2年連続でトレーナー試験に落ちた男とトウカイテイオーの話 作:キンニャモニャ
凱旋門賞が終わって半年後のことである。
テイオーは無事にトゥインクルシリーズを卒業し、ドリームトロフィーリーグに移った。
まだまだトゥインクルシリーズで走ることも出来たが、無敗の10冠という異次元の成績を収めたテイオーがドリームトロフィーリーグに移ることには誰も異を唱えない。
もうじき憧れのシンボリルドルフと同じレースに出走できるとテイオーは喜んでいた。
しかし、それとは別にテイオーにもいろいろとやり残したことがある。
そろそろ決着をつけたい相手がいるのだ。
だが相手は自分の方が負けっぱなしの強敵だ。一世一代の大勝負を仕掛けるには準備が要る。
その日は、その前段階として知り合いの研究室にお邪魔した帰り道だった。
テイオーはマックイーンと出くわした。
「あらテイオー、こんなところで珍しいですわね」
友人に声をかける時でも、マックイーンはピッと立ち止まって姿勢を正す。
「うん。ちょっとタキオンに相談があって」
「アグネスタキオンさんですか? それも珍しいですわね。なにか悩み事でもありましたか?」
「ううん。そんな重い感じじゃなくて、こんなのあるかな~って話を聞きに行っただけ。心配してくれてありがとねっ」
マックイーンは心配症だなー、とテイオーが笑った。
「いえ、それならよかったですわ。お互いドリームトロフィーリーグに移った訳ですし、次に同じレースに出るときは全力で競いたいですから」
「そうだねっ。でもボクも負けないから!」
「私だって同じ気持ちです。テイオーは中距離をメインにしますわよね?」
「うん。ごめんね、長距離でマックイーンと戦うのは、もうできないと思う」
名残惜しそうに、だがハッキリとテイオーは肯定した。
これを破ったら、今度こそ百叩きに遭うとテイオーは理解していたのだ。
「気にしないでください。わかっていたことです」
「うん。でも中距離で走ることになっても容赦しないよ」
2人はこぶしをチョンとぶつけて笑いあった。
「望むところですわ。そういえば今夜、テイオーの特集をやるみたいですわね」
「そうそう! もー、凱旋門賞は半年前の話だよ。何回やるのって話だよね! まいっちゃうなー」
誰がどう見ても嬉しくてたまらないといった表情でテイオーは言った。
マックイーンはその様子をジト目で見た。
「浮かれ過ぎていると、余計な嫉妬を招きますわよ」
「だって嬉しいんだから仕方ないじゃん! マックイーンは気にし過ぎだよっ」
「そうですか? そういえばこの前、ずっと以前から誰かの視線を感じるとか言っていたと思いますが、そちらは問題ありませんでしたか?」
マックイーンは軽くテイオーの後ろを覗き込みながら言った。もちろん誰もいない。
「う、うん……誰かは特定できたし、たぶん大丈夫。……たぶんね」
テイオーが目を泳がせた。
テイオーの脳裏にファン感謝祭の記憶がよみがえる。テイオーは彼女と話したわけではない。だが、あの視線には覚えがあったのだ。
「気になるのなら私も手伝いますわよ。たづなさんにも相談しましょう」
「平気だって! なんでかわからないだけで、何かしてくるわけじゃないから。ときどき、すごい圧を感じることがあるってだけだよ」
「それならいいのですが……。原因がわからないのは怖いですわね」
「そうだね。目立つなんて今更だと思うのになー。ウマスタのフォロワー数が彼女を抜いたからかな? でもそれくらいで怒るような子じゃないと思うんだけどな。接点もないし……まさかボクの方がカワイイと思ったとか? うーん、それなら納得できるような……」
ボクも可愛さなら負けてないからねっ、とテイオーは気を持ち直した。
「今や日本どころか、世界中の多くの人がトウカイテイオーの名前を知っています。これまでとは注目の度合いが変わってくるでしょうし、仕方ない事もあるかもしれませんわね」
「テレビで放送されると声をかけてくれる人が増えるからね。本当にちょっと困ることもあるんだよ。センセーも目立つのが嫌いだから、しばらくは一緒に出かけてくれなくなるし」
「そうなんですの?」
「見られるだけなら気にしないんだけどさ。大抵は一緒に出歩いてるのがバレると、声をかけてくる人がいるからね。絶対にどんな関係か聞かれるんだよ」
プライベートだからと声をかけずに見守ってくれる人がいる一方で、声かけ、握手、サイン書き、男との関係質問をセットでしてくる人もかなりいる。特に熱心なウマ娘ファンではないけど、テレビでよく見るからという人がそういった傾向にあると男が分析していた。
「……そういえば、凱旋門賞の後に抱きついていましたわね」
「あれは支えたんだよ。センセーってばボクの応援に全力を出し過ぎちゃって、体が言うこと聞かなくなっちゃったんだって。ボクがいなかったら転んでたんだよ。ほんっと仕方ないんだからー!」
そう言いつつも嬉しそうなテイオー。
「ですが不思議ですわね。あの映像はとても騒がれそうですけど、生放送のときしかテレビで見た記憶がありませんわ。学園側が動いてくれたのでしょうか?」
「それもあると思うよ。あと、たぶんセンセーの実家が関係してるんだと思う。センセーのご両親の病院ってさ、実は日本で五本指に入る規模の病院みたいなんだよね」
抱えてる病院も10を超えていて、男もサッサと1つくらい受け持てと家族からせっつかれていた。
「そう、でしたわね」
「やっぱりマックイーンも知ってた? いろんな業界に強い影響力があるらしくて、そのせいじゃないかってセンセーが言ってた」
「火消しに動いたということですか?」
「どっちかと言うと、相手がセンセーの家に配慮した結果だって。ご機嫌取りだろって言ってたよ」
「権威を尊重してくれた、ということですか。それであればメジロにも時折ある話ですわ」
頷くマックイーン。
「そんなわけで、あの映像は再放送されてないんだって」
肩をすくめたテイオーが言った。
「なんだか残念そうですわね」
「別に~。ただ、ボクとしてはそのまま流してくれても気にしなかったのに、って思うだけ。……わざわざタキオンにお願いする必要もなかっただろうしさ」
「気にしないって、あの映像は勘違いする人が出ても不思議では……ああ、そういうことですのね」
「そういうことっ。まあ、ボクもう18歳の大人だからさー。マックイーンにはまだ早い感情かも知れないけどね!」
腰に手を当てて胸を張るテイオー。最近ではマヤノトップガンよりも大人であると自負していた。
「失礼ですわね。私だって、異性に恋心を抱いたことくらいありますわ」
「え、うそっ!?」
「嘘ではありません。まあ、1度だけですけど」
「ど、どうなったの? 今はその人とどうなってるのっ!」
テイオーが鼻息を荒くしてマックイーンに詰め寄った。
「どうもなにも、失恋でしたので、それっきりです」
「失恋!? マックイーンが!?」
「声が大きいですわよ」
「ご、ごめんね。けどマックイーンでも失恋しちゃうんだ……ね、どんな人だったの?」
マックイーンがテイオーをジッと見つめた。そしてツイッと目を逸らした。
「教えません」
「えー、ちょっとくらい良いじゃんっ」
「言いませんわ。あなたにだけは絶対に……」
「なんでよー! ちょっとだけ。ね、ね、お願い」
テイオーがマックイーンの視線の先に回りこんだ。両手をこすり合わせながらズイズイとマックイーンとの距離を詰めた。
「まったくもう……恐らくですが、私とその人の相性は誰よりも良かったと思います。ですが、残念ながら縁がありませんでした。ほんの少し、なにかが掛け違えていたせいで、こうなったのだろうとは思います」
「……その人のこと、まだ好きなの?」
マックイーンが胸に手を当てた。
「……そんな、すぐに割り切れるものではありませんわ。でも、これで良いのだと心から思っています。……これ以上は言いませんわよ」
「もー、ケチだなあ」
「何を言っても無駄ですわよ。それにしても抱き合う姿が再放送された方が良かったなんて、いつの間にそんな駆け引き染みたことを言うようになったのですか? 数カ月前は思うがままにワガママを言って、駆け回っていましたのに」
「ボクのことを少年みたいに言うの止めてくれる? ……マックイーンはセンセーのフランスでの評価を知らないからそんなこと言えるんだよ」
キョトンとするマックイーン。
「なにかありましたの?」
テイオーが真顔になる。
「みんな本気だった」
「え?」
「向こうのトレセンの子たちがセンセーのこと狙ってた。それがあまりにも露骨すぎて、本当は凱旋門賞の後にもうちょっと観光を楽しんでから帰国するつもりだったんだけど、仕方なく予定を切り上げて帰国したんだよ」
テイオーが目を閉じて、辛い過去を語るかの様に口にした。
「それほどですか? いまいちピンと来ませんが……」
「それほどだよ! 向こうのトレセンの理事長が、センセーに恋人はいるのかってボクに聞いてくるんだよ! しかもその人、フランスの元貴族なんだって!」
権威をチラつかせるってどういうことなの!? とテイオーが言った。
「そうなんですの? 失礼ですけど、そこまで熱が入るほど顔が整っているわけでは……ああ、いえ、私は精悍な顔つきをされていると思っていますわ。とても好ましい立ち居振る舞いをしていて信頼できる方だと思います」
フォローしたけど途中で恥ずかしくなったのか、マックイーンはほんのりと頬を赤らめた。
「つまり普通の顔ってことだよね。でも嘘じゃないよ! 向こうのトレセンにその理事長の子どもがいて、センセーってばボクが練習している合間にその子の相談に乗っていたみたいなんだよ。それが体調不良によるものだったから、センセーがあっという間に解決しちゃって、その子がそれにすっごく感動してさ!」
「そ、それは大変でしたわね」
「帰国の前にイタリアに寄って、ピザをたくさん食べてから帰る予定だったんだよ。さあ飛行機の予約を取ろうってときに、その理事長がどこからかボク達の観光の話を聞いたみたいでさ、イタリアに古くからの親戚が暮らしているから、宿は是非その家を頼って欲しいって言うんだよ! 案内は理事長の子どものウマ娘がするって言ってさ! しかもイタリアの親戚も当然、元貴族! イタリアの子はボクの2つ上のウマ娘なんだって!」
「完全に包囲網を作ろうとしていますわね」
一見すると善意だから断り辛い。ワンチャン食い付くだろと可能性を残す好手だった。
「センセーと、さすがにこれはマズいって話になって、フランスのトレセン理事長にどうにか角が立たないように言い訳をして、イタリアには寄らずに帰国したんだよ……」
「ピザは食べられなかったわけですのね」
「うん。帰りの飛行機は、2人でピザ食べたかったなあってお通夜状態だったよ。ボクって凱旋門賞を取ったんだよ? それなのに悲しい帰国だったなあ。同情してくれたのか、ボクがセンセーにだる絡みしても文句言わずに受け入れてくれたのが唯一の救いだったよ」
「子どもですわね……美味しいイタリア料理店を紹介しましょうか?」
「もうたくさん行ったから大丈夫。都内で有名なところは、たぶん全て行ったよ。美味しかったなあ。すっかりピザに詳しくなったね」
凱旋門賞勝利で注目されていて、普段なら外出を控える男も、その時ばかりはそんなの知るかとピザ屋巡りを敢行した。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
「本場は行けませんでしたけどね」
「いつか必ず2人で行くからいいの。マックイーンこそ美味しいピザ屋が知りたかったら言ってね。野球観戦とかで食べるんじゃない?」
「いえ、ピザを食べながら観戦なんて……って何の話ですか?」
スンッとするマックイーン。
「え、まだ隠してるの?」
「隠してませんけど?」
「まあいいや」
マックイーンの野球好きは親しい間柄の人には有名な話だった。だが、メジロとしてのマックイーンはこの趣味を公にするのを避けていた。
テイオーも周囲の視線の怖さをわかっていたので、マックイーンの行動も理解はしていた。窮屈だろうし何とかしてあげたいと思ったこともあるが、他ならぬ本人がそれを望んでいるため、温かく見守ることにしていた。
「イタリアには行けなかったようですが、レースはなんの支障もなく終えられましたし、よかったではありませんか。癖がある理事長だったかもしれませんが、トレセンは良かったのでしょう?」
「まあ、そこでも一悶着あったんだけどねー」
レースの調整は万全に出来たんだけどね、とテイオーは言った。
「……まだありますの?」
「日本のトレセンにセンセーがいるなら、フランスから移籍を検討してるって子がいたんだよ。しかも複数人」
「そ、それは……」
男をトレセンに引き込めないか。
この話は日本の中央トレセンでも話題になったことがある。
テイオーの類まれなる結果を受けて、男をトレセンのトレーナーしてはどうか、という声が学園内で上がったのだ。
しかし結果はNO。
テイオーが男に意思確認をしたところ、テイオーの努力を自分の成果にしてるなんて知り合いに噂とかされると恥ずかしいし……、と男は拒否した。そのあと、俺の担当はお前だけで十分だ、と男が言ったので、テイオーはすっかりご機嫌になって学園側に男の意思を伝えた。
だが、それでも諦めきれない生徒がいて、せめてテイオーの様なサポートを受けられないかと立ち上がった。
これに対してご機嫌のテイオーは、男の愛バはボクだけ、と男の意思を武器にして、情にほだされること無く丁寧にお断り。事件は解決した。一応は。
言ってしまえば、表面上の解決はしたものの、再燃の恐れがある事件だった。
そんなこともあり、マックイーンが言葉に詰まったのだ。
「わりと真剣に詰みかけたよ。向こうのトレセンはセンセーがトレーナーだって思ってた。ボクにはトレーナーが2人いるって信じてた。だから向こうの理事長も他のトレセンから引き抜くことは選ばずに、恋愛関係なんて遠回りな手段を取っていたんだよね。それがもし未所属のトレーナーだってわかったら……」
「ゾッとしますわね……」
ドン引きするマックイーンに、テイオーが頷いた。
「とにかく、その子たちにセンセーは事情があって今は担当バが増やせない事を説明して、急きょ帰国することになったことを伝えて、食い下がろうとする子をなだめすかして、その騒動で集まってきた他のお世話になった子にお礼を言ったりしてさ。大変だったなあ……」
嘘は言ってない。向こうが勝手に勘違いしているだけ。センセーも相手のホームから逃げられれば、どうとでもなると言っていた。だからきっと大丈夫。テイオーは自分にそう言い聞かせた。
ちなみに、中には物理的に帰国を阻止しようとしたウマ娘もいたが、流石にそれはフランスのトレセンが対処してくれた。
「その中に例の貴族の子は?」
「言うまでもないよね」
「そ、そうですわね」
苦々しい顔のテイオーの言葉に、反応に困るマックイーン。
「そんなこんなでヘトヘトになって、たまたまキャンセルが出た飛行機に飛び乗って帰国って感じ。いやあ日本はいいね。ファンや記者に囲まれたけど、センセーの家に行けば人目を気にせずのんびりできるもんね。寮でも質問攻めにあったけど、それはむしろ嬉しかったし」
友だちが純粋にチヤホヤしてくれるのはすごく嬉しいテイオーだった。
「あの方はご家族と同居していませんでした?」
「してるよ。でもセンセーの家族とはそこそこ長い付き合いだし、気を使わなくて良いってさ。ボクのことを娘みたいに思ってくれてるみたい。センセーの兄弟って男性しかいないからさ、そのおかげだと思う」
「それは良かったですわね」
男の兄は物静かで、弟も昔こそヤンチャしていたが今は落ち着いている。テイオーの様な明るい楽しい子とは無縁だったので、男の両親はテイオーを我が子の様に可愛がっていた。時折、男の母親がテイオーに料理を教えていたりもするほどだ。
「ホントさ、トレーナーがあんな状況になっちゃったし、センセーが居てくれて良かったよ。すっごく助かった」
「テイオーのトレーナー、もうほとんど姿を見せなくなりましたわね」
「家業を継がないといけないんだって。本当ならすぐにトレーナーを止めて、家業の引き継ぎに専念したいんだけど、ボクを放っておくのも忍びないってことで在籍してくれてるんだ」
「2人の関係にとやかく言うつもりはありませんが……よくやってこれましたわね」
「センセーが居たからね。そもそもセンセーが居なかったら別のトレーナーを選んでただろうし」
「相変わらずドライですこと」
「いやいや、トレーナーにも感謝してるよ。じゃなかったらレースの賞金の一部を渡したりしてないでしょ」
「それはそうでしょうけど……」
テイオーもトレーナーを嫌っているわけではない。なんか忙しそうなトレーナーだとか、あまり練習方針をうるさく言わないとか、出走手続きなどの仕事はしっかりこなしてくれる人を選んだので、むしろテイオーの想定どおりの活躍をしてくれたと思っていた。
パリからの急な帰国は想定外だったけど、代わりに男がトレーナーの役割をしてくれたので、結果的に良かったとすら思っていた。
だから凱旋門賞の賞金の一部を契約通りトレーナーに渡した。トレーナーは役に立てなかったと受け取りを渋っていたが、ボクは本当に感謝しているんだと、無理に渡したのだ。
「本当はセンセーにも渡したいんだけどね。トレーナー契約をしてるわけでもないのに、子どもの金を巻き上げる大人がどこにいるんだよ、だってさ」
「ふふふ。聞けば聞くほど好感が持てますわね」
嬉しそうなマックイーン。
「信頼はできると思うけどさあ。……まあ、そのうち同じ財布になるからいいや」
マックイーンがスッと目を閉じた。
「…………」
「マックイーン? どうかした?」
マックイーンは目を開けて、首を傾げるテイオーに笑いかけた。
「いいえ、なんでも。……今度またお邪魔しますわね」
「いいよー。日にちが決まったら言ってね」
呑気に笑うテイオー。
「隙がありすぎて心配になりますわね……私が本気だったらどうするつもりですの……」
「え、なに?」
「なんでもありませんわ。最近ちょっと疲れ気味でしたから、とても助かると思っていただけです」
うんうんと頷いていたテイオーが、意地悪い笑みを浮かべた。
「疲れは綺麗サッパリなくなるよね。それに太り気味に効くみたいだしー?」
「そうなんです。なぜか気になっているお腹周りも解決するん……って、太っていませんわ!」
「え、でもこないだ誘惑に負けてスイーツ食べてたじゃん」
「それはあなたが目の前でたくさんのスイーツをパクパクと食べるからではありませんか!」
他にも席が空いているのに、わざわざ目の前まで来てスイーツを食べるというテイオーの暴挙をマックイーンは忘れていない。
「えー、ボクは関係ないでしょー」
フフーンと余裕の笑みでそっぽを向くテイオー。
「……あの方にテイオーのことは報告しますからね」
テイオーが固まった。
「ちょちょちょちょっと待ってよ。センセーは関係ないじゃん!」
「あります! 言っても聞かない子がいたら、保護者に躾けてもらわないと!」
「センセーは保護者じゃない! 怒られるんだから止めてよね!」
「その言葉は数日前のあなたに伝えるべきですわね。それなら……明日、ご都合がよろしければお邪魔しますわね」
「ダメダメ! 絶対ダメだから! ただでさえ、最近たるんでね? とか言われてるんだから、そんな余計なこと言わせないからねっ!」
凱旋門賞以降、男に引っ付いている時間が多くなったテイオーに、男が放った言葉である。
「なら直接ご本人にご都合を伺います」
スマホを取り出すマックイーン。
「それもダメだってー!!」
通りすがりのシンボリルドルフに出くわすまで、2人はしばらくじゃれ合っていた。