2年連続でトレーナー試験に落ちた男とトウカイテイオーの話 作:キンニャモニャ
記者は乙名史さんじゃないです。
ウマ娘Aとの談話
……
なるほど。やはり持ち前の器用さがあったということですね。
「まあ、テイオーも常に安定していたわけじゃないですけどねー」
と言いますと?
「デビュー前から注目されて、それに相応しい実績を積み上げてきたテイオーですけど、入学してすぐに調子を崩したんですよ。走り方を無理やり変えたって言うのかな。それまでの走りを止めて、手探り状態になったんですよね。そのときは他の子が心配になるくらいにスランプに陥ってましたよ」
スランプですか。そういえば、トウカイテイオーは入学当初にすごい天才が来たと噂されていましたが、デビューが近くなるまで話題に挙がりませんでしたね。
「ですねー。入学当初は授業でも圧倒的な力を見せていたんですけど、そのスランプに陥ってからは変わりました。全く勝てなくなって、テイオーに前みたいな走りに戻した方が良いってアドバイスする子もいたんです。でもテイオーは頑なに走り方を変えることに、こだわりました。だからスランプは長かったです」
デビューまでの1年近くもスランプだったということですか? 中学1年生のトウカイテイオーには堪えたでしょうね。
「いやー、他のウマ娘たちから見たら、そんな感じに見えたんでしょうね。でも友だちとして間近で見ていると、本人はそこまで追いつめられてる様子はなかったですよ」
というと、スランプとは感じていなかった? それとも楽観的になんとかなると思っていた?
「なんていうか、予想通りの結果と受け入れてる感じ、ですかね? 負け続けて悔しがるんですけど、次の日まで持ち越さない。それはそれとして、しっかりと現実を受け入れている感じですね。決定的に折れかけることもなかったと思います」
予想通り……とすると、フォーム矯正に対するリスクをしっかり理解して受け止めていた、ということですか。
「たぶん、ですけどね」
さすがは天才ですね。
「その後はご存知のとおりですよ。走り方を見事にものにして、無敵のテイオー様の誕生です。抜群の安定感を持つ基本的なフォームで序盤中盤と高速展開を繰り広げつつ、最後の直線でテイオーステップ――入学当初の時のフォームに切り替えて、前を走るウマ娘を一気に撫で切る。まさにキラッキラのウマ娘」
ラストスパートのテイオーステップは負担が大きいと聞いたことあります。
「ああ、アタシも聞いたことありますよ。直接、本人に聞いたわけじゃないですけどねー。あの走り方は負担が大きすぎて、そのまま走り続けていたら故障していたって。初め聞いたときは、なにをバカなこと言ってるんだって思いましたけど、シニア期になるとその意味がすごくわかりますよ。……たくさんの同期がケガでいなくなりましたから」
今年も多くのウマ娘がシニア期のレースに辿りつけずに引退しましたね……。ケガが引退の起因であるウマ娘はかなり多いでしょうね。
「ざっと思い返してみれば、独特なフォームの子って確かにケガが多いんですよね。テイオーはそれがわかって、一か八かのフォーム矯正にこだわった。やっぱりテイオーはただの才能あるウマ娘ってだけじゃないんですよね。才能があって、努力を惜しまない。そして、目の前にある栄光を捨ててまで、その後に賭ける勇気がある。いやあ、平凡なアタシには真似できませんわ。本当に……」
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ウマ娘Bとの談話
……
貴方とトウカイテイオーの春天での戦いは記憶に新しい。今年、もっとも熱かったレースに上げるファンも多くいます。やはりトウカイテイオーは他とは違う存在ですか?
「ええ。テイオーは一番のライバルだと思っていますわ。ですが、長距離での戦いはもう叶わないでしょうね」
トウカイテイオーの疲労ですか?
「ええ、仰るとおり、天皇賞春を走り終えたテイオーの様子を見ると、長距離で何度も戦えるとは思えません。無論、テイオーが長距離に適していないわけではありませんわ。ただテイオーは中距離に特化していると言うのでしょうか。ただ距離を短くした程度では説明できないくらい、中距離での彼女は息が続きますし、ステップのキレがとても良い。中距離と抜群に相性がいいのだと思います」
中距離でのトウカイテイオーの走りはいつでも安定しています。全く限界を感じさせないほどに。だからこそ、長距離でのトウカイテイオーの疲労感というのは目立ちますね。
「そうですわね。天皇賞春の後も数ヶ月は体の休息と調整に当てていたようですし」
宝塚記念は天皇賞春の疲れが抜けきれなくて回避したと発表がありましたね。
「はい。宝塚記念は無理をしないために見送った。客観的に見て、その判断に誤りがあったとは思えませんが、もし万全の状態の彼女が出走していたら、勝利する可能性は高かったでしょうね。あるいは少し不安があっても勝利していたかもしれません」
長距離で勝てる実力はあるが、万が一の事故が起こりかねない怖さがある。トウカイテイオーの今後を考えても、再び長距離でレースをするのは厳しいということですね。
「はい。私が長距離で走り続けることは変わりませんが、テイオーとの戦いは中距離でとなるでしょう。無論、長距離で不覚を取ったわけですから、テイオーが長距離以上に実力を発揮できる中距離は、私にとって非常に厳しい戦いとなるでしょう。ですが、メジロのウマ娘として、負けたままではいられません。不利は承知の上。それでもライバルに負け続けで終わるわけにはいきません」
さすがメジロ家ですね。長距離では有マ記念もありますが、そちらでトウカイテイオーとぶつかる可能性は?
「有マなら、あると思いますわ。ですが今年は……無理でしょうね」
ケガ……ですね。
「そんなことはないと思っていても、時折、彼女がとても丈夫なウマ娘だと勘違いしてしまいます。宝塚記念は回避したものの、札幌記念に続いて天皇賞秋を勝利し、次はジャパンカップに出走する。更には有マ記念にも出走予定と聞いています。体調に自信がなければ、このローテーションは組めませんわ。彼女のトレーナーが不在にしがちな現状で、よくもそんな決断ができたものだと……」
トウカイテイオーには専属医――2人目のトレーナーがいるとも言われていますが?
「それはわかりません。噂は耳にしますが、それはあくまでも噂。私から話せることはありませんわ。ただ1つ言えるのは、テイオーはケガなく秋シニア三冠に挑み、私はケガで挑めない。それだけです」
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ウマ娘Cとの談話
……
次の質問ですが、トウカイテイオーには専属医がいると噂がありますが、そのご関係はご存じですか?
「テイオーちゃんと専属のお医者さんとの関係? 記者さんもやっぱり気になるんだね! でもごめんね。テイオーちゃんのプライベートに関することだからマヤの口からは言えないよ」
なるほど。それでは質問を変えまして、トウカイテイオーの強さの秘訣についてですが、彼女の練習メニューは少し独特なものだと聞いています。やはりウマ娘から見ても特徴のあるものなのでしょうか。
「あ、うん、それならいいかなー。記者さんの言うとおり、テイオーちゃんの練習メニューは少し変わってるよ。基本的にプールとか坂路がメインで、併走とかはあまりしないかな」
トウカイテイオーは勝負好きのイメージがあるから意外ですね。プールというとケガをしないように調整をしているイメージがありますが、坂路も多いんですね。
「坂路の他にも基礎トレーニングをみっちりやるから、全身の底上げはしているみたい。たぶん足の負担を少しでも軽くしたいんだと思うなー」
負担を減らすため。医師から指示ですかね。
「たぶんね。テイオーちゃんはお医者さんをすっごく信頼していてね。練習でケガしないように、メニューをよく相談してるみたいだよ」
なるほど。たしかにケガをしないための体作りは大切ですからね。トウカイテイオーと言えば、デビュー前後でフォーム矯正に取り組んで、すごく苦労したと聞きます。
「そうなの。あの頃のことはみんなが大スランプだ! って言うよね。その後のことだって、なんとかテイオーちゃんがスランプから抜け出せたって。でも、たぶんテイオーちゃんは、わかっていたと思うな」
わかっていた、ですか。
「パッと見ると進んでいるかわからない状態だったんだけど、実はテイオーちゃんは自分の状況をハッキリわかっていたんじゃないかな?」
冷静に、落ち着いていたと?
「落ち着いてたってことはないと思うよ。その頃は併走もそこそこやっていたけど、ずっと負け続けでしょ。テイオーちゃんもすごく疲れていたなー。でもね、それがもうすぐ抜けられるって信じてた。必ずそこから這い上がれるってね」
スランプに陥った時はナーバスになる子が多いと思います。ついこの前に引退した重賞バのウマ娘もスランプから抜けだせませんでしたね。焦りでハードワークをしてしまい、取り返しのつかないケガをしたウマ娘もいます。
「うん……それで諦めちゃう人って多いよね。でもテイオーちゃんは頑張ってたよ」
スランプに陥ったトウカイテイオーを支えたものは何だと思いますか?
「うーん……信頼できる人だと思う。あの頃からテイオーちゃんのトレーナーさんはお休みがちの人だったし、たぶん、お医者さんがテイオーちゃんの状況を注意して見てたんじゃないかな」
ここで彼ですか。そういえば、一緒にいる目撃情報がけっこうあります。
「そうそう。テイオーちゃんってば、その人とけっこうお出かけしてるみたいでね、マヤも見たことあるよ!」
お出かけですか。
「お出かけって言っても、ほとんどが診察だと思うけどね。あのスランプの時に、テイオーちゃんが併走で勝てなくて落ち込むことは何度もあったんだけどね、お出かけする度にリセットされてたんだ。それまでは元気がなかったけど、一息つくみたい」
モチベーションはとても大切ですからね。そういえば、トウカイテイオーはシンボリルドルフを目標にしていましたよね。
「うん! 生徒会長みたいな無敗の3冠バになるんだーっていっつも言ってたよ」
無敗の3冠バは去年に達成していますね。今の彼女のモチベーションは何かご存じですか?
「モチベーション? テイオーちゃんから聞いたことないなあ。あの頃みたいな強い目標っていうのは知らないよ。あ、でも最近、誓約書を書いてもらったとか言ってたなー。なんか物々しいよね」
誓約書? 結婚……は早すぎますよね?
「え、そうなのかな!? テイオーちゃん、いつの間にそんな大人なことをっ!? ……でもそんな感じじゃ無かった気もするけどなー。なんていうか、悩み事が解決した感じ?」
悩み事が誓約書で解決した。ずいぶんと重い出来事があったんでしょうか?
「ううん、そんな深刻な感じじゃないけど、なんかいろいろ考え事してたんだよね」
なるほど。あ、コレはオフレコにしますね。
「あ、そうだよ! 結局プライベートなこと話しちゃったよー! 絶対に他の人には言わないでね?」
もちろんです。彼女たちの走りに邪魔になりそうなら、決して記事にはしませんよ。
「うん! お願いね!」
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ウマ娘Dとの談話
……
最近、レース関係者へのインタビューからトウカイテイオーに専属医がいると耳にします。しかし、どこか病院に通っているのではなく、医者の自宅に直接訪問しているとか。
「テイオーのご両親から、例の医師に関することは任せてもらっている。私も彼の家を訪問して、実際の状況を確かめさせてもらった」
確認済みなんですね。
「幸い、テイオーのご両親とは面識があるからね。例の医者とは、そこまで長い時間をともにしたわけではないが、信頼に足る大人と判断して、テイオーとの関係は見守っている。今でも時々テイオーと彼の様子を確認させてもらっているよ」
一応、確認しておきますが、トウカイテイオーと専属医との関係をお聞きすることは?
「レースと関係のないところに立ち入らせるわけにはいかない。いや、レースに関係があったとしても、全てを外部に公開することはできない。ファンの期待には応えたいが、ウマ娘にもそれぞれの人生がある」
仰るとおりです。
「もちろん、あなたを信頼している。だが全ての記者がそういうわけではないし、記事を見た人の受け取り方は様々だ。だから一律に同じ言葉を繰り返させてもらっているんだ」
こちらこそ、答えのわかっている質問をしてしまい申し訳ありません。話を変えますが、トウカイテイオーは小さな頃から貴方に憧れていて、ずっと貴方を目標にしていると聞きます。ファンはみんな知っていることです。同時にファンは貴方とトウカイテイオーのどちらが速いのか、とても興味があります。
「もはやテイオーが私を超える記録を樹立することに疑いはないだろう。……だからこそ、ここからだ。テイオーがその才覚に頼った戦いを続けるのか、その類まれなる記録に比例した強い意志を持つのか。その答えが私たちのレースでわかるさ」
強い意志、ですか?
「勝ち続け、期待されるほどに人々の関心は高まっていく。テイオーほどのウマ娘なら、きっとそのことに気づくときがくる。一体それをどう受け止めるのか。私とのレースはそこから始まるのだと思う」
トウカイテイオーが貴方に勝つにはまだ早い?
「ふふっ。実際に走ってみないとなんとも言えないな。でも、私も負けるわけにはいかない。楽しみにしていて欲しい。きっとファンにも喜んでもらえるレースができるはずだ」
記者としてだけではなく、1ファンとしてレースを楽しみしています。次に……少し抽象的な質問をしても?
「ふむ。ものによるね。あなたを信頼しているが、それでも言えないこともある」
現役ウマ娘の恋について、どう考えていますか?
「それか……まあ、中には手のかかる子もいるが、本気ならば応援したいと考えているよ。それくらいしか言えないな」
学生にはまだ早いと断じるわけではないのですね。
「うん。忠告は大事だが、大人の意見で生徒を縛り付けるのも違うと思っている。くれぐれも気をつけて欲しい」
わかりました。本日は貴重なお時間をありがとうございます。
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ウマ娘Eとの談話
「え? ターボにテイオーのこと聞きたいの? いいよ!」
トウカイテイオーとの関係は?
「テイオーは終生のライバル! ちょー強いテイオーだけど、いつかかならずターボが勝つんだー!」
前人未到の記録を打ち立てるトウカイテイオーの強さの秘訣は何だと思いますか?
「強さのひけつ? うーん……速いからじゃない?」
単純に他のウマ娘より速度があるってことですか?
「うん! だからターボも全速力でかけぬけて、テイオーよりも早くゴールするんだ!」
速度の他にトウカイテイオーの強みはありますか? 逃げのウマ娘から見たトウカイテイオーの厄介さとか、他のウマ娘とは違う点とかあれば
「ほか? ……あ、そういえば、勝ってご褒美もらうんだって言ってた気がする」
ご、ご褒美ですか?
「うん。たしかそう言ってた」
詳しくお願いします。
「えーと、なんだっけ……引退するまで今までどおりに接するなんとかーって言ってた気がする!」
今までどおりに……なんの話ですか?
「わかんない!」
……なるほど。興味深い情報をありがとうございます。
「あ、テイオーのことならネイチャもくわしいよ」
ナイスネイチャには先程、取材しました。
「もうネイチャには聞いたの?」
トウカイテイオーにナイスネイチャとは同じ年のデビューでしたよね?
「そう! テイオーとネイチャは同期!」
仲が良いのも納得です。それでは今日はありがとうございました。
「うん! 次はターボの優勝インタビューで会おうね!」
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〇月×日 トウカイテイオー特集用メモ
天才であるが、デビュー前は重いスランプに陥っていた。だが、親しい間柄のウマ娘は、選手生命に関わるものではなかったとの印象。
そんな苦境にあったことが周知の事実だったせいか、あるいは彼女の人柄のせいか、今の彼女に対して否定的な意見はなかった。
トウカイテイオーのトレーナーは相変わらず家庭の事情により多忙。まとまった時間はもらえなかった。
例の医師がトウカイテイオーのサポートなのか、トレーナーのサポートなのかは不明。ネット掲示板の目撃情報を信じるのなら、医師はトウカイテイオーと親しい関係にあり、トレーナーとは交流がない?
いずれにしろ、医師がトウカイテイオーの躍進に一役買っている可能性はとても高い。
ご褒美についてはご両親か生徒会長か。トウカイテイオーのモチベーションの根源とも考えられるので、要調査。
やはり長距離の負担が大きいらしい。菊花、春天で勝利したが、これ以降の長距離は望み薄。
トウカイテイオーはまだ完成しておらず、この先のレースに対する意識がとても大切。