86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#4 南方見聞録その4

その日、ストライカー戦闘大隊は建造中の要塞戦線のとある戦区に派遣されていた。そこは砂漠地帯で有り、一面の砂景色にハルト達は唖然となっていた。

 

「すっげ……」

「一面砂だらけ……」

 

砂嵐が吹き荒れ太陽がジリジリと照りつけるその景色にレッカも同じ様に呟く。

一面砂色の砂丘に軽く吹き荒れる砂嵐に、暑すぎる地面。そして……

 

「おら!危ねえぞ!!」

 

そう怒鳴られ、目の前を走って行く車両群。旧式の兵器で〈マゼラ・アイン〉と言うそうだ。

 

 

 

ここら辺はジオン系と呼ばれるモビルスーツが配備されている戦区だと言う。その為、今まで見て来たのとはまた違う見た目のMSが並んでいた。

 

「あれが〈マゼラ・アタック〉あっちは〈ギラ・ドーガ改〉と〈ザクⅢ〉だ」

 

横で説明をしてくれるが正直あんまり理解していない。ただ、こっちの方が悪役っぽい見た目をしているなと言う印象が強かった。

 

一年戦争後、MSはジオン系と連邦系と呼ばれる二種類の機体があり、それらはパーツの互換性はあるものの、頭部センサーの違いなどで決定するそうだ。

此処は東部戦域。帝国との国境の他に東方諸国や盟約同盟との接続もしていた砂漠の都市。永遠と砂の大地が続くこの場所には今はジオン系モビルスーツやジオン系兵器が集結していた。

 

「おっと……」

 

砂を満載にした軍用トラックが通過し、此処でも要塞戦線の建造が進められていた。

 

「ゲホッゲホッ」

 

砂埃が立ち、咳き込んでしまった。こんな景色ならとっとと離れたいと思ってしまう二人であった。

 

 

 

 

 

今回の要請は建造中の要塞戦線の護衛と支援。ハルト達の仕事は……

 

「オーライ!オーライ!」

 

要塞の空堀をひたすらに掘る事だ。

〈XSTー4〉は前方のワイヤーアンカーをドーザーに付け替え、前進して地面を掘っていた。

砂漠で昼の気温が時たま摂氏五〇度を越え、夜は最低でマイナス二〇度まで下がると言うバカみたいな環境。そして足元が砂という安定しない形ゆえに重量級〈レギオン〉の襲来もほぼ無かった。ただ、襲撃が無いわけではないので護衛としてリノ達がビームライフルを片手に砂漠の競合区域を監視していた。

 

「これ…戦闘より工事の方が仕事してんだろ」

『そうね、此処に来てまともに戦った記憶がないわ』

 

地面を掘りながらそんな事をぼやくハルト達。確かに昔の塹壕戦の教訓に『歩兵の仕事は塹壕を掘る事』なんて言われて来てはいたが……。

 

「俺…軍を止めたら建設業者にでも入ろうかな……」

『おまけに下手に掘ると砂が滑り落ちてくると言うね……』

「やり難いなぁ…この地面……」

 

バカ暑いし、作業には精神削られるし、やってらん無いと叫びたくなってしまう。後ろでは試作品目当てで追従して建築資材を片手に持っている建設師団が掘った地面に鉄板やらセメントを流し込んでいた。

前方にドーザーを付けたせいで、正面方向に砲撃が出来ない為にまともな戦闘ができやしない。

 

「うわっ、また来た……」

 

視界の先、思わずレッカは呟く。周りでは既に人員は退避していた。この東部戦域で〈レギオン〉の襲来が少ない理由が発生したからだ。

 

 

 

砂嵐。

 

 

 

砂漠に舞う乾燥したミクロ単位の細かい砂が〈レギオン〉の制御系に入り込むと機器類を狂わせるそうだ。そして此処は南側の山脈から吹き下ろした風と東側の乾いた海風が交わる地点な為に頻繁に砂嵐が起こると言う。

合州国側は防塵対策を取ったり、敢えて設計をスカスカにしたりと対策をして来ているのだが、〈レギオン〉はそうでは無かった様で、砂嵐の後はぶっ壊れた〈レギオン〉の残骸がよく残っていると言う。その為、この東部戦域で〈レギオン〉の制御系を鹵獲したと言われている。

 

砂嵐が発生し。その吹き荒れた砂で失明や怪我をする可能性がある為に、装甲服を身に付けていない建設師団の要員は一斉に避難。砂嵐に紛れて襲撃されない様にリノ達も警戒体制を取っていた。この砂嵐でモビルスーツもたまに壊れると言う事でハルト達も警戒しないといけなかった。

 

『しっかしひっでぇ嵐な事で……』

「此処に来て五度目ね」

 

酷い時は一週間砂嵐だった時もあり、その時は流石にハルト達だけ先に避難していたこともあった。試作品であり、データ収集が目的の〈XSTー4〉おまけに作られた試作品の中では最も戦果を上げているハルト達の機体がぶっ壊れればデータ収集班達が絶叫する事間違いなしなので、リノ達よりも優先的に基地への帰還が許されていた。と言うか、三度目の砂嵐の時にレッカの機体の脚部が変に砂を噛んで動かなくなった時は冷や汗ダラダラだった。

 

「自然ってすげぇな……」

『本当ね……』

 

あの〈レギオン〉ですら敵わない自然の脅威と言うものを感じた二人は砂嵐で何も出来ない中、感慨深くそう感じていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その日、ハルト達は大量の荷物を片手に抱えていた。

 

「……なに?この荷物」

 

思わずレッカが問う。片手には玩具や生理用品などが有り、リノとクラウが同じように荷物を持っていた。するとリノが言う。

 

「何、今日はエリノラとテオが来れないんだ。ついでにお前ら、まだ孤児院に行っていないだろう?」

 

合州国で活動する為に、二人のプライバシーを守る事や様々な都合からハルト達は戦災孤児として、書類上はフリッツ孤児院出身としていた。その時、リノがアイダに頭を下げに行ったのは言うまでも無い。

 

「ついでに君たちの社会学習だ」

 

クラウはそう言うと、二人を二人の生家であると言うフリッツ孤児院の門を叩いた。

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね。手伝ってもらっちゃって」

 

孤児院に入った後、孤児院の子供達に囲まれ。てんやわんやとなり、その相手で既にぐったりとなってしまった後。今はこうして孤児院の台所で包丁を握っていた。

 

こんな経験は初めてでは無かった。収容所で、子供を産んだは良いものの親が出産の耐えられなくて死んでしまい、残った乳児。そう言った事案は残った人で何とか生き残らせるか、そのまま上で死ぬか。その二択だった。白豚からミルクなんて支給されなかったので、満足な栄養もなく、そのまま死んでしまうことが多かったが……。

 

「こっち、お願いできる?」

「あ、はいっ!!」

 

台所で此処の孤児院の院長をしていると言うアイダさんの指示で鍋やらフライパンやらをあっちこっちに持って走って行く。そしてその様子を台所の入り口から覗き込む多くの子ども達。その中には白系種の子供もおり、少し目線を逸らしてしまった。すると……

 

「おい、邪魔だからあっち行ってろ」

 

リノが現れて覗き込んでいた子供達を散らす。するとリノを見て一目散に子供達は台所からさって行くと、やや申し訳なさそうにハルト達に言う。

 

「すまんな、滅多に来ない来客なもんだから」

「あぁ、全然気にしてねえよ」

 

そう言うと、リノはそのまま去っていった。此処の孤児院には多い時は三十人近くいたそうだが、今は十二人が此処で暮らしていると言う。

 

「此処にいる子供達は殆どが〈レギオン〉戦争で親を失った子供達が殆どだった……」

 

昼食後、リノが孤児院の広間でお茶を飲みながら口にする。戦争が始まって十一年になる。そう、十一年。

 

「戦争が始まった頃は俺も子供だったな……」

 

そりゃ十一年も経っていれば懐かしいわけで、リノも開戦した時は子供だっだだろう。すると、リノは懐かしむ様に言う。

 

「あの頃は色々と忙しかったな……」

 

リノは戦災孤児ではない。幼い頃から此処で育って来た本物の孤児だ。だから戦争が始まって来た時の頃を思い返していた。

 

「その時に、エリノラとテオが来たんだ」

「あぁ、そういえば戦災孤児なんだっけ。あの二人は」

 

そう言い、レッカは前に聞かされた話を思い出しているとリノはまたお茶を飲んだ後に言う。

 

「まぁ、色々と忙しかったなぁ……」

「何があったんだ?」

「まぁ、いつか話すよ」

 

そう言うと、リノの横にアイダが座った。見た目は四十路だが、実年齢は六十路を超えていると言う。ちなみにそれを言った途端にリノはアイダさんからアッパーを喰らっていた。

 

「まぁ、今日と明日は子供達の世話を頼んだぜ」

「うん、分かった」

「意外といい経験にもなるかもだしな」

 

鼻血を流しながらそう言うと、リノはアイダに軽く目線を向けるとそのまま広間を出て行き。残ったアイダはハルト達を見ながらふと呟く。

 

「あの子から話を聞いた時は驚いた物だわ……」

「色々と迷惑を掛けてしまったそうで……」

「そんな事ないわよ。……まぁ、顔を出してくれなかった事は不満だったけどね……」

「……すみません」

 

レッカが思わずそうこぼすとアイダは軽く笑いながら言う。

 

「いいのよ、事情は詳しく聞いているわ……貴方達は今できる事をきちんとやれば良い……若いうちは好きな事を好きなだけすれば良い」

「好きな事……」

 

レッカの言葉にするとアイダは頷きながら答える。

 

「そうよ、若い時期ってのは少ないんだから。今の時期、子供に必要なのは夢を見る事よ」

「夢……」

 

オウム返しの様にハルトが呟く。

 

「好きな事をして、自分のしたい事を見つける。貴方達はせっかく生きているんだから、これから色々な出会いがあると思う。

 

 

 

貴方達に必要なことは夢を見ること。ただそれだけよ」

 

 

 

そう言うと、アイダは二人をこの孤児院に泊めるための準備をする為に広間を後にしていった。




アムロの声ってこれからどうなるんだろう……

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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