86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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基本的に本作に登場するビーム・マシンガンはギラ・ズールの物と思ってください。


外伝#52 進んだ人類Ver.13.0

作戦初日の夜が明ける。

最前線から電撃的な進行を行ったおかげで<レギオン>部隊はまともな対応ができる事もなく戦線を押し戻されていく。

空に戦闘爆撃機が飛び、それを迎撃する対空自走砲型。都市はさながら開戦当時を彷彿とさせる状況を生んでいた。

 

『今日はエース量産日だ』

『食える分はたらふく食ってけ』

 

ダガーフィッシュに大量の爆弾を積載した戦闘爆撃隊は目標の市街地に爆弾を落としていく。

どこかに隠れていた対空自走砲型が爆撃してくるダガーフィッシュに対空砲火を浴びせると、その直後に発射地点にビーム攻撃が飛んできて撃ち抜かれていた。

この時点で出れば撃たれると言う状況が至る箇所で起こっていた。

 

 

 

 

 

また別の都市の道路では<レギオン>の重機甲部隊が砲撃を行う中、その反対側にシールドを構えて旧時代のファランクスのように片腕のシールドで防御姿勢を取り。その直後に彼らの腕にあったビーム・マシンガンが放たれ、命中した重機甲部隊は悉く破壊される。

 

「目標排除!」

『歩兵部隊は影から出るな!!』

 

そしてそのままMSを盾に歩兵部隊が前進してると、都市に凄まじい振動と轟音が立ち込めた。

 

「ぬおっ?!」

「何だぁ!?」

 

その直後、都市の一角に土煙が立ち上っているのが見えた。

 

「誰だ。ここに陸戦艇を呼んだのは!?」

 

当初は陸戦艇の支援砲撃だと思っていたが、その五分後。今度は先に斥候を務めていたMS小隊のいた場所に目掛けて砲撃が着弾し、都市一角の建物ごと破壊していた。

 

「違うぞ!これは味方じゃない!」

「何だと!?」

 

その直後、至る所げ煙の上がる都市部に再び砲撃が着弾する。

 

「司令部に伝達!畜生、奴ら丸ごと吹き飛ばす気か?!」

 

少なくとも区画一つを破壊可能なほどの砲弾を放つ謎のレギオンの登場に前線部隊は驚愕していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「そのレギオンの被害に遭っている場所は?」

「観測された全てが西部に集中しています」

 

司令部でアーノルドはレギオンの砲撃があった場所をリストアップした報告書を読んでいた。

 

「射撃と予測地点は?」

「着弾時の速度、並び角度から推察しますと。……だいたいこの辺りです」

「これがか?」

 

そこには共和国と帝国の間の地域に広がって赤いエリアが浮かぶ地図だった。

 

「西部方面の砲撃により、範囲は縮小していくものと思われます」

「しかし、敵の砲撃の正体は何だ?」

「これほどの巨砲を<レギオン>の技術で考えますと……」

 

砲撃の間隔から確実に単装砲の部類であることは確実だ。それでいて都市区画一つを一撃で破壊できるの威力の砲撃と言うことは、確実に50センチ以上のカノン砲だ。

 

「たた砲声が聞こえないほどの射撃となると……」

 

ロケット推進式の弾薬でもなく、ICBMの類でもない。とすると……

 

「……電磁加速砲か?」

「恐らくは……」

 

こちらではまだ建造途中のストーンヘンジがあるが、射撃可能になるまであと三年はかかると言われている。可能な限り急がせてはいるが、それでも実用化には至っていなかった。

これほどの巨砲の砲声が聞こえないのは火薬式でないのは明らかだった。

 

「で、当該砲にどう対処する。奴らは動けない都市部を撃っているぞ」

「既に四隻が当該長距離砲にやられた。おそらく座標指定は斥候型によるものだろう」

「どうする、進撃速度を遅らせるか?」

「そうすれば奴らの思う壺だ。即座に国境線まで押し戻す」

 

彼は同期の知り合いの将官であるハイラル・マキシマム中将とそう話をする。

 

「幸いにも敵の砲撃は西部方面のみだ。他の地域での観測は行われていない」

「とすると東部と中央部の進撃を速やかに完了させて、余剰戦力を西部方面に回そう」

「そうだな、尋常じゃない被害がすでに出ている」

「まさか一撃で歩兵大隊が溶けるとは思わないだろう」

 

戦況図を見ながら将官は軍艦を優先に戦力を西部方面に向けることを決定していた。その為、可能な限りの進撃速度を早める事を伝達させた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一方、西部方面の砂漠地帯の進撃速度は現在低下しつつあった。理由は……

 

「畜生、デッケェ砂嵐だな!!」

『視界ゼロだ!!』

『何も見えない』

『味方との誤射に注意しろ!!』

 

そう、東部地方の名物的気象の砂嵐。砂漠専用に改造されたMSですら偶に故障するほどの激しい砂嵐は視界ほぼゼロと言う自然との戦いを強いられてた。

 

『こんな状況で〈レギオン〉何ているの?』

「俺に聞かれてもわからん」

『あんたの異能で何とかしなさいよ!!』

「それでも見えねぇつってんだよ!!」

 

グランペルリはホバー走行の為、この砂嵐の中で砂を吸い込んで故障したくないと言う理由で停車していた。

もともと空気を吸って浮力を得るホバークラフトの特性上、空気中にミクロ単位までの細かい砂が飛び交う砂嵐は天敵であった。

 

「でも確かに、これならビグ・ダブデが派遣される理由がわかるわ」

『あれは履帯式だからねぇ』

 

砂漠に合わせてダークイエロー一色に塗られたビグ・ダブデ級はほかの陸戦艇と違って履帯式なので速度を殺す代わりにこんな状況下でも黙々と進軍することが可能であった。

 

『レーザー通信はどうした?』

『今も繋がっています!』

『こっちが止まった事は伝えたのか!?』

『はい…しかし司令部の命令に従って進軍はこのまま行うと……』

 

部隊長にテオパルトが答えると、隊長は軽く愚痴った。

 

『畜生、この砂嵐なら屑鉄も動かないってかよ……』

 

東部地域の両軍共通の敵であるこの砂嵐、この間は〈レギオン〉も故障する原因となるので必然的に戦闘は起こらない時間となっていた。

 

『向こうで事故っても俺たちは知らんぞ……』

 

故に砂嵐の中を突っ切って進軍するビグ・ダフデ部隊に補給部隊は置いていかれていた。

 

 

 

 

 

「補給部隊より通信です」

 

砂嵐の中を進軍中のビグ・ダブデ級ベイブルの司令室で司令官のガイドス・マグべ大佐は後続の補給部隊の通信を読む。

 

「ふむ…補給部隊は一時停止か」

「我々も進軍を停止した方がよろしいのでは?この砂嵐では……」

 

何せ視界ほぼゼロの中での行軍だ。随伴するドワッジ改やギラ・ズールなどの部隊のこの戦場に慣れている兵士ですら『この砂嵐はやばい』と苦言を呈していた。

 

「ならん、進軍停止は行わない」

「何故です!?」

「分からぬか。この天候の中で進軍すれば屑鉄どもに邪魔される事なく作戦目標に到達できるのだ!」

 

そう言い、事実戦闘せずに国境線近くの街に到着しているのを指差していた。

 

「補給部隊を置き去りにするのですか!?」

「向こうはホバーだ。嵐が晴れればすぐに置い着く。目的地の街に間も無く到着と、そのように伝えろ」

「…了解しました」

 

副官も渋々承諾すると、レーザー通信を行う。しかし悲しいかな、この砂嵐では満足なレーザー通信すら困難であり、結局艦載機のドライセンが伝令役に出撃する羽目となっていた。

 

 

 

 

 

「この砂嵐、いつまで続くのか……」

『レギオンにすら遭遇しないって、凄いね』

『それだけ激しいって事だよ』

 

停止中のリノ達、そこでリノは砂嵐の中を一切感じないレギオンの気配に苦笑する。

作戦開始より十八時間が経過し、一部地域では目標となる地域を確保したと言う情報もあった。

 

『あっ、もうすぐ晴れるよ』

「よし、進軍の準備か……」

『補給部隊は進軍用意だ』

『総員に通達、間も無く作戦再開する』

 

各所で準備が進むと、嵐の向こうから一機のMSが飛んできた。それは伝令に来たドライセンであった。

 

『補給部隊に伝令!』

 

それは前進部隊は既に目的地に到着した事を伝える情報だった。

 

『マジかよ……急ぐぞ、最大船速!』

 

それを知った補給部隊は急いで前線部隊のある場所に進軍を再開し始めていた。

 

 

 

 

 

その後、補給部隊は最終目的地である東部の都市マ・ハラ・ジャに到着する。上空に敵影見えず、美しい夕焼けが映えていた。

かつての空港にダガーフィッシュが到着し、同時にガウやミデアなどの輸送機が着陸して早速物資の搬入と拠点構築のための建設師団が派遣されていた。

 

ちなみにガルダ級と呼ばれる超大型輸送機も存在するのだが、二機しかない上に離陸するのに海かバカ長い滑走路か、マスドライバーを必要とするので今回のバグラチオン作戦にすら投入は見送られていた。主な任務は後方で生産できたMSを部隊分丸ごと輸送する事だった。

 

「このまま前進部隊は西に向かうらしいね」

「ええ、ここまでの進軍であの砂嵐のお陰でほぼ被害ないしね」

「神風ならぬ神嵐ってか?」

 

リノ達はそんな事を話しながら西に向かったビグ・ダブデ級を見送ると都市に残って残存レギオンの掃討任務をこなす。

あの砂嵐の影響か、<レギオン>の部隊はほぼ確認されず。リノの異能を用いても敵の発見は困難であった。

 

「なんか共和国側が激戦のようよ」

「そうなのか……」

 

所々砂まみれになった都市を見ながらクラウとそんな事を話す。

 

「でも戦線全体では優勢みたいで、少なくとも東部一帯は完全に掌握したって連絡があったよ」

 

テオパルトがそう話すと、先ほどまで自分たちの乗っていたネモの下で三人は上空を眺める。先程まで砂嵐まみれだった空は綺麗な夕焼けが広がっていた。

その景色はまるで、我々の勝利を祝福しているかのような美しい景色だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、東部を奪還した部隊はそのまま西方に転身。中央部の奪還支援を行った後にそのまま雪崩れ込むように西に進むと、圧倒的戦力で苦戦していた西方方面を制圧し、戦線は旧国境線まで押し上げることに成功した。

損害は巡洋艦六、戦艦一、陸戦艇一、MS六二四機、航空機三八五機、戦死者約二三万、負傷者約十万と言う結果であった。

戦死者数が負傷者よりも多いのは〈レギオン〉の長距離砲の破壊力が凄まじく、まず当たれば死亡していたからであった。

戦死者の三倍の負傷者が出ると言われる今の戦場では明らかに異常な事態であった。

 

一週間の戦闘の後、バグラチオン作戦は成功を納め、歴史に残る一戦はここに終活してした。この時、国防長官はこのような言葉を残していた。

 

『この作戦の成功は我々にとって最高のプレゼントであった。今後これほど嬉しく思う事は無いだろう』

 

そしてその裏で、西方方面軍を半壊させた謎の超長距離砲の調査が行われていた。

 

 

 

 

 

星歴二一四八年 二月

 

あの世紀の作戦の成功より二ヶ月。年も明けてバグラチオン作戦の成功の熱が収まり始めた頃、ジャブローでアーノルドはある作戦書を読む。

 

「諸外国の偵察か……」

 

それは戦前に国境を接していた共和国、盟約同盟、東方諸国などの国家の生存を確認する為に各地に偵察隊を出すと言うものだった。

 

「部隊の選出をどうしたものか……」

 

国家の生存を確認できれば共同作戦などで帝国領に多方面からの侵攻が可能だ。開戦当初にばら撒かれた阻電攪乱型の影響で各国との通信が途絶えて十年目。

他国の状況把握などは国境線まで国土奪還を行った合州国としては恩を売る機会でもあり、戦後の交渉で優位に立つためにも必要な事であった。

 

「敵地深くに侵攻できて、尚且つレギオンに気づかれずに行動できる部隊……」

 

そこで考えて思い当たったのは一つのMS小隊。

今はバグラチオン作戦の修理を再び行なっているアル・ギザⅡの艦載MS部隊であり、今はフォートン・ブラック総合基地で待機しながら時折前線支援に赴いている筈の小隊。

その小隊長はレギオンの流体金属を操り、尚且つ近場のレギオンの存在を確認できる強力な異能を獲得している特殊な兵士だ。おまけに研究所の報告ではニュータイプ覚醒の兆候有りときた。

 

「今回の作戦にはうってつけの存在か……」

 

あまり気乗りはしないが、これほど似合う部隊も存在しない。

出来ることとすれば最新鋭機を渡すことくらいだ。

 

「……命令書を出すとするか」

 

そこで出動部隊を決めたアーノルドは命令書の制作を始めていた。




次回から日常細々回とハイスクールと11巻の同時並行で行こうと思ってます。
ただしいつ更新するかは不明。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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