆ふぁーに対して振るわれて行く。そして、その攻撃を受けたるし☆ふぁーが吹き飛んでいった。その光景にモモンガが目を見開く。これは急に凶暴になった恐竜に対する驚きもあるだろうが、その恐竜の攻撃の質による物が大きいだろう。
長い爪から繰り出される事によるリーチと素早い攻撃だけでなく、強力なノックバック効果まで付与されている。
そして、吹き飛んで行ったるし☆ふぁーへ、テリジノが追撃を始める。前傾姿勢で突進していきながら、その長い爪を無造作に振るい続ける。
振るう、振るう、振るう。猛撃は止まない。
吹き飛ばされ続ける、るし☆ふぁーが悲鳴を上げながら通路の端―――崖になった場所まで追いやられて行った。
そしてそのまま転落して行った。
「んっぴゃーーー☆やっば☆コイツやっば☆」
「るし☆ふぁーさぁーーーん!!」
「んししし☆モモちゃん大丈夫大丈夫☆こんくら―――んぱぁーーー!?何だって!?」
転落している最中も余裕を崩さなかったるし☆ふぁーが急に慌てふためきだす。そして謎の悲鳴と共にマグマの中にダイブして行った。その際、るし☆ふぁーを親の仇ばりに追いかけまわしていたテリジノも一緒にマグマにダイブしていく。
「...え?う、嘘だろ。」
―――るし☆ふぁーさんがkillされました―――
「るし☆ふぁーーーーー!!」
「モモンガさん!一体何事ですか!?」
モモンガの叫び声の後に続く様にして現れた赤い文字を見て、ギルメン達が慌てて駆け寄ってくる。一体何が起きたのかをモモンガから聞いていく内にギルメン達から焦りの言葉が漏れ出す。そしてそんな中に重要な内容も少し含まれていた。
「ていうかよぉ、どういう事だよ...るし☆ふぁーの奴、確か完全耐性の腕輪付けてた筈だぜ?」
「あぁ、建やん、俺も見たさ、ていうか俺の隣で付けてたからな。間違いねぇ。」
弐式と建御雷の言葉を聞いたギルメン達がシンと静まり返っていく。言葉の内容を理解しようとしているのであろう。
信じたくない言葉の内容を。
「は、ははは、な、なるほどねぇ...このマグマ、耐性貫通するんだ!ねぇ、そう言う事よね?やまちゃん!」
「は?う、うん、そう言う事...なんだろうね、かぜっち。」
完全耐性を付与したるし☆ふぁーが死んだ事からも、耐性の貫通効果がある事は間違いない様に思える。
そして意味を理解し終えたギルメン達から続々と罵声が飛び交いだした。
「マジかよ!落ちたら即死とか...ありえねぇだろ!」
「メコン川さんの言う通りですね、この道の細さでそれは...いくら何でも。」
メコン川の言葉に対し、ウルベルトが現在置かれている状況の厳しさを語っていく。ウルベルトの言う通り、ここは細道である。ギルメン全員で既に窮屈な状況であるのに、ノックバックが付与された攻撃を繰り出す恐竜が配置され、尚且つマグマに落下したら即死と言う鬼畜っぷりだ。
ウルベルトの言葉を聞き、ギルメン全員に再度緊張感が張り詰めていく。身に纏う空気も重たくなっていく。この状況は非常にまずい、ここで立ち止まっていても何の解決にもならないとモモンガが思い、自らが先頭に立ち、この先の偵察に向かおうと心に決めていく。
「皆さん、立ち止まっていても攻略は進みません。不可視化の魔法を使い、私が一度この先を偵察に行ってこようかと思います。フライ、パーフェク―――はあっ!?ちょっ!?はあっ!?馬鹿じゃないのか!?」
「モ、モモンガさん!?どうしたんですか?」
「ウ、ウルベルトさん...この洞窟は...馬鹿ですよ。」
(?)
魔法を発動させ、洞窟の偵察に向かおうとしたモモンガが急に慌てふためきだす。なぜ、モモンガが慌てだしたのか?その理由はモモンガが魔法を唱えた際に発生したアナウンスにある。そう、モモンガが、フライを使用した際に発生した―――モモンガにのみ聞こえたアナウンス。
##この洞窟は飛行できません##
それは、飛行禁止区域のお知らせアナウンスであった。
「飛行できないんですよ!この洞窟は!俺達は...飛ぶ事が出来ない!」
その悲鳴に近い叫びを聞いていき、ギルメン達から先程を凌駕する罵声が飛び交ってきた。主に魔法詠唱者達からだ。
「ふ、ふざけんなよ!飛べないだぁ!俺達にどうしろってんだ!?」
「~~~――チィ、そういう事かよ...だから、るし☆ふぁーの奴、マグマに落ちて行ったのか!」
その言葉にはモモンガも同意だ。るし☆ふぁーは明らかに慌てていた、フライで飛び上がろうとした際にあのようなアナウンスが流れれば確かに正気は保てないだろう。そして半狂乱になっているギルメン達を他所に、一人の人物が魔法を唱えて行った。
「テレポーテーション...ふむ、皆さん、確かにここは飛行禁止の様ですが、転移魔法は問題なく使用できる見たいですね。洞窟から出る事はできませんけど、視界モニター内位であるならば使用可能見たいです。なので、落ち着いて下さい。」
そう冷静な言葉をギルメン達に、タブラ・スマラグディナが投げかけていく。飛行できないのは途轍もないハンデだが、転移魔法が使えるならば少しはこの状況も緩和される様に思える。
冷静な言葉でギルメン達を沈めて行ったタブラに、モモンガが近寄り礼を言っていく。その役目は本当ならば自分が行わなければならなかった事だ。深い感謝の礼を述べていく。
「すいません、タブラさん。それは自分の役目だったのに。本当にありがとうございます。」
「あぁ、気にしないでよ、モモンガさん。しかし、飛行できないとはね。こうなってくるとぺロロンさんが抜けたのも案外痛手にはならないかもね。飛べないペロは只のエロ鳥だからさ♪」
礼を述べてきたモモンガを気遣い、ユーモアな台詞をタブラが吐いていく。その言葉を聞き、気遣われているだけでは駄目だとモモンガが再度気持ちを注入し直していく。自分達はまだこの洞窟のスタート地点に立っているだけだ。先に進むべくギルメン達に言葉を投げ掛け洞窟の先まで侵入して行った。
♦
「わんさかいんぜ、スゲェ量だ。」
洞窟内部を侵入して行っているモモンガ達、アインズ・ウール・ゴウンの面々。
今言葉を発しているのは弐式炎雷であり、侵入経路の偵察に行き、戻ってきた所である。そして言うのだ、敵が無数にいると。
「やはりそうですか。本格的に攻略が始まったと見るべきですね。飛行が出来ない以上戦闘は避けられない、不可視化で進もうにも全員は無理ですしね。」
「そうですね、モモンガさん。一つ救いがあるとすれば恐竜達は大勢で固まっては居なかった、集団つっても三匹、四匹程度。ただ、それが通路の先にズラッと点在してやがるんですよ。先の恐竜にヘイト向けさせずに各個撃破していく必要がありそうですね。」
弐式の言葉を聞きモモンガが頷いていく。続いて後方に居るギルメン達にその事を説明していく。モモンガから状況の説明を受けたギルメン達が頷いていき、前衛型のメンバーを先頭に通路を進んでいく。
進んでいった通路の先には三体の恐竜が立ち尽くしているのが見えてきた。鋭い牙を覗かせ、額には角の様なこぶが左右に浮き出ている。ヘロヘロに聞いたところ、その恐竜の名前は”アロサウルス”と言うらしい。獰猛な肉食恐竜であり、集団で行動していた恐竜だと言う事だ。通路を塞ぐように立ち尽くすアロサウルスを処理する為にメンバーが近づいていき―――地中から急に何かが飛び出してきた。
「!!なっ!?何だコイツ!?はぁ!?」
「地中からだ―――はぁ!不味い、スタンした!!」
「ベルリバーさん!源次郎さん!そいつらは”プルロヴィア”です!不味い!地中に潜まれていたのか!」
地中から突如現れた生物、その名も【プルロヴィア】、プルロヴィアから攻撃を食らった二人が体の自由を奪われスタン状態に陥っていく。そして、急な出来事に面を食らっているギルメン達にアロサウルスが集団で襲い掛かってきた。
気づかれずに奇襲をする筈であったがプルロヴィアの攻撃によりアロサウルスにこちらの存在を気づかれヘイトを買ってしまった。最悪の状況である。
襲い掛かってきたアロサウルスにギルメン達が応戦し乱戦が始まる。そしてその戦闘中にスタンで行動不能に陥っていた二人が巻き込まれて行き、マグマの湖に転落して行った。
―――ベルリバーさんがkillされました―――
―――源次郎さんがkillされました―――
視界モニターに赤々とした文字が映し出される。アロサウルスはどうにか処理できたが被害が尋常ではない。洞窟に侵入を開始してまだそれ程進めてはいない。それなのに、既に41人のメンバーの内4人が消え去った。
空気がまたもや重くなる、進めば進むほどに士気は下がっていく。辺りからは徐々に弱音が零れだしていくのが聞こえてき、これは不味いと空気を変える為にモモンガが口を開こうとした―――その時。
「皆しっかりして!!」
「!!やまいこさん...。」
「やまちゃん...。」
重い空気を吹き飛ばすかのような一喝をやまいこが叫んでいく。普段の彼女からは想像も出来ない様な大きな声を聴き、先程までざわついていた周囲の声が消え去っていった。
「状況は良くないよ...うん、最悪だね。でもさ、だから何?そんなの分かってた事だよね?ここはトリニティが壊滅したダンジョンだよ。難しくて当然さ...まぁ、ちょっと鬼畜過ぎる気もするけどね。暗くなってしまう気持ちも分かるよ、けど!僕達は馬鹿をやりにきたんだ!これくらい笑い飛ばしてみせなよ!ねぇ、皆―――」
そう言葉を発したやまいこの両腕がゆっくりと上がっていく、そしてあるポーズを取っていく。ダブルバイセップスだ。そしてその右手の親指がピンと立つ。サムズアップを取るかの様に。
「心配しないでいいよ、ここには...”僕がいる”!」
キラリンと歯が光っていくかの様な姿をギルメン達が幻視していく。あっけに取られているギルメン達を他所に尚もやまいこの言葉は続いていく。
「ねぇ、建御雷さん、確か言ってたよね、十人十色だって。」
「は?あ、あぁ、言ったな。」
「ふふん、つまりは、この状況は、この場所は―――」
やまいこが獰猛な笑みを浮かべ、両手の指を鳴らし出す。
「―――僕の色にぴったりって事だよねぇ!!」
やまいこがその巨体を揺らしながら豪快に歩を進めていく、右手の握りこぶしを左手の掌に打ち付けながら。そして歩を進めていくやまいこの隣にある人物が瞬時に現れる。
「たらら~んっとな♪ようよう、やまいこ姫、腕の立つ忍びはいらねぇかい♪」
「ふふん、そうだね。”支援”は任せたよ。」
「あいさぁ~♪」
現れた弐式とその様な会話のやり取りをした後に豪快に歩を進め続ける―――そう、敵本陣まで。
建御雷は言った。ギルドにも色はあると。十人十色だと。
ギルド―――アインズ・ウール・ゴウン。その色は正に異色だろう。他のギルドには無い、アインズ・ウール・ゴウンだけの色だ。そして、そんなギルドに所属している者達もまた、まばらな色で溢れ返っている。
散りばめられた色達には一つとして同じ色は無い。合理と言う殻を破り、己が信念を突き抜けた者達の強烈な色が、異彩を放ちギルドを眩いばかりに照らしあげている。
ゆっくりとやまいこが歩を進め、敵本陣―――恐竜達を睨みつけていく。その手に付けるガントレットを手のひらに打ち付けながら。
―――【女教師怒りの鉄拳】を打ち付けながら―――
異彩を放つ色達の中には、当然この女も含まれて行く。攻撃力を捨て、生半可なタンクでは敵わない程の防御力を持つ
女教師怒りの鉄拳と言う、”ノックバック”に特化したガントレットを装備し、敵を悉く吹き飛ばしていく、アインズ・ウール・ゴウン最強の―――最凶の
その名も。
「アインズ・ウール・ゴウン41色が一つ―――」
―――やまいこ参る!!―――
最強の女教師が高らかに吠え、敵本陣迄駆け抜けていく。今始まる―――
―――やまいこ無双が。
「オラァァーーー!!」
やまいこの存在に気づいた恐竜―――アロサウルスがやまいこに噛みつこうとする。しかし、それはスルリと躱され、アロサウルスの顎に強烈なアッパーカットが叩きこまれていった。
アロサウルスが宙を舞っていく。そしてその着地点は―――無い。
吹き飛んで行ったのは崖の下、つまりはマグマの湖だ。
「オラァーーー!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーーー!!」
重戦車の様にやまいこが通路を洞窟深部まで駆け抜けていく。通路に配置されている恐竜達を全て吹き飛ばしながら。そして吹き飛ばされた恐竜達はその全てがマグマの湖に転落して行っている。
そして駆け抜けるやまいこに、吐き気を催す邪悪が強烈な悪意を持って現れた―――プルロヴィアだ。
しかし。
「たらら~んっとなぁ!”頭殺し”!」
地中から飛び出してきたプルロヴィアの額に弐式のクナイが炸裂していく。やまいこをスタンさせる暇もなくプルロヴィアが動きを止め―――
「無駄だよ!無駄無駄無駄ーーー!!」
―――強烈な右ストレートを空中で受けたプルロヴィアがマグマまで吹き飛んで行く。
吹き飛んだプルロヴィアの後方から複数のプルロヴィアが再度やまいこを襲っていくがその悉くが弐式に阻まれて行く。
そして。
「だからぁ!無駄だって言ってるだろぉ!無駄無駄無駄ーーー!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ーーー!!」
その言葉と共に全てのプルロヴィアが宙を舞っていく。そして、その勢いは止まる事は無い。後方に配置されてる恐竜達も全てがやまいこに吹き飛ばされていく。
そう、やまいこの言う様に全ては無駄なのだ。この場にやまいこが居た時点で、恐竜達の運命は既に決まっていた。
―――女教師と言う地上最強の生物が居た時点で―――
やまいこが駆け抜けていく、全てを吹き飛ばしながら。その姿は正に一騎掛けである。
その姿を後方から眺めていたギルメン達は後にこう語ったと言う。敵を吹き飛ばし続けるやまいこの背中が―――盛り上がった広背筋が。
―――鬼の顔に見えたと―――
♦
TEK洞窟深部―――道は更に狭まり、ギルメン達の数では既に左右にバラけるのは困難になってきていた。狭まった細道の両サイドでは、真っ赤なマグマの湖が奇怪な音を立てながら波打っているのが目に映る。そんな細道をアインズ・ウール・ゴウンのメンバー達は集団で進んで行っていた。
やまいこの活躍のお陰で被害は驚く程に少ない、全く無かった訳では無いが、現状メンバーは30人程は残っているであろう。急に空中から湧き出てきた蝙蝠の群れや、頭上から飛来してきた恐竜達に奇襲され苦戦したが、これだけの被害で抑えられているのは賞賛に値する物だと思われた。
ゆっくりと最大限の警戒をしながらギルメン達が更に深部まで進んで行っている。もうかなりの距離を潜ってきた。そろそろボスとはいかなくとも中ボスくらいは現れても可笑しくはなさそうである。そう思いながら皆が一様に緊張感を持って進んで行っているのであるが、現在進んでいる細道に到達した瞬間から、恐竜達の姿が急に見えなくなった。
嵐の前の静けさの様な不気味さを感じながら、アインズ・ウール・ゴウンのギルメン達と進みながら、モモンガが思考を巡らせていく。
(...いないな...急にどうした?さっきまではわんさかいた恐竜達が姿を消した。何かが起こる前触れか?ボス戦でも始まるのか?もしそうなら...不味いな。どれ程の強さかは分からないが、この細道でボス戦に入るのは非常に不味いぞ。)
そう思考を巡らせるモモンガの視線の先には燃え滾るマグマが映し出されて行く。ボスの強さは不明だが、間違いなく弱くはないであろう。これ程のダンジョンのボスなのだから。この細道で戦闘になれば間違いなく大惨事になるであろう。だがそれでも、モモンガの中には敗北の二文字は浮かんではこない。
その理由は、残ったギルメン達の数と節約出来たリソースにある。散っていったギルメン達は幸運―――幸運と言っていいかは分からないが、戦闘に特化した者達ばかりではない。つまりは主戦力は未だ温存中と言う事だ。そしてその人物達の悉くが強力なスキルなどを使用する事なくここまで進んで行って来れている。回復薬やスクロールなども節約出来ている以上、大抵の事ならどうにか出来るとモモンガは踏んでいるからだ。
全てはやまいこのお陰である。やまいこ様様だなと思いながらモモンガが警戒しながら深部まで進んで行っている。ギルド、アインズ・ウール・ゴウンは癖の強い連中の集まりだ、それは性格だけではなく、特化し過ぎたビルドにもある。合理的と言う言葉を度外視した強烈な癖がはまって行った時、ここまでの結果を生み出すのかと驚愕してしまう。
ゆっくりと警戒しながらギルメン達が奥に、更に奥にと進んでいく。その頼もしい姿にニヤケてしまいそうになったモモンガの頭の中に一つの疑問が浮かんできた。
(確かに、このダンジョンは途轍もない難易度だ。やまいこさんが居なかったら俺達もここまでの数は残ってはいないだろう。しかしそれでも、これくらいならやまいこさんが居なかったとしても、被害を出しながらも進んでいく事は可能だろう...一体なぜ、なぜトリニティは壊滅した...ユグドラシル最強の戦闘者集団がなぜ...?この先にその答えがあると言うのか?)
モモンガが深い思考の海に沈みこみながら歩を進めていく。そうして思考している最中に前方の集団の歩が止まっていく。何かあったのかとモモンガが思考の海から浮上し、ギルメン達が見つめる先を凝視していった。
巨大な青い靄が掛かった扉がそこには見えた。扉と言うが、最早これは門だろう。王城に続くかの様な巨大な門の周囲に青い靄が常時沸き上がり、その周囲には魔方陣の様な物が揺らめきながら、一刻一刻時を刻む様にして文字が変貌を遂げている。例えるならば超位魔法の魔方陣の様な物だろう。
その光景が意味する事は一つしかないと思えた。
これはボスへと続く入り口であり、ここが洞窟最深部への入り口であると。辺りからもモモンガと同じ様な考えに至ったのか、似たような言葉が飛び交いだす。気合を注入し、モモンガ達、アインズ・ウール・ゴウンの面々がその扉の先に向かう為に歩を進めだした。そして、扉に近づきだした瞬間、真っ黒い霧が前方に沸き上がり周囲を覆っていく。
ギルメン達に緊張が走る、即座に全員が臨戦態勢を整えていく中、沸き上がった霧が集まっていき、ある物体へと変貌を遂げていった。巨大な牙を覗かせた存在達がこちらを射抜くかのように睨みつけていく。
(これは...ティラノサウルス...いや、そんな大きさではない...一体。)
一瞬脳裏を過ってきたのは、モモンガがこの洞窟に侵入する前に出会った赤いオーラを纏った存在―――ティラノサウルスだ。しかし、その考えは即座に否定されて行く。それは目の前の存在の巨体だ。デカいのだ、余りにも、ティラノサウルスなどの比ではない。混乱するモモンガ達ギルメンの隣で、ある人物が大きな叫び声を上げていく。
その声は、恐怖で引きつっていた。
「ギ、ギガノトです!!み、皆さん!あれはギガノトサウルス、最強の肉食恐竜です!」
そう言葉を叫んだ存在、ヘロヘロが恐怖にたじろぎ後ろに下がっていく。この洞窟に侵入してから一度も取り乱す事の無かった、ダイナソーの反応にギルメン全員がこの洞窟に入ってから最大の警戒を取っていく。そしてその瞬間、最も近くに現れたギガノトが突進してき、ギルメンに攻撃を開始した。
「不味い!やまちゃん!”イージス”―――ぎゃ!」
「かぜっち!―――くっそ!オラァ!」
ギガノトの攻撃対象―――やまいこに攻撃が当たる前に、前方に割り込んできた茶釜の防御スキルが発動し、やまいこを庇う。攻撃を肩代わりした茶釜が宙を舞い吹き飛んで行き地面に衝突していった。マグマに落ちなかったのは幸運であったと言えるだろう。
その攻撃の隙を付き、やまいこがマグマに吹き飛ばすべくギガノトを殴りつけていく、がギガノトは吹き飛ばない、後方迄押し戻されて行ったが未だその両脚はしっかりと地面を踏みしめていた。
「茶釜さん!?だ、大丈夫ですか!?」
「うっそ!?なにこれ!?体中から出血してる!?これは...割合ダメージ!?ていうか、はっ!?嘘でしょ!?」
「かぜっち、どうしたの!?」
「噓でしょ!?イージスで防いだのに...三割持ってかれた!」
その言葉をギルメン全員が聞き、凍り付いていく。その言葉の意味が余りにも衝撃的であったからだ。
ぶくぶく茶釜―――アインズ・ウール・ゴウン最高の盾であり、最硬の盾。
防御に特化―――いや、特化しすぎる程に特化した、尖りまくったビルド構成をしており、その硬さから、最早不沈とあだ名がつく程だ。
そんな人物が、防御スキルを用いて、HPの三割を削られた。その上、出血による割合ダメージまで発生していると言う。衝撃で凍り付いていたギルメン達に新しい感情が沸き上がり、心を全て塗つぶさんと襲い掛かってくる。
恐怖と言う感情が。
恐怖に支配されつつあるギルメン達に、再度ギガノトの一体が突進してき襲い掛かってくる。
「”次元断層”!モモンガさん!対策を!今の内に情報を抜き取って下さい!」
ワールド・チャンピオンの極大の防御スキルが前方に炸裂していき、次元の狭間が現れ、ギガノトの攻撃を遮断していく。
その際に悲鳴に近い様な叫び声を上げながら、たっち・みーがモモンガに対し情報の収集を促していく。その言葉に我に返っていったモモンガがギガノトの情報を確認する為にある魔法を発動させていく。
―――【
ギガノトに限らず、恐竜達は皆、スタンなどの特殊な能力は持っているが、高いHPと攻撃力を持っていた。つまりは物理系である、魔法など一度も使用されてはいない事からもそれは確実であろう。まずはこのデカ物のHPから探っていく必要があるとモモンガが魔法を発動させ―――信じられない現実を突きつけられていく。
「...おい、嘘だろ...ふざけるな...ふざけるなぁーー!!」
「モモンガさん!?どうしたんですか!?」
半狂乱に落ちいっていったモモンガにたっちが言葉を投げ掛けていく。次元断層の効果も薄れてきている、たっちとて余裕はなく、焦りを含ませた怒号を発していった。そして、たっちの言葉に投げ返すように、全員に聞こえる様に、モモンガが罵声と共に大声で情報をギルメン達に伝えていく。
「くそがぁーーー!!コイツのHPは10万!10万です!レイドボスのざっと2倍ですよ!」
モモンガの放った言葉は余りにも無慈悲な現実であった。そのHPは驚愕の10万であり、その量はレイドボスのざっと2倍である。
この細道で、辺りには即死のマグマが波打ち、防御スキルを発動させた茶釜のHPを一撃で三割削り、尚且つ割合の継続ダメージまで含ませる、レイドボスの2倍のHPを誇る怪物。それが今、モモンガの―――ギルメン達の前に立ちふさがる。
―――三体のギガノトサウルスが―――
そして、次元断層の効果が切れていく。極大のスキルの発動により、後方に陣取っていた残り二体のギガノトもヘイトをこちらに向けたのか猛スピードで突進してくる。
ギガノトが向かってくる。敵を食い殺す為に。ギガノトが向かってくる。弱者の命を奪う為に。ギガノトは暴れ狂う。暴竜が暴れ出す。
蹂躙が始まる。
「ちくしょうがぁ!!”
その叫びを聞いたギルメン達―――魔法詠唱者達が次々と属性魔法を発動させていく、雨あられと降り注ぐ属性魔法の中を、まるで小雨でも受けるかのようにギガノトが暴れ回っている。この行動が意味する事は属性での弱点は無いと言う事なのだろう。
そして、暴れまわっていたギガノトが急に方向転換を始め出す。その奇怪な行動にモモンガが困惑を込めた視線を向ける。ギガノトが向かった先には何もいない、何も見えないのだ、そして急に立ち止まったギガノトが、何もない空中を噛みついていく。その瞬間、血しぶきと共にタブラが姿を表し、そして消滅していった。
タブラは完全不可視化でギガノトまで近づき、一打を食らわせようとしていたのだろう。しかし、それは叶わなかった。そして、この結果が意味する事は、ギガノトには不可視化などの隠蔽系統の魔法やスキルは通用しないと言う事だ。存在を気づかれたタブラがギガノトに嚙み殺されていった。それも一撃でだ。それも当然と言えるだろう、茶釜ですら歯が立たない攻撃力だ、ひ弱な魔法詠唱者が耐えられる筈もないのだから。
意味を理解し終えたモモンガの周囲から悲鳴が沸き上がっていく。暴れまわるギガノトと食い殺されて行くギルメン達。そしてその際にも更なる衝撃がモモンガを襲う。食い殺されているギルメン達―――主に魔法詠唱者達は、一時的に物理無効などのバフを掛けて攻撃に転じているのだ、しかし、その魔法の効果がまるでない物かの様に、皆が一撃で葬られて行く。
その理由を考えて行った時、モモンガの中で怖気が走っていく。恐らく、このギガノトと言う恐竜はバフやスキルなどを無効化している。つまりは防御貫通の攻撃―――特殊能力を備えている。茶釜のHPと味方のHPの減り方を見るに、完全貫通とはいかないかもしれないが、それでも、バフやスキルは貫通していると思えた。
こんな事があっていいのかとモモンガは思う。そして、最初にウルベルトにこの話を持ち掛けられた時に脳裏に過った言葉が鮮明にフラッシュバックしてくる。
―――攻略させる気など初めから無いように思えた―――
(こんなのはあんまりだ...カンストプレイヤーを一撃で葬り去る、レイドボスの2倍のHPを誇る敵...しかも絡め手も通用しない、弱点属性もない、それが三体だと...何か、何か突破口はある筈だ...!!あれは!?)
モモンガの視線の先には巨大な門が見えてくる。そして、そこに向かって猛スピードで突き進む二人のギルメンの姿―――フラット・フットとぬーぼーの姿が。
(そういう事か!このギガノトは倒す事を想定して配置されていない!余りにも衝撃が強かったから忘れていた!先に続く道はあるんだ!この猛撃を搔い潜り、扉の先まで進む!それが突破口だったのか!)
強烈なインパクトを与えてきたギガノトに、ギルメン達の思考は戦う事に向いてしまっている。それこそが運営の狙いであり、そこに気づいていく事がこの戦いでの正解であったのだ。この状況下の中でそこに思い至った二人にモモンガが感激していき、二人の行動を見守っていく。
「着いたな!いくぜ!ぬーぼー!」
「おうよ、フラット―――はっ!?なん...だと...。」
見守っていたモモンガの視線の先では驚愕の光景が広がっていた。必死に扉を開けようとする二人と、開かない扉が目に入ってくる。そして、二人に気づいたギガノトの一体が二人に向けて凄まじい速度で迫っていく。
「二人共!後ろです!」
「ちっくしょぉぉぉーーー!!開かねぇぇぇーーー!!ぎゃぁーーー!!」
「フラットーーー!!がぁぁーーー!!」
ギガノトに噛みつかれ、二人が宙を舞い、そして消滅していく。二人の導き出した答えは不正解であった。正解はやはり、この化け物共を葬るほかないのであろう。
二人が食い殺される様を見つめながら、ギガノト討伐がこの先に進む条件であるとモモンガが再認識していく。それと同時にある事が脳裏に過った、ある確信が生まれてる。
トリニティはここで壊滅したのだろう、暴竜に食い殺され、成すすべもなく壊滅していった。そして心を―――牙を折られた。戦う為の牙を。
絶望に沈んで行くモモンガの目の前では、暴れまわるギガノトサウルスが見えてくる。諦めが脳裏を過ろうとしたその時、モモンガの隣から、喉が張り裂けんばかりの罵声を浴びせていくウルベルトの声が耳に届いてきた。
「ざけんなよぉーーー!糞運営!何だこれは!何なんだこれは!何だこの有様は!攻略出来ないダンジョンに何の意味がある!クリア出来ないゲームに何の意味が有るってんだ!!クソゲー作ってんじゃねぇぞぉぉーーー!!」
その言葉にはモモンガも同意だ。このダンジョンはクリア出来る様には制作されていない。運営の思惑がどうかは分からないが、少なくともそう思わせられるだけの光景が目の前には広がっているからだ。諦めがモモンガを包み込みだす。
そんな中、一つ頭に引っかかる物が在った。
運営の思惑と言う言葉。運営は一体何を思ってこんな物を制作した。運営は一体何を自分達に求めているのか。
(運営が求める物...俺達プレイヤーに?それは...未知か?)
今も昔も、運営の言う事は変わらない。未知への探求であり恐れず知ろうとする心。再度モモンガが辺りを見渡す。そこには変わらず暴れまわるギガノトと成すすべなく食い殺されて行く仲間達の姿がある。眼前に広がる、自分達が未だ経験した事の無い未知が広がっていた。
目の前の未知を打破する方法―――ARKと言う未知を打破する方法。
それは。
(未知には未知を...何物にも囚われず、自分だけが培い、見つけ、信じてきた未知。合理の外にある...俺だけの未知。)
それは、未知には、未知をぶつける事。
ARKと言う未知を打破する―――ユグドラシルと言う未知。
(あぁ、そうだな。それは...俺にしか出来ない事だな。)
沈んでいたモモンガの心に火が灯っていく。諦めるのはまだ早いだろう、まだ自分達は全てを出し終えてはいないのだから。
「たっちさん、時間を稼いで下さい。切り札を切ります。」
「~~~――モモンガさん!この先は恐らくボス戦です!ここで切り札を切る訳には、効くかどうかも分からないんですよ!」
「それでも!ここで使わなければどの道全滅です!この先の事など考えてはいられない!今を切り抜けられなければその先などないでしょう!!」
たっちの言葉に対しモモンガがそう言い放つ。しばらく二人が睨み合い続け―――たっちが折れていく。
「ふぅ、そうですね、モモンガさん。確かに、このままでは全滅は免れないでしょう、モモンガさん―――いや、ギルマス、カッコよくキメてくれよ!」
「えぇ、最高の一撃をキメてやりますよ。」
「ふ...皆聞けぇぇぇーーー!!今からモモンガさんが切り札を切る!総員!モモンガさんを守れぇぇぇーーー!!」
たっちの叫び声の後に、ギルメン全員から了解の意が聞こえてくる。そこには先程までの暗い雰囲気は無い。我らがギルマスが切り札を切ると言うのだ。それを全力で守る事が出来る、これで滾らなければアインズ・ウール・ゴウンではないであろう。
「へへへ、聞いたかよ、音改。やっと俺らの出番が来たみたいだぜ♪」
「おうよぉ!あまのまさん!特攻するぜぇ!!」
「おっとぉー!そこの二人、俺も混ぜて貰おうか♪」
「おっ♪メコン川、お前さんも行くかい♪そんじゃあ、派手に行こうかねぇ!!」
「おうよぉーーー!!モモンガさんを―――」
「「「
辺りから沸き上がる強烈な歓声。皆が一様に心を一つにしモモンガを守るべく立ち上がっている。
その光景をモモンガが見つめていく、あぁ、本当に最高の仲間達だと。そして本日二度目だなと仲間馬鹿な自分に対し心の中で言い放った。
そしてその後に、一つのスキルを発動させていく。モモンガの背から自分の体程の大きさの時計が姿を表す。その時計には十二の時を示す数字が刻まれている。その時を刻むかの様に、針が動き出した。
針は時を刻みだす。死へのカウントダウンを。
長いとモモンガは思う。このスキルを使用してこれ程長いと感じた事は恐らくないであろう。モモンガの視線の先では、仲間達がモモンガを守る為に暴竜に立ち向かっていく様が映し出されている。音改が、あまのまが、メコン川が、まるで紙切れの様に暴竜に食いちぎられて行く。その光景を見つめながら、モモンガが一つの魔法を唱えていった。
モモンガ―――アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターにして、エクリプスと言うクラスに就く人物だ。そのエクリプスは、死霊系統のクラスと種族に特化させなければ就く事が出来ない、いわば隠しクラスの様な物である。
幾多の合理を蹴飛ばし、自らの信念のみを貫いてきたモモンガだからこそ、到達できた場所であり強さ。死と言う概念を司り、全ての生ある者達に久遠の絶望と安らぎを齎す力である。
未知を探求した者が―――未知を探求したモモンガだからこそ得る事が出来た力が今発動していく。
「これで無理なら!運営は本当に糞だぞ!
”
”
その瞬間、辺り一面に女の絶叫が木霊していく。
だが、何も起きない、それだけだ。今はまだ。
そして、その後―――針は時を刻み終えた。
―――
―――発動―――
恐れ慄け、ギガノトサウルスよ。
奪ってきた命の罪を、蹂躙による快楽の罪を。
―――死の支配者に―――
―――モモンガと言う未知に―――
―――死で持って償え、暴竜よ―――
♦
モモンガがスキルを発動させたその瞬間―――世界が死ぬ。
暴れ狂う暴竜の肉体が死に、端端から千切れて消えていく。抗う事が出来ない死に飲まれて行っている。そんな中、勝利を確信したモモンガと、残った僅かなギルメン達がギガノトの最後を見つめ続けている。
しかし、生命機能を停止させるその寸前に、最後のあがきと言わんばかりに、一体のギガノトが崩れ去る体を動かしながらある人物に突進していく。
「―――やまいこさん!」
「―――やまちゃん!!」
「―――!!」
ギガノトが、やまいこまで迫る。これは単にやまいこが一番近くに居たからであろう。そして、気づいた時にはもう遅い、ギガノトは既に目と鼻の先まで迫っていた。
勝利を確信したが故の油断。致命的なミスにやまいこは微笑を零していく。
(ははは、あ~あ、油断したなぁ。今の僕のHPじゃあ耐えれないなぁ。後一歩だったんだろうけど、仕方ないね。もっと馬鹿したかったけど、まぁ、役目は果たせたかな。)
お先に失礼するよ。とやまいこが心の中で残りのメンバーに挨拶をしている最中、やまいこがある人物に突き飛ばされていく。
「―――朱雀さん!?」
「駄目だよ、やまいこくん、まだ君の役目はおわ―――」
「~~~――朱雀さん!!」
死獣天朱雀が言葉を言い終わる前にギガノトに食い殺され、消滅していく。その後食い殺したギガノトも即死魔法の効果で事切れていった。その後消滅のエフェクトが発生しギガノトが完全に目の前から消え去っていった。
暴竜との戦いは終結した。勝ったのは、モモンガ達、アインズ・ウール・ゴウンだ。
しかし。
「朱雀さん...嘘...僕の所為で...。」
「やまいこさん―――!!これは!?」
たっちがやまいこの元まで駆け寄り、慰めの言葉を掛けようとした時、門の周りを覆っていた魔方陣が発光しだし甲高い音と共に消滅していく。続いて沸き上がっていた青い靄も消え去り。剥き出しの門が聳え立っていた。
「モモンガさん、やはりギガノトを倒す事がこの先へ進む為の条件でしたね。」
「そうですね、たっちさん。しかし、とんでも無い奴配置してくれましたね。糞運営。実際のコラボ元のゲームもコイツが配置されていたんだろうか?」
「いやぁ、流石にそれは無いでしょう。ユグドラシルの糞運営だからこそ配置したのだと思いますよ。」
勝利への高揚感から軽い談笑を二人が続けていく。その後モモンガが周囲を見渡す。残ったギルメンの確認の為に。
「これだけか...糞、もっと早く切り札を切っていれば...。」
「それは言っても栓なき事です、モモンガさん。道は切り開かれました...恐らく、この先はボス戦でしょう。」
たっちの言葉にモモンガが頷いていく。あれ程の恐竜が守っていた門の先である。まず間違いなく、この先はボス戦であろう。そう思い、モモンガが再度残りのメンバーを見渡していった。
やまいこ、茶釜、ウルベルト、たっち、弐式、建御雷―――そして自分、モモンガ。
たった七人である。しかし、このメンツは間違いなくアインズ・ウール・ゴウン最強の布陣である。そのメンツが残っている事は幸運だと思わなければならないのだが。
先程のギガノトの衝撃がぶり返してくる。あれ以上であるならば、間違いなくこのメンツでも勝利は無いだろう。
思案を続けるモモンガにたっちが言葉を掛けていく。恐らくは考えを見抜かれているのであろう。あれ程の激戦の後である、皆同じ気持ちだろうから。
「モモンガさん、立ち止まっていても始まりません。皆の犠牲を無駄にしない為にも、この先のボス戦、勝ってナザリックに帰還しましょう。」
「...えぇ、そうですね。たっちさんの言う通りです。それでは皆さん、先に進むとしましょう。恐らくゴールは目の前でしょうから。」
その言葉を聞き、全員が頷いていく、そして各々が歩を進めだす。
門の先まで。
♦
The・Islandの火山の頂上、洞窟侵入の際に集った場所に大勢の異業種達の姿が溢れ返っていた。
そしてその異業種達が、一様に談笑にふけっている。
「マジかよぉ~、やばいねその化け物!俺入んなくて良かったかも、アイテム残ってるし。」
「ペロちゃんよぉ☆ずっりぃって☆俺なんてあれだよ?無理やり連れてかれて速攻マグマにドボンだぴょん☆」
「しかし、ここがリスポーン地点だったとはな、と言っても、攻略中は中には入れんみたいだな。まぁ、アイテムもねぇし、入った所でなんの役にも立たないが。」
「全ロスは鬼畜すぎでしょ、装備まで全部だぜ?やばいってここ。」
「なぜか、LVダウンはしないけどな、いや、まぁ、アイテム全ロス食らうくらいならデスペナのが遥かにマシだがな。」
皆がこのダンジョンの鬼畜っぷりを話し合いながら、攻略中のモモンガ達を待ち続けている。勝利の凱旋を期待しながら。
「ん?やぁ、朱雀さん、惜しかったらしいね。」
「あぁ、タブラくん、いやはや、最後にやられちゃったよ、面目ないねぇ。」
タブラと朱雀がそう談笑にふけり出す。ギガノトと言う脅威を目の当たりにした二人から口々に先程の激戦を語り出す。そして信じて待つのだ、ギルマス達の勝利の凱旋を。
(やまいこくん、君の役目はまだ終わってはいないよ、あれ程の恐竜が配置され、守られていた場所だ。まず間違いなく、その先はボス戦だろう。そうなれば、君と言う存在が居なければ勝算は皆無だろう。あそこで消えるべきは、誰が考えても私だった。気を病む必要はないんだ...思いっきり暴れておいで、思いっきり―――)
―――馬鹿しておいで―――
アインズ・ウール・ゴウン TEK洞窟最深部到達
残メンバー 40→7
モモンガ・たっち・みー・やまいこ・ぶくぶく茶釜
弐式炎雷・武人建御雷・ウルベルト・アレイン・オードル
究極の生存者まで、あと少し。
ASAしてぇ…。
特にアベレーション…。
死にまくりてぇ…。
しかし、ARKを始めれば、SSを間違いなく書かなくなると言うジレンマ…。
困ったもんだ…えぇ…?ARKさんよぉ…おもしろすぎんじゃお前は…。
どうもちひろです。
今回のお話はARKを知ってる方も
オバロを知ってる方も
少し気になる点があったかな?
と思い、お話と言う名の
”先手を取った言い訳”をさせて頂きます。
(いつもの手口)
・ギガノトの悪あがき
はい、これですね。謝ります。許して下さい。
これはただ単に演出です。お話のですね。
実際どうなるかは分かりませんが、即死魔法を放って
いる以上、暴れる暇もなく死ぬとはちひろも思います。
瞬殺しても良かったのですが、味気なかったので
この様な形になりました。
・道中の恐竜達
はい、これもARK好き、それもTEK洞窟攻略
サバイバーの方達なら
ティラノは?ユウティラは?
となるのでは?と思います。
その辺まで出してしまうと中々お話が
難しくなってくるので、止む無く消えて
貰いました。ちひろが雑魚なのです。
ごめんなさい。
・魔方陣に封印されていた巨大門
いや、これなにwwwってなりましたか?
実際のTEK洞窟にはこのような物はなく
ギガノトを無視して通り抜けれますが
これはユグドラシルとARKのコラボ
ファンタジー感を出したついでに
とんでもない鬼畜使用へと変貌しました。
・都合の良い生存メンバー
フヒ。だって、このメンバーじゃないと無理
じゃないですか?無理ですよ、絶対。
なので、都合よく最強メンバーです。
怒られたら謝ります。
・空中タブラ
飛行できないんでしょ?これは飛行していません。
転移で空中に浮かんだ瞬間です。
まぁ、その辺ももう少し描写すれば良かったかな
と思いましたが、ここで話せば良いと思い
そのままにしました。
結構頻繁に転移で空中を駆け巡っていました。
そして見つかりガブリです。
・木偶の棒モモンガ
モモンガさん、どうしたんですか
まるで木偶の棒の様に…
(このネタ分かるかな?)
モモンガさんはあの場面の解説役
見たいな感じでしたので…
一応はジッとはしてなかったとは
思います。それなりに回避行動は
取りつつ、現状の解説に励んでました。
・テリジノが最強の草食恐竜
ティタノじゃないの?
ライオンと核弾頭は比べられません。
そういう事です。
最後に、ここまで読んでくれて
ありがとうございます。
長かったでしょ?本当にお疲れ様です。
次の話でこの短編も終了します。
次話は、後半も後半で止まってまして…。
どこかで時間を見つけて完成させたいなと思ってます。
最後までお付き合い頂けたらなと思いますね。
それでは!シュバ!