大学を休学して士官候補生学校に入学したリノ達三人はそこで半年間、訓練を受ける事となっていた。
規則正しい生活は孤児院ですっかり慣れていたので問題なかった。
ただ、軍人になると言うのは思っていた以上に大変であると言うことだ。
士官候補生学校は文字通り、士官を育てるための学校である。
現役士官からの推薦状がない限り入れないこの学校ではその多くが軍人の子であったりするもので、甘えられた環境で育ってきた子供もいた。
そして自分もそんな甘えられた環境で育った子供のうちの一人だった。
早朝、先頭で旗を持って綺麗な隊列を守ったまま一定のタイミングでランニングをする集団がいた。
そしてその集団の横で、迷彩服を着ている一人の男が叫ぶ。
「ママとパパはベットでゴロゴロ」
『『『ママとパパはベットでゴロゴロ』』』
そして訓練生は復唱しながら敷地を走る。
「ママが転がりこういった」
『『『ママが転がりこういった』』』
「お願い欲しいの」
『『『お願い欲しいの』』』
「しごいて」
『『『しごいて』』』
少なくともこんな歌を大声で歌わせながら走っている時点でだいぶ狂っている気がする。
「おまえによし」
『『『おまえによし』』』
「俺によし」
『『『俺によし』』』
「うんよし」
『『『うんよし』』』
そしてランニングをする一クラス分ほどの人数の訓練生は額にびっしりと汗を流しながらランニングをする。
「日の出と共に起き出して」
『『『日の出と共に起き出して』』』
「走れと言われて一日走る」
『『『走れと言われて一日走る』』』
「レギオンはろくでなし」
『『『レギオンはろくでなし』』』
「梅毒毛ジラミばらまく浮気」
『『『梅毒毛ジラミばらまく浮気』』』
あぁ、こんなことを叫びながら訓練していると思うとなんともいえない気分だ。
今日の訓練内容は銃の射撃訓練と、対MS用ロケットランチャーの訓練だ。
適正試験の前に行われる、軍人として必要な基本的な知識と体力を身につけるための朝のランニングや武器の取り扱い方など、必要な物は全て叩き込まれていた。
ここの学校に入って早二ヶ月。リノはそこで今までの知識はほとんど役に立たないのだと実感していた。
体力には自信があったが、重さ三十キロの荷物を持ってフルマラソンほどの距離の山間部を走る訓練では途中でギブアップしてしまった。
それほどに過酷な訓練を強いられ、特に裕福な環境で育った坊ちゃん達はそんな自分よりも柔な状態だった。
酷いと六十キロという成人男性を背負って行軍しなければならないので、さらに過酷な訓練を強いられることになる。
「射撃用意!」
教官の指示のもと、M72A1を構えて射撃訓練を行う。
「撃ぇ!」
その瞬間、持っていた自動小銃の引き金を引く。
バースト射撃で数発の銃弾が発射された後に反動が肩に掛かる。
これでも<レギオン>には効果がないと言うのだから恐ろしい話だ。それほど、帝国軍の開発した無人兵器というのは頑丈な上に人が死ぬことのない厄介な兵器ということになる。
「射撃止め!」
教官の指示で銃声が止まる。
小銃弾を発射した後、弾倉の交換方法や銃の分解・整備。戦場という過酷な環境下でも問題なく扱えるようにするための訓練だ。
どれだけのパニックになっても問題無く扱えるよう、目を閉じていても分かるようにしなければならない。
今の戦線の歩兵装備は一三.二ミリ重機関銃であり、その重量は軽く六十キロに達する。
ケルベロスという外骨格装甲服が存在しているが、それらを扱うのはまだしばらく先の様子だ。
適正試験は来週行われる。訓練はコンピューターを使った模擬戦闘で、総合評価で判断が下される。
ここでは女子との関わりは一切無い。理由は簡単で、軍隊における風紀の問題があるからだ。
特に男女の関係というのは、戦場において不必要な感情であり。戦闘中に余計なことを考えぬよう、押さえ込み方式で訓練をしていた。
もしバレれば大量の反省文か、ここを追放される身となるので誰もナンパしようなどと考えていなかった。
そして対MS用ロケットランチャーというのは、伸縮式の使い捨てタイプのロケット弾だ。
辺りどころによれば重戦車型ですら破壊が可能だと言うその兵器を今回は一人一本持たされる。
中に演習弾の入った訓練用のものだが、それでもかなりの重量があり。照準を合わせて正確に発射しなければならない。
「ケルベロスを着たらこんなの何本も持つんだろう?」
「キッチィ……」
同じ訓練生の誰かがそう溢す。
確かに訓練自体はキツイ。
だがやり甲斐もあった。
国を守る大義などと言う薄っぺらい感情ではなく、もっと大きな何かだ。
正直ここは異能で人の感情がよく見えてしまう場所で、目が常に痛い。無数の負の感情を持った人間が至る所におり、殺気立っているのもあった。
「……」
そんな苦痛から逃げたいが故に訓練の一つ一つに集中する。
こうすれば、少し異能がマシになるから……。
「発射!」
「っ!」
引き金を弾き、後方に強烈なバックブラストを撒き散らしながら発射された訓練弾はそのまま的に命中する。
昔ながらのアイアンサイトを使った照準は数十メートルであれば問題無く命中した。
「スカした美少女もういらない」
『『『スカした美少女もういらない』』』
この日のランニングでは両手にM72A1の小銃をもって走る。
「俺の彼女はM72」
『『『俺の彼女はM72』』』
今日は適正試験を行う日だ。ここにいるほとんどの所望するのがMSパイロットだ。
自分はプチ・モビルスーツを使った工事現場でバイトして居たこともあって、小型のモビルスーツの免許であれば保有して居た。たが、実践用の大型モビルスーツの操縦は講習で習った程度のものだった。
「もし戦場で倒れたら」
『『『もし戦場で倒れたら』』』
今いるのはこれから戦場で一兵士として駆け回るような奴ばかりだ。
いずれ死ぬかもしれない恐怖に耐えなければならない職業だ。
「棺に入って帰還する」
『『『棺に入って帰還する』』』
だから戦死した場合、自分の名前が慰霊碑に刻まれる事になる。
「胸に勲章 飾り付け」
『『『胸に勲章 飾り付け』』』
孤児の自分に血の繋がる母は居ない。
「ママに告げてよ見事な散り様!」
『『『ママに告げてよ見事な散り様!』』』
母……か…。
「では、これより適正試験を開始する」
シミュレーションルームの前で教官が話す。
この数ヶ月、まともにエリノラ達と会って居ない自分は少し寂しさを感じつつも。それ以上に周りの人間の感情の渦に目がチカチカして居た。
「訓練内容はシミュレーション上の敵機の撃破だ。動かす機体や目標はランダムで出る。結果は今日の夕刻に発表する」
そう言うと順番にシミュレーションルームに入って候補生たちはMSのパイロット目指して試験を始める。
この、MSの試験は一般兵でも行っており、時折工事現場で働いていた人物が翌日にMSパイロットとして戦場を走った事例があると言う。
次々と候補生が部屋から出て来て既に涙目の者も居るなか、いよいよリノの順番が回ってきた。
「なるほど……」
部屋に入り、それが全天リニアシートであると分かり、本物と同じ機材が使われていることに少し驚きながら席に座る。
『シミュレーションを開始します』
機械音声のアナウンスの後。画面が切り替わり、宙に浮いているようは光景に違和感を感じつつも持っている兵装からそれがジム系列の機体であると分かった。
敵の数は不明。どんな敵なのかも分からないが、リノはレバーを倒してMSを前進させる。
実機を使った訓練ではないのでそれほどの物でもないが。動きはかなりリアルだった。
「……」
シールドを片手に持ち、リノは警戒しながら前進していると。コンピュータが自動的に敵機を補足し、マーキングした。
「っ!」
敵はザクⅡを模した機体で、こちらを見つけるや否や持って居たザクマシンガンで攻撃を仕掛けてきた。
「だが……」
そこでリノは落ち着いて引き金を弾くと、発射されたビームがザクⅡを貫通し、撃破した。
「次!」
そして続々と現れたMSにリノはビーム・ライフルの引き金を弾いていた。
試験終了後、リノは施設の食堂で夕飯を摂っていると。そこに教官が現れて昼の試験結果を持ってきた。
「今から試験結果を発表する!!」
この試験でMSに合格すれば夢のパイロットになれる。
そんな願いを抱きながら候補生たちは名前を呼ばれていくのにドキドキして居た。
「ーー次にシラ・カバー」
そして名前を呼ばれていくのにかく言う自分もドキドキしながら聞いて居た。
「そして最後。……リノ・フリッツ」
「っ!!」
なかなか呼ばれなくて焦って居たが、最後の最後に自分の名前が呼ばれた。それだけでどれほど大きな息が漏れたか……
「以上が試験に合格した者だ。呼ばれた候補生は書類を受け取った後、専門の関連施設に移動する」
そう言い残すと教官は食堂を去って行った。
残された候補生たちは試験結果に湧いたり肩を落として暗い雰囲気を滲み出して居た。
「取り敢えず受かってよかった……」
そんな中、リノは試験に合格したことに心底ホッとしていた。
「二人は合格したんだろうか?」
そう思うと、持って居た携帯からメールが届いて、中身は二人とも試験に合格したと言う連絡だった。
試験を終えて、教官室に戻った教官はそこでとある候補生の試験結果を見て居た。
「この結果…恐ろしいな」
それはリノ・フリッツのMSの試験結果だった。
結果は文句なしの満点。一度経験があるとは言え、初めてのシミュレーションでこれほどの好成績を収めた事実に教官は驚きを隠せなかった。
「なるほど、少将が一目置くわけか……」
そんな彼を推薦したのはアーノルド少将だ。彼の養子であるテオパルドの一時的に暮らして居た孤児院の子だと言うが。思わぬ掘り出し物だったと言えるだろう。
「これなら実機を使った訓練でも問題なくいけるが……」
問題は彼の戦い方だった。シミュレーション上でも彼はもっぱら近接戦を得意にしており、ビームライフルよりビールサーベルを駆使した戦い方をして居た。
「実機を壊したらタダじゃおかんぞ……」
教官はそう呟きながら彼の戦い方に警戒して居た。
正直ここの掛け声をやりたいがためにこれ書いたまである。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい