女神たちのために 作:まるでダメな作者
ここまでの幾度かの小規模な戦闘を経て、ラピとアニスの二人について分かってきたと思う。……合流地点を二人だけで守っていたところから察せられたが、二人はかなりの場数を踏んでいるのだろう。連携はかなりのレベルのものだし、互いを信頼しているのが見て取れる。
俺が新人指揮官ということは受け入れたのか諦めて割り切ったのか、どちらにしても指示を出せば正確に動いてくれている。おかげで即席の部隊にしてはかなりやりやすい。このままの状態を維持していけば大きな問題が起こる可能性は低いだろう。
そう、二人には何の問題も無い。問題を抱えているの
「指揮官、どうかしましたか?」
「いや、これからのことを考えていただけだ。……マリアンこそあれから調子はどうだ?」
「私も大丈夫ですよ」
……輸送機が墜ちた状況から考えると、マリアンが墜落に関わっている可能性はかなり高い。何も知らされないままに特定のコードを入力するように指示されていただけなのか、マリアン自身も黒幕の一派として行動しているのか。ニケが意図的に人間に危害を加えることが出来ない―少なくとも表向きは―以上は後者とは考えにくい。
となれば、重要なのは俺がどういう対応をとるかになるが―
「前方にハイクラスエネルギーの反応アリ!ロード級のラプチャーと推測されます!」
「ロード級か、楽な相手ではないな。ラピ、ロード級と交戦の経験は?」
「私たちは何度か交戦したことがありますが」
ロード級についての知識は士官学校時代に資料で確認した限りだが、これまで相手をしてきた小・中型と比較すると大きな戦闘能力を持っている。今のこちらの戦力で相手をするには楽な相手とは言えない。
「指揮官、一時退却を提案します」
「ですが、それでは行方不明のニケは……」
「見捨てるしかないよね。元々、捜索作戦なんて形だけなんだから、あなたもわかってるでしょ」
「……」
それはもはや周知の事実となっていることだった。中央政府軍に残っている過去に実施された捜索作戦の作戦報告のほぼ全てに
”どうせ死んでいるのニケのことを気にする必要があるのか?所詮ニケじゃないか”という認識の指揮官がほとんどを占める中で大真面目に消息不明の部隊を探そうとするのは余程の変人と言えるだろう。
そして、この男は戦場で戦う
「行方不明のやつらを見捨てる気は無い。オペレーター、ロード級との接敵まではどれくらいだ?」
『移動速度とこちらとの距離から推測すると、およそ5分ほどで接敵しますが本当に戦うんですか?全滅する可能性は25%近いんですよ?!』
「当然だ、追加の反応があれば教えてくれ」
「……ホントにいいの?私たちは頭さえ持って帰れれば死なないけど、指揮官様はそういう訳にはいかないでしょ。死んじゃうかもしれないのよ?」
「軍人として覚悟はとっくに出来ている。……それに、仲間を見捨てて逃げるくらいなら戦って死ぬ方がマシだ」
「大丈夫です、指揮官。貴方は私が必ずお守りします」
そう言って、マリアンは真っ直ぐな目で俺を見ていた。
「もうすぐ接敵が予想される時間だ。全員、準備はいいな」
返事は聞こえないが、全員がハンドシグナルで準備が出来ていることを伝えてくる。
「……来たぞ!ラピ、アニス、火力をロード級に集中させろ!マリアンは寄ってきている小型の処理だ!」
さっきまでの静けさから一転、辺りに銃声と榴弾の爆発音、そして攻撃するラプチャーの特有の駆動音が響く。
「アニス狙われてるぞ!マリアン、カバーしろ!」
ラプチャーの苛烈な攻撃にさすがに不安を感じてくるが、それを表に出す訳にはいかない。努めて冷静な声色になるように意識しつつ3人に指示を出すことで、ラプチャーの残骸を作り出していく。
「オペレーター、付近の反応はどうなってる?」
『現在交戦中のラプチャー以外に付近に反応は見受けられません!』
「マリアン、ロード級を攻撃しろ!ラピはミサイルを使え!アニス、ロード級の取り巻きを吹っ飛ばしてやれ!!」
……そして、ラピが撃ちこんだ何度目かのミサイルが決定打になり、ロード級が爆散したのを最後に再び辺りには静けさが戻った。
「戦闘終了だ。全員被害を報告してくれ」
「損傷無し、残弾にも問題ありません」
「同じく」
「左鎖骨フレーム、右眼レンズ等に損傷有り、損傷率17.05%。ですが、作戦の継続には支障ありません」
「マリアン。本当に大丈夫か?」
「はい、それにもうすぐなんですから……あの、指揮官、また包帯を巻いてくださいますか?」
近づいてマリアンに包帯を巻きながら、さっきの戦闘を思い返すがマリアンの動きはどこか固さがあるような気がした。今更気負うようなこともないだろうに。
そんな俺の心境とは対照的にマリアンの浮かべる笑顔は曇りのない晴れやかなものだった。
戦闘描写って難しい……。