86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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外伝#51 進んだ人類Ver.12.0

旧国境線に向けて電撃的に進軍中のキング・トレー級ベッカムは僚艦にアイランド・フォーク級一隻を揃えて北に進撃をしていた。

 

足元では〈レギオン〉部隊が轢き潰され、随伴のジムⅢがビーム・ライフルを撃って遠く離れた〈レギオン〉に攻撃を加えていた。

 

「前線部隊より支援要請!」

「斉射開始!斉射開始!」

 

その瞬間に側面の大型三連装砲が仰角をつけると砲撃が行われる。

散々失敗兵器などと罵られていたこの二つだが、前級の絶大な砲撃力は継承していたので最前線に絶大な火力を送っていた。まるで汚名返上をするように活躍をしていた二番艦のベッカムは随伴のジムⅢと共に北に向かう。

向かうのは共和国側につながる国境線、この部隊はカリフォルニアベースから進発していた。

 

「よし、このまま行くぞ」

「各員レギオンの襲来には注意しろ」

 

指示を飛ばすと、上空の阻電攪乱型を見ながら一言。

 

「全く、屑鉄どもの奪った空で夜景が台無しだ」

「仕方ありません。いずれはこの空も晴れましょう」

 

副官がそう答えると司令官は頷いて快進撃な事に満足していた。

 

 

 

 

 

「予定よりも進撃が早いな」

 

戦況図を見ていたアーノルドはその違和感を感じると思わず口にした。司令室は山脈の岩盤をくり抜いて作った頑丈な施設だ。そこでは画面一杯に国境線沿いの戦況図が映し出されており、進撃中の部隊の現在位置などがレーザー通信で送られてくるのを逐一更新していた。

そんな中、かつての乗艦が突出しているのが少し気になっていた。

 

「西部方面のか?」

「ああ、予定よりも早く進撃が進んでいる」

 

他の将官も西部方面に目をやるとそこでは快調に進撃を続けている部隊を見ていた。

 

「良いではないか。作戦が早く終われば多方面に戦力が回せる」

「……だと良いが」

 

そう不安げに溢すと、その将官は言う。

 

「それに、ズゴック部隊との挟撃がうまく行った証だろうな」

「……」

 

地図の西部、そこではメール河を遡上、もしくは山脈から降りてきたズゴックやアッガイなどの部隊が河から強襲をかけて<レギオン>を挟撃していた。その為、西部では快進撃が続いてるのだと感じていた。

 

 

 

 

 

その時、最前線ではベッカムとアイランド・フォークは目的であるメール河まで到着した。

 

「よし、後続部隊が来るまで待機だ」

「了解」

「我々が一番乗りだな」

 

もはや競争と化していた今回の作戦、一番に目的地に到着したベッカム率いる第44機械化混成師団はそのまま後続部隊の到着を待ちながら橋頭堡確保のために支援砲撃を行っていた。

 

「支援砲撃要請あり」

「答えられる範囲で撃ち返せ」

「了解」

 

前線司令部の役割も果たす陸戦艇の内、最も速度が遅いのがビグ・タブデ級だ。まあ元々は一年戦争時のジオン公国が製造したダブデ級のMS搭載が可能なようにした設計拡大バージョンだから仕方ない。

その為、かの陸戦艇の担当する戦域はドワッジ改などを中心としたドムシリーズが活躍していた。

 

「後続部隊と交代した後、東方に移動する」

「了解」

 

それまでに小休止が確実な事実に他の兵士たちもどこか安堵した様子を浮かべていた。

前線に移動できる司令部を持ってきたような設備の陸戦艇はその性能を遺憾無く発揮して迅速な火力支援を最前線にお届けしていた。

 

「……ん?」

 

そして司令部で小休止のコーヒーを一杯頂いていた司令部で、司令官はふと外に違和感を覚えた。

 

「なんだ?」

 

それは遠くから強く光る赤白い光を伴った星のように見えた。

 

「あんな場所に星なんて存在していたか?」

「さぁ、どうでしたかね」

 

その瞬間、視界が一気に真っ白になって消えてしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「報告急げ!」

「通信はどうなっている?!」

 

司令室で将官達が慌てて走り回る。オペレーターが何度も通信を試み、前線から届く連絡を逐一持って来させていた。

 

「どう言うことだ」

「陸上戦艦が一撃だと?!そんな訳あるか!!」

「ふざけている」

「しかし、アイランド・フォークの通信が来ない以上何が起こっているのか……」

 

その瞬間、司令室に報告官が飛び込んできた。

 

「通信来ました!!」

 

心待ちにしていた情報にアーノルド達は早速報告を見ていた。

 

「午前三時二五分の映像です」

 

そう言い映し出されたのはベッカムの後方で砲撃をしながら待機していたアイランド・フォークの映像だ。砲撃の最中、後ろにいたベッカムは凄まじい衝撃波の後。周囲に展開していたMSも巻き込んで爆発を起こしていた。

 

「「「「っ……!!」」」」

 

その映像を見て集まっていた将校達の目が一気に強張った。アーノルドに至っては嘗ての乗艦があっけなく散っていた姿に少し動揺してしまっていた。

 

「続いて午前三時三五分、第二射と思しき砲弾が着弾。ただし、緊急回避を行ったおかげでアイランド・フォークは至近弾で済みました」

「……」

 

それでも衝撃波で数機のMSが撃破されたと追加で情報を入れていた。

 

「被害はベッカムのみか?」

「はい」

 

報告を聞き、将官達の間に沈黙が走る。全軍の将校が集まるこの場所でその報告を聞いて一人の空軍将校が溢す。

 

「しかしこれは……かなり予想外だぞ」

「ええ、陸上戦艦を一撃で撃破する砲を向こうは持っている事になります」

「これだと宇宙艦艇でもひとたまりも無いぞ」

 

陸上戦艦で一撃の謎の砲撃を知り、宇宙軍艦艇も無事では済まないと遠巻きに言われ、この謎の砲撃への対処方法を考える。

 

「原因究明はどうする?」

「そんなのは後でかまわん。現状はこれほどの被害を出した謎の砲撃にどう対処するかだ」

「そうだ。宇宙軍としても賛成ですな」

 

陸戦艇と宇宙艦艇を保有する二軍の意見を受け、空軍もそれに賛同をするとアーノルドが付け焼き刃程度ではあるが提案を持ちかけた。

 

「ベッカムは停船中に狙われました。この映像を見る限り敵は大砲と予測できます」

「……そうだな」

「わかりました。作戦中の全艦艇には不定期でジグザグ航行をさせることを徹底させます」

「将軍!!」

 

すると命令を出そうとした瞬間に士官がと冷や汗をかいて飛び込んできた。

 

「その様子だと、一隻食われたな?」

 

アーノルドの言葉に報告に来た士官は顔を青ざめていた。

 

 

 

 

 

「墜落するぞ!」

「総員撤退!!」

 

視線の先で炎に巻かれながら地面に落下してくる一隻の艦艇……今回作戦に参加していたサラミス改級の一隻のシチリアが爆発と共に地面に落下する。

 

「畜生!」

「総員怯むな!突撃!!」

 

一発の巨大な爆発と共に船体が真っ二つに折れての轟沈だ。反撃する暇すらなかった。

 

「くそっ、どっから撃ってきやがった」

 

少なくとも巡洋艦を一撃で破壊するレベルの砲、それでいて発砲音は聞こえなかった。それだけの距離からの砲撃、恐ろしくでかい重砲だ。

残ったサラミス改級の艦長は愚痴ると、司令部から命令が出る。

 

『各艦艇に通達。以後全参加艦艇は不規則にジグザグ航行を行え』

「ジグザグ航行だと?!」

 

その注文は艦長からすると無理だと言いたかった。理由としては不規則に運動すると十分は火力支援が地上にできないからだった。

すると航行していたもう一隻のサラミス改級のMS格納庫をごっそりと謎の砲撃が持って行き。徐々にそのサラミス改級は高度を落とし始めていた。

 

「畜生、やるしかねえのかよ!!」

 

二射で二隻やられた事実に驚愕しながらも、被害拡大を防ぐために艦隊は不規則な之字運動を開始していた。

 

 

 

 

 

『何、この命令?』

「分からんが……どこかで艦艇が撃墜されたのかもな」

『まさか……』

 

東部の砂漠を進撃中のリノ達は突如司令部から届いた命令に首を傾げていた。まさか一撃で艦艇が落とされたとは思っていないリノ達は現在、グランペルリのカーゴの上に乗って時折リノが飛び降りては前線部隊が食い残した残骸を撃破していた。

 

「こう言う時、歩兵は大変だよな」

『でもいいわよ。ホバートラックが随伴でいるし』

 

単装メガ粒子砲の砲塔を装備したホバートラックが歩兵一個中隊に一両が配備されており、もしもの事態に遭遇しても十分対応は可能であった。

 

「それよりほら、ウチらは荷物のお守りよ」

『へいへい。観測は頼んだぜホーンドアウル』

『こっちも忙しいんだよ。熱源探査とかさ』

 

そう言い愚痴るのはEWACジムに乗って観測を行っているテオパルトだった。他に四編成が走るグランペルリを護衛している部隊の偵察を担当しているが、アンダーグラウンド・ソナーを満足に使えない現状での<レギオン>捜索は熱源反応探知が頼みであった。

 

『くそっ、残骸にまだ熱がこもってるからほぼ判別無理だぞ』

『総員、一瞬の動きも見逃すな!!』

 

護衛部隊の隊長がそう叫ぶと、護衛のネモ達は目を皿にして撃破された<レギオン>の横を進んでいた。

 

 

 

 

 

この戦艦を一撃で沈めることのできる謎の巨砲の被害は西部を中心に起こっており、すでに軍艦はキング・トレー一隻、サラミス改級二隻を食われていた。

 

「撃て!!」

 

アイリッシュ級から連装砲とVLSからのミサイルの雨が降り注ぎ、進軍部隊を妨害していたトーチカが一掃される。旧市街地を改造して作られた<レギオン>の拠点は戦艦四隻を投入することで物量で押していた。

このアイリッシュ級は改装を終えて多くのVLSや連装砲に換装して攻撃力を上げていた。

 

現在の位置は旧国境線まで残り六十キロの地点。間も無くで作戦を終了する。西部地域では謎の砲撃で被害が拡大していると言う噂だが、ここまでその謎の砲撃は飛んでいなかった。

 

「よし、もうすぐで目的地だ」

「艦長、西部方面で部隊が窮地に陥っていると言う噂です」

「うむ、救援部隊を派遣しよう」

「はっ!」

 

そして詳しい指示を艦長は出す。

 

「ダガーフィッシュを出せ。近接航空支援を行え」

「了解。戦闘爆撃機隊を出します」

 

復唱して返すとカタパルトにタガーフィッシュが乗せられ、上空二千メートルから発艦して行く。

中部線域では多少の抵抗はあったもののそれら抵抗を排除しつつ<レギオン>を駆逐していた。

 

「もうすぐ夜が明けるな……」

「ああ、本当ですな……」

 

艦隊指揮官等はそう溢すと、だんだんと明るくなっていく東の空を見ていた。

これからバグラチオン作戦の第二幕が開けようとしていた。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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