星暦二一四九年 十月十一日
回廊作戦は順調に進み、北東回廊奪還に成功した第二派遣軍八千名と合流した第一派遣軍は明朝を持って再進軍を開始。
八五区まで進軍を再開し始めた。
『本部より通信、侵攻路に電磁加速砲型の攻撃がある可能性があるとの事』
「了解、全軍に注意喚起を」
注意喚起と言っても対応策はないに等しいのだが……
そんな事を思いながらストライカー戦闘大隊は前線を切り開く。
ガンタンク一両が長距離砲兵型の攻撃で一両が脱落し大要塞壁群まで後何キロ程度だろうと言う場所まできた。
そして目的の場所が徐々に見え始めた。
『……っ!見えました!大要塞壁群!距離四〇キロ!』
「このまま突破をする。総員攻撃を……っ!」
リノは視界の端に映るそれに戦慄する。
「っ!敵!電磁加速砲型!方位四〇、距離三万!」
『っ!見えた……』
『なんだよあれ……』
『デカすぎる……』
丘の上で佇むその巨体は見るものを恐怖させるには十分であった。
全長四〇メートルのその巨体は大きな土煙を上げ、持っているバルカン砲で攻撃をしていた。
その先には一機のフェルドレスが電磁加速砲型と戦闘を行なっていた。
「マジかよ……」
あの巨体とタイマンしているのか?
余りにも無茶だ。
リノは距離を測定すると持っていたビームスマートガンを構える。
「他はそのまま進め。俺はここで援護をする」
『了解、私も援護する』
クラウがそう言い、ビームスナイパーライフルを構える。
他の隊員達は先に大要塞壁群に進み、地雷原の啓開と派遣軍の進路を作る。
「あのフェルドレスには絶対当てるな」
『私の腕を舐めるんじゃないよ』
不敵な笑みを浮かべながら二人は照準を合わせる。
目標は電磁加速砲型の翅のように広がる無数のワイヤーの根本。
何処からともなく飛んで来た焼夷弾の攻撃で燃え盛る電磁加速砲型に向けて二人は引き金を弾く。
「『撃て!』」カチッ
キュォォォォォンン!!
放たれたビームは真っ直ぐ電磁加速砲型の翅から少し外れた砲身部分に当たり、流体マイクロマシンを撒き散らしながら折れる。
『チッ、少しズレた。第二射を……「それは要らない」え?』
「アレを見ろ」
リノが指差した先には電磁加速砲型に登る一機のフェルドレスがいた。
そしてそのフェルドレスは電磁加速砲型の背中に取り付くとそのまま制御系と思わしき場所に砲弾を打ち込んでいた。
その瞬間、電磁加速砲型はぐったりと沈黙をした。
「やったか……」
リノはその様子を見てホッとしていると次の瞬間、黒焦げた電磁加速砲型と吹っ飛んだフェルドレスが浮かび上がる。
それが未来視によるものだと分かった時、リノは叫んだ。
「いかん!爆発するぞ!」
ドォォン!!
その瞬間、電磁加速砲型が爆発し、フェルドレスは木端のように吹き飛ぶ。
「安否確認をする。オストリッチは先に八五区内に向かっててくれ」
『了解』
レギオンの反応も感じす。侵攻路から外れる形ではあるが、リノは先ほど電磁加速砲型とタイマンをしていたフェルドレスの捜索に当たった。
リノがフェルドレスの捜索をし、その機体を見つけた。
上空には双頭の鷲が書かれた輸送ヘリと攻撃ヘリが飛び、そのうちの一機が地面に着陸をしていた。
丘上に上がるとスピーカー越しに通信が入る。
『貴官は合衆国の者か?』
「はい、アストリア合州国陸軍参謀本部直轄ストライカー戦闘大隊大隊長です。回廊作戦に基づき八五区周辺のレギオンの掃討を行なっております」
『こちらはギアーデ連邦西方方面軍第一一七機甲師団師団長だ。こちらも現在八五区に向かい進軍中である』
「了解いたしました。……先程、貴国のフェルドレスが戦闘を行なっていたのですが。パイロットの安否は確認されたでしょうか」
『それに関しては問題ない。既にこちらで回収させてもらった』
「了解しました。では、我々は失礼させていただきます。見事だったとパイロットには伝えておいて下さい」
そう言うとリノはMSを動かして八五区内に飛んで行く。
彼岸花の咲く丘では一機の首のない死神の絵が描かれたフェルドレスが一機、佇んでいた。
八五区内に入ったストライカー戦闘大隊はまず最初にレギオンの掃討にかかった。
途中から追いついた派遣軍に後の事を任せ、俺達は八五区内に設営された臨時野営基地で機体を降りた。
「んぁ〜、ついに終わったか……」
「ねえ隊長。あのフェルドレスは無事だった?」
「らしいぞ、今は療養中だそうだ」
「あの爆発で生き残ったの?」
「その様だぞ」
機体から降りたリノ達は野営地の一番良いプレハブでコーヒーを嗜んでいた。
派遣軍は第一優先でエイティシックス達の保護をし、街の瓦礫の撤去作業を始めていた。
現在、突貫工事で高速鉄道の路線の修復が行われ、明日には帰りの貨物列車がやって来るそうだ。
「これから色々と忙しくなるわね」
「書類だけは勘弁を……」
「逃げられないわよ。それは」
ハルトの悲痛な声が聞こえ、レッカも少しだけゲンナリとしていた。
「まぁ、俺たちは一番最初に帰れるさ」
そう言い、リノはコーヒーを飲むとハルトが思い出したように声を上げた。
「あ!そう言えば誰が最初に着いた?」
「そりゃあオレ達だろう」
「いや、ガンタンクだな」
「いやいや、うちら歩兵よ」
「MSが速いんだからMSよ」
ハルト、ドミトル、アノラ、エリノラの四人が大人気なく喧嘩をし始める。
酒や甘味が賭けられてると言うこともあり、全員が全員必死であった。
そんな彼らを見てリノは野営地から出て作業中の八五区内を見ていた。
すると、そこに戦闘服に身を包んだ一人の兵士がリノに紙を渡す。
「国防総省からの通達であります。中佐殿」
「ありがとう」
「はっ!失礼します」
そう言い残し、通信兵はその場を後にするとリノは渡された紙を開いて中身を見る。
「これは……」
リノは紙に書かれた内容を見るとそのまま野営地を後にしていた。
ハミングバード一号機と数機のMSは現在残骸となっている電磁加速砲型の戦闘跡を探索していた。
技術局からの要請で電磁加速砲型に関する情報で集められるものはかき集めて欲しいと言う命令が降ったのだ。
これにはまだ戦闘から数時間しか経っていないので他の他国軍も忙しくて合州国軍の動きなんかに注視していないだろうという上層部の思惑もあった。
『こちらB班、何もかもが焼け焦げています』
『C班も同様。何も見つかりません』
次々と報告が上がる中、リノは電磁加速砲型の残骸を見ていた。
四〇メートルもあるその巨体。控えめに言ってデカいその残骸は一体どれだけの資材が注ぎ込まれたのだろうか。
これほどのものを簡単に作り出してしまうレギオンにリノは思わず冷や汗が出る。
もしレギオンがこの巨体な機械を量産するようになってしまったら。
リノはそんな事を思ってしまい、その恐ろしさに考える事をやめてしまった。
「ここら辺は何も無いか……ん?」
リノは残骸のすぐ下。ムカデのように生えた足の部分に金属の棒状のものを発見する。それは二十メートルほどあり、根元の方には金属が溶けた貫通跡があり、そこから流体マイクロマシンが溢れていた。
「これは……」
リノはすぐさま本体に通信を入れる。
「こちら、D班。電磁加速砲型の足元に怪しいものがある。回収を要請する」
『本部了解。すぐにA班を向かわせる』
「了解」
通信を切ったリノは改めて電磁加速砲型の居た丘から景色を見る。
遠くの方に大要塞壁群が見え、後は森や強制収容所と思わしき施設が見える。
あそこで一体何人の者達が亡くなったのだろうか……
リノはそんな事を思いながら景色を眺めていると調査部隊がリノの見つけた残骸が電磁加速砲型の砲身と確認し。ジェガンで砲身を引っ張り出し、やって来た輸送ヘリに括り付けられて本国に運ばれていった。
その輸送ヘリにはベースジャバーに乗ったジェガン二機の護衛までついており、とても物々しかった。
結局、その砲身以外の部品は全て自爆装置で吹き飛んでおり、回収は不可能と判断された。
この時、回収された砲身は解析のためにアバティーン性能試験場に送られた。
こうして、人類最大の侵攻作戦は成功し、街道回廊。お呼びのその沿線地域の奪還に成功した合州国および周辺諸国は互いに手を取り合えばレギオンに対抗できるのだと、希望をもたらしていた。
それと同時に合州国では、無人兵器の恐ろしさを実感し、自国で完全自立型無人兵器の開発を急速に進めるのであった。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やらなくていい