散々テオポルドが泣いていたと言う日から数日後、あのままだとすっかり寝ていたであろう所をクラウに起こされたあの日から、彼は感情が整理でき、心に余裕ができたのか。少し柔らかくなった表情で過ごしていた。
「よう、元気か?」
「あっ、はい。おかげさまで。えっと……」
少し顔を赤くしながら彼はリノに聞く、その顔かはまるでか弱い女の子のようだった。よっぽど箱入り息子でもしていたのかと思いたくなるほどだった。
「なんか言ってたか?わりぃ、あの後寝ちまってよ」
「……そうですか」
中学一年生にしては一七〇センチと言う大柄な身長ゆえに話し方含め、側から見ると高校生と小学生が話しているような構図に遠目で見ていたクラウがクスクスと小さく笑っていた。
「それなら良いです。……ふぅ」
あの時のことが恥ずかしかったのか、心底ホッとした表情で彼は去って行った。
その様子を見届けながら彼が去ったのを見て、クラウが近づいてくる。
「寝ていたのは本当だもんね〜」
「ああ、起こしてくれなかったら俺がしばかれてる所だったよ」
そう言いクラウはリノに聞く。
「どう?彼の雰囲気は?」
「まぁ、よっぽど強い気配は感じなくなったよ。おかげで少しはマシな寝方ができそうだ」
「それは良い事で」
そう答えると彼女は背中に竹刀を背負ったまま聞く。
「取り敢えず古くなった短い竹刀をもらって来たわよ」
「おっ、そんなん貰えたんだ」
「ええ、学校の備品でもうちょっとで廃棄処分だったものをね」
そう言い、背中に入っている物を言うと二人に声をかける人物が……ディルケだった。
「二人とも、ちょっと聞いても良いかしら?」
「「?」」
彼女の話とは、孤児院の中庭の整備についてだった。
「そう言えば結構ボロボロでしたね。ここも」
「まともに整備もしていないからね〜」
そう言い、雑草で荒れ果て。その上孤児達が走り回って遊ぶので何度も踏み荒らされた跡があった。
「ここをうまく活用できないかって、寮母さんとも話していたのだけれど……」
「何をするにしてもなぁ……」
「お花植えるとかは?」
そんなクラウの提案にリノが否定する。
「そんな非経済的なもの植えるくらいなら花壇潰したほうがいいだろ」
「えー、もったいなく無い?」
せっかく花壇があるのだから何かしら植えたいと彼女が言うと、ディルケが提案する。
「何か、野菜とか植えるのは?」
「……」
「ほら、野菜を植えたら少しは食費の足しにもなるし。それに、子供達にもいい教育にならないかしら?」
彼女の提案を聞き、二人は少し考えた後に彼女に言った。
「じゃあ、お袋に相談してホームセンターにでも行こうかなぁ……」
他にもこの孤児院で色々と必要になってくるものもあるだろうし、それら備品も買う必要があった。
「無駄遣いるすんじゃ無いのよ」
「分かってるって」
「レシートきっちり見せてもらうから」
「はいはい」
デビットカードを渡され、アイダはしつこくリノに注意する。その周りではどこか買い物に出かけるリノ達に羨望の眼差しや、自分が欲しい物などを連ねて言っていた。
ただでさえカツカツな孤児院の資金から出してくれたのだ。無駄使いする気は無いとリノも思っていた。
「大丈夫ですよ。私も見ておきますから」
胸を張ってディルケは答えると、アイダも申し訳なさそうにしながら言う。
「ごめんなさいね。しっかり見ておいて」
「はい!」
そしてクラウも含めた三人は孤児院に置かれている古いバンタイプのエレカに乗り込む。
最近ではクラシックタイプと呼ばれる昔ながらの馬車を発展させたような角張った見た目のエレカが流行っているそうだが、そんな物を変えるような資金力はここにはなかった。
「バッテリー大丈夫かな……」
「前に動かしたのいつだっけ?」
「そんなに使っていないの?」
少し埃をかぶっているが、中を見る限り動きそうではあった。
「ディルケさん。電源付けてもらっていいですか?」
「分かったわ」
そう答え、エレカに乗り込んで彼女がモーター起動のボタンを押す。
するとモーターの動く音と共にメーターやら何やらが動いた。
「ふぅ……壊れていなかったか」
「取り敢えずホームセンターまで荷物を抱えて歩く必要はなさそうね」
胸を撫で下ろしながらクラウは答えた。
少なくとも前回乗ったのは確か、元々ここの孤児院出身だった……今は大学生の人が自分たちを動物園に連れて行ってくれた時だったか。
「ずいぶん乗って居なかったって事だよな?」
「そうだね」
バンの扉を開けながら聞くと、クラウも頷く。
「行くわよ」
「ええ、お願いします」
車庫を開け、アクセルを踏んだ彼女はそのまま街に向かって走り出した。
街に繰り出すと、そこの大通りの反対車線には多くの軍用トラックは北に向かって走り抜けていく。
「あっ、すげぇ。ガンダムトレーラーだ」
「珍しいですね。こんな時間に」
そう言い、黄色い警告灯を光らせて横を走っていく巨大な運搬車両を眺める。
布を被せられているが、おそらく何かしらのモビルスーツを搭載しているのだろう。それらは皆前線へと送るためか、長い車列を成して居た。
「これじゃあ帰りの渋滞は大変そうね」
「うわぁ、そりゃキツイぜ」
「どこか回り道をしないといけないわね」
ナビを動かしながらディルケはそんなことを言いながらホームセンターへと向かって行った。
戦争が始まり、十数年ぶりに発令された国家総動員令。
建国以来、北部の巨大な帝国に対抗すべく。国が一丸となって戦争に対処するための法律だ。
国防が憲法の中に記されているこの国では、数十年前までは国民皆兵として男女関係なく十八歳になると軍事訓練を二年間受けることが義務付けられていた。
しかし、一年戦争の勃発でそれらは古い習慣とみなされ。今では廃止されたが、帝国の脅威を幼い頃から叩き込まれた国民ではいまだに一生に一回は軍事訓練を行われる事が習慣となっていた。
この法令が出されたと言うことは、北部でよほどの損害を受けたと言うことになる。
この法令で予備役となって居た軍人も呼び出されることとなり、総兵力はおよそ二千万を確保できるようになる。
そう、二千万。
どこかの小国程度の国民の人数の軍人を我が国では賄う事ができる。
一年戦争前の人口爆発の影響が強かった時代ではそれ以上に多い人数を動員できたと言うのだから、笑うしかあるまい。
現在、我が軍は山脈以北のほぼ全地域を奪われ、山脈手前の場所で戦線を展開している。
山脈に旧世紀に建造されていた過去の要塞線を復旧する形で今は<レギオン>に対し、攻撃を行っていた。
最も、アーノルド・フィッシャー提督率いる第三陸上艦隊の奮戦もあり、嘗て無いほど撤退戦は円滑に進んだと言われている。
おかげで山脈を越えられる事も無く、防衛戦を展開出来た。今ではその要塞からほぼ毎日砲弾が叩き込まれていると言われている。
そしてそれら果敢に戦う彼らの映像はニュースで度々報道され、国民の戦意を高める役割を果たしていた。
諸外国ではフェルドレスなる多脚兵器が存在するようだが、最も我が国ではモビルスーツを生産していた。
今でも戦線に向かって飛んでいくSFSに乗ったモビルスーツを見る事がある。
そもそも、国家総動員令が出た事自体一年戦争以来の話だ。
MSの恐竜的発展をもたらしたネオ・ジオン紛争の時ですら国家総動員令は発令されなかったそれが、今回は最もあっさりと……
「これ本当にいるの?」
「風呂場で遊ぶ子ども達には必要だと思うんです」
そう言いながらスーパーボールの入った小袋をいくつか入れるリノにディルケはやや首を傾げる。他に風呂場や遊び道具としてにいるかもと言ってアヒルのおもちゃだったりゲームなんかを幾つか入れていた。
「取り敢えず苗とか種はこんなもんで良いかな」
カートに山ほど入った植物の山を見てディルケも頷く。
「そうね、これくらいあれば……」
「ガキどもが勝手に入らないように低めの柵とかだな」
「道具はあるはずだから……」
孤児院に関しては一番詳しい二人はどこに何があるかなどを思い出していた。孤児院に来ての日浅いディルケはそこら辺は二人に任せると、二人は木材売り場の方に向かっていった。
「え?」
何をするのかと首を傾げていると、二人は木材を見ながら話していた。
「グラインダーって確かあったよな」
「ええ……ってかこの前使って居たじゃん」
「あぁ、そう言やぁそうだった」
すると二人は木板をカートに放り込むと次に釘や塗料、鉄芯などを入れていた。なんでこんなものを入れるのかと首を傾げるとクラウが答えた。
「あぁ、リノって昔から手先が器用で色々なもの作っているのよ」
「お袋が使っている椅子とかな」
「そ、そうなんだ……」
ディルケは内心どんな子供かと思ってしまった。少なくとも小学生が大人が使うような工具を使って家具作りをしている時点で大分ぶっ飛んでいると思うべきだろう。
「孤児院で壊れたところをよく直してもらって居たのよ」
「流石に電気系統はいじると怒られたけどな」
そう言うとリノは軽く笑っていた。それを聞いて呆然となってしまうディルケ。多分、この子は本質的に物作りや機械いじりか好きなのだろうと思って取り敢えずもう突っ込まない事にした。
「取り敢えずこんなもので良いだろう」
「そうね、ディルケさん。お会計お願いしても良いですか?」
「わ、分かったわ」
ディルケは荷物いっぱいのカートを押しながら会計を済ませると、そのまま駐車場の方に向かった。
帰宅後、クラウとリノは買ってきた木材を下ろしてそのまま作業台の上に置いていた。
そしてそのままペンで線を引き始め、簡単に柵を作る設計図を完成させていた。
「こう言うのは買うよりも作るほうが安いんです。幸い、ここには木工道具は揃って居ますからね」
「そうなのね……」
もはや舌を巻くレベルでディルケはリノを見ていた。
もう脳内で想像できたのだろう、彼は片手にグラインダーを持つと線を引いた場所に合わせて木材を切り始めていた。
「さて、その間にうちらは雑草取りですね」
「どうせなら子供達にもお手伝いしてもらうってのはどうですか?」
ディルケが提案するとクラウも楽をしたかったのだろう、彼女の提案に乗っていた。
「そうね、そうしましょう」
そう答えた彼女は孤児院に建物に向かって行くと、子供達を呼び出していた。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい