86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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本当はムサカ級も出したかったけど、斜めカタパルトは重力下だとあまりにも変ということで泣く泣く出演は消えました。
あとこの世界はレビル将軍がご存命なので0083に登場の艦艇はそもそも建造されてないです。


外伝#49 進んだ人類Ver.10.0

ケリフォルニアベース奪還は合州国全体において戦意高揚の良い起爆剤となった。

今まで北部地域を奪われたままで、今度の戦局に大きな不安を抱えていた国民はこの一報を聞き、本格的な本土奪還の時は近いと。主に北部出身の者を中心に志願兵が徴兵事務所に殺到していた。

 

そしてこのケリフォルニアベースでの戦闘を鑑みた作戦計画。計画名はバグラチオン、かつての将軍の名を冠したこの作戦はオデッサの戦いとほぼ同規模かそれ以上の戦力の投入が予定されていた。

 

「陸上戦艦の投入は少なくとも全てだな」

「うむ」

「反対しませんな」

 

陸軍の会議で捻出する戦力の会議として全会一致した意見だった。

今の陸戦艇はキング・トレーとアイランド・フォークを二隻ずつ、グラン・ザンドレル級を六隻、ビグ・ダブデ級六隻を保有していた。ただギャロップやグランペルリなどを含めると結構悲惨な事になるので数に入れてなかった。

 

「少なくとも二ヶ月後にはキング・トレー級とアイランド・フォーク級の改装工事が完了し、その後の試験走行の分を含めると……最短で三ヶ月後だ。先の作戦で損害を受けた部隊の修理を含めても問題ないはずだ」

「まだあの陸戦艇を使うか」

 

性能的に言うと二兎追う者は何とやらと言った性能にまで下がってしまった駄作機。解体してその分をグラン・ザンドレルなどにしてはダメかと一人の将官が溢した。

 

「今は戦力がどれだけあっても良い。陸上戦艦自体の突破力は<レギオン>相手にはとても有効だ」

「左様、この資料にあるとおり。ケリフォルニアベースでは前線への火力支援の他、敵の防御陣地の突破にも有効な手段だと分かった」

 

そこにはアル・ギザⅡ率いる陸上第三機打撃部隊が敵トーチカ群を強行突破して破壊した報告書が上がっていた。

 

「あの二つは十分な装甲もある<レギオン>への盾役としては十分だろう」

「……」

 

そんな意見を言われ、不満を言った将官は黙り込むと別の将官が聞く。

 

「海軍からはいくら出せると?」

 

すると報告官が情報を持ってくる。

 

「現在、海軍からはラー・カイラム級二隻、アイリッシュ級四隻、サラミス改級八隻、クラップ級八隻、ザンジバルⅡ級二隻、エンドラ級四隻が今の所捻出予定という事です」

「かなりの戦力だ」

「三個艦隊に匹敵するぞ。大丈夫なのか?」

 

ミノフスキー・クラフト搭載艦だけで戦艦六、巡洋艦二二と言う大艦隊に陸軍としてはよくもまあそれだけ出したと思っていた。

 

「これに加えて海上はモンブラン級六隻、ヒマラヤ級二隻、ジュットランド級四隻の支援砲撃が予定されています」

「よくもまあそれだけ出すな」

「海上戦力のほとんどじゃないのか?」

 

現在、巡洋艦はクラップ級やエンドラ級への更新が進んでいるが。それでもまだまだサラミス改級が海軍の宇宙艦艇のメインであった。ただ虎の子ドゴス・ギア級は出さないらしいが。

水上ではモンブラン級やヒマラヤ級がメインで戦力を抑えており、対地支援は万全なものであった。

 

「何でも大統領から発破を受けたそうだ」

「ほほう、それは大変だ」

 

どこから仕入れたか、海軍の内情を知った将官たちはその心情を知って軽く笑っていた。

 

「まあ、我々からすでに計算で一二〇万の戦力を出すんだ。海軍も出す分は出してもらわねばな」

「空軍の方はどうだ?」

「現在、八個戦闘飛行団と二個爆撃飛行団が捻出予定だ」

 

陸海空全ての兵員を合わせると一五〇万という膨大な人数の兵力が参加するこの作戦。後方要員も含めると二千万の兵がいる合州国総軍からすると7.5%の戦力だが、それでも嘗てのオデッサ作戦と同規模の戦力を使った一大攻勢であった。

 

「作戦目標は旧国境線までの領土奪還、並びに旧ジークフリート要塞戦線構築の間の防衛。作戦概要はこちらで構いませんな?」

 

アーノルドの意見に誰も反対する者は居なかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

星暦二一四七年 六月

 

先のケリフォルニアベース奪還作戦を終了し、リノ達は所属しているアル・ギザⅡの修理が終わるまで休暇を貰っていた。

 

「数ヶ月ぶりね」

「ええ」

「アイダさん。どんな顔するかな」

 

その荷台には色々と生活用品やらを載せて孤児院に続く道を自家用車に乗って帰る。テオパルトはフィッシャー家に戻っており、今回は同乗して居なかった。

前に一回だけ帰った時にアイダに泣き疲れたのをよく思い返していると、クラウは運転しているリノの肩を軽く叩く。

 

「なにシケた顔してんのよ」

「痛って?!」

 

肩を叩かれて一瞬悶絶してしまうと、クラウはその後に言う。

 

「アイダは事情を知ってんだからそう気張る必要ないでしょ」

「と言っても作られた話だけどね」

「まあ、よく作ってくれたと思うよ。エラ」

 

クラウはやや苦笑気味にエリノラを見ると、リノは頷いた。

 

「表向きは治療で済ませたんだものな」

「あの銀色のままだったらどうするのよ?」

「何、眼帯つけて生活すれば良いのさ」

「はぁ……相変わらず軽く言うねぇ」

 

いつものようにクラウは呆れていると、エレカは孤児院の前に到着する。あの後も定期的に孤児院の統廃合で未だに孤児達が送られてくると言うフリッツ孤児院。引き取り手がいたり、家族が見つかったりで今では戦災孤児の数は大きく減っていた。それか成人して巣立っていくか……。

 

「やっぱピョンヤン研究所の一件があってからすごい数の孤児達が引き取られているようね」

「アーノルド少将の感情煽りは見事なもんだよ」

「情報部も駆り出されて大変デシタ……」

 

エリノラはそう答えると、孤児院の駐車場に車を停めた。

 

「リノ兄ちゃん!」

「よう、お前ら元気してたか?」

 

車を降りると、リノ達が来た事に喜ぶ孤児達。するとその奥かた一人の女性が顔を出した。

 

「お帰りなさい」

「よう、オバ」ゴッ「グフ……」

 

腹に一発入れられてそのままうずくまるリノ。いつものテンプレ挨拶にクラウ達もどこか安心を覚えていると、そのまま買ってきた荷物を下ろす。

 

「いつもごめんね。こんなに頼んじゃって」

「いいさ、これくらいしか金の使い道も今のところ無ぇし」

「そうそう、それにまた孤児を受け入れたんでしょう?」

「無理はしないでくださいね?」

「ふふっ、大丈夫よ。役所の方からヘルパーさんも来てくれているから」

 

そう答えると、大量のトイレットペーパーを肩に担いでリノは孤児院の裏手口から入る。

リノとクラウにしてみると実家のような安心感があるこの場所は、心の良いどころでもあった。

 

「しっかし、俺たちの頃とは随分変わったな」

「ええ、昔はボロボロだったのにね」

「今じゃあそこら辺の幼稚園みてぇだ」

 

そう言い綺麗に貼り直された白い壁紙や床の木の板を触る。

 

「こいつはどこに置いておく?」

「倉庫に入れておいて頂戴」

「分かった」

 

そして買ってきた生理用品を倉庫に入れると、懐かしむようにリノは溢す。

 

「懐かしいな。昔はここもガラ空きだったのに」

「ええ、本当にね……」

 

しかし今では生理用品や清掃道具が詰まっている倉庫を見て色々と変化を感じざるを得なかった。

 

「いつか継ごうとか考えていたのにな」

「ええ、こうも人が増えるとはあの時は微塵も思って居なかったわ」

 

そう言い、二人は元々考えて居た将来設計を思い返していた。

 

フリッツ孤児院を畳むつもりだったアイダに変わってリノとクラウが孤児院を幼稚園かなんかに改装して運営していこうと思って居たのだが、戦争が始まって多くの戦災孤児を抱える事になったフリッツ孤児院は役所によって重要な孤児院の一つになってしまっており。こう言う手厚い保護を受ける事になっており、アイダはやめようにもやめられない状況ができてしまっていたが。アイダ自身は生きがいを見つけたように張り切っていた。

 

「なあ、お婆が若返ったように見えるのは俺だけか?」

「あら奇遇ね。私も同じこと思ってた」

 

奇妙な意見の一致に一瞬背筋が凍ったような気分になったのは気のせいだろう……多分。

 

 

 

 

 

リノ達が孤児院を出る時に元々使っていた個室なんかは今では何も置かれて居ないただの部屋で、今では客室兼事前申請制の個別自習室的な扱いらしい。

軍人になって以降、家や車は自費で購入した物を持っていた。給料とか危険手当で懐事情は問題なかった。

 

「しっかし随分豪華になったな」

「ええ、ずっと子供達の世話をしていたら色々と近所の人たちが直してくれたりしてねえ」

「はぁ、愛されとる」

 

リノは調理室で今日の昼食を手伝っていると、アイダは軽くリノに手を振って答える。

 

「何言ってんの。全部あんたのおかげだよ」

「?」

「貴方の同級生がテレビでリノを見て色々と気にかけてくれるのさ」

「ああ……なるほど」

 

それは高校生や中学生の時の友人達の事だろう。色々と馬鹿をやって盛大に怒られて楽しんでいた頃が懐かしかった。

 

「そう言えばエリノラ達がきた頃も手伝ってくれたな」

「ええ、あの時は色々と大変だった中だったから余計にね」

 

そう言い、今日の昼食のサンドイッチの具材の胡瓜を並べる。

 

「今はどうしているって?」

「色々、大工さんだったり弁護士だったり。保育士だったり……貴方と同じ大学生もいるわよ」

「色々と道が分かれているな」

 

そう答えると、アイダはリノに聞く。

 

「ねえ、まだ軍人さんを続けるの?」

 

その問いに一瞬だけリノは腕が止まるも、ゆっくりと頷きながら答えた。

 

「……ああ、まだやるつもりさ」

「あんなに有名になったのに?それにあんな怪我までして……」

「……俺のやりたいって思えた仕事なんだ」

 

現状で精一杯の理由をなんとか吐き出すと、アイダは間を開けた後に少し息を吸った。

 

「まぁ、貴方の人生に私がとやかく言うつもりはないけど……これだけは言わせて」

「?」

 

その後、アイダはリノを見ながら彼に命令した。

 

「休暇の時、必ずこっちに帰ってきて顔を見せなさい」

「……了解」

 

いつものことじゃんかと思いつつも、アイダの気持ちも理解できたのでリノはその命令に素直に従うとそこで付け加えるように言った。

 

「でも一週間とか短い時は勘弁だぞ」

「良いわよ。どうせ軍人さんの休暇は長いんでしょう?」

「……」

 

確かに軍人の休暇は不定期な分、与えたれる日数は長い。その事をアイダはすでに知って居たようだ。

 

「はいはい、お袋が言わんくても毎回帰ってくるつもりだ。必要なものがあったら休暇の時に言ってくれよ」

「ええ、その時は頼むわね」

 

アイダは嬉しげにリノに答えると、出来上がったサンドウィッチをリノにも運ばせていた。




バグラチオン作戦直前の戦況図

【挿絵表示】

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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