86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#9 南方見聞録その9

正暦二一四九年 第三共和国歴〇一〇六年

 

一年戦争後、一時の平穏な平穏の後。今度は帝国が仕掛けてきた。それが今からちょうど十年前の話。

 

一年戦争集結より十七年。合州国は新たな脅威に晒されていた。

 

建国以来、合州国の仮想敵国として睨み合い続けてきたギアーデ帝国が突如として周辺各国に戦線を布告。大陸全土を巻き込んだ殺戮戦争を開始した。

 

その時、合州国の防衛並びに後方支援の場として活躍したのが大陸最大の島、ルナリス島だった。

 

合州国の代名詞とも呼べるコロニーは元々、合州国国内における人口爆発に対応する為。周囲の海域に強力な海流が流れてる中、その海流が弱いポイント、俗にラグランジュポイントと呼ばれる場所に海上都市コロニーを建造した。

そしてそれらラグランジュポイントに建造されたコロニー群をサイドと呼び、合州国はそれらコロニーに移住を始めた年に新たに改暦を行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ルナリス島 フォン・ブラウン市

 

『カタパルト準備良し』

『ロケットブースター点火準備』

『進路クリア。射線上に障害物無し』

 

係員が確認を取る。

その視線の先には巨大な天を穿つかと思えるほどの巨大な鉄骨を組み合わせたような巨大なレールが聳え立っていた。

 

『システムクリア。オールグリーン』

『射出開始。射出開始』

 

その瞬間、レースの上に搭載された巨大なロケットブースターを接続したミサイルはカタパルトから打ち出されると、そのまま大空を飛翔していった。

 

「すげぇ……」

『何て音なの……』

 

発射されたロケットを眺めながらハルト達は思わずそう呟く。

 

今回、ストライカー大隊の派遣された場所はルナリス島に存在するマスドライバーから打ち上げられるミサイルの護衛任務にあたっていた。

 

このマスドライバーから発射されているミサイルは国境線沿いに襲撃してくる<レギオン>に向けて発射されている。

安全な後方から射出されるこの弾道兵器は山脈を越えて最前線の〈レギオン〉の真上に降り注ぐ。

ただ、この兵器は低コストだが、あまりにも速度が遅いことが難点であり。対空砲兵型に迎撃されることがあるのが難点だった。

 

先のバグラチオン作戦に於いて<レギオン>は電磁加速砲を持ち出した。

元々ビーム兵器という回避が難しい兵器が存在しているが、地表の重力と磁場の関係で超長距離の狙撃にはあまり向いておらず。ましてや制御系を一発で撃ち抜くのは数キロ離れた場所にあるコインを欠陥銃で撃ち抜くような物だ。

そもそもミノフスキー粒子が撒かれている戦場じゃあ、よっぽど超長距離狙撃なんて厳しいものがあった。

 

その為、現在合州国は南部のとある場所に<レギオン>の電磁加速砲に対抗するための巨大砲台を建造しているという噂もあった。

元々はジオン軍などによる『衛星落とし』で核兵器まで使って防ぎ切れなかった事で戦前より研究が進んでいた代物だと言われている。

メガ・バズーカ・ランチャーやスキウレと呼ばれる要塞砲も存在するが、それらは専ら要塞の近接戦用の砲台であり、超長距離の攻撃にはあまり適さぬものだった。

 

地上でビーム兵器は長距離射撃には向いていないのである。その為、合州国は今でも実弾兵器を備えていた。まぁ戦車型などを横薙ぎに一掃できるため。中・長距離戦では圧倒的にビーム兵器ばかり使用されてはいるが……。

 

『次弾発射まで一二五〇秒』

 

無線で連絡が届く。ここは後方で滅多に<レギオン>の攻撃も無いが、ここに警備部隊が展開しているのにはとある事情も混ざっていた。

 

「ったく、機体の整備点検の為に来たとは言え…これじゃあ暇だなぁ……」

『仕方ないわよ。ウチらのデータはそのままこの国のフェルドレス開発に使われるんだから』

 

知覚同調を介してレッカと二人は個人通信をしていた。

 

 

 

合州国に来た際に取り除かれて研究材料となったデバイスはすでに合州国内で急ピッチで生産が行われ、どれだけミノフスキー粒子が濃い環境下でも問題なく通信ができるというこの画期的な技術に目を付けぬ筈がなく、先行量産型がこの部隊には配備されていた。

なお、これが共和国製の技術である事は入手方法を知る者以外は知らぬ技術であった。勿論、それを他人に言う事も禁止されていた。

 

このフォン・ブラウン市には軍が接収したマスドライバーが置かれており、ほぼ毎日最前線に向けてこの大型ミサイルが放り投げられていた。

元は衛星軌道まで人工衛星を打ち上げる施設だったそうだが、今ではこうして兵器を飛ばす軍事施設として稼働していた。

 

そして、今回はハルト達の搭乗する試作機である<XST−4>の今までの戦闘データ回収の為にルナリス島に訪れていた。

合州国の工廠で試作された本機はレッカが持ち帰った共和国製の<ジャガーノート>の戦闘データと合わせてこの国では初となるフェルドレスの開発に勤しんでいた。

共和国から()()()()フェルドレスは多くの欠陥を抱えていようと、貴重な現物データとしてこの国では重宝されていた。

すでに新規フェルドレスにはいくつかの企業が参入しており、試作品の制作も行われていた。

 

「どんなフェルドレスができるんだろうな?」

『少なくともこんな急増品は辞めて欲しいわね』

 

そう言い、レッカはなんとも微妙な評価の急増試作品を見る。番号こそあるものの、正式な名前を持たないこの急増試作機は圧倒的な打撃力を持つ反面、その代償が数多くあった。

 

「今度試作品を見せてくれるんだっけか?」

『ええ、リノからはそう聞いているわね』

 

試作品の視察にハルト達はついて行く事となっているが、すでに複座式という時点で二人が乗らない事は確定していた。

このフェルドレスは合州国軍が運用しているホバートラックの代替も兼ねており、指揮偵察通信車としての役割も追加していた。

設計は何十年も前のM61の発展系となっており、強力な主砲と良好な足回りはそのままだと聞いていた。

 

「こういう時、上が有名人だと色んなところに連れて行ってもらえるんだな」

『まぁ、あくまでもウチらはフェルドレス運用の経験者だからって事じゃない?』

 

レッカ達はそんなことを言い合いながら暇つぶしをしていた。正直、こんな場所に<レギオン>が来る気配もないし、ただただ発射されていく大型ミサイルを見ているのもそろそろ飽きてきていた。

 

「暇だなぁ……」

 

ハルトは息の詰まるような感覚に少々悩まされていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後

ハルトとレッカは合州国の士官服を身に纏ってとある工場に向かった。

 

ここは一年戦争前より、合州国軍に武器を納入してきた歴史あるヴィックウェリントン社の工場であった。

軍より入札方式で行われた新規フェルドレス開発はヴィックウェリントン社製の試作機が最も優れていると判断され、採用されようとしていた。

 

「今日はよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそよろしくお願いしますよ」

 

リノはハルト達を引き連れて会社の人間と握手を交わすとその技術者は次にハルト達を見た。

 

「彼らがテストパイロットの方々で?」

「ええ、彼らはフェルドレスのテストパイロットです」

 

そう答えると、その技術者はハルト達を見て思わず呟いてしまった。

 

「なんとお若い事で……ああ、いや。失礼なことを言ってしまいましたな。さ、こちらへ」

 

失言をした事に慌てて話題を変えて技術者は三人を工場内に迎え入れていた。

 

 

 

 

 

工場に入った三人はその中の一角に鎮座する巨大な多脚装甲兵器を見た。

 

「こちらが、我が社が開発いたしました最新鋭のフェルドレスであります」

「でっかぁ……」

「こんな巨人機なの?」

 

そこで見上げるようにハルト達はその新型フェルドレスを眺める。

<ジャガーノート>を回収してから一年近い年月が経っているが、そこまででこれほどの巨人機を制作した事に驚きを隠せなかった。

 

「正式名称<FD-01ハンティング・ドック>。全長は一二.七m、全幅五.二m、全高三.七m。

主砲は二〇〇ミリ連装カノン砲を装備。副兵装に一三.二ミリ重機関銃を二丁。最高速度は時速百キロ、乗員は三名」

 

なお、この二〇〇ミリ連装砲は補給の関係上からすぐさまネモ用に既に開発されていた一七〇ミリキャノン砲に換装される事となった。

 

「今の所、このフェルドレスには緊急用に履帯を装備しており。いざとなれば作動するようになっています」

 

この履帯の装備は後にミデアのローターを流用した機構に変更され、その際に特徴的な十本脚はお飾りとなってしまった。

そしてついでに名称も<FD-02ハンティング・ドックⅡ>と改称され、この合州国初のフェルドレスはごく短期間しか生産され無かったレア機体となってしまった。

 

 

 

 

 

ただ正直な話、合州国ではフェルドレスの必要性があるのかが疑問視されていた。

元々モビル・スーツと言う優秀な兵器が存在し、<レギオン>に対して上から攻撃できると言うアドバンテージがあった。

偵察に関してもアンダーグラウンド・ソナーを装備出来るEWACジェガンが存在していた。

 

ただ、EWACジェガンは繊細な装備を備えている影響で配備が進んでいないのも事実。おまけに長期行軍の際に通信の中継基地や隊員達の物資輸送車として一定数の需要があった事もあり、ホバートラックの代替品として採用が決まっていた。

 

恐らくこれから行われる帝国領侵攻作戦の事も考えていたのだろう、アンダーグラウンド・ソナーを駆使した長距離偵察兼物資運送車両として大量の受注が行われた。

 

まぁ、これらにはMSの製造を一手に引き受けているアナハイムやZZM社などの会社の他に、軍需産業に他社を参入させると言う連邦政府の思惑があったりするのだが……。

 

 

 

ZZM社は一年戦争後にアナハイム・エレクトロニクス社による合州国のMS産業の独占化を危惧した当時の連邦議会が、元ジオン公国のMS製造会社であるジオニック・ツィマッド・MIP社を強制的に合併させて生まれた会社だった。

これにより連邦系と呼ばれるMSはAE社が、ジオン系と呼ばれるMSはZZM社が製造する事となっていた。

これらの他にMS製造は軍が独自で研究を行うための海軍戦略研究所サナリィやタキム重工などがあった。

 

 

 

そしてそんな数多く存在する軍需企業の中で今回はヴィックウェリントンが選ばれた形となった。

 

「いかがです?」

 

そんな巨人フェルドレスにハルト達が乗り込むと、ヴィックウェリントンの技術者が聞いてきた。

そしてそんな彼の問いに乗り込んだハルト達は答えた。

 

「うーん、中に空間があるから長期行軍の随伴には持って来いですね」

「ただ、重武装で機動性には難ありです」

「仕方ありませんよ。元々この機体は随伴用の……ようは直接戦闘をするような設計じゃありませんからね」

 

技術者はそう答えると、目の前にある巨人機を眺めていた。




この世界のAE社はやばくないゾ。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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