この国におけるモビルスーツの歴史には大きな転換期が存在する。
それが、今から十二年前に起こったネオ・ジオン内紛と呼ばれる戦争だ。
この戦争では実に多くの技術や新型機が姿を現した。
その戦争で生まれた有名な技術で言えばムーバブルフレームや、ガンダリウムγ、ドラムフレームなど……
毎週のように新機体が登場しては戦線に送られるような恐竜的進化を遂げていた。
そんな中でも、サイコミュと呼ばれる技術も発展でしおり、そこで技術発展の名の下、凄惨な実験も容認されて居たのだ。
このネオ・ジオン内紛は一年戦争後に逃げ延びてアクシズと呼ばれる場所に隠れて居た旧ジオン公国軍残党がサイド3の独立とザビ家復興を求めて立ち上がったアクシズと呼ばれた集団と、各サイドの完全なる自治権獲得ザビ家独裁阻止を求めてかつて『赤い彗星』と恐れられた旧ジオン公国軍のエースが率いたネオ・ジオンと呼ばれる集団が互いの意見の対立から、潰し合いをする地獄の内紛と化していた。
これを見て政府はどっち付かずの姿勢をとり、その裏で共倒れになるように工作をして居た。
三年ほど続いたこの紛争は最終的にはアクシズの敗北で終わり、その後そのエースは連邦政府によって国家反逆罪の容疑で逮捕、無期懲役が言い渡され、その後の行方は不明だった。
その際、旧ジオン軍エースと『連邦軍の白い悪魔』と呼ばれたエースはかつてのネオ・ジオンの本拠地で激しい戦闘を行った。
この内紛で開発された技術や機体を回収した政府は、最も美味しい部分を掠め取って居たのだ。
正歴二一四五年 海上世紀〇一〇一年
初夏
適正試験を経て、無事にモビルスーツの操縦桿を握る許可を貰ったリノは荷物を持ってその訓練場へと向かった。
「ここか……」
入り口にはモビルスーツを模った石像が置かれ、遠くではロケットモーターの音や、銃声が聞こえて居た。おそらくはジム・ライフルの銃声だろう。
ここでは四ヶ月間モビルスーツの訓練を行い、その後は実戦が待って居た。
「リノ、こっちこっち」
訓練施設の前で候補生の軍服を羽織るリノは同じ衣装に身を包むクラウとエリノラに声をかけられた。
「おー、二人とも無事通過で。おめでとう」
「ありがとう」
「リノもね」
三人は集まって話をしていると、そのまま施設の中は入っていく。
ここの中では特にそう言った風紀的は話は訓練学校ほど厳しいものではない。ただ部屋は男女別で分けられており、会えるのは食堂などの他の人の目がある様な場所のみだった。
「しかし良かったわ。三人とも試験に受かって」
「ええ、テオも安心してたみたいだしね」
彼の連絡先を知っているクラウがそう話すと、リノが彼女に聞いた。
「今度あいつの連絡先教えてくれよ」
「良いわよ。あとで送っとくわ」
そう答えると、三人はこの三ヶ月で鍛えられた肉を見て呟く。
「流石に六〇キロの荷物持って走るのはキツかったわ」
「ね、脚がもう筋肉痛で死ぬかと思った」
「軍人になるのってやっぱ大変なんだなって思うこの頃」
そう話しながら三人は集合場所に到着すると、そこでは他にも多くの候補生や志願兵たちが集まっていた。
モビルスーツは今の合州国の主戦力だ。
帝国の開発した〈レギオン〉に対し、彼らよりもさらに遠距離からの攻撃ができる利点や弱点の上部から攻撃できる点などがあげられる。
ただ〈レギオン〉は物量に物を合わせた攻撃が得意であり、その物量に押し負ける形で撃破される事例が多く発生して居た。
「今現在確認されている〈レギオン〉は主に斥候型、ロケットランチャー型、戦車型、重戦車型であり……」
レギオンの写真と共にそれら無人兵器の弱点などを教官が説明する。
「これら無人兵器の弱点は多数存在するが、主な弱点としては基本的に上面や底部などである。
なお、物量で攻めてくる〈レギオン〉には連射可能な兵器による攻撃が最も効率的であるが、重戦車型などは発見次第ビーム兵器による攻撃を絶対としろ」
教官はよく物量による攻撃に注意しろと言って居た。
今現在、モビルスーツが撃破される要因として彼らの集中運用が原因であると言われている。
ザクマシンガンの一二〇ミリ実体弾を弾く能力のあるシールドを持って居ても、重戦車型の一五五ミリ砲弾の集中運用で正面装甲を貫通される事があると言う。
「ただ、現状の〈レギオン〉は全てビーム兵器で対処可能であり、緊急時は頭部バルカン砲でも撃破は可能である」
そう締めくくるといよいよモビルスーツの訓練に移ることとなった。
それから格納庫に到着すると、そこには多くのジム・トレーナーが待機して居た。
「「「おぉ〜」」」
複座式の教官と乗って訓練に使うための機体だ。
反対側にはザク・トレーナーが待機しており、見た目は違うがコックピットは全く同じだと説明された。
「では、これより訓練を始める。指導教官とタッグを組んで動作訓練を行う」
そう言うと名前を呼ばれ、教官と共にモビルスーツに乗り込んでいくパイロット候補生。
黄色に塗装された訓練機に二人が乗り込むと、順次格納庫を後にして居た。
毎日のようにモビルスーツパイロットを吐き出しているこの学校ではすでに演習場で訓練を行っている機体もあり、ザクⅡがジム・ライフルを持っていると言う珍妙な光景があった。
「リノ・フリッツ」
「はいっ!」
そして自分が呼ばれ、そのまま教官と顔を合わせる。
「モビルスーツに乗るのは初めてか?」
「いえ、プチモビルスーツなら……」
高校生の時、奨学金返済のためのバイト先の工事現場でプチモビルスーツを使ってバイトをして居た。その際に経験があるといった。
「そうか、ヒヨッコでないのならば訓練は簡単だ。操縦感覚はほぼ変わらないと思ってくれ」
「はいっ!」
教官にそう言われ、少しし緊張しつつもリノはジム・トレーナーに乗り込んだ。
「訓練通りに動かせばいい」
「はい」
そう言われリノは少し息を整えると、電源を起動する。
コックピットの画面に映像が映り、目の前の大きなガラス窓から外がよくみえ、最後にボタンを押して確認を取る。
「……」
そしてその様子を後ろからまた確認する教官。
「ロック解除、ジム・トレーナー。出ます」
「ああ、了解だ」
そしてリノの乗り込んだジム・トレーナーは順調に歩行を始める。
歩行時の揺れが少々コックピットに響き、常に宙に浮いているような感覚で格納庫を出る。
横では先ほどエリノラが乗っていた同じ機体が自分よりも少々ぎこちない動きをしながら格納庫を出て居た。
「初めてにしては上出来だ」
「ありがとうございます」
最初の訓練後、教官からそう言うふうな反応をもらった。
「これなら、すぐにでも一人で動かすことができるだろう。努力を怠らない事だな」
「はっ!」
そう答えると、教官はそのまま格納庫を去っていき。それを見て居たのだろうクラウとエリノラが話しかけてくる。
「好印象じゃん」
「バイトが生きたね」
「ああ、おかげで目をつけられたけどな」
そう言うと三人は食堂に向かって歩いて行った。
食堂では多くの訓練生が食事を摂っており、その中の空席にリノ達は座って居た。
「二人はどうなんだ?」
「私はちょうど動きが下手くそだって怒られちゃった」
「こっちは起動前の確認でどやされたわよ」
そう言い、初めて故に散々叱られたと二人は話す。
「もうちょっとで機体が倒れる寸前だったんだってさ」
「おーおー、それは怖いな」
教官とタイマンでコックピットだからそりゃ怖いものがあるわけだが……。
「だから羨ましいわ。初日で腕いいだなんて言われるなんて……」
「そうか?おかげでこっちは厳しい訓練になりそうだよ」
そう言い、リノは夕食を食べていると彼に話しかける訓練生がいた。
「ねぇ、この子って君の知り合い?」
「あ?」
声をかけられた方を見ると、そこには一人の訓練生が立って居た。
「ええ、彼方の家族よ」
「そう……ねぇ、名前は?」
「え?」
するとその訓練生はエリノラを見ながら聞いた。
「君の名前、教えてくれるかい?」
「え、えっと……」
困惑するエリノラにリノとクラウが動いた。
「おうおう、ちょっと待てや」
「話聞こかね?」
そう言い、ナンパしようとするその訓練生にリノとクラウはメンチを切っていた。
確かにエリノラは綺麗だ。それこそ、街中で歩いていると声をかけられるくらいには。だが、そんな事を許すリノ達では無い。
「私の妹に手出そうとする奴は捌いたろか?」
「ひっ!」
クラウのギャング顔負けの脅し顔にすっかりその訓練生は萎縮してしまって居た。
その後ろではリノが臨戦体制でその訓練生を見て居た。
「しっ…失礼しましたぁ!!」
あまりの恐ろしさにその訓練生は逃げるように走り去っていった。
それを見て呆れたようにクラウは言う。
「ったく、あんな根性ならナンパするんじゃないっての」
「そこまでしなくても……」
あんな大の男が逃げ出すような顔をしなくてもいいのではと思うエリノラにクラウは言う。
「いい?ここにいる男は全員野獣だと思いなさい。
アンタの顔はね、自覚あるでしょうけど整っているの。
だからそこらじゅうの男が今でもあんたを狙っているの。警戒しすぎた方に越したことはないわ」
凄まじい剣幕で捲し立てたクラウにエリノラはやや困惑しながら頷いていた。
夕食後、リノは携帯のニュースで戦況を見て居た。
ここ数ヶ月で目立った戦線の動きは無く、時々〈レギオン〉の襲来で戦闘が起こったことぐらいだ。
モビルスーツを主戦力とする我が国は戦争開始以来、他国との通信は阻電攪乱型によって常にミノフスキー粒子が撒かれているのと同じ状態で通信不能だった。
上空の衛星は帝国の人工衛星の攻撃でほとんどが破壊されており、フォン・ブラウン市からマスドライバーを使って発射する際は上空にミサイルを放って上空の宇宙ゴミを排除したと言われている。
衛生落としを行ったのかと思って居たが、帝国の真相は不明なまま数年が過ぎていた。
そして、動かなくなった戦線に大量に訓練しているパイロット。
これらを鑑みた結果、リノはある結論に辿り着いた。
「……攻勢か」
恐らく、近々大規模な奪還作戦が行われるのだと思って居た。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい