86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#38 眠れる獅子12

『貴様が俺より先にいくのは許さん』

 

そう言い、リノの後を追いかけてきたハリーはそのまま持っていたビーム・ライフルの引き金を引いて攻撃を加えて来る戦車型を可貫通させていた。

 

『死ぬ気で生き残れ!!』

「っ!!はいっ!!」

 

ハリーの怒声にリノは頷くと、残弾のないビーム・スプレーガンを投げ付けて近接猟兵型を質量で破壊する。

頭部バルカンの残弾を確認しながらリノはマーキングされている機体を一瞥し、優先目標を考えた。

 

「(まずは、重装甲)」

 

持っているビーム・スプレーガンは二丁、残弾は三二発。それで見えている<レギオン>は無数。

正直、ここまでの重機甲師団だったのかと内心自分の無謀さにゾッとしながらスラスターを小刻みに動かして高機動白兵戦をする。

 

両手にビーム・スプレーガンとビーム・サーベルを持ち、装甲を溶かしながら<レギオン>の機体を破壊する。

 

既に何発か攻撃をもらっており、至る所に弾痕や爆発痕が残っていた。

 

『行けるか?』

「ええ、問題ありません」

 

ハリーの問いかけにそう答えると、彼は続けて言う。

 

『高地の上で残骸から武器を回収している』

「了解」

 

つまり、武器が無くなったら味方の残したものを使えと言う事だ。

今はリノが部隊のど真ん中に突撃した影響で高地への攻撃は多少分断されているが、それでも破壊された<ジム改>はあった。

直接見たわけではないが、人が死んだという()()は感じていた。

 

『高地さえ死守すれば、俺たちの勝ちだ』

「……はい」

 

部隊八人の命と引き換えに、高地を抑えて<レギオン>を押し留める。それが今の命令だった。

 

『そのためにはなんでも使え。例えば……』

 

そう言うと、ハリーは足元に転がっていた戦車型の残骸の砲身を握るとそのまま砲弾投げの要領で接近していた自走地雷を巻き込んで投げ飛ばした。

 

『こう言うふうにな!!』

「……」

 

その攻撃の仕方を見て、リノは納得した。この方が一切弾薬を消耗する事なく敵を撃破できる。実に効率的なやり方だった。

 

「(やってみるか……!!)」

 

いきなりの実践だが、できない訳では無かった。

ビーム・サーベルを片付け、リノは意識を集中してその()()を探った。

 

「っ!!(そこかっ!!)」

 

そして感じた通りにリノは近くにあった重戦車型を引っ張ると、その重量故か少し動きが遅くなってしまい。接近した自走地雷を一発喰らってしまった。

 

「うわっ!!」

 

そしてその衝撃はコックピットにも伝わり、危うく倒れてしまうところだった。幸いにも自走地雷の取り憑いた場所が脚部でも装甲の厚い場所だった為に致命傷は免れていた。

 

「重戦車では重かったか……」

 

そのときの衝撃で軽く頭を打ちながらもリノは冷静に考えると次に戦車型の砲身を握って、今度こそと言わんばかりに接近してきたロケットランチャー型を薙ぎ払った。

そしてそのまま戦車型を引きずったまま、今度はハエ叩きの要領で一瞬だけスラスターを噴かして飛んだ後に地面に叩き込んでいた。

そしてその衝撃でロケットランチャー型一個部隊を丸ごと破壊し、その瞬間。残骸の中に残っていた弾薬が衝撃の拍子で爆発し、リノは一旦後ろに飛んでいた。

 

「推進剤は……それほどだな」

 

あまり心許ないと思いながら機体に残っている推進剤の残量を見ていた。

今までスラスターを短く頻繁に使っていた影響で、残量に少し怪しさが見え始めていた。

 

時刻を見ると、二時間近くが経過していた。あと四時間……最短でも二時間は耐え忍ばなければならない。

リノは持っていた戦車型の砲身の残骸を、槍投げの要領で平原を進む戦車型に向かって投げつけ、上から突き刺していた。

 

「そろそろ戻らないと……」

 

そう呟き、いくつかすり抜けられている様子の前線を見る。

リノが部隊の真ん中に飛んで戦場をかき乱していたが、<レギオン>はその圧倒的な物量で無理矢理戦線を押し込んでいた。

 

既に自分の<ジム改>も所々装甲板が欠けており、機体各所に傷跡が目立っていた。

 

「大尉、高地に戻ります」

『ああ、俺も行く』

 

周辺の<レギオン>は片付けたのを見てリノ達は急いで高地に戻っていく。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

高地に戻る途中も<レギオン>をビーム・スプレーガンやビーム・サーベルで破壊しながら高地に戻ると、そこもまた地獄であった。

 

『くそっ!北東から押されそうだ!!』

『こっちはもう弾切れになっちまう!!』

『予備弾薬!』

 

そこでは三機のモビルスーツが高地を死守しており、その横には一機のコックピットを複数貫通されて倒れている<ジェガン>がいた。

自分たち含めて五機しかいない高地。戦況は絶望的の一言だった。

 

「ショルダーキャノンは?!」

 

そう叫ぶと、オウルがやや驚いた様子でリノを見た。

 

『生きていたのか?!』

 

部隊の真ん中に突撃していったリノが高地に帰還したことに驚愕の目を向けていた。

しかし、そんな戯言を言っている余裕はなかった。

 

「残り弾薬は?」

『ここにあるのはビーム・スプレーガン四丁とジェガンのビーム・ライフルと予備弾倉二つ。あとはジム・ライフル二丁だ。予備弾倉は無し』

 

そう言い、撃破された機体から剥ぎ取ったのだろう残りの武器を言うとリノは自身の持っているビーム兵器を確認した。

 

「俺が持っているのはビーム・スプレーガン二丁だけだな……」

『あと俺の予備弾倉二つと腰のグレネードだな』

 

そう言い、ハリーは撃破された副隊長の<ジェガン>に黙祷しながら機体に取り付けられているEパックを見せた。

今はリノとハリーが戦域を掻き回した影響か<レギオン>の攻撃は一旦収まっており、その間に武器と戦況の整理を行い。その途中でハリーはリノに言う。

 

『リノ』

「はい!」

 

無線で近距離の通信を行った五機の生き残ったモビルスーツはハリーから指示を受けた。

 

『副隊長がやられた今、臨時でこいつを副隊長にする。俺が死んだら、こいつの意見を聞け』

『『『『了解』』』』

「……」

 

緊急時とはいえ、これが初実戦の自分にいきなり副隊長の任を任せた事実にリノは内心ため息が漏れてしまう。

確かに、今いる中で二番目に高い階級なのがリノだ。それに、副隊長の役割は本来の隊長が不在時に指示を出すだけのお飾りだった。

 

『残った兵装でこの<レギオン>を食い止める。これからは積極的な攻勢は無しだ』

「了解です」

 

そう言うとハリーは指示を出す。

 

『高地の南方は味方の領域だ。回り込まれる心配はない。ただ前だけを向けばいい』

 

そう言うとハリーは今までの攻撃で至る所が損傷したシールドをパージすると、両手にビーム・ライフルを装備する。

 

『こいつは俺が持って行くぞ』

 

その意見に誰も物申す事はない。

ジェガン用のビームライフルを<ジム改>で撃てば、下手すると腕が破損する可能性があるのでこんな状況では自殺行為にも等しかった。

それを見て、オウルは空になったショルダーキャノンを外す。

 

『まさか全部撃ち切っちまうとは思わなかったぜ』

 

そう言いながら爆発ボルトでお荷物となったキャノン砲を取り外すと、少し身軽になった機体を動かす。

元々この警備隊はそれほど激しい戦闘が起こらなかったと言うことや、機動性を重視している点でハイパー・バズーカを装備していなかった。それが今回は重大な問題を引き起こしていた。

 

『各機、なるべく離れて配置に付け。ここが正念場だ。突出してきた戦車型と重戦車型をビームで、他は実体弾で破壊しろ。最悪サーベルだ』

 

そう言い、彼は両手持ちでビーム・ライフルを持つと彼らを見て言った。

 

『もし生き残れたら、そんときゃ宴会だ』

 

そう言い残すと、ハリーや他の生き残った隊員達も同様に少し笑みを浮かべていた。

かく言うリノでさえ、額にびっしりと汗を掻き。コックピットの中で水分補給をしていた。

 

『初陣だってのに、運無いな』

 

その途中、オウルが話しかけてきた。そんな呼びかけにリノは少し笑って答える。

 

「何、これも運命ってやつよ。それに、これだけ活躍できりゃ問題ないだろう」

『ははっ、ちげえねえ』

 

そう言うと、オウルはリノに聞いた。

 

『……逃げないのか?』

 

その問いにリノは少し間を空けた後に答える。

 

「どうせいつか人は死ぬんだ。それが今になっただけよ。

 

 

 

確かに後悔しているさ……だが、人はいつだって何かしらの後悔をしたまま死んでいく。世の中満足な表情で死んでいく人間の方が少ないだろうよ」

 

どこか自嘲した声色で言う彼にオウルも少し納得した様子で答えた。

 

『なるほど……』

 

そしてそこで彼はビーム・スプレーガンとジム・ライフルを構えて地面に横たわって即席の砲陣地を作った後に言う。

 

『んじゃ、生き残ったらお前の墓でも作ってやるかねえ』

「はっ、お互いにな」

 

そう言うと、リノはビーム・スプレーガンを両手に持ち、オウルから少し離れた位置に膝立ちでその時を待った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

それから一時間後、損耗した部隊の再編が完了したのか。<レギオン>はリノ達の立て篭もる二〇三高地に再進撃を開始した。

 

『さぁ、パーティだ!!』

『ロックンロール!!』

 

そう叫び、ジム・ライフルを構えて射撃を始める<ジム改>に乗る隊員らは実体弾でも破壊できる斥候型やロケットランチャー型、そして戦車型の上面を単発で発射しながら叫ぶ。

かく言うリノも同様にビーム・スプレーガンの引き金を引く。狙うは重戦車型と戦車型が密着している場所。

 

「貰った!」

 

慎重に敵を見定めながら引き金を引き、重戦車型の複合装甲を溶解させ、ついでに後ろを進む戦車型まで纏めて可貫通を起こす。そしてついでに誘爆させ、<レギオン>の脚部を爆圧で破壊して擱座させていた。

先ほど、接近戦で恐ろしいくらいに戦闘に慣れたおかげが、より効率的な戦い方ができているような気がした。

 

しかし……

 

『うわぁあっ!!』

 

高地で時々砲弾を避けながら射撃していた<ジム改>が膝の関節部を集中的に狙われ、両脚が丸ごと吹き飛ばされてしまった。

<レギオン>も学んだのだろう、効率的に無力化する戦法で確実にこちらの数を減らしにきていた。

 

『畜生!やってやらぁっ!!』

 

両脚を吹き飛ばされてもなお、前に倒れたその<ジム改>は持っていたジム・ライフルで射撃を続行するも、その後重戦車型のみで構成された重機甲部隊に一斉射撃を受けて機体の至る部分が貫通され、撃ち切ったジム・ライフル含めて蜂の巣にされてついに沈黙した。

 

「これで残り四機……」

 

パイロットの返事は無く、ついでにリノは人が死んだ……もう慣れてしまったその気配を感じた。

何かが空に向かって鳥のように飛んでいったその気配は、なんとも形容し難い何かを感じざるを得なかった。

 

高地に登ってくる<レギオン>は重戦車型の支援砲撃を受けながらロケットランチャー型を筆頭に進んでくる。

すると、坂をある程度登ったところで高地にある小さな林の中から一本のビームが飛び、そのまま横にスライドしていくと高地を登っていた<レギオン>はそのまま両断された。

 

『少尉、まだ生きているか?』

「ええ、この通り」

 

リノはそう答え、ビーム・ライフルを片手に持つハリーに答える。

いくら射程に劣るとはいえ、高地に登る<レギオン>を纏めて横凪にできる射程はある短銃身のビーム・ライフルはまだ彼らに生存の可能性がある事をうっすらと示す物だった。

 

「このまま敵をキルゾーンに誘導します」

『ああ、俺も残ったビーム・ライフルを全て撃ち切るまで死ぬつもりはまんざらねえよ』

 

そう言い、ハリーは腰に下がっているハンドグレネードを持って<レギオン>に投げつけると、爆発した衝撃で戦車型が数量ひっくり返ったまま動けなくなっていた。

 

『ははっ、バカみてえだ』

『まるで寝返り出来ねえ赤ん坊だぜ』

 

高地の上でそう呟くオウルと残っていたギーツは次の瞬間、激しい砲撃にさらされた。

 

『うおっ?!』

「無事か?」

『なんとかな……』

 

オウルがすぐに返事をすると、残った一機。ギースの乗る<ジム改>は徐に立ち上がった。

 

『……悪い、俺はもう…限界だ』

 

彼はそう言うと、撃ち切ったジム・ライフルを放り捨てて高地を降りていく。

その声と機体の損傷具合を見て、もう助からないと残った三機は理解した。そして彼が何を狙っているのかも……。

 

『一匹でも多くの屑鉄を相手にしてやらぁっ!!!』

 

そう叫ぶと、残った武装である頭部バルカンを乱射しながらギースは一気に高地を下る。

()()に気付いた<レギオン>は急速に駆け降りてくる<ジム改>に射撃を加えるも、スラスター全開で突撃してくるその機体に追いつけなかった。

 

『死ねぇぇええええ!!』

 

そう叫び、両手を広げた彼はそのまま複数の<レギオン>を抱えた状態で部隊の真ん中まで向かい、そして……

 

 

 

彼は鹵獲防止用に<ジム改>に搭載されている自爆装置スイッチを押した。

 

 

 

 

 

敵部隊の真ん中で大規模な爆発が起こり、巻き込まれた<レギオン>は丸ごと吹き飛んでいた。

 

『……これで残るは俺達だ』

『「……」』

 

ハリーの呟きに二人は目元を少し鋭くした。

残るは三機、敵はギーツの最後のカミカゼで攻勢部隊の一角を丸ごと失った。

 

センサーに映る中で重戦車型の姿は見当たらず、主な戦力は戦車型とロケットランチャー型だ。

高地中腹ではそんな残った部隊にハリーがビーム・ライフルで一斉射撃を加えながらEパックを一気に使い始める。

高地山頂ではビーム・スプレーガンを二丁持ちでリノは射撃を加え、その横でオウルも銃弾の雨を降らしていた。

 

敵のミサイル攻撃を受けても最早逃げる事はなかった。

ここで後退しても、どうせ後で死ぬだけならせいぜい最後に派手にやってやろうと自棄な状態とも言える心情で引き金を引いていた。

 

『チッ、もう弾切れか』

 

オウルは撃ち切ったジム・ライフルを捨ててビーム・スプレーガンを片手に持って射撃をする。

その横でリノも同様に一丁撃ち切って、次の一丁を手に持った。

 

「こっちもだ」

 

そう言うと、リノは高地中腹からビーム・ライフルを発射するハリーの<ジェガン>を見た。

 

「大尉?」

 

そこでリノが思わず聞くと、彼は最後のEパックをそれぞれのビーム・ライフルに装填しながら答える。

 

『どうかしたか、新米?』

「……いえ、なんでもありません」

 

リノは何度も戦車型の砲撃を受けて限界寸前の<ジェガン>を見た。

恐らく、その持っているビーム・ライフルを撃てば最期だ。まるで『死んでこい』と自分が命令しているようでとても気分が良いものではなかった。

すると、<ジェガン>のコックピットで心を読んだかのようにハリーはリノに言う。

 

『本物の指揮官ってのはな、部下に死に行けと言えるやつなのさ』

「……」

『だからどっかで悪いと思っているさ。新人で初戦闘のお前に、こんな酷な事をさせちまってよ』

 

彼はそう言うと、両手にビーム・ライフルを抱えたまま照準を自分に砲口を合わせる戦車型に合わせる。

 

『だが、これが戦争ってもんだ。どこまでも不条理で、何もかも変わっちまう』

 

そう言い、彼は引き金を引く寸前。リノに向かってこう言い放った。

 

『お前ほど、指揮官に向いていない人間も居ないかもな』

「っ!!」

 

そう言うとハリーはビーム・ライフルの引き金を引き、二本のビームが無数の砲弾やロケット弾と交差する。

 

そして高地全体を震撼させるほどの衝撃が伝わり、その後高地の中腹には黒焦げになったモビルスーツの残骸が残されていた。

 

 

 

 

 

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