『力無き少女のプレリュード』   作:とまとの水煮缶

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0話・カプリス

『力無き少女のプレリュード』

 

 

 

 

 

 

 

 -0話・カプリス-

 

 この世の中には、十人十色と言うように色々な人が存在する。

 

 これは、どんな能力であろうと。

 これは、どんな才能であろうと。

 これは、どんな性格であろうと。

 

 このようなモノは努力で変わるのだろうか。ただ、ただ。それを証明するために努力をしたことには変わりはない。

 

 ──────―

 

 

 台所で作り終わった紅茶が入ったティーカップを手に取り、辺りを見渡す。窓際に飾ってある何時も騒がしい植物たちも、日が昇っていないと静かになりぐっすりと眠っている。そんな中、この静かな空間にいつも通りに灯りを灯し、沢山の本を開いている人の姿。本の開く音と、羽ペンの書いている音。この空間はとても澄んでいた。

 

 ウトウトとしながら。時にはハッと目を覚まし、持っている羽ペンを走らせる。そんな‘‘あなた‘‘に、ゆっくりと話しかける。

 

「昔から伝わるこんな言葉があります。

『甘い果実は努力の証』。

 そう。魔法が操れる人、剣を扱える人、はたまた普通の人でも。誰でも努力すれば必ず実る。この言葉は誰にでも通ずる。そう、それは私もそうでした」

 

 この煉瓦色に染まっている街の昼間はいつも賑わい、沢山の人が往来し話し声が絶えない。この家にも訪ねてくる人は少なくはないが、皆仲良く元気な人たちばかりだ。話しているととても楽しい。この街を照らしていた太陽が傾き、空がだんだん闇に包まれてゆく。そして次々に星々が顔を出し、その星々が何かを連れてきたかのように段々と街の灯りが消えていき、また今日も静かな夜が姿を現す。

 

 この街外れにあるこの家は、街の煉瓦の造りの家と違い美しい艶のある木材で出来た一見変わった家だ。外見は一見小さそうに見えるが、中はとても広い。窓には沢山の魔法植物。大きいものから小さいもの、そして珍しいものも。そしてなんといってもこの数えきれない膨大な本の量。どこかの図書館じゃないのかと疑うぐらい多い。本の種類は多種多様、大小さまざま。開くと喋る本もあれば、文字が動く本もある。古代の文字っぽいような本や、何も書いていない本まで。

 

 そんな家の窓に、雲に隠されていた月が姿を現し青白い光を解き放つ。植物たちに月光が当たると、眩しそうに反対【そっぽ】を向く。あまり月明かりが好きじゃないのは昔からそうだ。

 

「ほら、■■も諦めなければ絶対にできますよ」

 

 長い髪の色は濃い紺の色。翡翠のような翠の目を持つ彼女、シーナはそう言いながら微笑んできた。

 そんな彼女に月明かりが差し込む窓の隙間から夜の風が吹きこぼれ、さらさらと紺の髪が靡いている。髪に結わいている蒼いリボンは、少しばかりくすんでいる。

 

 そんなこんなしているうちに、もうこんな時間に。

 

「はい。今日はここで終わりです。お疲れさまでした。明日は剣術の練習です。練習に遅れないように」

 

 そろそろ私も自室に戻ろうと思っていたその時、眠い目を擦りながら勉強家さんが小さな声で問いかけてくる。

 

「師匠は、何故そんなに綺麗な魔法が使えるのですか? 何故そんなに綺麗な剣術を使えるのですか?」

「こんなに沢山の努力をして、意味はあるのでしょうか? 才能はあるのでしょうか?」

 

 昔の私と同じことを悩んでいる。

「もう、こういう時期なのですね」

 

 シーナは紅茶を飲み終わり、ティーカップをふわりと宙に浮かせ、慣れた手つきで青い小皿の上に静かに置く。ゆっくりと椅子に腰かけ、机の横にあるずらりと並んだ本棚を美しい魔方陣で端っこから順々に照らしていく。その中で本棚の端にある分厚い本の間に挟まれたボロボロの埃が被った本を取り出し、シーナの手元に運ばれていった。

 

 ボロボロの一冊の本。その本は、魔方陣による鍵がかかっていて如何にも重要そうなものだった。

 

「自分が作った割には、結構厳重な鍵ですね」

 

 昔の自分は何をこんなにも隠したかったのか。そんな疑問を浮かべつつ着々と魔法をを解いていく。その鍵が開け終わると同時に本の表紙が鍵穴に姿形を変え、

 シーナは自分のポケットから小さな鍵を取り出し、ゆっくりとその本に差し込んだ。

 

 開かれた本をゆっくりと捲りながら、所々シーナはくすくすと笑う。

 

「懐かしいです。こんなこともありましたね」

 

 昔の私。人一倍以上努力をしていた。姉様にそしてあの家族に認められるために。当時の私は魔法も剣術も今とは比べ物にならないぐらいできなかった。

 

 これが努力。これがその証。

 

 強くなってほしいために。いつか私を超えてもらうために。いい加減、腹を括って話さないといけない。

 

 何故、弟子にしたのか。

 何故、強くしなければいけないのか。

 

 全てはアイツの悪事を裁くため。終わらせるため。

 

「今日は特別です。■■にもこの話をしておきましょう」

「ただし、朝の剣術の特訓は変えません。くれぐれも遅れないように」

 

 ──────―

 

 私の過去の記憶。今となっては懐かしき記憶。そんな過去を話す物語。

 

 ーこれは小さな女の子が奏でた前奏曲(プレリュード)。ー

 

 最初の音はドの音から始まるのか。はたまた別の音から始まるのか。

 この曲は長いのか。はたまた短いのか。

 

 星々が煌めく静かな夜、この夜想曲(ノクターン)を奏で始める。

 




改めまして、とまとの水煮缶と申します。
今回初めて「ハーメルン」に小説を投稿させていただきました。
この物語は二年前、自分の妄想全開に働かせて土台は作っていたのですが、いかんせん主人公の姿が思い浮かばなく、どうしても行き詰ってしまいこの「0話」を書いたところで挫折してしまいました。
しかしつい先日、自分のiPadのメモにあった黒歴史を発見してしまったのです。
....見つけてしまったのです。これが。
読み直してみると、まぁ酷いこと。そんな物語だったのですが、最近にTRPGというものを始めたきっかけで、改めてこの小説の改良、そして続きを書こうと決心し、投稿まで至りました。
まだまだ小説の書き方、表現の仕方など至らぬ点が多くありますが、暖かい目で見守っていただけると幸いです。
――――
さて、0話を読んでいただいただけではこの世界がどのような世界なのかはまだ表現していません。(これのせいでタグ設定に悩まされていました)
今回の0話に登場する■■という人物がいるのですが、この子は読者皆さんだと考えています。そのため、弟子であるこの子が少ししか会話をしなかった訳ですね。

さて、ここからシーナがどのような過去を辿ってきたのか、楽しみにしていただけると幸いです。
では、頑張って1話を書いてきます。
このような物語に出会い、そして読んでいただけたのは自分にとって、とても嬉しいです。
これから、よろしくお願いいたします。

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