86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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運営様からクロスオーバータグがねえぞってメール来てびっくらこいた。


#126 此処で終わり

レーナがリュストカマー基地に戻る頃には、聖教国軍での作戦の顛末や、彼の国の現状については連日報道を賑わす一大ニュースとなっていた。

攻性工廠型の撃破後に空挺大隊を回収に向かった事が誤解されたのか脚色されたのか、シン達空挺大隊を『救出』した事になっているミルメコレオ連隊。そこに第十三グループの報告はなかった。

 

「ーー間違ってはいない……のですか?」

「はっはっはっ!……なぁに、これで良いのさ」

 

キルヴィース(大公家に忠誠を誓う貴公子と言う事になっていた)やスヴェンヤ(十歳と言う設定が消え、絶世の美姫扱い)に注目しすぎて、若干ゴシップ記事になっている報道の内容に、レーナはやや不満げになる。すると、ドミトルが口を開く。

 

「あいつらに取って報道なんかより堕とした数の方が重要だ。上も、これで満足だと思っているのさ」

 

そう言うと、グレーテが肩をすくめる。

 

「ブラントローテ大公が手を回したのでしょうね。元々その為の部隊なんでしょうし」

「あえて目眩しの道化役をかって出たのもあるだろうよ。大公あろうものがよもや、自己顕示欲のためだけに手勢の功を水増しもするまい」

 

淡々とヴィーカは続ける。聖教国への派兵の間に修理を終えたレルヒェをいつもの通り従え、つい先ほど、連邦軍総司令部から送られてきた()()に目を落としたまま。

 

「こちらは報道には乗せられない。実際に動くまでは国民を欺いてでも、〈レギオン〉共に秘匿せねばならん」

「ーーええ、」

 

船団国群での作戦から、〈レギオン〉重点の破壊に加えて機動打撃群に課されていた、もう一つの命令。〈レギオン〉指揮官機の制御中枢の鹵獲。

今回参加した全ての機甲グループはそれぞれの生産拠点で〈レギオン〉の制御系を鹵獲した。その分析結果が目の前の紙の山だ。

ーー万一にも〈レギオン〉に傍受されぬよう敢えて紙で印刷された重要書類。

 

「量産型電磁加速砲型と、電磁砲艦型、攻性工廠型の諸元表。何よりーー複数の〈レギオン〉司令拠点の位置情報。これは大きいな」

 

既にドミトルには〈レギオン〉の話はした。帰還途中であり、初めは信じられないようだったが、話を聞いた後。真剣な眼差しへと変わっていた。

 

「ええ。これがはっきりしたならば、……次は」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

聖教国から帰還するまでの間に、何故か複数のプロセッサーから告白された。

クレナがシンに思いを寄せていたのはよく知っているが、そのクレナが区切りを付けたから、連鎖的に思いを告げにきたようだ。話した事も碌になかったり、顔見知りだったり、一人なんか同じ小隊の少年だった。隠していたけど、本当はずっと憧れていたと。前に婚約者が居たこと知った時のリノへの反応のと全く同じだった。

まるで振られるのを待っていたのかと思うよ腹立たしいような変な気分だ。それをまだ持て余しつつ、クレナは基地の廊下を歩く。

曲がり角を曲がって、丁度居室を出たところでセオと行き合った。

 

「あ、クレナ。お帰り」

 

いつもの口調だった。

 

「ただいま。……退院できたんだ」

「ちょっと前にね。今日は荷物を取りに来たとこ」

 

失われた左手には義手ーーと何故かでっかい鉤の付いたパーツを持っていた。視線に気がついてセオが笑う。

 

「ああこれ、カッコいいでしょ。イシュマエル艦長が送ってくれたんだけど」

 

セオにもイシュマエルにも悪いけど……ごめん、ちょっと趣味が悪いと思う。

 

「えっと、その。……ワニに食べられそうだなって思う」

「あー……それか。まあ海賊は確かにそうだけどさ」

 

なんでもこの鉤を詰めるために手の部分と交換できる謎改造をして貰ったそうだ。その手はいつも見てきたモビルスールをそのまま小さくしたような見た目だった。

そして反対の手には大きなカバンがかけられ、取りに来た荷物だろう。そしてここが彼の『家』であるはずの居室に、荷物を取りにいたと言うなら。

 

「……退役するの?」

 

翡翠の双眸が笑みを消して、まっすぐ見返す。傷に触れられた憤りや悲観ではない。ただ常温の水のように、平穏な。

 

「今の所そのつもりはないけどね。これからまだリハビリあるし、兵科が変わるなら教区内容も変わるから」

 

プロセッサーではーー機甲科ではいられないから、それ以外の道へ。基地の外へ。

 

あるいはそのまま、軍の外へと。

 

「一足先に、戦場の外を見てくるよ。同じ事になって抜けた奴に話も聞けるし、……もしかしたら今後同じことになった奴に、今度は僕が教えられる事もあるかもしれないし。……僕も、ハルトとレッカが見てきた景色を見てみたいし」

「うん」

 

明るく笑って言うセオに、クレナも笑って頷いた。

戦場にはいられなくなっても、戦えなくなっても、新しい自分の形は決められる。たとえ時間がかかっても、自分たちにはそれができる。

 

自分たちはエイティシックスだと、一度は定める事ができた自分達なのだから。信じられる。セオの事も。自分のことも。だからもうーー恐れなくていい。

 

ただ笑って、送り出せる。

 

「うん、行ってーー……」

 

その瞬間、基地の外から声が聞こえる。

 

「おーい!セオ〜!あの技見せてくれよ〜!」

「ちゃんと林檎持ってきたからさ」

 

呼ぶのはダイヤとハルトだ。いつも陽気な二人に、少しだけ助けられてきた事もあったなと思っていたが、タイミングが悪いよ……。と言うかセオもなんか嫌な顔しているし。

 

「えぇ〜、またやるの?」

「あったり前だろ。あんな面白えの、何回も見られるに決まってるだろ」

 

そう言うと、セオも半分諦めた顔でダイヤ達に近づくと厨房から区拗ねてきたのか分からない林檎をセオは左手に持つとそのまま右手に力を入れた。

 

「ーーふっ!」グシャッ!

 

その瞬間、持っていた林檎が簡単に握りつぶされ、文字通り粉砕していた。果汁が飛び出し、クレナの目の前を飛び出た果汁が掠めて行った。

 

「……ぶっ!」

 

その光景に、クレナは堪えきれずに吹き出してしまう。何、今の……

するとセオが説明してくれた。

 

「義手だから握力がなんかおかしな事になって……片手で林檎が潰せるようになった」

「ぶぶっ…なにそれ……アハハハ!!」

 

思わず笑い声が溢れてしまう。セオ以外の三人は笑い転げ、彼自身は半分呆れたように絞った林檎を基地の見えない植木に投げ捨てた。

 

「おかげでずっとこの二人から会うたびにこれをやらされる」

「ぶふっ…良いんじゃない?面白いし」

「僕が迷惑なだけだよ……」

 

そう言って、笑っているハルト達を観ていると、セオもいつの間にか釣られて口角が上がっていた。

すると、ハルト達は目元を拭うとそのまま笑ってセオを見る。

 

「じゃあな、セオ」

「……うん」

「色々と楽しみにしているぜ。新しい場所の話とか」

「うん」

 

そう言い、クレナはそこでダイヤ達の意思を感じる。

二年前の特別偵察任務の前。ハルトやレッカを見送った時のように、笑顔で……。

クレナは二人の思いを感じ、同じように笑顔でセオを見た。

 

「ーー行ってらっしゃい」

 

なおこの後、林檎をくすねたのがバレてハルト達は反省文を書かされる事になるとはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーー例の制御中枢の分析、もう来たのか。連邦の偉い連中、やる気満々じゃねえか」

「重要、あるいは必要だから鹵獲しろと言ってきたんだろうけど、確かに思いの外早かったな。ーーそれだけ連邦も、切羽詰まって来ているのかもしれないけれど」

 

レーナ達の元に分析結果が来たと言うのはシン達総隊長や、その副長にも伝達されている。だからシンやライデンが話をしていても不自然ではない。()()()()()()()()二人は言葉を交わす。秋の淡い日差しが射し込む、リュストカマー基地の隊舎の廊下。

 

二年前、八六区第一線区の最終処分場で最後に下される特別偵察任務にーー事実上の決死行に出たのが、丁度この時期だ。その時と同じ、秋に特有の透明な陽光。

 

短くライデンが言う。レーナらに伝えられた()()()()分析結果ではなく、秘されたもう一つについて。

 

「……やったな」

「ああ」

 

エルンストから直接シンとライデン、アンジュとクレナと、ダイヤとカイエ、基地は離れてしまうがセオにも伝えられた。この七人しか機動打撃群では知らない特秘情報。

合州国との繋がりがあるハルトやレッカにもあえて言っていないこの情報。

 

〈レギオン〉に停止命令を下す為の発信基地と予測される秘匿司令部が、位置の割れた司令拠点群に含まれていた。

正攻法ではまるで終わりの見えぬ、連邦ですら危うしさを増しつつあるこの〈レギオン〉戦争。それを止める鍵がーーエルンストの下に揃った。

 

それなら、次は。

 

廊下の曲がり角でアンジュとカイエ、フレデリカがやってくる。見上げる真紅の双眸の強い光。ーーそれはフレデリカも、聞かされているか。

 

フレデリカの安全の為に、エルンストらの政治工作が完了するのを待たないといけない。

大規模な作戦になるだろうから、相応の準備が必要だ。それでも、それが済んだら。

 

「ーー反撃に出る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

翌日

 

リュストカマー基地に複数の輸送機が着陸する。春先に見た合州国の輸送機、ミデア改だ。灰色に塗装され、阻電攪乱型の攻撃を受けても堕とされない様にロケットエンジンを搭載した特別仕様機は、格納庫に来ると駐機していたモビルスーツや人員を回収して行く。

 

「……」クシャ

 

ドミトルは手に持っていた小さな紙を潰し、悔しげな顔をする。誰にも見られない様にその紙をライターで燃やすとレーナ達が声を掛けた。

 

「ドミトル大尉……」

「あぁ、ミリーゼ大佐。それに、ノウゼン大尉」

 

周りでは全ての装備が回収され、モビルスーツに関する情報を漏らさない為に隊舎の中身まで確認がされている始末だ。

 

「俺達は此処で終わる。……最後はまだ、良い結果を残せたがな」

 

ストライカー戦闘大隊は聖教国での作戦を終えた後、解体される。既に決まっていたことであり、これから合州国の部隊が派遣されるのかどうかも聞いていない。もしかしから永遠に……

 

「……戦争が終わったら。海を見に来るのか?」

「え?あ、はい……」

 

すると、ドミトルはシンやレーナの肩を軽く叩いて言った。

 

「合州国の海は良い所だ。ついでにコロニーにも行って観光をすると良い。あの二人ですら回り切れていないからな」

 

視線の先、ハルトとレッカを見ながらドミトルは言う。すでに二人との挨拶は終えたのか、目線を合わせるだけで終わっていた。

再び視線をシン達に戻し、話を続けた。

 

「俺達は此処で終わるが、お前達はまだまだ進む。だから、俺からアドバイスをちょっとな」

 

これからの戦争の行先に、ドミトルはシン達に励ます様に言う。

 

「歯車には歯車の意地がある。君たちには、君たちに与えられた役割を果たせ。自分自身を見失うな」

「…それって……」

 

シンの問いにドミトルは口角を上げると、シンの胸の部分に軽く指を差した。

 

「此処が知ってる。君自身を決められるたった一つの部品だ。失くすなよ」

 

ドミトルはかつて自分の上司だった人から教わった言葉を、子供に伝えると『じゃあな』と言い残して去って行った。その顔は満足げでもあった。

 

 

 

 

 

そして暫くし、荷物や人を乗せたミデア改は離陸して行く。その様子を見届けるシン達、一部は手を振っていた。合州国の基地は何も残っておらず、その景色は二年前の特別偵察前のあの宿舎を彷彿とさせる。

何機も駐機していたミデア改はあっという間に離陸していき、基地にモビルスールの姿や夜中までうるさかった整備班の姿もなかった。

少し名残惜しそうに見送った後、シン達は基地に戻るとそこでグレーテに呼び出しを受けた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「少し、貴方達にだけ伝えておいた方が良いと思うから……」

 

基地の士官用の部屋。その顔は少し暗く、シン達は少しだけ気を引き締めていた。そしてグレーテは一旦息を大きく吸うと、シン達を観て言う。

 

「…今朝、合州国から連絡があったわ。

 

 

 

リノ・フリッツ中佐が合州国内の病院で死亡が確認されたと……」

 

 

 

 

 




死ぬかと思った隔日定時投稿……もう多分やらない。
少し休憩してから投稿再開します。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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