星暦二一四八年 七月二八日
アストリア合州国 第二〇号前線基地
そこはストライカー戦闘大隊の本拠地であり、レギオンを防衛する上で重要な前線基地の一つである。
そこで今、一人の男が缶を蹴り上げていた。
「けっ、何がギアーデ連邦だ。こんな事しやがって……」
「まぁまぁ、リノ。落ち着いて……」
「これが落ち着けるか!!」
エリノラが宥めるが、リノはそう言って今日渡されたネット新聞を見せる。
そこには『ギアーデ連邦との国交か!?』と書かれたニュースとともに、ギアーデ連邦の暫定大統領エルンスト・ツィマーマンの写真とフランクリン・ローズテッドの写真が並べられていた。
「何が国交だ、何が連邦だ。帝国内の内ゲバで政権獲得しただけじゃないか」
「リノ、一旦落ち着け」
「ドミトルさん……」
「お前の気持ちもわかるが、それはもう起こってしまったことだ。確かに合州国は帝国の放った機械で被害を受けた。だが、それを一番怒るべきは副隊長とテオ中尉だと俺は思うぞ」
「……」
言われてみればそうだ。この二人はレギオン戦争序盤で家族を失っている。
本来怒るべきはこの二人なのだと、理解すると反省をした。
すると当の本人たちはリノに向かって言う。
「私は、今の生活があるから特に思う所はない。確かにお父さんやお母さんは戦争に巻き込まれたけど……私は今の生活の方も幸せだと思っているから……」
「……」
「それは僕も同じさ。叔父に引き取られたけど。リノに会えたから……」
「…すまん」
「僕たちに謝られても……」
そんな事を話しているとストライカー戦闘大隊は前線基地である報告を待っていた。
それは前線基地から前方四〇キロ地点の国境付近で建設途中のジークフリート要塞戦線からの要請である。
この要塞戦線は直径五メートル、深さ三メートルの空の塹壕が掘られ、レギオンが渡りにくくなるよう建設をしていた。
その建設のために戦闘大隊も駆り出され、掘った土を合州国側に盛り土をして実質的に六メートルの土の壁を作っていた。
その作業を永遠と繰り返し、MS小隊の全員が掘られた土を運んで守ると言う子供の砂遊びのような作業をずっと繰り返していたのはいい思い出である。
空の塹壕の背後には綿密に地下化された要塞群が並び。各砲台から一三.二ミリ機銃と速射砲が斥候型を撃滅せんと顔をのぞかせ、満遍なく砲弾がいくように設計がされていた。
さらに綿密に設計された砲台は海軍の艦艇から引っ張ってきた5インチ速射砲を流用し、戦車型までならば簡単に抑えることができる。
さらにジークフリート戦線後方には前線基地が存在し、MSもすぐに出撃できるように配備がなされている。
前線基地の後ろには四重の防衛線がはられ、その後ろにはレギオン戦争序盤にレギオンの侵攻を食い止めたマッキー山脈が聳え立つ。
このマッキー山脈は鋭角の山々が連なり、レギオンでも登ることは不可能だった偉大なる自然が生み出した防御壁である。
さらに言えば防衛線には埋没された有線通信網が多数あり、無線通信が途絶えたとしても前線と連絡をするための通信手段を残してあった。
掘った塹壕にハルトたちの戦闘機械が入り、レギオンが越えられないと確認していたのも面白い話である。
正直、生き残っている国でこんなことができるのもウチくらいだろう。
なにせ、動員兵力は後方勤務も併せて二〇〇〇万という桁を間違えたような人数だからだ。
元々内戦である一年戦争で、人口が減ったとはいえ。今も人口四億という最盛期に比べれば少ないが。それでも十分過ぎる国力を持っていると言えるだろう。
そんな事を思いながらリノは今日も今日とて要塞建設に駆り出されるのかと思いながら基地で待っていた。
するとそこに鳴ったのは要請のベル音ではなく、奴らが来た事を示すアラートであった。
『レギオン襲来、座標F7にてレギオン襲来を確認。ストライカー戦闘大隊は出撃せよ』
「工事の邪魔しに来たか……!!」
「嫌なことするもんだね」
「出るぞ!」
「おう!」
それぞれ機体に乗り込み、出撃を開始していった。
その日の戦闘は熾烈を極めた。
要塞工事中に侵攻してきたレギオンは優先的に工作機械を狙っていたのだ。
出撃したストライカー戦闘大隊は直ちにこれを迎撃。しかし、レギオンは波状攻撃を仕掛け、最終的には戦車型を中心とした攻撃力重視の部隊が連続で送られて来ていた。
『クソッ!一体どんくらいやって来やがるんだ……!!』
『ねえ、これ何個目の部隊?』
『知るか!それより、支援砲撃はまだなのか!?』
『あと十秒で着弾する!』
『ったく忙しいったらありゃしねえ』
「〈ファルケ〉、〈バーンドテイル〉。支援砲撃が来る。後退しろ!」
リノの指示で交代すると目の前が爆炎に包まれた。
ドォンドォンドォン!!
後方から発射された陸上戦艦の支援砲撃が届き、土煙と爆炎を引き起こす。
そして攻撃を受け、大損害を被ったレギオンは撤退を開始した。
「気を抜くな……例の超長距離砲の攻撃が来るかもしれない」
『ったく面倒くせえ。これも大攻勢の前兆か?』
レギオンによる大攻勢
去年から合州国および周辺国が最も危惧しているレギオンの物量の暴力である。
その噂は前線兵士にも行き渡り、危機感を募らせていた。
『まったく、これから残骸の撤去に遺体回収か……』
『仕事増えたわね』
『一応応援も呼んだが……』
『遅いよ。撤去の手伝いしかする事ないじゃないか』
『かぁ〜面倒くせえ……』
『やる事いっぱいね……』
ハルトとレッカはそう言い面倒臭そうにする。
二人はこの部隊に配属されたからまだ良かったが、これが他の部隊に配備されていたらどうなっていたのだろうか。
おそらく戦闘を見て『共和国の生んだ化け物』、と言う印象がつくだろう。
ここに居るのはほとんどが激戦を潜り抜けてきた優秀な兵士たちである。
彼らを受け入れる事は出来ていた。
だが、いざ戦闘となると彼らの危なっかしい戦闘にはいちいち肝を冷やされていた。
そして戦闘大隊はMSでレギオンと工作機械の残骸の撤去。歩兵部隊はレギオンの急襲を受け、逃げきれなかった工兵たちの遺体の回収をしていた。
回収されていく友軍の遺体を見てハルトたちは共和国とは大きく違う遺体の扱い方に思う所があり、彼らのことを思い出してしまったようだった。
『隊長たちは……どうしているんだろう』
『いけ……たんじゃないかしら』
二人は休暇となると毎回、旅行に出掛けていた。
もらった給与を使っていろんな所を旅して、いろんなことを経験して……先に逝ってしまった彼らの為に土産話を作るために多くの経験をしていた。
そんな彼らにリノは思わず呟いてしまった。
「きっと逝けているだろうよ。俺たちはそこまで追いかけるだけだ」
『そうだな……』
『私たちも頑張らないとね』
レッカとハルトはそんなことを言うとレギオンがくるのを警戒して外を見張っていた。
てっきりあの超長距離砲による攻撃が来るものだと思っていたが、来なかったことに拍子抜けと安心感をもたらしていた。
国民というのは恐ろしい爆弾でもある
個人の声が世間を変えた事は無いが、個人が輪となり、集団となった場合は国おも転覆させる力を持つ。
それは戦争の士気の問題でも大きく関わって来る。
合州国は今までギアーデ帝国に報復をする為に今日まで戦い抜いてきた。
しかし蓋を開けてみればギアーデ帝国は滅び、連邦となっているでは無いか。
レギオンは帝国の手から離れ、無人の殺戮兵器として、人類の敵として戦っているではないか。
帝国は滅び、我々は報復する相手を失った。
我々はこの怒りをどこにぶつければ良いのだろうか。
帝国の後継国である連邦はもちろんだが、帝国が滅んだことで彼の国から賠償金や領土を取れる可能性は限りなく低い。
では、空回りするこの怒りはどこに向ければいいのだろうか……
あるでは無いか、賠償金は行かずとも領土を割譲出来るほどの国土を持ち、合州国に喧嘩を売った国がーーー
帝国の西側、合州国北西に。あるでは無いかーーー
有色種と呼ばれる言葉を作り。戦争を押し付け、自分達は戦争から逃げた愚かな政策を実行した国が。
子供達を無理やり使い捨ての盾として扱い、民主主義を脅かす危険な存在が。
彼の国は危険だーー
共和国は悪魔だーー
そうだ、共和国の愚かな政策に我々は怒るのだ。
人型の豚と定義される子供たちを救うのだ。
それが我々の正義であり、信念なのだ。
合衆国の民主主義が危険に晒されている。
自由を愛する国、自由を愛する国民である我々は自由を守るために、正義の審判となって迫害された者を守るのだ……!!
共和国に解放を!
共和国に革命を!
共和国にある仲間達を救うのだ!!
共和国の蛮行を許すな!!
そうだ、共和国は敵だ。
ーー民主主義を害する危険な国家だ
ーー自由を許さない抑圧した国だ
ーー檻の中で悠々と暮らす豚共だ
ーーそう、共和国な敵なのだ。かつての仲間ではないのだ
ーー共和国はその代償を払わなければならない
故に我々は共和国を解放するのだ。
徐々にではあるが、国民の感情は共和国へと向けられるのであった……。
二週間後。アストリア合州国とギアーデ連邦はインターネット上で国交樹立を宣言。
飛行機無し
人も無し
通信だけが出来る
そんなグラグラの国交に国民はあまり歓迎する事なく、不詳不承と言った様子で連邦との国交を認めていた。
米国の技術力+二次大戦時のソ連の最大兵員数=現在のアストリア合州国軍
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい