『敵襲!!』
『ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布!』
攻撃を受け、ハリーが叫ぶと全ての作業を中断してミノフスキー粒子発生装置を起動させる。
「大丈夫か?!オウル!」
『ああ、何とかな』
そう答え、胸部装甲に焦げ跡の付いた<ジム改>はそう答える。
『それまで耐えろ!』
『廃墟!十一時方向!撃て!!』
『くそっ!阻電撹乱型が居ねえのに?!』
その瞬間、ビーム・スプレーガンやジム・ライフルの攻撃が飛び。廃墟に攻撃が一斉に飛んで行く。
建物は攻撃で最も簡単に崩れ去り、一帯に土埃が舞う。
「……」
こんなもんじゃ無いと、自分の中の
無機質な金属的な気配は今の砲撃だけではあり得ないほど強いものだった。
すると土煙の奥から無数の砲弾がこちらに向かって飛んできた。
『くそっ!なんて数だ!』
『応援を呼べ!』
『もうやってる!』
こちらの編成は<ジム改>と<ジェガン>の計八機編成の警備隊。目の前からザクマシンガンの様に放たれる砲弾の雨をシールドで抑えるのには限界が徐々に近づいていた。
『こちらからも攻勢を仕掛けろ!敵は密集している!』
そう叫ぶと、ショルダーキャノン持ちのオウル達は砲撃しながらビーム・スプレーガンを放つ。
『くそっ!どれだけの大部隊だよ!』
「撤退しないんですか?!」
リノが無線で叫ぶと、オウルが怒鳴り返した。
『無理だ!ここは元々戦闘が激しくなくて、大規模に部隊が展開していない!ここで引いたら戦線を突破される!!』
「っ!!」
そこでリノは思わず歯噛みしてしまう。今現在、モビルスーツの補填をこう言った旧式機まで動員している現状。戦線はどうしてもところどころで妥協せねばならない部分があった。そのうちの一つがここの戦域というわけだ。
そして土煙が攻撃後の爆発で晴れると、そこには無数の銀色の集団が束になってこちらに青色のセンサーを向けていた。
それは、こちらの光学センサーのマーキングが追いつかないほどの数だった。
『っーー!!先にガイムを後ろに下がらせろ。二〇三高地まで撤退だ』
目の前に現れた無数の<レギオン>を見て、レーザー通信でハリーがそう呼びかけると、先にミノフスキー粒子発生装置を持つ<ジム改>が撤退をし、それを守るようにシールドで前線をリノ達は張る。
『効率よく射撃しろ!ビーム・スプレーガンは予備二個までしかねえぞ!』
ハリーは新兵であるリノに注意するように叫ぶ。
ビーム・スプレーガンはその特性上、Eパック方式では無いので。再装填するには充填するために後方に戻るしかなく、その為予備としてシールド裏と腰部に二丁装填済みのものをぶら下げていた。
一つに付き十六発、計四八発分のビーム兵器だ。
「効率良くったって何処撃ちゃ……」
『固まってるとこ撃つんだよ少尉!!』
そう言うとオウルがお手本と言わんばかりにビーム・スプレーガンを撃つと、固まっていた戦車型の一両を貫き、中の弾薬と燃料に引火して爆発を起こし。簡易的な榴弾となったそれは周囲に居た戦車型やロケットランチャー型を引き裂いて小規模の爆発を起こしていた。
「なるほど……っ!」
それを見てリノは納得した上でその引き金を冷や汗を掻きながら合わせて発射する。
……チュゥン!!
発射された桃色のビームは戦車型を撃ち抜くと、そのまま爆発を起こした。
「やったぞ……!!」
しかしその瞬間、ハリーの怒声が轟く。
『喜ぶんじゃねえ!次来るぞ!』
「っ!!うわぁ!!」
その瞬間、シールドに強烈な攻撃が集中的に飛んでくる。その反動で倒れそうになるところを堪えていると、通信が入った。
『撤退完了!散布完了しました!』
『よし、そのまま機器は放棄!一時撤退だ!』
報告を聞いた瞬間、一目散にハリーがスラスターを動かして後方に撤退を始めた。
「りょ、了解!」
慌ててリノもシールドを構えたまま射撃を続行していると、通常の戦車型よりも大きな砲声が聞こえた瞬間。
『うわっーーー』
最も端に居た<ジム改>が複数の砲弾を受け、コックピットを貫通し、そのまま爆発を起こしてしまった。
『くそっ!重戦車型だ!』
砲声を聞いて、嫌味げに叫ぶハリーに別のパイロットが叫ぶ。
『いつもの単機じゃねえ!複数隠れてやがる!』
そう叫んだ瞬間、リノはそこでハッとなって通信を繋げた。
「パックフロントだ!ここは敵のキルゾーンのど真ん中だ!」
『何っ!?』
その瞬間、また別の方に居た<ジム改>が重戦車型の集中的な攻撃にさらされてシールドが破壊された。
『くそっ!!』
『ギーツ!撤退しろ!』
『言われなくても!!』
シールドを破壊され、丸裸となった<ジム改>は先に撤退をしていく。
「大尉!」
『わかってる!』
<ジェガン>のシールドから連装のミサイルランチャーが飛ぶと、接近してきたロケットランチャー型を一蹴する。
「っ!!」
それと同時にリノはスモークディスチャージャーを使って戦場を白く染め上げた。
ミノフスキー粒子を撒いた影響で、<レギオン>のセンサー精度は低下している。熱源探知を行ったとしても、この濃さでは使用出来まい。事実、煙幕の奥から射撃が飛んでくる事は無かった。
『撤退!全機飛べぇ!!』
その瞬間、ハリー達は背中を向けたままスラスターを一気に噴かして後ろに飛んでいった。
一度、後方の高地に退避した警備隊はそこで向かってくる<レギオン>を見て顔を青ざめた。
「嘘だろ……?」
そこには先頭を斥候型を引き連れた重戦車型で固め。中間から戦車型、両翼をロケットランチャー型が展開していた。楔状に数多の部隊が侵攻し、パンツァーカイルを成していた。
『くそっ!何個師団いるんだよ?!』
その余りの数に思わず警備隊のパイロットが問いかける。
『増援はどのくらいだ!?』
『最短で来たとしても六時間だろう……』
『そんな……っ!』
既に消耗している現状、この数を警備隊ごときで抑えるのはほぼ不可能に近いと言えた。
しかし、ここを突破されれば。戦線が崩壊する可能性がある。
そんな二択にハリーは無線でここにいる全員に呟く。
『お前ら……
腹括れ』
その声はとても重く、かと言って何処か興奮している様にも聞こえた。まるで、死場所を見つけたときの様な興奮だった。
『後ろの家族が死ぬか、俺たちが死ぬか……分かっているな?』
「……」
究極の二択、かと言って答えは分かりきった様なものだった。
この時、リノの感情としては。意外にも興奮だったのかも知れない。
子供の頃、馬鹿の一つ覚えで刺激を求めて悪ガキをしていたあの頃とは隔絶に違う。本当の意味で死の狭間を感じるその瞬間に、リノはもちろん恐怖の方が勝っていた。だがその一方で、興奮している自分もいた。
『六時間だ。それまでここで抑えればそれで良い』
そう言うとハリーは持っていたビーム・ライフルのEパックを交換する。
『この高地は上から撃ち下ろしが出来る。屑鉄共はここで食い止める』
そう言いシールドを持ったままハリーは光学センサーで追撃してくる<レギオン>を見ると、その場で射撃を始めた。
『先頭の重戦車型から片付けろ!アイツは俺たちを殺す砲を持っている!』
『斥候型とロケラン型はバルカンだ!』
ハリーと副隊長が交互に叫ぶと、ビーム・ライフルを撃ちながら頭部バルカン砲で戦闘を進む斥候型や両翼を固めるロケットランチャー型を引き裂いていた。
そしてリノ達も同様に<ジム改>の頭部バルカンで軽装甲の<レギオン>を撃破しながら先頭を進む重戦車型を攻撃する。
その間、撃ち上げる形で重戦車型や戦車型の攻撃は届き。一点に集中砲火を受ける機体から徐々に損傷や、撃破されていく。
『右腕破損!』
『くそっーーーー』
シールドを破壊された直後に脚部を撃たれ、そのまま倒れる<ジム改>は横に居た機体によって起こされると、使える部分を活かしてさらに多くの<レギオン>を道連れにしようとしていた。
「これ使え!」
そう言い、リノは持っていたシールドをシールドが破壊されてパージしたオウル機に投げつける。既にビーム・スプレーガンは一つ使っており、シールドは空になっていた。
『っ!!お前!』
「俺には邪魔なものなんでね……!!」
そう言うと彼は空になった右手にビーム・サーベルを持ってスラスターを起動した。
「俺にはこっちの方が性に合う」
『死ぬ気か?!』
「戦いやすい方を選んだまでだ!!」
そう叫ぶと、リノは推力の向上したスラスターで一気に<レギオン>に向かって急加速した。
「死ねぇ!!」
どちらにしろ、多くの<レギオン>を道連れにするべきだ。
六時間と言っても四時間も粘れば、増援で抑え込めるだろう。
正直、基地に帰れるとは思っていない。
だから出撃前に約束した彼女のとの約束。
『これからも、私の前に立って引っ張ってくれますか?』
すまない、その約束は守れるかどうか分からない。
なにせこれだけの<レギオン>の部隊だ。既に二機がやられている現状、こちらが使える手は数少なかった。
「っ!!」
<レギオン>部隊のど真ん中に降り立ち、戦車型を足で踏み潰しながら振り下ろしたビーム・サーベルで戦車型を真横から両断する。
上から降りてきた<ジム改>に照準を合わせたロケットランチャー型から対戦車ロケット弾が飛ぶも、すぐさまスラスラーを動かして避けたリノはそのまま誤射で味方の戦車型を破壊するロケット弾を見た。
「……」
そしてそのまま考えるより先に手足が動いて持っていたビーム・スプレーガンを発射して、後ろから重戦車型を撃ち抜く。
そしてそのまま連射しながら横に飛んでいき、一発ずつ的確に重戦車型を撃ち抜いていく。
基本的に重戦車型はジム・ライフルでは撃破困難なほど重装甲な機体であり、見つけた場合はビーム兵器で攻撃するのが当たり前だった。
そして、戦闘濃度まで散布されたミノフスキー粒子の影響で斥候型の高精度センサも少なくない影響を得ていた。既に重戦車型や戦車型のセンサは使い物にならず、斥候型からの情報伝達が砲撃の頼りだった。
ビーム・スプレーガンは重戦車型の薄い上部装甲を溶解させながら貫通し、撃破していく。
その横で、これ以上戦力を減らさせまいと全弾発射された無数のロケット弾をリノは先ほど踏みつけた戦車型の残骸の砲身を掴んで起こして弾受けをさせていた。
戦車型が指向して砲撃をするも、読んでいたかの様にひらりと交わし、そのまま脇下からビーム・スプレーガンを発射して撃ち抜いた。
ロケットランチャー型は背中に二つのボックスを装備して高周波ブレードを廃している物と、一つにしてブレードを装備している機体と分かれていた。
そして見えている重戦車型にビーム・スプレーガンを向けた時。
「っ!!しまった!」
引き金を引いても発射されなかったビームスプレーガンに一瞬驚いた後、重戦車型の砲口がこちらを見た。
それを見て、『死』を感じた瞬間。上から重戦車型を可貫通した一本の光線が飛び込んだ。
そして、それと同時に怒声のが飛び込んだ。
『このアホが!!何前線飛び出してやがる!!』
そう言い現れたのはビーム・ライフル片手に飛んできたハリーの駆る<ジェガン>だった。
すると彼はリノを見て、おそらく残骸から持ってきたのだろうビーム・スプレーガンを渡して言った。
『貴様が俺より先にいくのは許さん』
真面目に呟いた彼の言葉は今日で一番重く感じ取れた。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
-
やってほしい
-
やらなくていい