『進路クリア。ーー〈アルメ・フュリウーズ〉、投射開始!』
スターティングブロックに似たシャトルが〈レギンレイヴ〉を牽引してレールを疾走する。
モビルスーツに乗るには、この加速力に笑って耐えられる体でないといけないそうだ。出なければモビルスーツにすら乗せてもらえないそうだ。だからこそモビルスーツとは選ばれたパイロットしか乗れないのだと実感する。
そして、軽量とはいえ一〇トン強ある〈レギンレイヴ〉を力任せに遙か高い北の空へと投げ上げる。
盟約同盟製、Mk1〈アルメ・フュリウーズ〉。
天空を征く戦乙女の名を冠するフェルドレスに、その名の通り天空を進撃路とさせる為の電磁カタパルト。モビルスーツのように〈レギンレイヴ〉を離陸させるためのーー空挺兵装の片割れだ。
重力を振り切り、上昇する〈レギンレイヴ〉はもう一方の空挺兵装内部にその身を隠している。〈フリッガの羽衣〉。そう呼ばれている推進装置。その名の通り、〈レギンレイヴ〉を天に駆けさせ、その姿を眩ませるのがこの推進装置の役割だ。
空力的に安定しない形状の陸戦兵器を包み込むフェアリングと、合わせて一〇トンを優に越す重量を遙か上空に持ち上げる為に取り付けられたロケットブースター。ロケットに点火と同時に安定翼が展開し、〈フリッガの羽衣〉はまっしぐらに天空に駆け抜ける。羽衣の名さながら全面に纏う無数の、鳥の羽の大きさと薄さの銀の破片が可視光を、さらには電波も弾いて煌めく。
焔の翼を得、銀の羽衣に身を隠して。〈レギンレイヴ〉の一群は上昇する。
前線、見上げるマンリヒャーの視界に、今まさに天を駆け抜けていく〈ジャガーノート〉の姿は映らない。地上の人間には映らない。ただ、そこに居るのだろう灰の曇天を見上げて独りごちた。
「戦神にして、死神が率いる。夜空征く亡霊の群。亡霊騎行か……」
亡霊の群れを率いる戦神は、同時に死なせる戦士の軍勢を述べる死神。
彼の元に集まった戦死者は誰もが死してなお、永劫の戦に勇んでその身を捧げると言う。
「俺達も、できれば連れていって欲しいものだな……」
大人気ないが……。
自分達囚人兵で構成された部隊はシールドの部分に刺青の様に紺色の線が塗装され、その本数で任務期間が決まっていた。
かつて自分は、命令違反と上官を殴り飛ばした罪で刑務所に入れられ、犯罪歴の抹消の為に配属となった。残りの刑期を全うすれば、晴れて自分は一般人となる。
フリッツヘルムの頭に換装されたこの〈ハイザック〉は今までよりも高いセンサー精度を誇り、戦闘も格段にやり易くなった。なんでも〈レギオン〉の大攻勢時に手に入れた光学センサを使っており、大量に余剰が出た事からこうして懲罰部隊の自分達にも回ってきた。すでに正規部隊のジェガンはガンダムヘッドに換装されていると言う事だ。どれだけ余ったんだろうかと感じつつ、マンリヒャーは〈ハイザック〉を動かす。
今回の看守は良い看守だ。戦果の上がらない腹いせに立場の低い俺達をこき使う挙句暴力に走る様子はない上にある程度の自由が与えられている。エイティシックスと接触でもしたら即座に銃口を突きつけられるが……。
この前まで共和国の派遣部隊として共和国にいたが、ここはまた別の印象だ。あそこもまた酷いものだった。まぁ、共和国が行なっていた身から出た錆ではあるのだが……。
まず、合州国の白系種が共和国の白系種に暴行を加えているのだが、当然被害者は訴えるわけだがその尽くが『証拠不十分』として不起訴処分となり、相手側も私服を着ている事から共和国人同時の喧嘩として片付けられてしまう。つくづく共和国人でなくてよかったと思う瞬間だ。泥棒は捕まっても、暴行は捕まらないのだから。
この前までリベルテ・エト・エガリテで襲来してくる〈レギオン〉相手に旧式機で戦っていたわけだが、まさかこんな場所に送られるとは誰が思っただろう。囚人兵の中で言えば〈ハイザック〉が圧倒的に人気である。懲罰部隊用に灰色に塗装され、右肩のシールドに残りの刑期を示す塗装が施されていた。使える武器も実弾武器やヒートホークがメインで、貫通力のあるビーム兵器なんて使わせてもらえなかった。ただ、今回はジャイアント・バズが使える。サラミス級を大破に持ち込める威力を持つ強力な武装だ。これならば屑鉄どもを一網打尽にできる。
「こちら〈レッドブル1〉、作戦継続。いつでも出られる様に準備しておけ」
灰色の〈ハイザック〉や〈ジム〉はそう言うとそれぞれ武器を片手に持ち出していた。
〈フリッガの羽衣〉が散布するものの正体は阻電攪乱型の模造品の翅だ。今まで機動打撃群などが制圧してきた〈レギオン〉の生産拠点のゼレーネと共に鹵獲されたサンプルを元として。
可視光を含めたすべての電磁波を、攪乱屈折し吸収する金属箔の鷹の羽。開発の愛称もそのまま〈真白斑の羽〉だ。その攪乱能力は警戒管制型や対空砲兵型おも欺く。
合州国の超硬スチール合金の技術供与により、通常よりは硬い装甲を持ったこの〈羽衣〉はブースターの推進剤を使い切り、〈羽衣〉から切り離される。
変わって折りたたまれていた滑空翼とプロペラが展開。噂によれば合州国のもつ熱核ロケットエンジンであればもっと長い時間を飛行できると言われているが、危険性を聞いているからあまり使いたくは思わなかった。
機械の移動方向が下降へと転じ、慣れない浮遊感が襲いかかる。
凍てつく高空の大気を斜に切り裂きつつ、空挺大隊は敵陣営の最奥へと、まっしぐらに滑空していった。
〈レギオン〉の哨戒部隊はこの戦場でも上空を飛ぶ警戒管制型に即座に集約される。その中、とある報告に警戒管制型は判断をしかねていた。
《データベース未登録の機体の残骸を確認。ロケットエンジンと推定》
しかし、当該区域に敵機侵入の報は無し。どの機体のレーダーにも反応はなかった。しかし、発見された残骸はまだ暖かく、不明機の残骸も無し。
ーー何らかの方法で電磁妨害装置を併用し、レーダーを欺瞞しての空中挺身。
おそらくは〈レギオン〉自身が、偶に行う斥候型にロケットブースターとグライダーを装備させて行う空挺と同じ……
それなら敵の目標は……
《イーグル・ファイブよりプラン・フェアディナント。敵機侵入》
切り札たる
《目的はプラン・フェアディナントの撃破ないし鹵獲と推定。警戒を》
《プラン・フェアディナントよりイーグル・ファイブ。了解》
《統括機機能活性。コーラレ・シンセンス、起動スタンバイ》
「ーー気付かれたか」
攻性工廠型の咆哮に、シンは目を眇める。しかし、攻撃はこないのでおそらく落下したロケットブースターの残骸だろう。<真白斑の羽>は至近距離でも<レギンレイヴ>を敵機から隠していた。一方、こちらは光学スクリーンに鉄色の巨影。降下予定地点、上空に到達。
当然、攻性工廠型の嘆きの声は随分前から、亡霊の声を聞く彼の異能が幽かに聞こえ続けている。
「……
<キュプクロス>を一瞥して、知覚同調でも拾わない音声で呟く。その間も降下は続き、目の前に攻性工廠型が映る。<フリッガの羽衣>は高機動型と同様レーザーに加え可視光線も欺瞞する。<レギオン>の光学センサは<レギンレイヴ>の一群を捕らえず、純白の機影は不可視の羽衣の加護の元、無数に乱立する高層建築の陰に紛れる。降下先は聖教国軍のかつての基地。その前には都市だった廃墟。
墓標群のようなビルが立ち並び、その間を<アンダーテイカー>が抜けていき、高度計と連動し、自動で開いた減速用の翼が急激に落下速度を奪う。
『<フリッガの羽衣>、除装』
ホロウィンドウの表示に続き、滑空翼が、フェアリングが排除。直後に衝撃。強烈な着地時の衝撃が、機体を駆け抜ける。
降り積もった火山灰を激しく蹴立てて。
銀と灰に染まる戦場にーー純白の戦乙女の群れが、舞い降りた。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい