2年連続でトレーナー試験に落ちた男とトウカイテイオーの話   作:キンニャモニャ

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感想ありがとうございます。作者は小心者なので冷たい言葉には反応できないかもしれませんが、ご容赦ください。


4話 出会いから少し経って

あの日以来、テイオーは足繁く男の元に通った。

最初と同じように診察、施術を経て、現状や今後の方針について話し合う。

それを何度も繰り返し、テイオーは少しずつ先へと進んでいた。

 

その日もまた、2人はリビングで施術の結果について話し合っていた。

 

「もうちょっと下半身への負荷をあげても良いと思うぞ。たぶんケガに気を使ったんだと思うが、前回よりも重心が上半身に寄ってる」

 

男はカルテに結果を書き残しながら説明した。

 

「下半身……どの辺りを中心に鍛えたほうが良いかな?」

 

初めは抵抗のあった施術も慣れたもので、テイオーは椅子に座って足をぶらぶらさせながら男の話をしっかりと吟味する。

 

「まだ本格化前だから、満遍なくでいい。でも無理はするなよ。あくまでもバランス良く全体を鍛えて、その後に行う重点的なトレーニングに耐えられるような体作りを意識したほうがいい」

 

「りょーかい。走り方は好きにして良い? それとも基本的な走り方に直したほうがいいかな?」

 

「とりあえずは楽しく走れるフォームでいい。今から根を詰めてもキツいだけだぞ」

 

「……そうだよね。やっぱり楽しく走ることが大事だよね」

 

「特に1人で練習するときはな。ケガさえしなければ少なくとも3、4年は走ることになるんだから、今から自分を追い込むなよ。のんびりしとけ」

 

「のんびり……」

 

テイオーの頭に過ぎったのは同年代のライバルたちだ。

それまで同期に負け知らずだったテイオーだが、自分の走り方を見つめ直した後は負け込んでいる。これまでの様に好きに走るのではなく、基本的なフォームで走るようにしていることが原因だった。

慣れない走りに翻弄されて、テイオーの体がなかなか追いついていかない。それどころか、日によっては昨日よりも差が開くこともある。周りのウマ娘も成長しているだけの話なのだが、逆にそれを実感しているからこそ、のんびりしていて大丈夫なのかと不安になってしまう。

 

男はそんなテイオーの気持ちに気づき、努めて軽い口調で話した。

 

「……安心しろって。それでもお前なら無敗の3冠バは十分狙える。テイオーは今はまだ未成熟な状態なんだ。本格化が始まるまでは体の成長を促せるような練習が大事。負荷をかけすぎれば成長が止まって、その時点での負荷に耐えられる体に仕上がるからな」

 

「つまり?」

 

「テイオーの上限値が止まる」

 

成長期に過度な筋トレをすれば身長が伸びにくくなるように、本格化が始まる前こそがケガをしにくい体を作るために重要だと男は思っていた。

 

「それは……良くないよね?」

 

「もちろん。人もウマ娘も100%の力で走り続けるとケガをしやすい。極端な話だが、上限値を高めた上で、全力の90%で勝てるのが理想だな」

 

「他の子に負けるつもりはないけど、全力を出さずにG1のレースを勝てるかなあ?」

 

「前例はある。マルゼンスキーも似たような類だろうな。後は……恐らくシンボリルドルフもな」

 

「カイチョーも!?」

 

テイオーが男に向かって前のめりになる。

 

「シンボリルドルフは身体能力もさることながら、レースが上手い。他のウマ娘をかからせて、自分の優位な展開に持ち込める。そんで最後の直線で力でねじ伏せる。他のウマ娘と違って常に全力ってわけじゃない分、レース全体を落ち着いて見ている。だから、かかることなく安定したレース運びができるし、体の負担が大きくない。まさに強いウマ娘だな」

 

「強いウマ娘……」

 

テイオーが思い浮かべるのは、いつも悠然と佇むシンボリルドルフの姿だ。

確かに思い返してみると、シンボリルドルフがレースに出るときは、スパートをかけるまで、余裕を持って走っていることをテイオーは思い出した。

 

「テイオーにシンボリルドルフの様になれって言う訳じゃない。だが、90%の力で勝てる実力っていうのは、ケガをしないためには絶対に欲しい。必須と言ってもいい」

 

「うん。わかるよ」

 

力ずくでねじ伏せる勝利と、余裕を持って他のウマ娘を圧倒する勝利の方では、たしかにケガのしやすさは大きく変わるとテイオーは思った。同時に、やっぱりセンセーは頼りになると、心の底から思った。

 

「だからこそ、今は無理をするな。よく食べて、食べた分のカロリーを走って消費する。オーバーワークにならないように注意して、体の成長を促していく。今やることで、今後のレース結果が変わるぞ」

 

「うん!」

 

テイオーは、男が変わらずに自分を信じてくれていることを嬉しく感じていた。負けが続いて沈んでいた心も、それを含めて計画通りなのだと男が態度で示してくれる。それがテイオーには何よりも心強かった。

 

「あとはサッサとトレーナーを見つけろ。本格化が見えてくるまでは今の方針でいいと思うが、その後にどういうメニューを組むかは重要だぞ。本格化が始まってから急いでトレーナー探しを始めるんじゃなくて、今のうちからテイオーの体を理解してくれる相手を探せよ」

 

「うん……あのさ、センセーが指導してくれたりしないかな?」

 

「指導?」

 

「うん。そのトレーナー的なことをやってくれないかなーって思って」

 

「却下」

 

「うう……やっぱりダメ?」

 

「ダメ」

 

トレセンのほとんどのトレーナーが陥落するであろうテイオーの上目遣いでのお願いも、男は一顧だにしない。

 

テイオーもそう返ってくることは予想していたので、口元を1度だけ引きつらせる程度のショックしか受けない。

 

「じゃあさ、センセーはどんな人がいいと思う? ボク、よくわからないんだよ」

 

「超ベテランだな。若しくは……桐生院さんくらいの大型新人」

 

「桐生院トレーナーはもう担当がいるからね。初めての担当だし、しばらくはハッピーミークだけを見るよね。そうなるとベテラントレーナーか~」

 

新人トレーナーは忙しい。ウマ娘を初めて指導するのもそうだが、ウマ娘と信頼関係を築く必要もある。先輩、同僚、お偉方とのコミュニケーションも必要だし、新たな生活リズムに慣れる必要もある。

どんな優秀な新人であっても、いきなり2人のウマ娘を担当するのは物理的に難しい。

 

「声をかけてくる人はいるだろ?」

 

「もちろんいるよ。でもさ、その人たちって、ボクの違和感を解決できなかった人たちだからさ。なんか不安だなーって思うんだよね」

 

テイオーの頭に浮かぶのは、あの必死に悩みを解決してくれる人を探していたときに、見当違いの回答をしてきたトレーナーたちだった。その中にはベテランと呼ばれる人たちも数多くいた。

 

「そっか。まあ、必要なら俺が指示書を書くから、それで上手い具合に調整してくれると思うけどな」

 

「あともう1つ。ベテラントレーナーって、その人ごとにこだわりが有りそうだから、あまりボクに合わせてくれないんじゃないかって気もする。こうやってセンセーに診てもらうのも、もしかしたら嫌がられるんじゃないかって思うし」

 

テイオーが何よりも許せないのがコレだった。見当違いの回答をする人の中には、その医者の判断こそが間違っているのではないかと疑問を呈する者もいた。

思い出しても蹴り飛ばしてやりたい気持ちに駆られるが、その当時だってバカにするなと憤慨したのを覚えている。

テイオーにとって彼らは信用ならないどころか、自分を最悪の舞台へと導こうとする厄介者でしかなかった。

 

「あー、それはあるかもな。テイオーに負担が大きそうだったら、俺もメニューに口を挟むことになるけど、ベテラントレーナーからしたら、トレーナー試験に落ちた奴が生意気な! ってなるかもな。まあそれはそれで――」

 

「仕方なくないからね。うん、やっぱりベテラントレーナーは却下」

 

「そう回答を急ぐなよ。そもそも俺が間違っていて、ベテラントレーナーの指導が正しいって可能性もあるんだぞ」

 

「そうかなあ。みんなに話を聞いてる限りだと、ボクが考えるメニューとそこまで大きく変わらなかったよ。あのまま行ってたら、やっぱりケガしてたと思うな」

 

シュッシュと後ろ蹴りの素振りをするテイオー。

 

男はそんなテイオーの様子を見て、気性難だなと考えていた。

 

「まあテイオーが嫌なら仕方ないか。ちょっとだけベテラントレーナーがどんな指導をするのか知りたい気持ちもあったんだけどな」

 

「センセーの方が凄いから大丈夫」

 

「……なんだこの信頼。重いんだけど……」

 

俺も期待を裏切るようなら蹴り飛ばされるのかなと、少し不安になる男。

 

「重くないよ!」

 

「まあ、施術に関しては、あまり公言しないようにして、裏でケアしてるってことにするのが無難かな」

 

男は自分の力に自信を持っていた。だが同時に、自分がやっていることは今現在だと新しい試みであり、実績がないことも理解していた。

実績がないということは、本当かどうか疑わしいということ。

しかも、その手段については目の前のウマ娘が散々ギャーギャーと騒いでいたように、一般的には抵抗があるものだ。

どんな人になるかはわからないが、テイオーを三冠ウマ娘にしたいと心から願うトレーナーであれば、そんな怪しい医者とは縁を切らせるのが普通だった。少なくとも男はそう思っていた。

 

男の心を知ってか知らずか、テイオーが言いにくそうに切り出した。

 

「……ねえ、やっぱり今後もマッサージは続けるんだよね」

 

「そのつもりだ。やっぱり嫌か?」

 

「ううん! 嫌じゃないよ。もちろん良いわけでもないけどさ。なんていうか……センセーの方が大丈夫なのかなって」

 

男を見つめるテイオーの目は、純粋に男を心配する気持ちしか見えない。

 

「俺?」

 

「センセーを信じてないわけじゃないよ。今日もあんなに揉みまくっておいて、ボクには興味ないって言われると心の底から腹が立つけど、センセーにやましい気持ちはなくて、ボクがケガをしないで三冠バになれることだけを考えてることもわかる。でもさ、世間的に見たらどうなんだろうって思ってさ」

 

「医師免許を持っている無職の男が、中学生のウマ娘を自宅に呼んで、マッサージを伴う治療行為を行った。もしかしなくてもアウトだな」

 

「……だよね。本当に良いのかなって心配になったんだ。これが世間の人にバレたらセンセーがマズいんじゃないかなって」

 

「正直に言えば、親には怒られた」

 

「えー! 話したの!?」

 

「当たり前だろ。この家には俺と両親と兄弟が暮らしてるんだぞ。事後報告になったとしても話は通しておくさ」

 

「そ、それもそうだね。こんな大きな家で一人暮らしなんて無いよね。でも今は誰もいないけど?」

 

男の家は大きな中庭付きの豪邸であった。メジロ家の様なお屋敷という程ではないが、こんなでかい家をよく都心に建てたな、とテイオーが思うくらいには大きな家だった。

 

「両親と兄は仕事。弟は大学で講義を受けてる。今日は平日だぜ?」

 

「その通りだけど、センセーは何故か家にいるんだよね」

 

「お前もだろ」

 

「ボクは放課後だからいいのっ。センセーはダメでしょ」

 

先程までは恥辱に耐えて、虚しい文句を付けるしかできなかったテイオーが、ここぞとばかりに男を攻めた。

 

男はまた子どもがじゃれついてきたと相手にしない。

 

「とにかく、両親に話をしたら危ないから止めろって言われた。病院にやってきた患者相手ならともかく、プライベートで家に連れ込むのは危険過ぎるってな。例え当人同士が納得していても、周りが騒いだらそれでお終いだぞ。就活どころじゃなくて、人生が終わるぞって言われた」

 

「……センセーはなんて返したの?」

 

まさにテイオーが恐れていた事態が起きていた。しかも無職の男の生活基盤である家族から反対されたようだ。テイオーは自分にとって良くない結末が脳裏をよぎり、体が固くなった。

 

「そんなの知るかって返した」

 

男はあっけらかんと答えた。

 

「え?」

 

「確かに言ってることは正論なんだけどな。客観的に見て、俺が火薬庫で火遊びしてる状況っていうのも理解できる。でもさ、元トレーナー志望として、泣いているウマ娘を放っておけないだろ」

 

「!」

 

「俺はテイオーを信頼してるけど、その周りの子が騒ぐ可能性はあると思ってる。それが原因で、もしかしたら俺は本当に逮捕されるかもしれない。でも、それもやっぱり仕方ないんだろう。よく考えた上で正しいと思うことをやったんだから、どんな結末でも受け入れるだけだ」

 

「そんなのダメだよっ!」

 

夢を諦めた男が、なんの因果か、夢のために身につけた力をウマ娘のために使うことができている。そのことを男はとても嬉しく思っていた。三女神に誓って、やましいことはしていない。

それでも世間が自分を追い詰めるようなら、きっとそれは仕方のない事だと覚悟もしていた。

 

だが、テイオーにはそんな男の気持ちは理解できないし、したくない。できることなら皆が幸せな方がいいと思っている。破滅覚悟の博打なんて、できればしてほしくないのだ。

 

「……ねえ、例えばさ、ボクが整体とかマッサージ屋さんに通ったとして、同じような効果って得られるのかな?」

 

男の診察がウマ娘に特化していて、代わりが居ない技術だということはテイオーの大前提だった。だから、自分の夢をかなえるためには、その力がきっと不可欠。なら危険な作業を分けることができないかと思った。最悪の場合、他の人を隠れ蓑に使うことだって考えていた。

 

「まあ、できなくもない」

 

「ホント!?」

 

「俺の施術は基本に忠実な技術だから、国家資格を持っているならどこでも受けられる。でも、それはあくまでも現在の体の調整だ。俺がやりたいのは、その先だ。ウマ娘として走るために必要な体の調整であって、今現在で発生している不調を改善することが目的じゃない」

 

「ケガをしてから治すんじゃなくて、ケガをする前に防止するってこと?」

 

「だな。もし俺と同じことをやろうとするなら、ウマ娘に関する深い知識が必要になる。どのくらいの負荷がどの位置にかかって、どこの筋肉が発達して、どこまで可動範囲を邪魔するようになるのか。そういった知識が要る。その上で、それぞれのウマ娘の特徴と目標を把握して、その目標を叶えるためにどこまで鍛えなくてはいけないか、どうすればケガをせずに済むのかって知識と、それを提案するだけの判断する力が必要だ。それもテイオーのような特殊な走り方にも応用させるなら、丸暗記じゃなくて、様々な基礎知識の深い理解が必要になる」

 

男は事が起きてから治すのでは、ウマ娘にとって致命傷になる恐れがあると思っていた。トレーナーの仕事はウマ娘がケガをしないようにメニューを組んで、ケガをしないように休憩させて、その上でレースに勝てるように強くすることだと思っていた。

そんな男からすると、ケガを止められないのなら、トレーナーとして失敗しているとすら考えていた。

加えて、現役のウマ娘のトレーナーになるのだから、レースに勝たせるのは当然だ。勝つための能力を得るために起こりうる代償――つまり負荷がどれだけのものになるのか。そういった総合的な視点がないと、ケガをしない強いウマ娘という男の理想は叶わないと確信していた。

 

「つまり、同じことができる人は……?」

 

「俺が知る中にはいない」

 

可能性は0ではない。だが、男にはそれが可能な人に心当たりはない。

理想とするトレーナーを考えた際、多くのコネを持つ両親に心当たりがないか聞いたことがあった。結果はもちろん『そんな人は聞いたことがない』だった。

 

「……やっぱりそうだよね」

 

「それができるなら、現役ウマ娘の故障率はもっと減ってるはずだ」

 

トレセン学園に来てから、まだ1年も経っていないテイオーだったが、ケガで学園を去っていくウマ娘はたくさん見ていた。それは数カ月で完治するものであったり、今後のレースに影響が出続けるものであったり、死ぬまで日常生活に不便を強いるものと、深刻さは様々ではあるが。テイオーにはそのどれもが自分に起こり得た未来に思えてしかたなかった。

 

「……センセー、ボクさ、どうしても無敗の3冠バになりたいんだ。ちっちゃい頃からの夢……カイチョーみたいになりたいんだ」

 

「ああ」

 

「だから、さ……このことがセンセーにとって危険なのかもしれないけど、ボクは……ボクのことをセンセーに診て欲しいと思ってるんだ!」

 

「いいぞ」

 

「ボクが夢を叶えるためにはセンセーの力が…………え?」

 

「だから、いいぞ。最初からそのつもりだ。さっき言っただろ」

 

「え、いいの? もしかしたら、センセーの一生が台無しになるかもしれないんだよ」

 

「それは嫌だけどさ。でも覚悟はしてたからな」

 

男にとって、断るのなら公園でテイオーのお願いを拒否していた時までだった。自分に代わる人材がいないのだから、1度でも面倒を見たのなら、テイオーが現役引退をするまで力を貸さないといけない。

男はそれがわかった上で、あのときテイオーのお願いを受けたのだ。

 

「そうなの?」

 

「お前が、どうにかして~って泣きついてきたときにな」

 

「……泣きついてはなかったと思う」

 

テイオーの苦し紛れの抵抗にも男は動じない。

 

「一応、確認するが、年上男性の家に上がってマッサージを受けるなんて、自分から丸腰で大型肉食獣の巣に飛び込んでるようなものだぞ。わかってるか?」

 

「……センセーを信じる。もしそれがボクの勘違いだったとしても、センセーに賭けるって決めたから」

 

テイオーの瞳に宿る強い意思を男は受け取った。

それでこそ俺も人生を賭ける価値がある。そう思った男は小さく笑った。

 

「そうか……お前の覚悟はわかった。安心しろ。俺は誓ってお前に手出しはしない。絶対にだ!」

 

「う、うん……」

 

テイオーの気持ちを受け取った男は高らかに宣言した。前から言っていたことだが、テイオーの様な年頃の子どもには何度でも言って安心させてあげたいと思ったのだ。レース以外で心配する必要なんてないんだぞ、と。

 

テイオーは急に男が勢いづいて目を丸くした。

 

「ケツの青いガキの胸や尻に手があたったとしても、俺は脂肪率とか疲労度しか気にならないぞ!」

 

「……別にボクのお尻は青くなかったよね」

 

これからも施術でそういった部分に手が触れるし、掴むことも頻繁にあるだろう。特にテイオーはいつも気にしている様子だったから、この点も大丈夫なんだよ、と男はわかってもらいたかった。

 

テイオーは自分の心がかつてないほどに、スンッとしていくのを感じた。

 

「たとえ地球に隕石が落ちてきて、俺とテイオー以外に生きている人が居なくなったとしても、絶対に手を出さないから安心しろ!」

 

「…………いや、流石にその状況になったら手を出しちゃうんじゃない?」

 

たとえ外部がどんな茶々を入れてきても、自分はテイオーの三冠を応援し続ける。だからさっきみたいに気に病む必要はないんだと、男は伝えたかった。

 

テイオーはそこまで自分に魅力がないはずはないと、冷静さを通り越して理不尽に対する怒りを覚えた。

 

「大丈夫だ! 俺はそんな女性に飢えてるわけじゃないからな。そもそもテイオーは女性としての好みにカスリもしてない! 頼まれたって断ってやるさ!」

 

「ふーん……まあ、覚えておくよ。今の言葉、忘れないでよね」

 

これだけ説明すれば、きっとテイオーだって心から安心してくれるだろうと男は思った。なんだったら、大学生のころの元カノの写真も探せばあるだろうから、それを見せてやってもいいとまで思っていた。

 

テイオーは幼いながらも、今日のことは絶対に忘れてはならない屈辱だと胸に刻んだ。

 

「おう。差し当たっては……テイオーのご両親への挨拶だな」

 

「……するの?」

 

さっきまでの恨めしい気持ちが吹き飛び、テイオーは恐る恐る確認した。

 

「当たり前だろ。仕事じゃないけど医療行為だぞ。テイオーは未成年なんだから、ご両親が了承していないとダメだ」

 

「で、でもさ、正直に話すのはアレだし、お世話になってることはボクから言っておくよ」

 

「いや俺も同席して正直に話すべきだろ。今後のレースを左右するんだぞ。テイオーも言ってたろ」

 

男は澄まし顔で常識を説いた。

 

「いいから! ボクが話しておくから必要ないって!」

 

「なにムキになってるんだ? 大丈夫、俺が真剣にテイオーの体調を考えてることを理解してもらえれば、この治療行為にも理解が得られるはずだ」

 

男はこういった重大で誤解を生みやすいことこそ、キチンと誠意を持って説明するべきだと信じていた。

 

「いやいやいや、ボクの両親は普通の人なの! 年上の男性に治療だって言われて、体を好きに触らせるのはダメだって思える人なの! センセーと同じ基準で考えちゃダメだから!」

 

「いや、ここは誠実であるべきだろ。テイオーを大切に思ってる人だからこそ、ちゃんと状況を丁寧に説明しないといけない。曲がりなりにも医師免許を持ってるものとして、診療に嘘は吐くべきじゃない。俺に任せとけって!」

 

「いいからセンセーは黙っててよーっ!!」

 

それからしばらく2人は激論を交わした。

結局、テイオーの両親への挨拶は2人で行うことになり、マッサージ部分を省いた状況を説明することになった。

お互いに譲れない部分を出し合っての結論だったが、その後のことを考えれば男の考えが最悪の事態を防ぎ、トウカイテイオーの抵抗が男の尊厳を救うこととなった。

 

 

 

 

 

 

スタミナが20上がった

体力が50回復した

やる気が上がった

トウカイテイオーの秘められた力が覚醒した!

「レースプランナー」を覚えた

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