吸血鬼さんはヤバい仕事をしているようです(仮)   作:輪廻の主

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序章の序章。

お試しで書いてみた部分。


開演は未だ遠く、されとて希望せよ

―――――かつて世界が滅びに瀕した戦争は二度起きた。

 

―――――一度目は人間同士の戦争だ。多くが死んだ。貧しい者も富める者も、奴隷も平民も貴族も王族も、老いも若きも、男も女も。みな平等に死んだ。

 

―――――それを悲しんだ世界の創造主であり神々の王であるカデリア神は考えた。どうすれば人は争いを止めるだろうか。

 

―――――何日も考えた。それをみた死と暗黒の支配者たるマデルはカデリア神にこう提案した。

 

―――――『人が団結しなければならない試練を与えよう。』

 

―――――カデリア神はその提案に乗った。彼はマデルと共に計画を練り始めた。人間が一致団結しなければならない悪を、自分たちを明確に滅ぼさんとする怪物を、❝人類の心が1つにならなければ倒せない❞存在を――――

 

「作り上げて地上に解き放ちました。それ今日で何回目?」

 

ベッドに横たわる少年の声にそれまで本を読んでいた女性は顔を上げた。

 

「神話は嫌い?前はあんなにも喜んで居たじゃありませんか」

 

女性は本を閉じてベッドに腰掛ける。細く色白な手で少年を優しく撫でながら微笑みかける。

 

撫でられた少年もまた笑みを浮かべる。

 

「前っていつの話?僕もう子供じゃないよ。父上はまだ帰ってこないの?」

 

「……カイン。もう少し、もう少しだけ待ちなさい。お父様なら大丈夫。きっと悪い人間達を倒して帰ってくるわ。賢い貴方なら分かるわよね?」

 

「………うん。わかったよ。母様」

 

カインが頷いたのを見て母は安堵する。手に持っていた本をカインに渡し、代わりに蝋燭台を手に持った。

 

「読書は程々にね。早く寝るのよ。明日にはきっと帰ってくるわ。お休みなさい、愛してるわ」

 

「僕も愛してる」

 

母はカインの頭へ軽くキスをする。そのまま女性は部屋を後にした。

 

カインは渡された本をじっと眺める。かつてあったとされる神話をもとにしたもの。神々の王であるカデリア神による世界創造から死と暗黒の支配者であるマデルとの決別、果てなき闘争までを描いた物。誰でも一度は読んだことがありそうなものだ。少年は本を抱えて目を閉じる。

 

夢を見る。夢は様々なことを教えてくれる。近い出来事から遠い出来事まで。その日見た夢は、どんなに時が経っても忘れられそうにない。

 

―――王都が燃える。灰となり崩れ去る。地面には無数の亡骸。友達、使用人、家族………その中心に立っているのは………

 

『ぼく?』

 

―――自分に似ているが、少しだけ大人びている。成長した後だろうか。彼は血の涙を流しながら天に向かって吠えている。

 

―――どうしようもない怒りを、憎しみを、悲しみを、愛情を………側には一人の女性が立っていた。

 

―――その美貌は大陸一と称され、どんな金銀財宝も彼女の美しさには敵わない。誰よりも強く美しく、そして誰よりも危険な女性。

 

『姉上……?』

 

カインの声に反応したのか姉はカインの方を見る。黄金のような金髪に美しい朱色の瞳。その瞳に見られると、昔から言葉にできぬ恐ろしさがある。彼女はカインを真っ直ぐ見つめ口を開いた。

 

『迎えに行くわ。待っていて』

 

その言葉と共にカインの意識は暗い闇の底へと落ちていった。

 

 

 

 

 

――――開演の時は近い。

 

 

 

 

 

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