結局、あれから何度か巡回ポイントを回ったものの。結局<レギオン>との戦闘になる事は一度もなかった。
「今日はハズレだったなぁ」
「そうだな」
基地に帰還し、<ジム改>を降りた二人はそう話す。
一応、階級としてはこの部隊の中では二番目に階級の高いリノだが。先に任官していた少尉の方が上であるとリノや他の隊員は認識していた上に、リノ自身部隊内では最も若い人間と言う事で何かと若さを揶揄されることが多かった。
基地ではハリーに酒とタバコの楽しみ方を教わったが、これが意外と良かったと思っていた。
「すみません」
「おう、どうした新米少尉」
すっかり渾名で定着してしまったその呼び方にリノはもはや言い直しを諦めた様子でメカニックに言う。
「今日の巡回でスラスター推力をっと増やしてもらえませんか?」
「え、良いのか?これ以上推力あげると下手すれば制御不能になるかもしれねえぜ?」
そんなメカニックの懸念にリノはきっぱりと言う。
「良いんです。ほら、『厚い皮より早い足』って奴ですよ」
「そうかい……じゃ、少尉殿の要望通りに改修しておきますよ」
「よろしく頼みます」
そう言い残すとリノは格納庫を後にして行った。
リノの乗る<ジム改>ははっきり言ってしまうと、<ジェガン>や<ギラ・ズール>などの機体が主力機となっている軍としては化石レベルの旧式モビルスーツである。
しかし、開戦により北部地域のほぼ全域を侵略された合州国は大慌てで国内にあるモビルスーツを徴用しており、その中には一年戦争時の旧式モビルスーツも含まれていた。
とりあえず使えるものはなんでも使っとけ理論で前線には多種多様な機体が送り込まれていた。
しかしこれでは補給面で死ぬと言うことになり、この頃から<ジム>を中心とした古い機体は徐々に後方に回収され始めていた。
しかし、回収されるのはあくまでも第一世代機のみであり、<マラサイ>や<ネモ>などの第二世代機は使用を継続する方針で固まっていた。
そしてそれら旧式機の行き着く果ては最も損耗率の高い警備隊や後方基地の物資輸送などであった。
マッキー山脈 山岳基地
雪の積もる山脈の上で一機の<ジム・スナイパー>が山脈の上からコードの繋がったロングレンジ・ビーム・ライフルを持ってスコープを覗き込む。
「……」
その機体のコックピットに乗っているクラウ・フリッツは画面の先に映る<レギオン>の重戦車型を視認する。その距離は二〇キロの超長距離だ。
「ふぅ……」
テオの言った通り、群体を成して進行してくる<レギオン>の部隊に若干の嫌悪感を抱きながら丘を越えてくる機体の中で最も大きな機体が残って来た所で引き金を引いた。
その瞬間、ロングレンジ・ビーム・ライフルから桃色のビームが一直線に飛び出し。繋がれたコードの先には冷却材タンクが繋がっていた。
『冷却材を絶やすな!!』
近くにいるメカニックがそう叫ぶと、ロングレンジ・ビーム・ライフルから溢れる排気熱が下に積もっていた雪を一瞬で蒸発し、丘を登る<レギオン>部隊を真正面から両断し、重戦車型も真正面から真っ二つに引き裂かれていた。
地面が焼け焦げ、ところどころで煙が上がる。そして指揮官機である重戦車型が破壊された事で<レギオン>部隊は退却をして行った。
「……終わった」
狙撃用のゴーグルを外しながら呟くと、横で同じ機体に乗る他の隊員が驚愕した様子で無線を繋いできた。
『マジかよ。いよいよ二〇キロの狙撃やりやがった……』
『天才が来やがった……』
『すげぇ……』
配属された狙撃部隊は山脈の上から撃ち下ろす形で<レギオン>部隊の侵攻を抑える役割だが、その中でも飛び抜けた成績を彼女は叩き出していた。
いくら冷却材に心配がないとはいえ、最も簡単に二〇キロ級の狙撃を成功させたクラウに他の隊員達は唖然となっていた。
彼女の狙撃で稼いだ戦果は鰻登りで、今日も一発の攻撃で<レギオン>の近接猟兵型二両、戦車型を五両と重戦車型一両を破壊していた。
これはあくまでも光学センサで確認できた範囲で、本当はもっと破壊している可能性も秘めていた。
特にこの一ヶ月は徐々に攻勢を強めてきている<レギオン>はほぼ毎日襲来しており、その迎撃も相まってどこにの夥しい戦果を生み出していた。
『これでアイツの戦果は<レギオン>一個大隊だ』
『化け物みたいな戦果だ』
『これで一般兵じゃなくなったよ』
『個人マークをもらえるのか。羨ましいぜ』
隊員達はそう言い、雪上迷彩の施された<ジム・スナイパー>を見ていた。
東部戦域 砂漠地帯
そこでは一個小隊を組んで砂丘の上から<ジム・キャノンⅡ>が射撃を加えていた。
両肩のビーム・キャノンから発射されたビームが視界に映る<レギオン>の戦車型を貫き、持っていたジム・ライフルを発射して近接猟兵型を破壊する。
接近してくる戦車型の砲撃をスラスターで横に飛んで回避し、お返しと言わんばかりにビーム・キャノンを発射して戦車型を破壊していた。
『っ!しまった!撃ち漏らした!』
すると前線を張っていた<ジェガン>のパイロットが言った通信を聞き、搭乗しているエリノラが答える。
「任せてください」
そう言うと、味方が撃ち漏らして侵入してきた<レギオン>の戦車型を、スラスターで飛翔した後に真上から踏みつけて破壊した。
そして踏みつけた近接猟兵型の横で<ジム・キャノンⅡ>に照準を合わせた近接猟兵型を振り向きざまにジム・ライフルで撃ち抜いていた。
『あ、ありがとう……』
「いえ、支援機ですから」
そう言うと、エリノラの駆る<ジム・キャノンⅡ>はそのまま走り去っていった。
元々中距離支援モビルスーツであるが、ある程度の火力と装甲、機動性を持っているその機体は接近戦でも問題なく戦える。
そのせいか、エリノラの乗る<ジム・キャノンⅡ>は<レギオン>部隊に向かってビーム・サーベルやジム・ライフルで接近戦を仕掛けている事もままあり、その度に高出力のビーム・キャノンで敵部隊を薙ぎ払う事もあった。
そのおかげか、この一ヶ月で戦闘した数ほど彼女の戦績は上がり続けていた。
「どえらい子が来たわねぇ」
「支援モビルスーツであの戦果だ。こりゃ将来有望だな」
配属された砂漠地帯の中距離支援モビルスーツ部隊でエリノラは新米にしては高級品でもある<ジム・キャノンⅡ>に乗りながら華々しい戦果をあげていた。
「戦い方はまるで熊ね」
「ああ、間違いない。ロケットランチャー型を踏みつけていたしな」
「あれで新人?嘘じゃないのかしら?」
同じ部隊の隊員達からそんな影口を言われるが、彼女は気にする様子もなく基地で食事を摂る。
現在、戦場でモビルスーツを駆使して戦っているエリノラにとって知り合い以外の意見にはほとんど耳を貸す事なく。どれだけ陰口を叩かれようと、エリノラは全て無視していた。と言うより、リノ達以外の知り合いに一切興味がなかったのだ。
見た目も相応な事から時々告白をしにくる隊員もいるが、それらは全てエリノラが手袋の下にしている指輪を見せて玉砕させていた。おかげで男性隊員からは『恋愛ブレイカー』などと言うあだ名までもらう始末だった。
「この戦果であの子はマーク持ちになるわね……」
「やれやれ、戦場の女神様に愛されているようだね」
「まるで熊が食い散らかしているみたいだわ」
やや嫌味の混じった様子で同部隊の仲間からエリノラは見られていた。
それぞれの配属先で幼馴染達が華々しい戦果をあげている中、リノは一人。前線の警備隊で<レギオン>との戦闘に緊張する日々を送っていた。
「今日も巡回だけ終わって戦闘は無しですか……」
「良いじゃんか。屑鉄が攻めてこないんなら、俺たちの仕事も少ないってもんよ」
<ジム改>を降りて今ではすっかり慣れた基地を歩いてリノ達は話す。
配属されて一ヶ月近くが経つ現在。この四〇四警備隊は君が悪いと言われるほど<レギオン>の攻撃はなかった。
今日の巡回も終え、二個小隊は基地に帰還する。
小隊の駆る旧式MS達は今日もアンダーグラウンド・ソナーからの偵察情報を回収してそれを司令部に送っていた。
「警備隊は一番戦闘が激しいと俺は聞いていたんだが……」
「いやぁ、リノが来る前はそうだったさ。だけど、ここ最近は全く戦闘にならないな」
「全く、初陣はいつになることやら……」
軽くため息まじりに彼はそう呟くと、オウルがリノの<ジム改>を見ながら呟く。
「せっかくスラスターを強めて機動性をあげたのにな」
そう言い、彼はリノがメカニックに頼んで行った小改造を思い出していた。
リノの得意な接近戦の戦法はハリーから危険だからと言う理由で訓練時でも禁止されていた。
まぁ、訓練だと言うのに実機を壊してはバカみたいな話でもあるわけで、その点を鑑みてリノは納得していた。しかしここは戦場だ、思う存分に戦える。
<ジム改>に搭乗しながらリノは戦場である平原を見ていた。
今現在、戦線は全体的に<レギオン>の攻勢にあっているようだが。リノの居る戦域ではそこまでの攻勢は確認されていなかった。
『警戒しとけ。こう言う時は大体でかい事がある前兆だ』
巡回中、ハリーがそう話す。
しかし警備隊の他のメンバーはそんな彼の忠告は行き過ぎた警戒だと思って話半分に聞いていた。
『隊長〜、そこまで警戒しすぎると。気がもたないっすよ?』
『そもそもここの戦区は<レギオン>の攻撃が少なかった場所なんです。そう心配しなくとも』
隊員達はそう言い、今日の巡回ポイントである廃都市郊外のポイントに向かう。
今日の最後の巡回ポイントであるその場所は高地であり、街を眼下に収めることのできる場所にあった。
『予定地点到着。これより情報収集を行います』
いつも通り<ジム改>がアンダーグラウンド・ソナーに機械を当てて接触通信で情報を回収している間。周りではMS七機が護衛をしていた。
「……」
そんな中、リノは一人。妙な胸騒ぎを感じていた。
それはとても無機質で、金属に触っているような感覚だった。
少なくとも初めて感じたその気配にリノは冷や汗をかく。
足元では情報収集を行なっている<ジム改>の姿があり。順調に時が過ぎていた。
『これで、今日の仕事も終わりだ』
『帰ったらどうしようか?』
『またポーカーだろ?』
『それ以外にやることもほぼ無いしな』
そう話す仲間はどこか退屈げになっていた。
『あーあ、今度ゲーム機でも注文したい気分だ』
オウルがそう話したその時。
ドォンッ!……ヒューッ!!
「ん?光った?!」
廃墟となった街の方角から一瞬閃光が見えた瞬間、横で構えていた一機の<ジム改>の胸部に一発の砲弾が着弾した。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい