86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#18 特攻作戦

星暦二一四九年 九月十五日 午後五時 国防総省 参謀本部会議室

 

「現在、電磁加速砲型は旧ギアーデ帝国領クロイツベック市の鉄道ターミナルに鎮座し、この列車砲はジークフリート要塞戦線各戦域、マッキー山脈OTHレーダー施設も射程圏内です」

「「「「……」」」」

 

閣僚達は渋い顔をする。先の大攻勢で少なからずジークフリート要塞戦線は所々で突破を許した。

攻撃は最大の防御というが、昨年のバグラチオン作戦で国境まで戦線を押し戻す事に成功した合州国国防総省としてはこれ以上の侵攻は必要ないと思っていた。

 

政府内では領土の拡張を訴える戦場を知らない政治家がいたが、そんな人には戦時国債の発行金額を見せて黙らせた。

十年も戦争をしていれば莫大な量の金が掛かるわけで、現在戦費は国民が購入する国債で賄っていた。

いくらレギオンが資源を供給してくれるとは言え、やはり兵士の訓練や、砲弾、遺族への葬い金などで戦費は増す一方である。

 

合州国はすでに国内で経済が回っているのだ。これ以上領土を増やす事になれば防衛に支障をきたす可能性が出てくる。

しかし、そこで大統領令が出されたのだ。

 

『連邦と共和国を結ぶ回廊を設定されたし』

 

大統領令が出され、軍は否応にも回廊を設定しなければいけなくなる。

そんな訳で今回の侵攻作戦に合州国も参加する事となったのだ。

共和国側を北西回廊、連邦側を北東回廊と名づけ、しれそれぞれ侵攻路を選定していた。連邦にはコテージ作戦時の侵攻路を取れば良いが、共和国に関しては共和国から情報を持ち帰った第一一二小隊が通ったルートを基準に選定をしていた。

 

「(もしこの回廊が完成すれば合州国としても売り手が増えるか……)」

 

連邦からの情報で共和国が大攻勢で滅んだ可能性があるという。

今までやってきた事の皺寄せが来たのだと貶し、当たり前だと言う感情で会議場は埋め尽くされた。

しかし、エイティシックス達を助けると言うのは国民の意志でもある。

 

 

 

 

 

エイティシックス達を助けれれば、後はどうでもいい。

 

 

 

 

 

少なくとも合州国はその様に考えている。

今回の共同作戦に際し、第一特別遠征軍。通称『白の督戦隊』が結成され、元共和国国民の志願兵士一万五千人は侵攻作戦に備えている。

白の督戦隊は装備が何もかも白く塗装されており、八五区内に逃げた白系種を皮肉っていた。

 

「(侵攻作戦時に、連邦の精鋭部隊。ノルトリヒト戦隊が電磁加速砲型の撃破をする……か……)」

 

聞けば優秀な兵士が連邦にはいるようだ。

国の為に死ねと言われ、それを忠実にこなす。

この作戦はそのノルトリヒト戦隊が要となる。噂によれば共和国から行き着いたエイティシックス達がいるとされているが、真相はまだ分からない。

ともかく、合州国は国家間の合流を果たす為に今回の《回廊作戦》を実行に移す準備を始めていた。

今回の作戦には海軍省からも海上からレギオン支配域に砲撃を行う事が決定された。

海軍からは、かの一年戦争で生き残った合衆国が誇る六〇センチ三連装砲を搭載したジュットランド級戦艦の生き残り《ジュットランド》《レイテ》二隻を投入し、陸地への砲撃を開始する。

空軍からは無人機を投入し、侵攻軍の援護にあたる。

陸軍は部隊を率いて前線を押し上げる。

 

アーノルドはその部隊編成の整理を始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー見つけた。

 

 

 

 

 

吹雪が吹く中、彼女はそう呟く。

彼女の目には月夜に照らされた一機のMSが大攻勢の軍勢に向かって砲撃をし、下に銀色の流体マイクロマシンが滴り落ちる青と白のMSであった。

斥候型の映像では有るが、彼女の確証をつくには十分であった。

 

『見つけるのに二年かかったわね……』

 

そう呟き、思い出すのは三年前、重戦車型で急襲した合州国のMS部隊の生き残りを鹵獲しようとした時のこと。意識を失い、視界も見えていない筈なのに持っていた拳銃を持って銃を撃つ。

 

生に対する強い意志を感じる。

 

その青年のドックタグを見て彼女はある実験を行なった。成功率は低いがやってみる価値はあると判断してのことだった。

 

『どうやら成功したようね』

 

どこかホッとした様子で映像を見ていた彼女は斥候型の映像を見終える。

 

これ以上はノウ・フェイスが口を出してくる。

 

この事もノウ・フェイスは知らない事実だ。

 

これは、彼女の個人的な興味から来るものだった。

 

『それに、面白いおまけもついてきたようで……』

 

先程の映像を思い出しながら彼女は少しだけ笑みを浮かべる。

 

『私は彼が来るまで待とう……』

 

彼女は殺戮機械にあるまじき期待という感情を持ちながら斥候型の映像を見ていた。

 

 

 

『リノ……』

 

彼女はそう呟くとどこか懐かしそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

星暦二一四九年 九月三十日

アルトリア合衆国 第二〇号前線基地

 

この日、ストライカー戦闘大隊は基地の格納庫で武器の点検を行なっていた。

 

「パッキンの予備はあるか?」

「こっちは替えのモーターだ!」

 

作業員の声が響き、格納庫でリノが自分のMSを見て呟く。

 

「いよいよ明後日か……」

「時間が経つのは早ぇなぁ……」

 

その横でハルトが呟く。一週間前にレギオンの残骸を片づけ終え、ハルト達の機体の予備パーツがたっぷりと出来た。

ジークフリート戦線は更なる強化のために格納式の速射砲砲と重機関砲。自走砲、戦艦から持ってきたメガ粒子砲、ミサイル発射筒に列車砲など多種多様の火砲が集められ、塹壕も今では綺麗に整えられ、大攻勢の戦訓から塹壕の内側の地面にも地雷敷設が行われていた。

 

「その連邦の精鋭部隊が電磁加速砲型をやるんだろ?俺たちは北西回廊に突っ込むからもしかしたら会えたりして」

「……そうかもな」

 

リノは少し言葉を詰まらせて答える。

今回モルフォがいるのはレギオン支配域の奥地。可能な限りかの戦隊の援護を連邦は要請しているが、なにぶん合州国からは遠すぎる。

今回の侵攻路でもある北西回廊と北東回廊は全てが国家間高速鉄道の線路を中心に進む為、ノルトリヒト戦隊を追うことは難しいだろう。

おそらくそのことはハルトもよくわかっているだろう。国のために死す兵。かつて極東の国で行われた特攻隊と変わらないその行動にリノ達は名も知らぬその兵士に敬意を表していた。

 

「……さて、俺たちも準備をするぞ。作戦が始まったら俺たちは共和国に行くんだからな」

「うわぁ……ナツカシノコキョウダー」

 

心のこもって居ない声を出し、ハルトはおちゃらけた様子で格納庫を出ていく。

彼らにとっては帰りたくない祖国だろう。なのに、着いてきてくれるのだからその心構は素晴らしいと思っている。

リノは色が戻った青色の目で見ながらハルト達を見ていた。

 

 

 

 

 

その日の夜、リノは先遣隊として派遣される国家間高速鉄道の路線の地図を見ながら派遣軍指揮官と作戦の詰めをしていた。

 

「ーーーーと言う訳で我々が知っているのはここまでの地形です」

「そうか……ならば作戦開始時に我々はストライカー戦闘大隊の設置したビーコンに沿って進めばいいか?」

「まだ稼働しているかはわかりませんが。我々が偵察任務の際に設置した臨時通信塔が放置したままなはずです」

 

白い軍服を着た翠緑種の男性がリノの説明を聞いて頷くとさらに推測を話す。

 

「ここからは推測ですが、共和国が陥落したと言う情報が本当であれば八五区周囲に設置された地雷はレギオンによって突破されている可能性が高いです」

「ほう……」

 

指揮官が興味深く聞く。

 

「先の大攻勢の時にレギオンはジークフリート要塞戦線の地雷原を斥候型を使い潰す形で突っ込ませていました。なので地雷除去は必要ないかもしれません」

「……だが、念のためだ。ガンタンクの前に地雷除去ローラーをつけさせよう」

「それから大要塞壁群に関してはもう動かないと仮定し、我々は先に八五区内に入りレギオンの掃討にかかりたいと思います」

「了解した」

 

そう言うとリノは敬礼をする。

 

「では、また向こうで会いましょう」

「ああ、共に子供達を守るぞ」

 

白い軍服を着た派遣軍指揮官はリノの共に外に出ると、そこには白く塗装されたジムⅡ、白い旧式のM61A5主力戦車。白い装甲歩兵に白い一三.二ミリ重機関銃。

全てにおいて白い軍隊がそこには居た。

 

第一共和国派遣軍 通称『白の督戦隊』

共和国出身者で主に構成された志願兵の軍隊である。

去年から訓練を重ね、今次回廊作戦にて共和国まで突撃をする部隊である。

この臨時野営基地には一万五千人の兵が集まり、その半数は志願兵で構成されている。

この部隊は使う武器が全て白色に塗装されているのが特徴だ。

リノは改めて目がチカチカしてきそうなほど白一色に塗装された派遣軍を見る。

 

「す、すごいですね……」

「生まれ故郷に愚策を自覚させて更生させるのが主な任務なのです。皆、やる気に満ちていますよ」

 

その中にはパワードスーツに身に纏った共和国出身の白系種までおり、片手に一三.二ミリ機関銃を持っていた。

その事にリノは苦笑しつつ空を眺めていた。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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