86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#25 その日、大陸は業火に包まれたXⅢ

「ああ、赤ん坊の頃から見えた異能さ」

 

彼はあっさりと答えると、エリノラは彼に聞いた。

 

「……その異能はどんなものかお聞きしてもいいですか?」

 

恐る恐る聞く。彼女にとってみればパンドラの箱を開けているような感覚だったが。リノにとってはそこら辺にある自販機のゴミ場を開けるような感覚で答えた。

 

「ああ、強い感情を持った人だけだが。それが色になって見えるのさ。…いや、どっちかと言うと気配を感じるって言った方が正しいか……」

 

時折感じるモノクロの気配にそんな感覚を言うと、エリノラは心底驚いた表情でリノを見ていた。

 

「それは……気味悪がられたりしないんですか?」

 

エリノラはそんな異能を持っている彼にそんな疑問を投げかけると、彼は寝そべったまま首を軽く横に振った。

 

「いやいや、結構便利だぜ。これのおかげで喧嘩する相手がどれくらいの感情があるのかとか、あと便利なところで言えば川で溺れかけた子供を見つけられたりとか、迷子の子供を見つけたりとかな」

 

彼はそう言うと、自分が持っている異能についてこう述べた。

 

「要は使い方よ。少なくとも俺はこの異能を持ってて気味悪がられた事は無かったな。むしろ感謝された事もあったよ」

「……」

 

彼はそう言うと、ケタケタと少し笑って言う。

 

「まぁ、俺みたいな悪ガキにはすぎた能力だよ。ほら、この前だって君を裏路地で見つけれたのもこの異能のおかげさ」

 

そう言い彼はそのまま雲の流れる空を眺めていた。

そんな異能についてエリノラに何も恐れずに言ったリノに、彼女は少しの驚きと羨望を向けていた。

 

だからだろうか、同じ異能持ちの孤児だからか。ふとエリノラも溢してしまった。

 

「私も……実を言うと異能持ちなんです」

「へぇ…そいつあ驚きだ。どんな異能なんだい?」

 

異能と聞いても大して驚かないリノにどこか安心を覚えたエリノラはそのまま流れるように続けて言ってしまう。

 

「他人と接触したりした時に、人の記憶が勝手に見えてしまうんです」

「へぇ〜、俺の上位互換じゃん。すげぇ」

 

リノはそう呟くと、エリノラは他人にこの異能の事を話した時に一瞬だけ過去の記憶がフラッシュバックしてしまい、腕を少し強く握ってしまう。

 

「それで、本当はその人が隠していたい記憶とか。本人ですら忘れている記憶とかも見えたりして……その事を言うと、ひどい時は怒鳴られた後に殴られちゃったりしたこともあって……とにかく気味悪がられてしまったんですよね」

「それは……運がなかったな」

 

内心、リノは苦労していたんだと思いながら彼女に軽く言う。

 

「今でも時々思い出してしまう事があるんです。でも、周りに同じような異能を持っている人もいなくて……」

「……」

 

そこで彼女のこれまでの苦労を想像して、リノはエリノラを少し悲しげな目で見ていた。そしてその内心、自分の想像以上に過酷な環境に申し訳なさが生まれていた。

すると彼女はそこで今までに詰まった物がはち切れたのか、全てを吐き出す勢いで吐露する。

 

「母は『この異能は誰かの心を癒すために使って』って言っていましたけど、結局この異能のせいで私は家でも屋根裏に押し込められていたんです」

「っ?!」

「母の再婚相手は酷い人でしてね。母自身は再婚した後に病気ですぐに亡くなってしまって……。

元は弁護士だったんですけど、裁判の時に賄賂を受け取って業界を追放されて。そこから逃げるように酒に溺れて……その鬱憤を再婚相手の子供で、身寄りもなかった私に向けたんです。ついでにこの記憶が見れる異能を理由に……」

 

そう言うと、エリノラはカーディガンを羽織ったままその時のことを恐る恐るリノに話す。

同じ異能持ちと言う仲間意識からか、ディルケに向かって毅然とした態度で異能の事を話したリノが羨ましかった。

 

「だから、リノさんは強いなって……異能を使ってもあんな強い態度で居られるんですもん」

 

だから周りの人に恵まれて羨ましいと思っていると、リノはエリノラを見ながら言う。

 

「…だから長袖を着ていたのか……」

「へ?」

 

するとリノは起き上がると、困惑するエリノラの目を見た。

 

「俺はてっきり、ディルケから受けた傷を隠すためかと思っていたが……」

 

そう言うと、彼はゆっくりと袖を触って彼女に聞いた。

 

「俺の記憶が見えるか?」

「え?い、いや……」

 

彼女はあの一気に情報が流れてくる感覚がなかった。

 

「じゃあ、直接触らなければ他人の記憶が見える事はないんだな」

「え、えぇ……」

「なるほど、興味深いな……」

「えっと……」

 

服の上から色々と彼女の体を触るリノにエリノラは困惑して悲鳴すら上がらなかった。

するとリノはその後、エリノラに優しく抱きついた。

 

「色々と苦労してきたんだな」

「……」

「少なくとも俺たちは異能に慣れている。ここでは君はもう少しマシな生活を送れるだろうよ」

 

そう言うと、今度は打って変わってリノはエリノラに注意するように言う。

 

「でもだからって、いきなり履いてるパンツの色を目の前で言われても嫌だろう?」

「…うん」

 

そこで彼女はリノの言葉に少し顔を赤くして頷くと、彼はそこでエリノラにその異能の使い方を提案した。

 

「だから、適材適所ってやつだ。記憶が見れたとして、無闇矢鱈に行ったらそりゃ嫌われる。そこは反省するポイントだぞ」

「……はい」

 

そう言うと下でリノを呼ぶアイダの声がした。

ここにいるとバレるとまたどやされるので、急いで二人は屋根から降りて廊下を歩く。

するとそこでリノはエリノラが長袖を着ていた事情などを察し、色々と聞いてきた。

 

「それで……その異能は、どこまで見えたりするんだ?」

「えっと…分からない、です」

 

そもそもこの異能自体、滅多に使った事がなく。どこまで行けるのかすらよく分からなかった。

 

「そもそもあんまり使った事がないので……」

「じゃあ効果は未知数ってわけか……あっ、お袋」

 

廊下を歩いていると、階段のところで丁度アイダと出会した。

するとリノを見つけた彼女は少々息を切らした状態で彼に話す。

 

「ここにいたのね。ちょっと手伝って欲しいことが……」

「お袋、ちょっと俺も話したいことが……」

 

リノが遮って口を開くと、アイダは物珍しげに彼を見た。

 

「うん?どうしたの珍しい」

「彼女の事でちょっと……」

 

そう言い、彼はエリノラの方を見た後に彼女の持つ異能の話をアイダにしていた。

 

 

 

 

 

「ーーなるほど」

 

一連の話を聞いたアイダはそっと目を閉じて理解した様子を浮かべた。

その光景にエリノラは少し怯えた状態でリノの横で顔を伺っていると、彼女はそのままエリノラに抱きついた。それは先ほどのリノのそれと違って、優しい温もりのある抱き方だった。

 

「辛かったでしょう?異能って人には分からない感覚だから」

「……」

 

そう言われ、エリノラは目頭が熱くなってきた気がした。

 

「リノも幼い頃、異能に苦しめられてきた身なの。だから何か困った事があれば、彼に聞くと良いわ」

 

そう言い、アイダはリノに目線を向ける。それを見て、彼は任せろと言わんばかりに小さく親指を立てて答える。

 

「大丈夫。もし異能が見えても、私たちは貴方を否定する事は決してないから」

 

アイダは力強くそう答え、その言葉に確信を持っていた。

エリノラは、アイダの言った事が嘘じゃないと今までの感覚から察する事ができた。

 

大人は怖い、だけどこの人は信用できる気がした。

それくらい、この人は嘘を付かないのだろう。

エリノラはそこで気をしっかりしてからこっそりアイダの手を触れる。

 

その時流れ込んだ彼女の記憶はどれも暖かい光景ばかりで、そこに遠い懐かしさを覚えた。

その記憶を見て、エリノラはそこから溢れんばかりの涙が溢れ出てきた。

 

「っーーー」

 

今まで抱え込んできた物がここで限界を迎え、一気に崩壊した。いや、限界はとっくに過ぎていたのかもしれない。

 

階段に静かな嗚咽が響く。

顔が崩れても、服が涙で濡れても。他の人が見ていても、彼女はそれらを一切気にする事なく涙を流していた。

 

しかし、それを否定する事なく全てを受け入れているアイダは彼女の背中を優しく撫でて答えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

暫く泣いた後、そのまま疲れてしまったエリノラを抱えて個室まで運んだリノは一階の大広間に向かう。

今の時間、女子たちは風呂の時間であり。アイダもその手伝いに向かっており。この部屋には男子しかいなかった。

そこでは多くの子供達がテレビでアニメに釘付けになっており、そこから動く気配がなかった。

 

「リモコンは……」

 

時間を見れば、そろそろ終わるのでニュースを見るために子供たちの中からリモコンを探す。

そして子供達の中からテレビのリモコンを探すと、そのままテレビに向かってボタンを押した。

 

「何すんだよ!」

「良いだろう?もう終わりなんだ」

「まだ次回予告見てないんだぞ!」

「返せ!」

 

そう言い、子供たちはリモコンを奪おうとジャンプするが、リノはそんな子供たちの猛攻を簡単に避けて遊んでいるとテオパルドはニュースをじっと眺めていた。

普段なら絶対にリモコンを奪ってくるはずの彼が珍しくニュース画面を見ていることに疑問に思っていると、彼は一言呟いた。

 

 

 

「ーーー叔父さんだ」

 

 

 

「……へ?」

 

彼の呟きにリノは思わずニュース画面を見ると、そこでは先の戦争で味方撤退のために奮戦したアーノルド・フィッシャー提督が勲章を授与された映像が映し出されていた。

 

彼は<レギオン>の攻勢で敗走状態だった味方の支援に加え、敵軍の侵攻を抑え込み。戦線全体を押し留めるほどの大戦果を挙げた大提督だった。

その後、敗北の印象を和らげるために彼は大々的に祭り上げられていた。

陸上艦隊を指揮し、その多大な戦果から彼は二階級特進で少将となり。多くの勲章を授与され、救国の英雄のような扱いを受けていた。

 

「なぁ、テオ」

「?」

 

テオのガチトーンにリノは思わず彼に聞く。

 

「この人、知り合いなのか?」

 

その問いに彼は大きく頷く。

 

「うん、アーノルド叔父さんはお母さんの兄で。昔からよく遊んでくれた人だよ。この顔は間違いないよ!」

「……」

 

自信満々に答えたテオパルドに一瞬リノの思考が停止してしまった。

その瞬間、リノが油断した隙にリモコンを取られたことも気づかないくらいの衝撃があった。

 

「嘘だろ……?」

 

まさかの事実にリノの思考はそこで一瞬ショートしてしまった。

 

 

 

 

 




ローマ数字って13以降は無いのね……

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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