86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#26 その日、大陸は業火に包まれたXⅣ

それからと言うもの、リノは大慌てでアイダに連絡を取って貰った。

するとすぐさま返事があり、向こうでも大慌てで照会が行われた。

 

なにせ、今話題沸騰の有名人の親戚だ。本物かどうかの確認はきちんと行われ、万が一の不備すら許されなかった。

 

「大慌てなんだな」

 

慌ただしい孤児院の中で一人の男がリノに話しかける。見た目は大人びた様子で、大学生の雰囲気を醸し出す大人であり。リノもそんな彼に親しみある慣れた様子で答える。

 

「そりゃ当然。有名人の子ですしお寿司」

 

そう言い、目の前でおそらく広告用だろう。軍人がカメラを持って準備をしている様子を眺めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

遡る事数日前。

 

「お袋ーーーっ!!大変だーーーっ!!」

 

大慌てでアイダのいる場所に走ったリノはそこで思い切り扉を開けて叫んだ。

するとその瞬間、クラウの怒声が響いた。

 

「五月っ蝿いわボケッ!いきなり怒鳴るんじゃねえ!!」

「あっ……」

 

クラウの怒鳴り声とは反対に、アイダはそんな声が漏れてしまう。

するとそこでクラウや、他の女子たちも()()に気が付いた。

一気に視線が集まる中、リノだけが首を傾げた。

 

「お前らなんでそんな……

 

 

 

 

あっ」

 

そこでリノは気づいた瞬間、顔が一気に青ざめた。

そう、今の時間は女子達が風呂場にいる時間だ。その手伝いでクラウやアイダは共に風呂に入っているわけで、リノは興奮ですっかり忘れていたが。彼はうっかり女子達が風呂場に入っているところに堂々と突撃してしまったのだ。すると次の瞬間、

 

「きゃーっ!!」

「変態!」

「スケベ!」

「えっち!!」

 

女子の悲鳴と共に風呂場にあった全ての物がリノに向かって思い切り投げ飛ばされた。

 

「うわぁっ!ごめん!ごめんってばよ!」

 

飛んでくるシャンプーの容器や風呂場に浮かべているアヒルなどのおもちゃを回避しながらリノは慌てて謝るが、それでも物が飛んでくる気配は留まらず……。

 

「このエロ小僧がぁぁぁっ!!」

「Door?!?!」

 

最後にクラウの思い切り投げた風呂椅子が腹にダイレクトヒットしてそのまま浴室の外に弾き飛ばされたのだった。

 

 

 

 

 

Nice Boat.

 

 

 

 

 

「それで?一体何があったんだって?」

 

額に青筋を立てながら未だに拳に力の籠っているクラウはパジャマ姿でリノに問いかける。

 

「ひ、ひまひぇおが……」

 

しかし女子達にボッコボコにされた彼の顔は膨れ上がっており、まともな会話すら困難な状況だった。よく見れば周りの女子達の中には涙眼の者もおり、雰囲気は完全に最悪の一言だった。

胸ぐらを掴まれ、顔面をフルボッコにされた彼はクラウにブンブン頭を揺さぶられ、アイダはそんな状況を見て顔に手をやって困惑していた。

 

「あ"?何だって?」

 

リノの顔面をボコボコにした張本人が聞き返すと、横でアイダが彼の翻訳を担当していた。

 

「それで、ハリスマン君がどうしたって?」

「ひゃっき、にゅーふをみへおひさんがうつっへいるっへいっへへ」

 

正直何言っているのかさっぱりなクラウはアイダの反応を見ていた。

 

「えっ?!彼の親戚がテレビに?本当なの?」

 

それは予想外の事態だった。まだここには多くの孤児が居る。理由は簡単で、未だに孤児の引き取り手や家族の安否が不明だったからだ。

 

孤児の多くは名前の分かる者はすでにネット上で名前を検索すれば何処に居るのか分かるシステムが整っていたが、不備が多く。まだ満足に孤児の引き取りが進んでいるわけでは無かった。

 

「ひょう」

 

目元に大あざを作ってリノは答えると、アイダは納得した上でリノに話す。

 

「確かに驚くのは分かるけど…だからって女子風呂に突撃するのはちょっと……」

「はい、すびませんでした……」

 

リノはもう殴られるのはごめんだと思いながらそのまま殴られた影響か、そのままガックリと気を失って倒れてしまった。

 

なお、この親戚が予想外の有名人だった事に驚くのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「それで、あの子があのフィッシャー提督の甥っ子?」

「そっ、俺も正直驚いているよ」

 

そう言い、孤児院の中で最後の別れと言う事で他の子供達に見送りを受けているテオパルドを見ていた。

 

「しっかし、奇妙な縁もあったもんだ」

 

リノと話す青年はそう言い、手を組んで頭に持っていく。

 

「どうだいマルコ義兄さん。久々に帰った感想は?」

「そうだな、随分と騒がしくなってまぁ……」

 

そう答えると、その青年……マルコ・フリッツは子供達を見て少し苦笑いしていた。

 

 

 

 

 

彼はディルケの一件があってから、アイダに言われて予定よりも早く孤児院に帰ってきていた。

アイダの実子であり、リノ達にとっての兄のような存在だった。

元々孤児を預かる事になったと聞いており、人数が増えたとは思っていたそうが、これほどの人数とは思っていなかったようだ。

今は大学生で、生体機械工学を専攻していた。

 

「大学は大丈夫なの?」

「ん?あぁ、就職も決まったからあとは卒論だけだ。事情を説明したら、休学させてもらえる事になったしな」

 

彼はそう答えると、就職先が決まった事にリノはやや驚いていた。

 

「へぇ、何処に就職すんの?」

「サナリィさ」

「へぇ、あのサナリィに……」

 

リノはマルコの就職先を聞いて、少し驚いた表情を浮かべた。

サナリィと言えば、AE社とZZM社と争う政府が設立したMS開発会社だ。

政府の資金が入っていることから、試作品の開発などに儲けを考えなくていい強みがあり、最近では小型可変MSを作ったと聞いている。

おまけに公社なのでクビになりにくいという強い利点があった。

 

「良い所に就職できたんだね」

「教授がそこの知り合いでね。融通してもらったの」

「ああ、なるほど」

 

どうしてそんな優良企業に就職できたのかを納得すると、リノはこれから孤児院を後にするテオパルドに近づく。

 

「じゃあな」

「うん。時々連絡を入れるよ」

「そうか……」

 

リノは話半分に彼の話を聞く。ここを出て行く孤児達は大体こう言っておきながら、引き取り先での生活に手一杯となって滅多に連絡が来ることはない。事実、今まで引き取られた孤児達から連絡が来た事なんて無かった。

テオの年相応な陽気な顔はリノにしてみれば見慣れた光景だった。

 

「テオパルド君。そろそろ迎えが来るわよ」

「はーい!」

 

アイダがテオパルドを呼びつけ、彼は荷物を持って孤児院を出る。

外では明らかに広告用に写真を持った軍人が数人待っており、何人かカメラを持つ記者の姿もあった。

なにせ、有名人関連のニュースだ。

 

「良いプロパガンダだな」

「この前のニュースと言い、孤児達は今のホットワードだな」

 

マルコはそう言い、アイダの手をとって孤児院を出ていくテオを眺める。

すると孤児院の前に一台のエレカが止まり、中から一人の軍人が顔を出した。

 

「テオ!」

「あっ、叔父さん!」

 

その顔を見て、テオはその人物の元に走って駆け寄る。

 

「おぉ、無事だったのか……!!」

「叔父さん!」

 

そう言い、その軍人はテオパルドを見て嬉しげに彼を抱いた。

 

「よかった。生きていくれて嬉しいよ」

「でも…ママは……」

 

そこで抱きしめられたテオパルドは目の前で亡くなった母であり、アーノルドの実妹の事を想ってしまうと、アーノルドはテオパルドを抱きしめたまま彼に言う。

 

「大丈夫だ。これからは叔父さんが面倒を見てやるからな。辛い思いをさせて済まなかった……」

「いいよ、叔父さんが生きていて。僕も安心したし……」

 

そう言うと、アーノルドは少し驚いた表情でテオパルドを見ていた。

 

「強くなったんだな……」

 

それはどこか寂しげな目でもあった。

そしてそんな感動的再会を周いの人間は写真に収めており、おそらくすぐにネットニュースにでもなるかも知れない。

 

「……さて、行こうか」

「うん」

 

アーノルドはそのままテオパルドの手を取ると、エレカに乗り込む。

車に乗る直前、テオパルドは半年間暮らしてきた孤児院を眺め。入り口で立つリノに軽く手を振った。

 

ここで兄のように慕った一つ年上の少年を見て、テオパルドは少しの寂しさを覚えながらリノを見続けていた。

 

「また会おうね。リノ」

 

テオパルドはそう呟くと横に座ったアーノルドは運転手に言った。

 

「出してくれ」

「はい」

 

そしてテオパルドとアーノルドを乗せたエレカはそのまま孤児院を離れて行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「行っちゃったんですね」

「ああ、親が見つかっただけ良いじゃないか」

 

テオパルドが孤児院から出ていった様子をリノやクラウ、そしてエリノラは眺める。

マルコ以外では最も年長な三人は撤収していく広報係の軍人や記者を眺めていた。

 

「ったく、軍ってのは恐ろしいねぇ」

「ええ全く。子供との感動的な再会ですら出汁にするんだもの」

「それくらいしないと国中に溢れる孤児達の引き取りが満足に行かないんじゃないんですか?」

 

エリノラがそう答えると、リノとクラウはやや驚いた目で見ていた。

 

「な、なんですか?その目」

「いやぁ……」

「なんかイメージと違うからさ」

「なんですかそれ!!」

 

エリノラがムッとなってそう反論すると、リノは少し笑いながら言う。

 

「ごめんって、君がそこまで物事をはっきり言う子じゃ無いと思ってたからさ」

「なかなか、女性に対して酷いこと言いますね」

「リノったらいつもこんな感じよ?」

 

そう言うと三人は思わず笑ってしまっていた。

 

そしてそんな三人を見て何処か微笑ましく眺めるマルコはそのまま手続きを済ませるアイダの手伝いに向かった。

 

 

 

 

 

その後、フィッシャー提督の名のもと、国内の孤児院に多額の寄付金が贈られた。無論これは、国内に大量に発生した孤児たちの現状を知ってもらう為で、国民に孤児達の支援を呼びかける物だった。

テオパルドとの感動的な再会はすぐさまネットを駆け巡り、政府はこれをプロパガンダに遺伝子登録の推奨を行った。

この呼びかけに、国民は孤児たちの引き取りや支援を積極的に行うようになり、リノ達の孤児院からも何人か家族の見つかった孤児たちが引き取られていくこととなった。

 

 

 

そして、テオパルドとの関係は彼が孤児院から出た後も続き。時々手紙を交換し合うほどだった。

リノ達もそんな彼との文通を続けており、三人はそれを楽しみにして居た。

 

 

 

そして、その関係は彼らが孤児院を出る高校生まで続いていた。

 

 

 

 

 

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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