86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#39 眠れる獅子13

「……」

 

山の中腹でついに撃破された<ジェガン>を見て、リノ達は黙り込んでしまう。

 

ついに残ったのは自分とオウルのみ。

 

そして襲ってくるは<レギオン>の戦車型とロケットランチャー型などで構成された部隊。

 

これで正真正銘、最後の戦いとなる。

 

『……行くぞ』

「ああ」

 

二人の駆る<ジム改>は双方共に今までの激戦で消耗しており、リノの機体は特に無理をしたこともあってか脚部に異常を抱えていた。

そして二機は残った最後の武器であるビーム・スプレーガンとビーム・サーベルを構えて最後の防衛戦を展開する。

 

引き金を引き、発射されたビームはその余波熱で掠っただけでロケットランチャー型を溶解させながら戦車型を貫く。

足元では重機関銃を発射してそのことごとくが弾かれている斥候型を足で踏み潰し、取り出したサーベルを振って少しでも遠くから<レギオン>を倒そうとしていた。

事実、サーベルから出る余波熱でロケットポッドに誘爆したり、脚部の金属などは近づいただけで溶解していた。

 

 

 

 

 

しかしそれも限界が来たのだろう。

 

『がぁぁぁあああっ!!』

 

対戦車ロケット弾がオウルの<ジム改>のコックピットに複数着弾し、その瞬間に戦車型の至近距離の砲撃で膝の関節部を丸ごと吹き飛ばされてついにオウルの機体が倒れた。

 

「オウ……」

 

咄嗟に名前を呼ぼうとしたが、その瞬間。倒れた<ジム改>に装填の終えた戦車型の砲撃が殺到し、最もあっさりと彼の機体は真正面や背後から集中砲火を浴びてそのまま機体の至る部分に穴が空き。その一発が核融合炉を貫通、そして……

 

 

 

一瞬の閃光と共に爆発を起こして衝撃波を生んだ。

 

 

 

「……」

 

後に配属されたからと先輩ぶっていた下の階級の同年代のパイロットは目の前から一瞬で消え失せてしまった。

その事実に唖然となる隙を、()()は与えなかった。

 

「ちぃっ!!」

 

残っていたビーム・スプレーガンの引き金を引いて乱射しながら高地に登って来た<レギオン>を一機でも多く道連れにしながらバルカンも発射する。

 

ブォォォォォ……

 

しかし、一瞬でそのバルカンは連続した豪快な音立てなくなり。銃身がただ回転するモーター音を響かせた。

 

「弾切れか……」

 

流石に使いすぎたかと思いながらビーム・スプレーガンの残弾を見る。片方にはまだ残弾が残っており、射撃は続行できた。するとその瞬間、

 

「っ!!」

 

激しい衝撃と共に機体が傾く感覚となり、咄嗟にリノはさっきのオウルの光景を思い出し、先に手が動いていた。

 

「同じ手に乗るわけには……行かねえんだよ!!」

 

そう叫ぶと、レバーを倒した彼は背中のバップパックからスラスターを勢いよく吹き出した。

その風圧で迂闊に接近していた斥候型やロケットランチャー型はその軽量さ故に姿勢を崩していた。

 

そしてそのロケットランチャー型はすでに撃破されていた副隊長の<ジェガン>のコックピット部分によじ登り、高周波ブレードを何度も突き立てていた。そして遂に貫通したその刃はもうすでに死亡していた副隊長の体を焼き切っていた。

 

そしてスラスターで最後の抵抗をしようとしたその瞬間、

 

 

 

ドォォォン!!

 

 

 

「……え?」

 

先ほどとは違う、大きさの砲撃音とそれよりも少し早いタイミングでコックピットに今までで一番大きい衝撃が加わった。

そしてその衝撃は凄まじく、衝撃波を伴った()()()()()の砲弾は<ジム改>の右胸部の排気口を貫通し、その障壁でフレームや周辺機器に多大な損害を与えて可貫通していった。

 

「?!?!」

 

そしてその衝撃はコックピットにまで走り、リノが見ていた画面を破り、そのガラス片はあらゆるものを切り裂くする凶器としてパイロット席に座るリノに襲いかかった。

 

 

サクッ

 

 

衝撃で欠けた無力透明なガラス片は重力に引かれてそのまま落下し、その先で唖然となっていたリノ・フリッツの右目にそんな擬音と共に突き刺さった。

 

「……あっ、」

 

その瞬間、背中から強い衝撃が加わり。その勢いで他にも散らばったかけらが彼の顔を掠っていき、そこから血を流し始めた。

 

「あぁ……」

 

そして流れ出した血はそのまま目を開けた彼の目に降り注いだ。

 

「あああぁぁぁあああっ?!?!?!?!?!」

 

突如、視界の感覚がおかしくなり、距離感がなぜか掴めなくなる。

なんだか視界が一気に狭くなった気分で、おまけに血液を目に被った為か恐ろしい激痛が走り出した。

 

「っ!!!!!」

 

その痛みを感じながらも、何があったのかと左手でレバーを手探りで探してそれを触って動かした。

しかし、機体が動く気配はもう無く。代わりにコックピットハッチを誰かが何度もこじ開けようと叩きつける音がした。

それを聞き、だんだんと真っ暗になっていく視界の中。リノは右の懐から手探りで拳銃を取り出す。

かつて、ハリーから受け取った最後の抵抗手段だ。

これで<レギオン>のセンサーを壊してやると言う意気込みで、銃口をこじ開けるハッチに向けた。

 

「ごめん」

 

帰ることは無理そうだ。

 

 

 

そう呟くと、リノの意識はそのまま拳銃を握る力を残したまま。ハッチの周りが赤く染まって金属を引き千切る様な音を最後に最後の最後に後悔を残した。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

四〇四警備隊からの救難信号を受信した救援部隊は一個艦隊と二個師団を差し向けていた。

救難信号受信から五時間、警備隊からの返信は未だ無く。はっきり言ってこの時点で司令部は部隊の生存は諦めていた。

 

戦線で防御の薄くなっていた戦域に数多の<レギオン>が襲来し、それを押さえ込んでいたのだろう、未だ接敵はなかった。

 

『センサーに感!』

 

そして進撃していると、艦のセンサーが反応した。

 

『射撃用意!』

 

追従するグラン・ザンドレル級陸上戦艦のメガ粒子砲が旋回する。

 

『撃てぇ!!』

 

その瞬間、展開中だった<レギオン>はメガ粒子砲による艦砲射撃を加えられてあっという間に撃破されていく。

艦首部分のハッチからモビルスーツも発進して行き、師団に配属されている<マラサイ>と<ネモ>が一斉射撃を加えて前進し続ける。そして後方に控える<ガンタンクⅡ>からの効力射も叩き込まれた。

 

元々艦種の統廃合に為に新品なのに廃艦となってしまったアレキサンドリア級をそのまま陸上用に設計から改造したこの艦艇は四隻で一個艦隊を編成し、失敗作と呼ばれたキング・トレー級やアイランド・フォークなどの代替品として大いに活躍していた。

改造品ながらも元の設計は悪くない為か、このグラン・ザンドレル級は今は三個艦隊を編成していた。

 

そして高地に展開し、これから戦線を襲い掛かろうとしていた<レギオン>は艦砲射撃と増援のモビルスーツ部隊絵を確認すると蜘蛛の子を蹴散らすように撤退していった。

 

「?」

 

こちらが拍子抜けしてしまう程あっさりと撤退した<レギオン>や、何より高地の上で何かしていたような姿のその部隊に疑問に思った救援部隊の司令官はそのまま高地にモビルスーツ部隊を派遣していた。

 

「これは……」

 

そして高地を登った兵士は、そこで見た景色に思わず目を見開いた。

 

無数に転がる<レギオン>の残骸が雪の様に平原に広がり、空に突き上がる砲身はまるで墓標の様で、焼けこげた平野の上を無数の無人兵器の骸が散らばっていた。

 

『……』

 

平原の各所にはモビルスーツの残骸が転がり、ここでの激戦は容易に想像できた。

 

『この数を…抑え込んだってのかよ……』

 

そのあまりにも非現実的な戦場跡に駆けつけた救援部隊は冷や汗を掻いていた。

とてもじゃないが艦隊に搭載されている汎用モビルバケット数両では回収しきれない程の残骸の量に戦闘の激しさを物語っていた。

資材用として積極的な回収が求められている<レギオン>の残骸を救援部隊は早速グランペルリのカーゴに積み込み始めていた。

 

 

 

高地には爆発痕とその残骸、撃破されてコックピットハッチのこじ開けられた<ジム改>が佇んでいた。

 

「……ん?」

 

そして救援部隊のパイロットはそこでそのハッチがこじ開けられた<ジム改>のコックピット席で血を流して倒れているある兵士を見ていた。

 

「若いな……」

 

恐らくこの残骸の平原を作り出した警備隊のパイロットの一人だろう。自分よりも明らかに若さが目立つその青年にパイロットは念の為の生存確認としてハッチを開けてその青年の首元に指を当てて呼吸があるかどうかを確かめていた。

 

「……」

 

周辺ではすでに多くの部隊がその戦場跡を見ており、残骸と遺体の回収・捜索が始まっていた。

 

「……」

 

警備隊生存の可能性は司令部は諦めており、元々は進出してきた<レギオン>に大火力を叩き込んで戦線を押し戻す作戦であった。

 

「……」

 

しかし<レギオン>自体は二〇三高地付近から進出しておらず、艦砲射撃で簡単に撤退していった。

 

「……」

 

艦隊司令部は警備隊が予想以上の徹底抗戦をしており、その命と引き換えに<レギオン>を抑え込んでいたのだと推測していた。

元に警備隊との通信は四時間前に途絶えており、通信後すぐにミノフスキー粒子散布下での戦闘が行われていると推測されていた。

 

「……っ!!」

 

青年の、そのほんのごく僅かな息遣いを聞いた救援部隊のパイロットは目を軽く見開いた。

 

「マジかよ……おい!聞こえるか?!生存者発見!高地の<ジム改>だ!」

『は?何言ってんだ?』

 

無線でそう叫び、近くにいた<マラサイ>のパイロットが首を傾げた様子で聞き返した。

 

「いいから早く!生きている奴がいたんだよ!」

『分かったから、今救護班を呼んだよ』

 

そう言うと、高地麓に停船した戦艦からホバートラックが飛び出してその生存して居たと言うパイロットを回収しに訪れた。

 

「……奇跡だ」

 

救護班の班長が思わずそう呟いて気絶しているそのパイロットを見て居た。

ドッグタグを見ると、そこに識別番号と名前が刻印されて居た。

 

「リノ・フリッツ少尉……急いでくれ!おそらく唯一の生き残りだ!」

 

そう叫び、彼はパイロットを担架に載せて緊急で戦艦の医務室に運んで行った。

 

 

 

 

 

高地には破壊された<ジム改>の残骸が夕陽に照らされて残されていた。

 

そしてその下ででは無数の機械が尸の如く織り成し、その光景は孤独に横たわる一匹の獣の成れの果ての姿の様だった。

 

 

 

 

 

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