86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#12 パイロット・ブレイカー

星暦二一四八年 十一月二〇日

 

休暇明けだが、前に使用していたジェガンがお釈迦になってしまったリノとエリノラは基地の一角の宿舎で命令を待つ日々が続いていた。

どうやら機体のフレームに亀裂が入り、あと一回戦闘をすればメインフレームがパックリ割れてしまっていたそうだ。

受領から半年で主力MSをお釈迦にした事にマルゼイが半ば呆れるようにリノ達に待機を命じた。

そしてこの日、ついにマルゼイから直命が降った。

 

「試験部隊に……ですか……」

「ああ、そうだ。まぁ、半年でジェガンをお釈迦にした懲罰として二ヶ月間のみ実験部隊として合州国の科学者達に協力。と言うわけだ」

「思っていたよりも軽い罰で安心しました」

「被害よりも戦果が大きいことが救われたな」

 

マルゼイはそう言うとまた話題をリノに話し始める。

 

「……リノ少佐、これはまだ内内示なのだが、近々さまざまな戦況に対応できるMSを主力とした独立部隊が編成されるそうだ」

「はっ……?」

 

マルゼイの話にリノは耳を傾けるとマルゼイはリノに言う。

 

「その構想案に君の第一一二MS小隊を私から推薦しておいた。この構想が実現すれば、君も出世するぞ」

「有難うございます。マルゼイ基地司令」

 

リノの事情をよく知って居るマルゼイはこれもリノへの心使いなのだろうと感謝を述べると命令書を持って司令官室を後にする。

残ったマルゼイは外の様子を見ながら思う。

 

「(リノ・フリッツ少佐は本来なら前線で活躍させるのが得策だとは思うが……今回ばかりは仕方がないな)」

 

そう思いながらマルゼイは机の引き出しから紙を取り出す。

そこにはクリップ止めで写真が添えられており、そこには灰色の一機のMSが写されていた。

 

「(本来の計画が打ち切りになって残った先行試作された二機の内の一機か……)」

 

そのMSは試験の段階で恐ろしい加速度を見せた事から今までに何人ものMSパイロットを壊してきた機体として《パイロット・ブレイカー》と言うあだ名で呼ばれていた。

 

「(彼の技量に期待するしかないな……)」

 

マルゼイはそう思いながら空を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

アバティーン性能試験場

そこは魔境と呼ぶに相応しい場所である。

合州国の狂科学者や科学者が集まり、日々新兵器の研究を行なってきている。

共和国から運ばれたレッカの〈ジャガーノート〉もここに運ばれ、分解と解析が行われていた。

そして今日もまた新たな迷兵器が作られようとしていた。

 

「ついたか……」

「結構時間かかったわね」

「んあー、腰バキバキ」

「これから荷物の運び出しに必要書類の署名。嫌になるわね」

 

そう言いながらリノ達第一一二MS小隊はアバティーン性能試験場にて二ヶ月間のみ試験機のテストパイロットをすることとなっていた。

飛行場に着いた彼らを一人の男が出迎えた。

 

「おう、リノ!久しぶりだな!」

「マルコ大佐!」

 

マルコ・フリッツ技術大佐

このアバティーン性能試験場の科学者達を取りまとめ、手綱を引いているここの責任者だ。彼は苗字の通り、リノ達と同じフリッツ孤児院の出身者である。

リノ達を士官学校に推薦したのも彼であり、彼がいなければ今頃MSを操縦していなかっただろう。

そんな彼に俺たちは敬礼をする。

 

「今日から二ヶ月間。ここでお世話になります」

「おう、砂漠と珍兵器と研究バカしかいないが宜しく頼むぞ」

「「「「……」」」」

 

初っ端から悪口が出てしまうことに苦笑を隠せなかったが、四人はアバティーン性能試験場で二ヶ月間地獄の一端を見るのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

リノ達がアバティーンに到着した翌日。リノとエリノアはマルコに連れられ、ある格納庫に入る。

 

「ここは……」

「お前らに見せる俺の作品だ」

 

そう言って格納庫の電源を入れると徐々にライトアップされ、全貌が窺えた。

 

 

 

特徴的な頭頂部のメインカメラ。

 

 

その下に取り付けられたV字型のマルチ・ブレード・アンテナ

 

 

それを挟み込むように取り付けられている六〇ミリバルカン砲

 

 

極端な擬人化を彷彿とさせるユニークなデュアルカメラ

 

 

胸部に設置された大胆な排気口

 

 

全体的に角張った印象

 

 

それはまさに……

 

 

 

 

「ガンダム……」

 

合州国が誇る傑作MS、ガンダムであった。

リノ達が驚いているとマルコは自身ありげに言う。

 

「肩式番号:MSZ-006C1[Bst] 通称:ハミングバードだ。目の前にあるのはその試作一号機だ……」

「ハミング…」

「バード……」

 

二人は格納庫に鎮座するMSを見る。そのMSは多数のブースターを接続し、脚部ユニットは後付けといった様相を見せていた。

 

「足に関しては元は宇宙戦闘を予想していたせいで後付けとなっちまったが…十分動かせる様にはなっている」

「「……」」

 

二人はマルコの説明を受けてハミングバードを見る。

まるで試していると言わんばかりにその巨体を見せつけてくるその姿は見るものを圧倒させていた。

するとマルコがリノ達に聞く。

 

「こいつはその推力がデカすぎて今まで何人ものパイロットの体を壊してきた。

 

 

 

 

だが。俺はお前らならこのじゃじゃ馬を乗りこなしてくれると思っている」

 

それはとても執念に近いとも言えた。目の前にいる科学者が己の技術を詰め合わせて開発したMS。それを乗りこなせるパイロットを見つけたように、燃え上がる火山のように彼は燃えていた。

リノ達はそんな彼の情熱を感じ取り、もう一度ハミングバードを見る。

 

 

 

 

ーーー乗ってみるがいい

 

 

 

 

そう語ってくる様にも聞こえ、リノ達はそのガンダムを見続ける。

 

 

 

 

 

ーー今まで何人ものパイロットを壊してきた暴れ馬。

 

 

ーーそれだけ暴れると言うのなら、手懐けてみようではないか。

 

 

ーー俺たちもまたある意味では暴君なのだから。

 

 

リノ達は再びマルコに視線を戻すとこう答えた。

 

「……乗るよ。これに」

「私も、キャノンガンはノロマで窮屈だったから……」

 

するとマルコは待っていたと言わんばかりに言う。

 

「……お前らならそう言ってくれると思ってた。準備はできている。あとはこれに乗り込むだけだ」

「そうか……」

「試作二号機は後ろにある。リノが出たらお前も外に出ろ」

「了解」

「じゃあ、早速行きますか」

 

二人はそう言うと階段を登り、〈ハミングバード〉のコックピットに乗り込む。

 

 

 

 

 

コックピットの構造は〈ジェガン〉と変わらず、むしろ〈ジェガン〉よりも動かしやすい印象だった。

 

コックピットの電源を入れ、機械音と共に核融合炉が動き出し、乗り込むために使った通路も撤去され、格納庫の扉が開く。

 

レバーを動かし、脚を動かす。後付けの脚部はのっそりと動き出し、格納庫を出る。

後ろで同様の音がするので、おそらくエリノラの機体だろう。

格納庫の外に出ると既に研究者達が機械類を並べて計測の準備を終えていた。

外に出ると通信機越しにマルコの声が通る。

 

『二人とも、まずはウェイブライダー形態に変更してくれ。コマンドーーーをすれば変形する』

 

なるほど、〈ハミングバード〉は可変型なのか……。リノ達はマルコの指示通りに設定を動かすと視点が一気に下がり、ウェイブライダー形態に変形したのが分かった。

 

「おぉ……」

 

さすがは鳥の名を冠するだけはあると感心しているとまたマルコの声が聞こえる。

 

『じゃあ、早速だが試験を始める。手始めに一号機から順に離陸をした後、加速テストを行う。そいつの限界を見せてくれ』

 

了解したと返事を送り、リノはレバーを押してエンジンに点火をする。

八基のブースターから豪快な音が響き、リノの機体は滑走路に進入する。

 

『今のところ問題なし。一号機は離陸を開始してくれ。二号機は滑走路で待機』

 

マルコの指示にもと、管制塔から指示が入り、リノは離陸速度まで加速を開始する。

 

「フッ……!!」

 

急激な加速に対するGが激しくなり、リノは堪えるような声が漏れる。

しかし、リノの機体は離陸を開始し、空に飛び立つ。

ここまでは耐えられるものが多かったのだろう。科学者達も平凡な反応ばかりであった。

空に飛び、次にマルコがエリノラの二号機を空に上げる。

空中で二機は合流をするとマルコが空中でもモビルスーツ形態に移行するよう指示がくだる。これも難なくクリアし、次に制動試験を行う。

他にも腕の可動系や脚部の異常の確認などを終わらせると最後にマルコの緊張した声が聞こえる。

 

『では、最後に……加速度テストを行う。ここが数多のパイロットを壊したテストだ。頼むぞ』

 

マルコの言葉に一瞬緊張が走るも、リノとエリノラは互いに頷き、覚悟を決めるとレバーを前に押し倒す。

 

轟音と共に二機のガンダムは空を切るように飛ぶ。それと同時にコックピットに過大な重力がのしかかる。

ホワイトアウトしそうになるもリノ達は気合いでそれを耐える。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

それを続けること五分、マルコの合図があり。加速度テストは終了した。

 

『……成功だ』

 

誰かがそう呟く。

全員が同じ気持ちとなった。

大空を切って飛んだ二機のガンダムに驚愕と歓喜の声が溢れる。

 

『やったぞ!成功だ!』

『あいつらあの暴れ馬しつけやがった!!』

『やりやがったぞ!!』

『データが取れたぞ!最高速度達成だ!!ぶっ飛んでやがる!!』

 

科学者達の狂喜乱舞の声が響き渡る。

マルコも涙を流して喜び、戻ってきた二機のガンダムにマルコは近づく。

 

「よくやってくれたな。やっぱお前ら最高だわ」

「はぁ…結構しんどかったっすよ」

「ゼェ……本当ね、失神しそうだったわ……」

「ま、とにかくお疲れ」

「ほら、肩貸すから」

 

そう言われテオとクラウに言われ、宿舎へと戻っていく四人を見送るとマルコは科学者達の中に戻ってさっきの計測値を元に彼ら専用のフルチューン機を模索していた。

かくして、ここに後に『蒼雷』と『赤雷』と渾名されることになる二人は誕生した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

《第六二次中間作業報告書 No.110234》

 

星暦二一四九年 一二月十日

 

試作可変型モビルスーツ 肩式番号MSZ-006C1[Bst]『ハミングバード』をリノ・フリッツ少佐、エリノラ・マクマ大尉専用機に改修した後、引き渡しを行う。

当該機は他に搭乗可能な乗務員がいない事から次期再編成時に設立される《多目的機械化特殊部隊構想案》の隊長機、副隊長機としての改修も施すことをここに提案する。

 

執筆者:アーノルド・フィッシャー少将 現アストリア合州国陸軍参謀本部人事局局長




Ζシリーズの中で作者が一番好きな奴を出しました。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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