次章からは細々とした日常系を書きながら並行して11巻に入ろうと思ってます。
あの二〇三高地での激戦を生き延びた唯一の生存者となったリノ・フリッツ少尉。入院先の病院で様々な事情聴取を受けていた。
「疲れた……」
質問攻めに合い、何度も同じ質問に同じ返答を繰り返すだけの日々。病人という事もすっかり忘れて多くの軍人が事情聴取をしていた。
「機体の映像が有るとは言え、本人からの意見も欲しいのよ」
ベットで横になるリノに花を変えに来たクラウが話す。
「はぁ……いつになったら終わるのやら」
「少なくとも、表彰式を終えるまでは続くでしょうね」
右目を包帯で巻かれ、片目だけの生活にもだんだんと慣れて来ているリノであった。
「俺の右目は…潰れちまったしな……」
このまま退役するのかと思いながら彼は同じく右腕のギプスを見る。
「あと一週間で取れるんだっけ?」
「ああ、痒くて仕方がない」
「そこは我慢せい」
クラウはそう言うと、その後にやや微妙な表情を浮かべながら言う。
「あの…実を言うとね」
「?」
「……いや、なんでもない」
何か言いかけたところを歯切れ悪そうにクラウは止めると、リノ自身は首を傾げていた。病院の人間も、テオもエリノラ以外のほとんど全員の顔見知りが右目のことに関して何か隠している様子だった。
「何言い止まってんだよ」
「いや……何と言うかね」
「何言われても俺は驚かんよ」
「いや、流石にこれはリノも驚くって」
彼女はそう答えると、花を差し替え終えて椅子に座った。
「まあ、あんたの怪我が治るまで時間がかかるから」
「戦闘処理もか?」
「ええ、貴方の身を案じて色々とテオがやってくれているわよ」
「ははっ、暫くはテオに足向けて寝られんな」
リノは乾いた笑いをしながらベットで上を向くと、小さく呟いた。
「もう俺は戦えないのか……」
「……」
片目の喪失は戦闘において非常に視界を制限される。士官とは言え、満足な戦闘を行うには不十分であった。
「悲しいなあ…初陣で名誉の負傷とは……」
まさか誰も初陣であれほどの激戦を繰り広げるとは思っても見なかっただろう。
「お前達とまだ戦えると思っていたが……」
「……」
そんな彼の呟きにどう返そうかと考えていると、病室の扉がノックされた。
「またか?」
「さあ、ちょっと……」
そこでクラウは返事をして部屋の扉を開けると、扉の前に立っていた人物に一瞬驚いてしまった。
「アッ、アーノルド少将殿?!」
「やぁ、生きていてくれて何よりだ。少尉」
そこにはアーノルドが立っており、彼の登場にはリノも思わず体が反応してしまった。
「ああ無理に動かなくていい。傷口が開くからな」
「はっ……!!」
テオの父親であり、自分達を士官に育ててくれた彼には色々と感謝をしていた。
「申し訳ありません…この様な姿となってしまって……」
まず初めにリノから出たのは謝罪の言葉だった。無理もない、初陣で右目喪失の大怪我を負った彼はこれからは満足に戦えないからだ。
しかし、そんな彼の言葉にアーノルドは気にするなと言った様子で答えた。
「構わないよ。君があそこで奮戦をしていなければ。今頃戦線は大きく後退していただろう……これは何物にも変え難い大きな戦果だ。むしろ私の方から謝罪をさせてくれ。いきなり君を前線部隊に配置日してしまい、そのような傷を負わせてしまった事に」
先ほどまでクラウが使っていた椅子に座りながら低い物腰でリノに話しかける。
「自分だけではありません。他の隊員の奮戦あってのお陰です」
「ふむ……それもそうだな」
その意見にアーノルドは納得した後で、彼に有る話を伝えた。
「今日ここに来たのは、君にある話があるんだ」
「ある話……とは?」
そこでリノは聞き返すと、彼は口頭でその内容を伝えた。
「今、議会や上層部で君や四〇四警備隊の隊員全員に名誉勲章を授与する方向で動いている」
「めっ、名誉勲章……ですか?!」
思わずリノやクラウは目を見開いてその話を聞いていた。
名誉勲章といえば合州国の中でも最高位の勲章であり、授賞基準はとても厳しいものがあった。
そして名誉勲章を授与された者は数々の恩典が与えられ、どのような位であっても敬礼を必ず受ける程の代物だった。
「ああ、二〇三高地での戦闘に置いて味方部隊到着までの時間稼ぎ。勇気ある行動、自己犠牲の精神を評価しての授賞だ。……是非とも受けてもらえるとありがたい」
「も、もちろんです……!!こんな自分には勿体無いくらいです」
困惑するリノは二つ返事でそう返してしまうと、アーノルドも安堵した様子を見せた。
「ありがとう。お陰で話は容易に進むよ」
実を言うとこの時、軍部としては構築した戦線に穴があった事実を有耶無耶にする必要があった。理由は戦線に空いた穴から<レギオン>が進行する可能性があると言う不安を戦場に持ち込ませないようにするためだった。
四〇四警備隊の奮戦と唯一の生き残りのリノ、彼らはその不安材料を有耶無耶にするために必要な材料であった。
「君の怪我が回復したら、詳しい調整に入る。その時を楽しみにしていてくれたまえ」
アーノルドはそう言うと、リノの見舞いと勲章授与の話を終えて病室を後にしていた。
話を聞かされたリノは話を聞いた後で困惑し、クラウに『ちょっとビンタしてくれないか?』と問いかけるほどだった。
この時の四〇四警備隊の戦果は<レギオン>の重装甲師団四個の殲滅であった。それと引き換えに七機のモビルスーツは破壊された。
唯一の生き残りはジム改に乗っていた新米パイロットのリノ・フリッツ少尉。撃破された機体から回収した武器を使って一個戦区を押さえ込んだ功績は歴史に名を連ねられるほどの大戦果だ。
「では、ギプスをとりますね」
「はい」
そして機械でギブスを切って包帯を取る。今日は足以外の箇所の包帯を剥がすのだ。つまり、顔の状況も分かると言うわけだ。
「あの…」
「?」
「これから頭の包帯を取りますが、少し困惑するかも知れません。覚悟はできていますか?」
そんな看護師の問いかけにリノは頷きながら言う。
「そんなの、とっくに昔からできていますよ」
「……分かりました」
そこで看護師は納得しつつゆっくりと頭に巻いていた包帯を取る。
元々コックピットで気を失う直前に右目にガラス片が刺さったのは覚えているんだ。右目が見えないことは覚悟ができていた。
「ではガーゼを取りますね」
そして長い包帯を取り、やや血と涙で汚れていた包帯を取る。
包帯を外す時に目を閉じていたのでガーゼが取れる感覚を感じた後に少し息を吸ってゆっくりと瞼を開けた。
反対には鏡があり、車椅子に乗った彼は自分の顔を見て思わず声を上げた。
「……は?」
そこには右眼がまるで金属のようにぎんいろの自分の顔があったからだった。
「なるほど、これはお前たちが困惑するわけだ」
事情を知り、なんとも言えない表情でリノは話す。
「初めに報告を聞いた時は困惑したわよ」
「うん、僕も意味がわからなかった」
彼の病室でリノとクラウ、テオパルトは右目の事で話す。
「ってか、よくこんな普通に話せるね」
「違和感しかなさすぎてどう反応すれば分かってないだけだよ」
エリノラは今日は来ておらず、孤児院の方に事情説明に行っていた。彼女はまだこの右目の事は知らないらしい。
「初めて見た時、医者がひっくり返ったそうよ」
「無理もないだそうな。こんな色の目をしてりゃ」
そう言い、銀色になった目を指差すとテオパルトが聞く。
「見えるの?その目」
金属のような見た目の眼球に彼は恐る恐る聞くと、リノは左目を閉じて見た。
「……見えるぞ」
「え?」
「嘘……」
物は試しだなとリノが軽く溢した後に、クラウが試しに指を動かす。
「これは?」
「二」
「じゃあこれ」
「六」
スラスラと答えたリノにクラウ達は驚くと、テオが溢した。
「やっぱ眼帯持ってきておいて正解だったね」
「えぇ、これつけるのはちょっと……」
そう言ってテオパルトが持ってきた海賊がつけていそうな見た目の眼帯にちょっと引いていると、クラウが茶化す。
「いいじゃん、そっちの方は面白そうだし」
「せめて医療用のにしてくれ……」
海賊みたいな眼帯はもう少し後にして欲しいと言っていると、テオパルトはそんなリノに言う。
「その右目のことは父さんも知っているけど、流石に見えているのは予想外だったな……」
「お医者さん呼んどく?」
「うん、そうだね……元々君の右目は負傷している事になっているから……でもどう説明する?」
「「うーん……」」
そこで三人は反応にとても困っていた。あとは足の包帯が取れるほど回復すれば、式典が待っており。そこでリノは名誉勲章を授与される。
「世間の目を誤魔化すためとはいえ、これはアレだな……何というか」
「やりすぎ?」
「ああ、そうだな」
授与式は自分の他にも数名の受賞者がいると言う事らしいが、一番の目玉が自分になるだろう。
「右目の一件はリノの体調が治ってからにしよう」
「ええそうね。詳しい検査もしたほうがいいだろうし……」
「まぁ、詳しいのは任せるよ」
リノはそう答えると、明日からのリハビリに備えて早めの就寝についていた。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい