一体全体、何が起こったのか。
そう思ってから迅速に軍が動けたと言うのはとてもありがたい事だ。
「ふぅ…」
その日、地面に掘られた塹壕陣地で重機関銃の安全装置を解除したままその兵士は地面に座り込んだ。
その兵士はやや虚な目で、いっそ恨めしいほどに綺麗な夜空を見上げていた。
「おい」
最前線の鉄条網の中にあるリスニングポストで出入り口の警戒を行っていた彼は、後ろから肩を叩かれて振り返った。
「交代だ」
「了解」
そして同じ合州国軍の装甲服を纏っていた兵士に気がついてその兵士は警戒を行っていたリスニングポストから、足元に置いていた自前の小銃を握ると、そのまま他の兵士たちと交代して後方の第一塹壕線に後退する。
そこでは無数に重機関銃や迫撃砲陣地が構築され、戦車用掩蔽壕が用意されて
これより更に後方にはガンタンクが配備され、支援砲撃をいつでも行えるように準備がなされていた。
塹壕陣地では他にも合州国軍の装甲服を纏った兵士が陣地の中で休憩や食事をとっており、平穏がそこにはあった。
「ユンカース02より定時連絡を確認」
「第三迫撃砲陣地に予備弾を運んでくれ。第三補給所に用意してある」
「哨戒隊より連絡です。未だ接敵の報告はありません」
前線指揮所では最前線まで敷設された野戦電話であちこちに連絡をとっており、その中を今までリスニングポストで警戒を行っていた兵士は原隊に復帰する。
「カール・ピッツバーグ、メルト・グルー。ただいま戻りました」
「おう、お疲れさん」
そして彼らが帰還すると、掩蔽壕の一つで彼らの所属する小隊は食事をとっていた。
「お前達も配給所に行って来い。飯があるはずだ」
「分かりました」
「了解です」
そこで装甲服の顔面を外して答えると、彼らは小銃を背負ったまま配給所に向かう。
多数の兵士がこの塹壕線では行き交っており、その背後には簡単な修繕を終えたばかりの
配食所には他にも食事を摂りに来た兵士たちの姿があり、彼らも飯盒を持ってその列に並ぶ。
彼らは『第四号特別派遣憲兵大隊』と呼ばれている。
共和国の愚行に対し、合州国が『正義の味方』として共和国の治安維持を目的に派遣した義勇軍である。
目的は共和国首都への派遣と復興支援、それから再軍備を整えた共和国政府軍の訓練完了までの首都の治安維持活動等であった。
「おいおい、またかよ…」
「我慢しろ。お前だって『プラスチック爆薬』なんて食いたくねえだろう?」
「まあそうだがよ…ああ分かったよ畜生…」
そこで配食所で配給された食事にその兵士は軽く毒吐いた。なぜならそこで支給されたのは
「お、チリ・マックじゃねえか」
「お前!ビーフシチューじゃねえか」
そこで温めた後に彼らは封を切って中身を見て彼らは口々に話していた。
共和国の復興作業を合州国は積極的に行っており、多数の建材と生存していた共和国市民達の弛まぬ努力(政府公式見解)によってこの首都の施設は電力関係も含め、多くの施設が復旧した矢先にこの大攻勢である。
実質的に合州国軍本体から切り離されてしまった彼らは、元々大幅な人員削減を受けて本国に次々と帰還していった中でも最後の方に取り残された兵士であった。
「俺たちはここで墓場行きか?」
「さぁな、噂じゃあ本国から救援が来てるって話だぜ」
完全に地下化された塹壕陣地を前に支援塹壕で重迫撃砲の前で休憩を行っていた兵士たちは、双眼鏡を使って目の前の薄暗い平原を見つめていた。
「空が綺麗だ…」
「全くだ。屑鉄どもの曇り空じゃねえ」
「黙れ。寝れやしねえ…」
そして地下化された塹壕の隙間から見える夜空の美しさに彼らはそんな話をしていた。
ある者は空を見上げてその現実離れした美しさに目が皿になるように現実逃避をしていた。
ある者はその空模様にまだ<レギオン>の手が伸びていないことに安堵していた。
ある者は兵士の会話にうざったらしく毒吐く。
誰もがこの時に最も『生』を実感していた。
「あの流れ星が屑鉄のミサイルだったんだろう?」
「らしいぜ。向こうじゃ酷い有様らしい」
別の重機関銃陣地で兵士たちが語らっていたのは数日前の<レギオン>による大攻勢であった。この場所で彼らは随分と明るい流れ星がいくつも落ちていったのを見ていた。
「…一年戦争も、こんな感じだったのかね」
「さあな、あの時と同じ<衛星落とし>なんだろ?」
「俺たちの大隊長殿は見ていたかもな」
彼らはそう言い、不気味なほど静寂が支配している平原を警戒する時間を過ごしていた。
「…ん?」
そんな時、双眼鏡を使って最前線に設置された木に偽装された監視塔で、一人の兵士が遠く映る景色に目を疑った。
「あれは…!!」
そこで見えたのは遠くに見える閃光。それから少し遅れて雷のような音…爆発した音だ。
「っ!!」
そして次第に大きく波打っていたようにも見えた高速鉄道路線跡の奥から姿を現す無数の探照灯を照射する黒い影。すぐに彼の手は野戦電話の受話器を握っていた。
「こちら第八監視塔!司令部!応答願う!!」
段々と感じる振動に彼は今までの眠気も疲労も吹き飛んだような声で司令部に向けて怒鳴っていた。
その光景を見てある合州国軍兵士が呟いた。
「…酷いもんだ」
彼がそう呟いた場所は共和国の八五個ある行政区の一つ、その外縁に程近い八二区のバスターミナル。
そこでは連邦軍、合州国軍の装甲服や装備品を纏った兵士たちが駅や広場で立哨し、長い長い列を共和国の役人が避難誘導を行う景色であった。
首都の大通りや公民館、体育館、果てにはバス停など、使える公共施設は全て使って行われているのは生存した共和国市民の避難である。
「最初に役人が逃げ出しちまうとはな」
「これも政治ってやつさ」
そこで救援部隊の第一便で避難していった合州国側に避難していった政府関係者、軍高官を彼らは思い出す。
「次に元貴族などの金持ち、そこから住んでいた行政区の
「…なるほど、自分たちを置いていった
共和国の主要な地位についている民族は多くが白銀種出身。それはレーナを見ていても分かる通りである。
彼女は何かと祭り上げられてしまったことで、色々と便宜を図ってほしいと多数の手紙や贈り物が届いて辟易としているという話だった。
そんな事情は知らないが、それでも彼らはこの避難誘導の恣意的な行為の意味を誤解しなかった。
「そういうことさ。残された
そこで配給された
なお、この共和国派遣部隊である彼らは純血主義などを高らかに謳う旧弊に対し、密告を奨励し、徹底的に摘発を行ってきたことから
「ククク、なるほど。白系種もこれで分断ってことですか」
「そう言うことさ」
そこで到着したグランペルリに次々と乗せられていく避難民を見ながら彼らは話す。
「まあ結局んところ、たとえ
「…まあ、結局誰も自分の子供を戦地に送り出したいとは思いませんわな」
「そう言うことさ。俺だってとっとと兵役を終えて国に帰りてえさ」
彼らはそう話し、自分達の頭上で待機している
「俺たちも直ぐに戻れるようにしておけよ」
「ええ、分かっていますよ」
そこで合州国の兵士たちは頷くと、両手に小銃を持ったまま立哨の構えを崩していなかった。
その頃、グラン・ミュールの外側では先行して到着した
「各主砲、照準良し」
「主砲、各個の支援目標に向けて砲撃を開始せよ」
「撃ちぃ方初め!」
そこで一八〇反転をして停車した陸上戦艦の左舷側は最前線で戦闘を行う
「グラン・ミュールの破壊工作はどうなっている?」
陸上戦艦の艦橋で、真っ先に救援に駆けつけたことで残地部隊から熱狂的な歓迎を受けたパットン将軍は質問を行うと、部下の一人が報告をした。
「現在、グランミュールの非活性化作業は順調に進んでいると報告が上がっております。ですが三日以内での完全なグラン・ミュールの非活性化は困難であると連絡が…」
そこでバインダーに挟まれた紙を読み上げた部下にパットンは頷くと、そこで進発していく
そしてその輸送カーゴに乗り込んでいるであろう共和国軍の佐官クラスの将校を想像してパットンは心底顔を顰めた。
「ふんっ、軍人が市民を置いて真っ先に逃げるとはな…」
軍人の職務とは一体何だ、と思わせてくれる。『敵の振り見て我が振り直せ』という諺が遠い東洋の国にはあるそうだが、この状況はまさにそれであるだろう。少なくとも『大胆不敵であれ!』をモットーとしているパットン軍団からすれば信じられない光景が目の前に広がっていた。
「その点、政府高官と上級将校は流石ですね。日の出前の第一便で市民の目につく前にとっとと逃げ出していますよ」
「政治家どもは面を気にする。連中が気にしているのは春に出るアイツと同じで『新聞で叩かれること』だからな」
彼はそう言うと、司令部は彼の皮肉まじりの冗談に爆笑の渦が巻き起こった。
「至急、アイクに連絡をとってくれ」
「はっ!」
そこで彼はレーザー通信で本国に連絡を取った。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい