士官候補生学校での訓練も間も無く半年になる頃。
卒業前最後のモビルスーツの訓練を終えたリノ達はそこで最終的な成績を提示された後、教官にこう言われた。
「君たちの成績は非常に優秀だ。これからの活躍に期待している」
と、結局教官には一度も訓練で勝つことが出来ず。現場との違いを分からされた気分だ。
訓練生と現役の軍人ではやはり大きな壁があり。その壁を訓練で超えることはできなかった。
同級生や此処数年の中では秀でた成績を残しており。後に『奇跡の回生』と呼ばれることになっていた。
そして迎えた士官候補生卒業の日。
『卒業生代表。リノ・フリッツ!』
「はいっ!」
名前を呼ばれて壇上に上がり、彼は卒業証書と共に少尉の階級章を受け取った。
『貴官はこの度の訓練において素晴らしい成績を残した事を此処に記す。おめでとう』
そう言い、賞状を渡された後。リノは同時に少尉の階級章を受け取っていた。
「いやはや、無事に卒業できて何よりだよ」
校門の前、迎えに来たテオはやや不満げにリノ達を出迎えていた。
来ている制服には先ほど受け取った階級章をしっかりと付けており、此処にいる四人全員が少尉であった。
主席で卒業したリノを出迎えた人物に誰だと疑問を投げかける人もいる中。四人はそのままテオの運転するエレカに乗り込んだ。
「どしたの。そんな顔して」
「いや、別に?」
するとそこでクラウが少しテオを煽るように言った。
「あ、分かった。パイロットの成績で負けたのが悔しいんでしょう?」
「そ、そんなわけ……」
「こりゃ図星だね」
エリノラも察すると、テオは諦めて不満タラタラでリノ達目掛けて言い放つ。
「くそーっ!僕だって成績はいいはずだったのに、この四人の中だと最下位なんだよ!!」
「あぁ…」
「それは…」
「どんまい」
「チキショォォオオオッ‼︎」
彼は今まで溜まっていたのを全部吐く勢いで車内で叫びまくっていた。
士官候補生学校の卒業後、晴れて少尉となったリノ達はそこで自分たちを推薦してくれた人であり、テオの養父であるアーノルドの家に向かうこととなった。
「はぇー」
「良い家住んでいるのね」
「さすがは将官の家……」
そう言い三人はエレカを降りると、そこで目の前に聳える巨大な屋敷を見て居た。
「義父は昔から軍人の家でね。まぁ、仕事で忙しくて婚期逃したような人だから僕が養子に入って逆によかったかもね」
「こっ、婚期って……」
「あんたも酷いこと言うわね」
「怒られても知らないよ?」
笑えない話に苦笑しながら三人は言うと、テオは慣れた様子で言う。
「だって事実ですしお寿司」
そう言うと屋敷の中から一人の軍人が姿を表し、その階級章を見たリノ達はこの半年で教え込まれた癖で敬礼してしまった。
「やぁ、君がリノ・フリッツ君だね?」
「はっ!」
「噂はかねがね聞いている。さぁ、上がってくれ。せっかく息子の数少ない友人だ」
そう言い彼は三人を丁寧に迎え入れると、リノは思わずテオに聞いた。
「お前……もしかしてぼっちだったから連絡よこしたのか?」
「違うし!」
一瞬で反応するとリノはその勢いにやや引きながら彼の後に着いて行った。
「君たちはまず初めに一般の部隊に配属になる。君たちの腕なら問題なかろう」
家の中で自分たちは辞令を受け取る。それは卒業後に新兵が配属される部隊だった。
確かに自分たちは他の候補生と組んでも問題なく戦闘できており、それぞれが別の場所に配属されると遠回しに言われたのだ。
「暫くしたら僕も合流して同じ部隊に配属されるはずだから……まぁ、研修だね」
「そうですか……」
テオの補足を受け、辞令を受け取ったリノ達はそこで頷くとアーノルドは軽く頷いた後にリノ達に少し期待する眼差しを向けながら言う。
「君達の活躍には期待しているよ」
「「「はっ!!」」」
全員同じように辞令を受け取ると、そのままアーノルドはテオに言う。
「テオ、三人を案内してあげてくれ」
「わかりました」
そう答えると、彼は次にリノ達を見て彼らを手招きした。
「義父はね、暫くリノ達を研修目的で前線に行かせて戦闘に慣れてきた頃合いで陸上艦隊の艦載機に僕達で組んだ小隊を配属させるんだってさ」
「へぇ……」
「艦載機組になるんだな」
「それって良いの?」
エリノラがそう聞く。艦載機組というくらいだから何か特別なことでもあるのかと思っていたが、リノは首を横にふる。
「いやぁ、補給が楽になるなって……」
「ああそっち……」
「はは……リノらしいね」
テオが苦笑すると、クラウは茶化して言う。
「あぁ、戦闘狂?」
「馬鹿。俺を化け物扱いすんじゃねえ」
リノが思わずそう反論してしまうと、テオが思い出したように言う。
「でもリノって訓練場じゃあ『野獣』とか『獅子』ってあだ名がつけられてたんでしょう?」
「なんでお前知ってんの?」
名で訓練場の話をあそこにいなかったテオが知っているのかと疑問に思うと、彼は教えてくれた。
「いやぁ、推薦したのが義父でしょ?だから報告とかがよく来るわけで……」
「ああ、それで盗み見したのね?」
「人聞悪いぞ。クラウ」
「あら、ごめんなさいね」
テオに軽く叱られてクラウは飄々とした様子で平謝りする。
「まぁ、ともかくみんな一旦はバラバラになるから。そこに書いてある期日までに部隊のいる場所に向かってね」
「はいはーい」
「おっけー」
「了解」
三人はそれぞれ反応するとそれぞれの配属先を見ていた。
「私、山岳地帯の狙撃部隊だって」
「私は砂漠地帯の支援部隊ね」
「俺は平原の警備部隊だな」
それぞれの辞令を見て人事配置がしっかりパイロットの特性に合った場所な事にやや苦笑してしまう。
「いや、リノの部隊って一番の激戦になりやすいところじゃん」
「え……大丈夫なの?」
思わず二人が心配げな表情を浮かべてリノを見る。
そんな顔を向けられたリノはケロリとした様子で答える。
「大丈夫だろ。前線て言ったって乗っているのはモビルスーツだ。問題ねぇよ」
そう言うと、テオはそんな彼に忠告する。
「気をつけてよ?そう言って油断した人に限って<レギオン>に食われるんだから」
「……ああ」
その時の顔というのはまさに経験者と言った顔つきで、少なくとも昔のテオからは絶対にあり得ないような眼差しだった。
そこで確かにリノ達は、テオが戦場を経験した人間なのだと感じ取った。
そしてテオの代わりように驚きと寂しさが混ざり合っていた。
しかし、数日後にはテオのいた環境に行く身だ。その理由ももしかしたら分かるかもしれない。
そんな事を思っていると、テオはスッと表情を変えていつもの顔でリノに聞いた。
「この後リノ達はどうするの?」
「ん?あぁ、俺たちはみんなで孤児院に挨拶に行こうと思ってたんだが……」
「アイダさんには一応言ってあるけど、やっぱ直接会っておかないとね」
「何より次いつ会えるかわからないし……」
三人の予定を聞いたテオはそこで軽く頷いた後にリノ達に行った。
「そっか…じゃあ、ついでに僕も行くよ。久々に挨拶しに行きたいし」
「あっ、そう?」
「おお、アイダさん喜ぶかもね」
三人はそう言い、少し嬉しげな様子で孤児院に行く準備を進めた。
数日後、孤児院に久々に帰ったリノ達はそこでテオに言われてあえて軍服姿のままで門を潜る。
「よぅ、お袋」
「?あぁ、貴方達。それにハリスマン君も」
「ああ、叔父の養子となったので今はフィッシャーです」
そう言い、珍しい人を引き連れて孤児院に訪れたリノ達にアイダは驚きと、少し悲しさの混ざった表情を向けた。
「……軍人になったのね」
「ああ、大学には今まで通り通いながらだけどな」
リノがそう答えると、アイダはそんなリノ達を見た後に直ぐに子供に呼ばれていた。
「ああ、少し手伝ってくれるかしら?」
「ん?いいぞ」
リノがそう答えると他の三人も同じように孤児院にいる子供達の手伝いをして居た。
あれからも、何人かの孤児たちが他の施設の統廃合に合わせて送られてきており、それら子供達はアイダと新たに雇ったヘルパー、それと偶に帰ってくるマルコの三人で孤児院を経営して居た。
新たに雇ったヘルパーはリノの縁で小学校以来の付き合いのある同級生であり、リノと共に軽いヤンチャをしていた仲で、信頼できる人だった。
「そっちの皿をとってちょうだい」
「はいはい」
「あと、そこある缶詰」
「はいはい」
調理室でもはや慣れた手でリノはアイダに言われた通りに物をとっていく。
部屋にはクラウやエリノラもおり、今日は全員で料理を作って居た。
やけに今日は自分達をこき使うなと思いながらも三人は慣れた手つきで食材やらを放り込む。
テオは子供達の面倒を見ており、ここに居なかった。
「リノ」
「?」
「……いや、何でもないわ」
その途中、アイダはリノに話しかけるが結局何も言わずに終わってしまい、リノは首を傾げて居た。
結局、あれから何度かアイダに話しかけられてしまったが、何も言われずに終わり。リノ達は夜に孤児院の門に立つ。
「じゃあお袋。また帰ってくるから」
「……ええ、またね」
何処か最後の挨拶のような雰囲気で彼女はリノ達にそれぞれしっかりと抱きつくと、こう言った。
「何かあったら、ここに帰ってきなさいね」
そう言うとアイダはテオを見て言う。
「この子達の事、宜しく頼むわね」
「ええ、お任せください」
そう言うとテオは綺麗な敬礼で返した。
「いやはや、アイダさんは強い人だ」
孤児院からの帰り、テオはそう呟く。
「どういう事だ?」
リノが聞くと、彼は少し迷った後に答えてくれた。
「いや、たまに居るんだ。愛する家族が戦地に行くとき、家族がその子供を囲んでしまうことがあるんだ」
「嘘でしょ?」
思わずクラウが聞き返してしまうと、テオは問題になるからニュースにはならないがと言って軽く首を横に振る。
「いやいや、結構あったりするんだ。酷いとそのまま子供を引き連れて夜逃げする場合もある」
「そんな事が……」
「そりゃ誰だっていつ死ぬかわからない戦地に家族を送るってのは酷な事よ」
そう言うと、エリノラがテオに思わず聞いてしまった。
「じゃあもしかして着いてきたのって……」
「まぁ、そう言うのもあるかな。まぁ、久々に孤児院に行きたかったってのと、義父からもらった寄付金を渡しに行くってのが目的だけど」
そう答えると彼は最後にリノ達にこう言った。
「君足がやろうとしている仕事ってのは、こう言う事も起きてしまうような仕事ってことを。よく覚えておいてね」
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
-
やってほしい
-
やらなくていい