ギアーデ帝国の存在は知っていた。この前の社会の授業で合州国の山脈の奥に存在する国であると散々言われて来ていた。
そして今回、そのギアーデ帝国は周辺の国や大陸中の国々に宣戦布告をした。
なまじ、小学生にしては大人びていたと思う自分はその非日常に興奮と驚きで混ざり合っていた。
「なんて事でしょう……」
そう言い頭を抱えるアイダ。ここは山脈から遠く離れた場所で、戦争に直接巻き込まれることは無かった。
「大丈夫か?お袋」
「ええ……」
リノの問いかけに顔を青ざめた様子のアイダは答える。
今日の学校は緊急で休みとなり、不要不急の外出も控えるように言われていた。
この時はまだ知らなかったが、正直戦争が起こったと言う実感は無かった。だっていつも通り自分は生活しているんだから。
だからアイダが顔を青くしている理由が、この時は一ミリも理解できなかったのだ。
「だ、大丈夫なのかな?リノ」
不安そうに聞いてくるクラウにリノはいつも通りの声で答える。
「ん?大丈夫だって、だって俺たちには強いモビルスーツがいるんだ。お前も見た事あるだろう?」
リノはそう答えると、少し勇気をもらったのかクラウもホッとした様子を見せた。
「そうだね……モビルスーツがやっつけてくれるね」
そう言い、二人は前にパレードで見に行ったときに見た<ジムⅡ>を思い出す。
軍の象徴であるモビルスーツの勇ましい姿に感嘆と憧れを抱いたのはよく覚えていた。
「そうさ、今でもモビルスーツがカッコよく戦っているに違いないさ」
そう言い、少年はそんな想像を掻き立てていた。
『第八MS大隊、通信途絶!』
『第五歩兵大隊が撤退を開始しました!』
その頃最前線では地獄が広がっていた。
撤退に次ぐ撤退。部隊が壊滅した場所も存在し、戦線は大きく南下していた。
開戦してまだ数日しか経っていないと言うのにこの有様だ。
「第二二機械化混成師団は?」
「おそらく壊滅状態かと……」
「なんて化け物だ、<レギオン>は……」
キング・トレー級『ベッカム』の司令所にてアーノルド准将は頭を抱える。
「如何なさいますか?」
部下の問いかけに彼は即答する。
「味方の撤退支援が先だ。後方の民間人の避難は?」
「既に行われております」
「よし、これより我々は支援砲撃の為、艦隊を率いて支援砲撃。急げ」
「「「「はっ!」」」」
命令の直後、撤退中の味方の援護の為にアーノルド率いる陸上第三艦隊は北上を始める。
「すまん、皆の命をくれ」
彼の呟きに司令部にいた全員が同じ事を思った。そして全員が彼に向けて敬礼をした後に命令を出した。
「ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布!」
「艦首、メガ粒子砲発射!」
「モビルスーツ隊は発艦急がせろ!」
「主砲発射!撃てぇっ!!」
その瞬間、視線の奥に見える銀色の群れに向かって閃光が放たれた。
「さ、行くのよ」
「待ってよママ。まだみんなにお別れが……」
避難命令の出ている山脈以北の地にて一人の少年が避難用のバスに乗り込む。
「時間が無いの。さっ、乗るわよ」
母に手を引っ張られて黒髪が特徴的なその少年、テオパルドは避難する為にバスに乗り込んだ。
「これからアーノルドおじさんの家に行くんだから」
「え?おじさんの家に行くの?」
テオは母の話を聞いて顔を明るくさせた。
「ええ、暫くはおじさんのお世話になるのよ」
「本当?!やったー!!」
そこでテオは嬉しげにすると、乗っていたバスは南に向けて走り出す。
周りには自分と同じように避難する人たちの姿で溢れかえっており、バスのニュース速報では日に日に押されている戦況に不安がる声が上がっていた。
「戦況は悪くなる一方じゃないか……」
「どうなるのかしら?私達……」
「大丈夫だ。山向こうに避難すれば安全だ。昔は帝国軍の猛攻さえ凌いだんだ」
バスの中、ある人が呟く。
山向こうとは、いつも家から見えていたあの大きな山脈だ。いつも見上げている大きさで、おじさんの家に行く時もその山を超えていた。
「ねえねえ、おじさんの家に行ったらまた遊んでくれるかな?」
「うーん、どうでしょうね?ちょっと忙しくて遊べないかもしれないわ」
「そんなあ……」
その時の母の表情はとても深刻なもので、怯えているのを必死に隠しているようだった。
「でも暫くしたらおじさんに会えると思うわ。それまではゆっくり待ちましょう」
「うん!」
そう答え、テオは楽しげにバスに乗っていた。
『この地域に避難命令が出されました。直ちに住人の皆さんは避難を行なってください。繰り返します。この地域に避難命令が出されました。直ちに住民の皆さんはーーーー』
街中をランプを照らしてパトカーが走り回る。
その警報を聞き、とある家の屋根裏で暮らしていた赤い長髪の少女はその音声を聞くと扉が開いてそこから一人の小太りの男が顔を覗かせて蔑んだ目で怒鳴り散らした。
「行くぞ。来い」
「……はい」
何が起こっているのかは分からないが、その少女はゆっくりと起き上がるとそのまま屋根裏を降りる。
その腕や体にはいくつもの傷跡が残っており、来ている服もボロボロで薄汚れており、屋根裏に上がってきた男の綺麗な服装に比べて見間違うほどだった。
「ったく、鈍い動きしやがってこのクソガキ」
「……申し訳ありません」
少女は力無く地面に座り込もうとすると、その男は愚痴るように言う。
「余計なことすんじゃねえ!とっとと着替えろ」
そう言い適当に見繕ったのか、一着の新品の服を投げる。
「ったく、戦争なんて起こしやがって……帝国のクソ野郎が」
お陰で面倒なことになったと言った後にその白髪の男は荷物を片手に持って出て行く。慌てて少女は着替えた後に外に出る。
いつもは窓の外から見ていた景色が目の前にあった。その物珍しさに何があったのかと思っていると私は怒鳴られると思ってその男のそばに移動する。
「行くぞ」
「は、はい」
街には警報が鳴り響き、既に周りの家の明かりはついておらず。ついでに車の姿もなく、この街に自分達以外誰もいないような感覚だった。
この時の戦況は極めて劣勢だった。
宣戦布告と同時に各方面に送り込んだ<レギオン>は瞬く間に国境線を突破し、破竹の勢いで進軍していた。
対応するMS部隊は初めの頃は善戦するも、次第に戦車型や重戦車型の物量による集中砲火に遭って撃破されていく。
向こうのAIがMSに対する撃破手段を手に入れた後はさらに進撃速度は増す事となった。
遅滞戦術で味方撤退の支援を行ったアーノルド率いる第三陸上艦隊は艦隊が殿を務める形で侵攻してくる<レギオン>に大打撃を与え、押されていた戦線に艦隊の持つ大火力を持って穴を開けていた。
「主砲!撃てぇ!」
「第六ブロック被弾!」
「応急処置、急げ!」
「第三MS小隊応答無し!撃破されました!」
巨大な的とはいえ、ただの戦車相手に陸上戦艦が負けるはずも無かった。
「味方撤退はどうなっている?!」
「確認が取れる範囲ではこの戦域にいる味方は第二予備ラインまで後退を確認しました」
確認を取ると艦橋上部に立っていたジム・スナイパーⅡによる射撃が行われ、遠くにいる<レギオン>を掃射していた。
「よし、撤退する。艦を回せ」
「はっ!!」
「反転左一八〇度!撤退せよ、各艦に通達!」
「宜候、反転左一八〇度」
砲撃を続行しながら艦隊は南進する。
「これで勝ったと思うな。我々は必ずこの大地に舞い戻ってくるぞ」
アーノルドは屈辱を噛み締めながら北方の大地を眺める。
今回は帝国の奇襲攻撃に翻弄され、数多のMSが撃破された。この薄汚い帝国のやり方に彼らは怒りを屈辱を抱き、必ずやここを奪還すると心に決めていた。
しかし、避難を行なっているものの山脈を越えるために使われている鉄道やバス、船舶などの交通網は麻痺を引き起こしていた。
南方に移動するために一気に山脈の奥から避難民が押し寄せたために、元々の路線がそれほど多くない鉄道駅や海沿いの道路には多くのバスや自家用車が停まっていた。
「ママ、お腹すいた」
「も少しで到着するから。我慢できる?」
そんな長大な渋滞に巻き込まれるようにテオはバスの中で待っていた。
ここは南部に向かう車が港に停泊する艦船に乗り込もうとする列で長い渋滞が出来ていたのだ。
港にはカーフェリーや空母まで動員され、上空では戦闘機が北方に向かって多数飛んで行っていた。
「あっ、モビルスーツだ!」
その中で戦闘機に混ざってSFSに乗ったモビルスーツが飛んで行っており、それを見たテオは反応した。
するとそれを見ていた他の避難民達の中には彼らに向かって声を上げる人がいた。
「頑張れよー!」
「帝国をぶっ倒せ!」
そう言い、手を振られて見送られるモビルスーツ達はそのまま他の戦闘機と同じように北に向かって飛んで行っていた。
まだバスが船に乗るまでに時間がかかる。それまでただ待つしか無かった。
ただその瞬間、遠くから
家の家主に連れられ、車に乗って居た少女は渋滞の中、窓を開けて外を見て居た。シートベルトはつけておらず、いつもと違う景色に俄然興味津々だった。
「ちっ、遅えんだよ」
「……」
この狭い空間で横に座る男はブツブツと文句を言う。
いつも通り鬱憤を溜めているようで、またこの後殴られるのだと思った。
学校に通っていたいたものの、あんな見窄らしい姿だ。いつも影口を言われて叩かれていた。だから、あの街を抜けた事に何の感情も持ち合わせていなかった。
そして渋滞にハマって横の男の苛立ちが頂点に達した時。
ドゴォォン!!
突如、渋滞の車列の真ん中で爆発が起こり、少女の乗っていた車毎爆風で吹き飛ばされる。
その時、窓を開けていた少女はそのまま爆風と横転で投げ飛ばされるように少女は外に放り出された。
「痛っ!」
そしてそのまま叩きつけられるように木の幹にぶつかると、激痛でまともに動けなくなる。
「うぅ……」
痛みに耐えながらゆっくり目を動かすと、そこでは燃え盛る先ほどまで乗っていた車と逃げ惑う人々。何でも帝国軍が来たと言う。
至近距離で着弾した車は轟々と燃え盛り、同乗していた父代わりの男は視線の先で轟々と燃え盛っていた。黒ゴケの影でも分かるその物言わぬ肉塊は間違いなくあの男のものだった。
「っ!!」
あっけなく散ったその生命に少女は愕然となるも、吹き飛ばされた痛みで思わずうめき声が出てしまった。
「君、大丈夫か?!」
そんな中、逃げ惑う市民の中からライトグレーの軍服に身を纏う一人の軍人が声をかけるとそのまま少女を背中に背負った。
「ここは危険だ。すぐに逃げるぞ」
小銃を抱え、避難している群衆の中に怪我をした状態で少女は抱え込まれていた。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい