やっぱりポケ戦は泣くなぁ……。
『ーーーーい』
誰かが話している。
『でー、ーーーーいと、ーーーのーーーまでーーないから』
誰だ、誰が話しかけている……?
『ーーうか元気で。リノ……こんな私を許さないで』
名前を知っている。自分の名前を知っている知らない人。
赤い髪が特徴的な一人の女性……顔は、よく分からない。だけどすごく懐かしく思う。
なんの記憶だろうか。下から見上げている自分は一体?
「……」
瞼がゆっくりと上がる。
視界に映るのは真っ白な天井。それと微かに匂う薬品の匂い。
視界が狭く、片目を覆われているようだった。
「……」
そこで彼は今いる場所が病院であることを理解する。
すると微かにここの職員だろうか。誰かの声が聞こえる。
『どういう事だ?』
『私も、解析はしましたが詳細は……』
そう話すと、看護師思わしき人物が目を開けている自分を見ると、驚きと安心をした様子で見ていた。
『先生っ!!』
それから体を起こそうとした俺はとにかく激痛に襲われ、その日一日はただただ苦痛の悲鳴をあげていた。
「ぎゃぁぁああっ!!」
「これ以上鎮痛剤は打てないんですから。我慢ですよ」
体に負担だからと鎮痛剤を打ってもらえない自分はついには気絶してしまっていた。
翌日、ようやく自分の状況を理解できた自分は右目が塞がれている状況に気づく。
「右目の調子はどうですか?」
「その……見えずらいです」
「暫くしたら慣れますので……」
看護師はそう答えると、リノはそこで聞いた。
「あの……俺の右目って、どうなったんですか?」
最後にモビルスーツのコックピットで確実に自分の目にはモニターのガラスが突き刺さっていた。確実に水晶体を破壊しているのは分かりきっていたので、リノは右目は潰れたと思っていた。
すると看護師は非常に言いにくそうにした様子を浮かべ、リノはやはりかと言った様子で続けた。
「目が潰れているのは何となく察していますよ」
正直、生きているだけでも儲け物だとリノは申し訳無さを感じながら答えると看護師はそこで一瞬動きが止まる。
「いえ、そう言うことでは……」
「……?」
何とも言えない微妙な顔を見せる看護師にリノは予想外の答え方に困惑してしまった。リノの世話をする看護師も困惑した様子でリノに言う。
「何というか、その……すみません。説明が上手くできなくて……」
「は、はぁ……」
リノも曖昧な看護師の答え方に首を傾げていると。その時、病室の扉が勢いよく開いてエリノラが駆け寄ってきた。
「リノ!!」
「うごっ!?」
そして彼女はそのまま怪我をしているリノに飛びつくとリノは若干の悲鳴をあげつつも驚いた様子で彼女を見ていた。
「エラ……?」
「良かった…目を覚まして……」
そう言い、泣いている様子のエリノラを見て困惑しているとさらに後から二人が入ってきた。
「やっと目覚めたのかい。この大阿呆め」
「クラウ……」
「でも良かったよ。リノが生きていて」
「テオも来ているのか」
そこで病室に入ってきたクラウとテオパルドの二人を見て安堵した様子を見せるリノ。その手元ではエリノラが寝息を立てていた。
「あんたが運ばれてからまともに寝れていなかったんだから」
「そうか……」
そこまで心配させたのかと申し訳なさが生まれると、テオパルトはやや苦笑気味に今のリノの状態を見てつぶやく。
「よくそんな怪我して生きて帰ったね」
今の彼は身体中に包帯を撒き、ギプスも取り付けられ、右目は眼帯をしていた。
「まあ、激戦だったからな……」
「そりゃ師団相手に奮闘していりゃあね」
呆れた様子で答えるクラウはその後リノを見て軽くため息を吐いた。
「でも生きてて良かった……」
そう言った時の彼女の表情はとても安堵した様子だった。横にいるテオパルトも同様に安堵しているようだった。
「……すまない」
「何謝る必要が?生きて帰ってきたんだもの。今はそれで十分よ」
クラウはそう答えると、安堵からリノの膝上で寝るエリノラを担ぐとそのまま部屋を後にする。
「明日、詳しい事情を聞きにちょっと偉い人が来るから。よろしくね」
「ああ、わかった」
リノはそう答えると三人は病室を後にし、再び部屋に静粛が訪れ。ベットに横たわったままのリノはそこでふと軽く後悔していた。
「今日が何日か…聞いときゃ良かった……」
目が覚めると、そこは<ジム改>のコックピットの中だった。
「ここは……」
なぜ自分がまたコックピットに乗っているかと思うと、突如全体に響く音と振動。
「な、なんだ?!」
そしてその音はだんだんと大きくなって行く。
「ひっ!!」
そして何度も突き立てられる音はそのままコックピットの入口を吹き飛ばすと、その先に見えたのは異空間の様な異質な黒い景色だった。
「……」
自分はシートベルトもした状態で金縛りにあったように動けず、その異質な空間をただ見つめていた。するとその瞬間、
「リノ……」
「っ!!」
コックピットの入口の端に手が現れると同時に知っている声が聞こえる。
「っ!その声……オウルか!?」
そこでリノは聞き返すと、その手の主は答える。
「ああ、俺だ』
「っ!無事だったのか!」
リノは夢中で叫び、その若いパイロットにリノは何か忘れている様な気がしつつも安堵していた。
『……』
しかしリノの言葉にオウルの手は反応することはなかった。
「おい、このシートベルトを外してくれ!動けないんだ!」
リノはそう叫ぶと、そのオウルの手はコックピットの端を掴むと、そのまま力を入れた。
『……なあ、』
そしてそこで顔を覗かせながらオウルは聞いてきた。
『どうしてあの時俺の手を取ってくれなかったんだよ?』
「っ!ひぃっ!!」
そして覗かせたオウルの顔を見た時、リノは思わず悲鳴が漏れてしまう。
そのオウルの顔は原型を留めておらず、ゾンビのように皮膚が爛れて変色し、顎も半分消えていた。特徴的だった緑色の目がギョロリとこちらを向き、再度聞いてくる。
『どうシテあの時俺のテヲ取ってクれなかったンダ?』
「くっ、来るな!」
そう叫んで腕で払おうとするも、オウルの顔はどんどん近づいてくる。
『なあ?なア?ナア?ナあナアナアなアナアナア??』
そして狂った声で何度も壊れたレコードのように聞いてくるオウルの背後から無数の手が現れてリノの体に触れる。
「や、やめろ……」
その光景にリノは恐怖に怯える表情で体を動かそうとする。
「やめろ……!!」
そしてその手はリノの体をしっかりと掴むと、そのままシートから彼の体を引き剥がす。
『お前もこっちにくる筈じゃないのか?』
「嫌だ……」
そしてそのままコックピットから剥がされた彼はコックピットの外に出されようとする。
「嫌だぁぁぁあぁぁぁあっ!!」
そして無数の手に覆われた彼は最後にそう叫ぶと、視界が真っ黒になった。
「っーーー!!」
飛び起きるようにそこで目が覚めると、そこで聞こえたのは呪詛の様なあの声ではなく、心電計の定期的な機械音と時々聞こえる車の走る音だった。
「はぁ…はぁ……」
そこで肩で息をしていたリノは冷や汗を大量に掻いており、病院着が湿っていた。
「……」
辺りを見まわし、だんだんと息の落ち着いてきたリノはそこで小さく溢した。
「夢だったのか……?」
そこで自身の手を軽く動かし、今さっき見たあの悪夢がフラッシュバックする。その瞬間、リノは途端に吐き気を催した。
「っ!!」
そして我慢できなくなり、途端に側にあった洗面器に盛大に吐瀉してしまっていた。
あまりの気味の悪さとあの言い難い空気や質感にリノは嫌悪感と恐ろしさを感じていた。
「大丈夫ですか?!」
悲鳴と吐瀉をしている様を見て看護師が駆け寄ると、一通り吐いたリノは少し安堵した様子で答える。
「はい……すみません」
「すぐに片付けますので……ほら、お水をゆっくり飲んでください」
そこで常温の水の入ったコップを出され、リノは骨が折れていたので片腕でゆっくりと水を飲むとそのまま息を吐いた。
「何かあれば呼んでください」
「はい」
看護師はリノがPTSDを患ったことに違和感を感じることはなかった。彼はあの地獄のような戦場を生き残った唯一の隊員だ。よっぽど精神が壊れてでもいない限り、あんな状況で心的外傷を受けないはずがなかった。
「(これから大変な苦しみを受けることになるでしょうね……)」
初の任務先でこれほどの激戦を生き残った彼は罪悪感や戦争そのものへの恐怖からうなされる事になるだろう。
まだ若いというのにこれからの苦労する未来を想像でき、看護師は心苦しかった。
この病院には他にも負傷した兵士が運ばれてくるが、リノのようにPTSDを発症してそのまま退役になった人物を何度も見てきていた。
幸いなのは彼を支えてくれる人がいたことだろう。看護師はそれが不幸中の幸いかと考えながらリノのいる病室を見ていた。
コメント欄を見ていて、リクエスト行為が禁止というのを知りました。
ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
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