星暦二一四九年 七月二十日 午前一二:〇〇
アストリア合州国 第二〇号前線基地
この日、合州国全線において大統領からの通信が入る。
目的は今回行われる帝国領侵攻作戦『コテージ作戦』にて、兵士を鼓舞するためである。
この前線基地でも今から出撃する兵士達は皆気を引き締め、銃を手に持つ。
全回線につなげられたスピーカーから大統領の声が聞こえる。
『上院議員、下院議員並びに前線兵士の皆さん。私は合州国第78代大統領、フランクリン・ローズテッドです』
大統領の凜とした声が通り、リノは今から行われる大規模侵攻作戦に気を再び引き締めた。
『我々は昨年、多大な犠牲と共に奪われていた領土を解放しました。
しかし、それまでに失った命は帰ってくることはありません。我々はここまで十年もの時間を費やしました』
演説を聞く将兵達は戦争序盤の地獄を思い出す。
街という街はレギオンに蹂躙され、家族、友人を失った。
『しかし合州国は一〇年で未だにスタートラインにしか立っていません。
我々は帝国に今までにされた事そのまま返すのです。今までに失った兵士たちの思いを晴らすのです』
「……」
大統領の演説は全軍に響き渡り、今作戦に参加する二五〇万の兵士は神妙な顔をする。
『故に我々は勝たなければならない。無人の殺戮兵器を放った帝国にはその代償を払う必要がある』
そして最後に大統領は兵士たちに言う。
『これは合州国や、戦っているであろうその他の国を救うためでもある。子供達の未来を、明日を切り開くための剣となり、奮励努力してもらいたい!星条旗の旗の下、前進せよ!!』
こうして政治家たちへの地獄行きの賽は投げられ、国中が震撼する出来事が起こるまで残り八時間であった。
「傾注!」
リノの声が通り、ストライカー戦闘大隊の面々は耳を傾け、リノは指示を出す。
「これより我がストライカー戦闘大隊は帝国領レギオン支配域に本隊に先立って偵察、揺動を行う。俺とグリズリーが先行する。残りのMSは後方より援護射撃。戦車部隊は這ってでもついて来い!」
『『『『了解!』』』』
そう言うと大隊各員は一気に前進を開始する。
動員兵力二五〇万のこの作戦はバグラチオン作戦と同等の兵力を動員して行われる一大作戦である。
今回ストライカー戦闘大隊の主な任務はレギオン支配域の奥地に進み、敵の揺動、撹乱を起こすのが主目的である。
指揮官用に改装が施され、塗装も塗り替えられたハミング・バードは自慢の加速力を生かし、支配域奥地に突撃をする。すると後方からの追いかけてくるホーンドアウルから通信が入る。
『前方二〇、距離二万にレギオンの部隊を確認。戦車型四〇、近接猟兵型六〇、斥候型多数!』
EWACジェガンでも把握できない数とは、さすがはレギオンが支配する地域なだけはある。
この通信も共和国の知覚同調の技術がなければなし得なかっただろう。
複数の工場で急ピッチで大量生産が行われ、今ではほとんどの兵士の標準装備となっていた。
「了解、攻撃を開始する。グリズリー、聞こえていたな?」
『ええ、バッチリね』
「よし、攻撃を開始しろ」ピンッ!
リノはコックピットの赤い安全装置の蓋を弾くと中にある発射ボタンを押す。
「……吹っ飛べ」
カチッ…キィィィィン!!!
ハミングバードから発射される六本のビーム。高速で飛翔するその機体は阻電撹乱型すらも焼き尽くしている。
ドォォン!!ドドドドドォォン!!
花火のように誘爆するレギオン部隊、上空に飛んでいることを察知し飛来してくる長距離砲兵型の攻撃。
リノはその全てを交わしながら旋回をする。
低空飛行と言うこともあり燃料の消費が激しいが、あと三〇分は戦えそうであった。
「第二射、撃ぇ!!」
キィィィィン!!
ドォォン!!
焼け野原となった森林の一角にリノは着陸をする。
「隊長機より各機、着陸地点を確保。これより所定の攻撃を開始する。作戦をプランBに移行」
『了解、予定よりも本体の進行速度が遅いわ。気をつけた方がいいわね』
「その時は潔く撤退を開始する。他は?」
『後方に居る。長距離砲兵型がウザいってさ』
「ならば俺が攻撃を引きつける。ファルケ達は?」
『目下ガンタンクの援護中。うちらが突出し過ぎている』
「そうか……来るぞ!」
ガコッ…キィィィィ!!
ドドドドォン!!
リノが機体を跳び上がらせると元々いた場所に砲弾が着弾する。
「奴らちゃっかりこっちを狙ってやがる……」
『どうするの?』
「予定通りに撹乱しに行く。残りの部隊には本隊と合流するように伝えろ。MSにはついて来いと命令だ」
『了解、また無茶をするのね』
「各戦線の応援に行くのみだ。それも今回の主目的だろう?」
キィィィィ……!!ドォォン!!
ソニックブームを起こしながらリノは飛んでいく。
エリノラも呆れながらそれに追従するように飛び、他のMSも慌ててついていく。
『早ぇな、隊長達は』
『追いかけるぞ、じゃないと孤立しちまう』
「後方から援護する。EWACはベースジャバーに乗って後方から偵察。ウチらは狙撃をするからリゼルは隊長達の撃ち漏らしを撃て。情報の共有を常に意識しろ」
『『『『了解』』』』
クラウの指示の元、ジェガンSCはビーム・スナイパーライフルを持ち照準を合わせる。すでに胡麻ほどの大きさの二機のガンダムを照準に合わせる。
「もうあんな距離まで……化け物ね……」
クラウはそう呟きながらガンダムに向かって発砲する対空自走砲型と長距離砲兵型を確認する。EWACでは確認できない距離だ。大体フルマラソンの倍近い距離だろうか……。
「フゥ……」キィィィィン!!
クラウのビームスナイパーライフルから長距離用のビームが減衰距離ギリギリで対空自走砲型の一行を撃ち抜く。僚機のパイロット、ジェノム・クライスラーは唖然とした様子だった。
『減衰距離ギリギリでの狙撃……こんなこと出来る人がいるのか……』
足場が不安定なベースジャバーで、この距離の砲撃ができるとは……と関心をしていると隊長からの声が通る。
『総員退避!
その声と共に一斉に小隊は上空に飛び上がる。
それと同時に何かが飛んで来て爆炎と衝撃波をもたらし、地面にクレーターができる。
それと同時に戦車小隊からの声が聞こえる。
『畜生、やっぱり来やがったかデカンの悪夢が!』
『すっごい揺れたんだけど!?』
「戦車小隊は後退!MS小隊は引き続き長距離砲兵型と対空砲を黙らせろ!!」
『隊長はどうされるのですか!?』
『敵の超長距離砲を誘導する。あいつの射程は桁違いだ。攻撃する暇があれば逃げろ!!』
ドォォォォォォォン!!
そう言っている間にも砲弾は着弾し、攻撃は続いていた。
クラウは聞こえなくなった隊長の代わりに指示を出す。
「EWACは残った斥候型を徹底的に洗い出せ!リゼルは空から。ガンタンクは地上から敵部隊の殲滅だ」
『了解』
「フェルドレスは北側から来るレギオンの対応だ」
『了解』
『こんな棺桶に大量のレギオンなんて嬉しすぎて涙出そう』
二人の声が聞こえ、森の中で戦闘音が響く。
戦車型の性能限界ギリギリで戦う二人はまさに獣と言えた。
「(共和国が生んだ化け物か……。だが今はそちらの方がいいな……)」
クラウはそう思い、進んで来る本隊を確認しながら全体を確認する。予定地点で橋頭堡を作り、そこで本来合流を待って帝国軍が見えるまで戦闘を行う。
それが本来の作戦であった。すると全軍に一斉通信が入る。
『作戦司令部より全軍に通達。直ちに作戦を中止せよ。繰り返す、直ちに作戦を中止せよ』
「……ーーはぁ?」
いきなりの事にクラウや、他の小隊メンバーも疑問に思う。今の所大きな被害などは確認されていないが、一体何があったのだろうか。
出鼻を挫かれるようで、不完全燃焼な大隊は撤退を開始する。途中、レギオンの残骸をMSで回収して、ガンタンクに乗せて戻る。
その作業を続けていると情報が徐々に入ってきた。
『ギアーデ連邦?』
『ええ、作戦が始まった三十分後にレーダー施設が謎の通信を受け取ったそうです』
『それでなんでこうなるのよ』
『そのギアーデ連邦って言うのが、その通信をしていた相手だそうです』
「ふーん」
撤退を始める中、リノはそう呟く。戦線を荒らしまくっていた彼は渋々と言った様子で撤退を開始していた。
MS中心で最前線を張った事。
比較的早めに作戦が中断された事。
通信機で命令が一斉に前線に通達できた事。
どこかの誰かが戦線を飛び回ったことでレギオンが撹乱された事。
様々な要因が原因で、死者は奇跡的に誰もおらず、負傷者が五千人ほど出ただけで終わってしまっていた。
後に史上最大の軍事演習と呼ばれてしまう合州国の珍事件はここに起こった。
時は遡り、作戦開始から三十分後ーー
アストリア合州国 マッキー山脈山頂 OTHレーダー施設
レギオンの接近をいち早く察知し、アストリアが誇る量子コンピューター《15−13》により最も近い前線基地に出撃命令が下る。
アストリア合州国が一年戦争時に開発した超長距離レーダーはなんとギアーデ帝国首都ザンクト・イェデルまでもを探知することが可能であった。
レギオン戦争序盤に合州国軍が抵抗できたのも、このレーダーがあったおかげでもある。さらに二年前に導入された《15−13》と合わせた事で、合州国に最強のの防御壁を形成することとなった。
そんなレーダー施設は今日の作戦の為、味方の援護の為にレーダーに注視していると管制員の一人が怪訝に思う。
「ん?なんだこれ?」
「どうした?」
「これ聞いてみろよ」
そう言い、一人がヘッドホンを差し出す。
ヘッドホンに耳を当てると微かだが、音が聞こえた。
『ザザ…ぽう……こ……はきょ……ぎあー…んぽう……』
雑音と共に聞こえる不可解な音声に管制員は目を細めて周波数のつまみをいじる。
「この声はなんだ……?」
そしてつまみをいじっていると徐々にその声は鮮明となってヘッドホンに伝わってくる。
『こちらは、共和制ギアーデ連邦……聞こえていれば周波数〇〇で返答をされたし』
「ギアーデ連邦?」
聞き慣れない国名に疑問を抱きつつも通信をしてきているということは生き残っている国家がいるということだ。
レーダー施設は一瞬の沈黙の後、大慌てで各機関に連絡を取る。
「大急ぎだ!生き残っている国がいたぞ!!」
「本部への回線は繋がっています!」
「よし、俺たちも返事をするぞ。周波数を合わせろ」
そうして周波数を合わせ、マイクに向かって緊張した声色で喋る。
「こちら……アストリア合州国……第一七号レーダー施設……聞こえていれば返答を求む」
少しの沈黙の後、スピーカーに返答が返ってくる。
『こちら、第二〇三哨戒部隊……アストリア合州国の通信を探知した……返答してくれた事に感謝をする』
雑音混じりに聞こえたその声に管制室は喜びに包まれ。この情報はすぐさま首都アセントンD.C.に送られた。
大統領府、連邦政府、国防総省はこの情報を受け取り戦慄し、《コテージ作戦》の即刻中止を命じる。
後で被害確認をした時に負傷者しかいなかった事に政府は心底ほっとしていたと言う。
そんな訳で、コテージ作戦はこのような理由で中止となり、合州国軍は手に入れた領土を半ば放棄する形で、国境十キロほどのところで停止する事になってしまった。
合州国政府はギアーデ連邦と名乗るこの国に一種の危険性を感じつつも生き残りの国がいた事を報道する。
まだ詳しい情報が何もない為、報道も少ししかできなかったが。それでも国民を勇気づけるには十分な宣伝であった。
しかし、合州国政府はギアーデ連邦がギアーデ帝国の後継国であると言う事をまだ知らなかったのだった。
すごい久しぶりにガンダムシード見たけど、アレやっぱすげぇわ・・・・
ナニとは言わんけど・・・・
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい