86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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アンダー・プレッシャー
#23 新拠点


「共和国の終焉はレギオン戦争が始まる以前から始まっていたのかも知れない。

この、痛々しいばかりの白さを見てそう思わない者はいないはずだ」

ーーとある退役軍人の手記より

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

星暦二一五〇年 四月上旬

 

その日、リノ達ストライカー戦闘大隊は機上の人となり、連邦の空を飛んでいた。

現在、ストライカー戦闘大隊は合州国との軍事協定の一環として今日連邦内にいるエイティシックス達で構成された外人部隊《第八六独立機動打撃群》の本拠地であるリュストカマー基地に向かって飛行をしていた。

 

「はぁ〜……」

 

機内でドミトルがため息をつく。すかさず、リノはその理由が分かってしまったが、念のため理由を聞いた。

 

「如何かしましたか?ドミトルさん」

「いや……俺たちが共和国の軍人の指揮下で動くのかと思うと……な」

「……」

 

特にリノよりも年下となれば心配するのも分かるだろう。リノの時ですら彼は心配をしていたのだ。

それがたった十七歳の、それもあの共和国の軍人ともなれば一体どんな命令をされるのか分かった物じゃなかった。

他の隊員達も同様に心配をしていた。

 

確かにレーナを知らない者からすれば確かに共和国の軍人=無能というイメージが出来上がってしまっている為、なかなかそのイメージを拭えないのだろう。

 

人は一旦出来てしまったイメージを変えるのに半年はかかると言われている。

今でこそ、ストライカー戦闘大隊はリノのことを慕っているが。結成された当初は兵士たちは所々信用しきれていない部分もあり、訓練は出来てもいざ実践となると独断行動も頻発していた。

 

そのため、今回向かうリュストカマー基地で指揮をすると言うヴラディレーナ・ミリーゼ大佐と言う少女に皆は非常に懐疑的であった。

 

「まぁ、ミリーゼ大佐は普通の共和国人とは違いますから……」

「本当か?」

「まぁ、良くも悪くも素直だとも言いますが……」

 

リノとエリノラは苦笑気味にそう言う。ドミトルは一瞬だけ思考が止まるとまた頭を抱えて悩み始めていた。

そんな彼を二人はなんとか宥めようとしていた。

 

「いざとなったら隊長の指揮に委ねますよ?」

 

ドミトルは最後にそう呟くととりあえず考えることを放棄するのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻 リュストカマー基地

 

そこでは連邦軍の軍服を着たシン達が空を眺めていた。

 

「見えたか?」

「いやまだ〜」

「てか、本当にくるの?」

「予定ではその筈です」

 

基地に隣接された空港からシン達元スピアヘッド戦隊のメンバーとレーナはこれから来るであろうストライカー戦闘大隊の出迎えの準備をしていた。

すると双眼鏡越しに空を見ていたダイヤが空に浮かぶ機影を見る。

 

「あ!見えたぞ!」

「え!どこどこ?」

「まだ、遠いな……」

 

黒鉄色の軍服に袖を通したハルト達も空を眺めているとやがて空に何機もの機影が見えてくる。

 

「おぉ〜……」

「あれか……」

「なんかすごいいっぱい居る」

 

縦一列に並ぶその機影はさながら渡鳥の様であった。

そして着陸してくるその機体は連邦にある飛行機とはかけ放れた様な見た目をしていた。

 

「何あれ?」

「合州国軍の《Cー88 ミデア改》と呼ばれる機体みたいですよ?」

「本当に飛行機なのか?」

「なんか太ったカモメみたい……」

 

リュストカマー基地に着陸してくるその機体の尾翼には水色の下地にオリーブの葉で囲われた合州国を地球儀で見たマークがあしらわれ、それが合州国空軍の所属である事が十分に理解できた。

 

次々と着陸してくるミデア後期型の数は最終的には十二機、それだけでも合州国の国力を表している様であった。

そして駐機場に着陸したミデア後期型は続々と後部ハッチが開き、中からMSや物資の詰まったコンテナが運び出されていた。

 

「「「「「「「おぉ〜!!」」」」」」」

 

シン達……特にダイヤが感嘆の声を上げながら呟く。

すると一機のミデアからライトグレー色の合州国軍の軍人が降りてきてシン達を一瞬だけ見ると何事もなかったかの様に作業をしていた。

 

「なんか……素っ気ないな」

「俺たちに興味がないと言うか……」

「協力的じゃないよね……」

「……」

 

レーナ達は合州国軍の隊員達にそんな印象を抱いた。

実際、このリュストカマー基地内でも合州国軍に用意された場所は自分たちのいる場所から離れており。周りを合州国から派遣された憲兵が警護にあたり。中なども外から完全に見えない様になっていて、整備も管理も全て合州国が行っており、一種の治外法権になっていた。

そんな印象を抱いているとレーナ達は声をかけられる。

 

「少なくとも合州国はあまり連邦や共和国に良い印象を持ってはいないさ」

 

「「「「「「リノ(中佐)……?」」」」」」

 

レーナ達はリノが来た事には驚かず、逆にリノ言った事に疑問を持っていた。

するとリノは説明をし出した。

 

「考えてもみろ、レギオンを作ったギアーデ帝国の後身であるギアーデ連邦。

共和国は迫害を行ってきた非道の国。ましてやそんな共和国が指揮官をするこの部隊に合州国軍人が協力的になれると思うかい?」

 

実際、この派遣自体反対意見が多かったんだ。

そう言い残すリノにレーナは何も言い返す事ができなかった。

身から出た錆というのはこう言う事を指すのだろう。

少なくとも合州国は共和国国内にいた派遣軍の八割をすでに撤収させた。それだけ合州国は共和国の事をさぞ嫌っていたのだろう。

今残っているのは派遣軍の中でも特に共和国の惨状に嘆いた少し左寄りの思想を持った隊員であると言われている。

 

 

 

 

 

これは後に判明したが、合州国陸軍の派遣軍では共和国市民に対しリンチを行っていた事が発覚。しかし、それが批判される事がないと言う問題を引き起こしていた。

 

 

 

 

 

リノの説明にレーナ達は納得をすると共に心配をしていた。

 

「と言うか、そんな非協力的で大丈夫なの?」

「なに、手綱は俺は引いているから最低限命令は聞くと思うぞ。

 

 

 

 

 

最低限はな……」

 

 

 

 

 

そう言い、下ろされていく荷物を見てそう呟く。

荷物が下ろされ、空っぽとなったミデアはそのまま滑走路から順に合州国に向かって飛んで行った。

そして全機が戻る事には荷物も殆どが合州国に割り当てられた倉庫に向かって運ばれた。

 

今日ここに来たのはストライカー戦闘大隊の隊員達と整備班、MSの特殊兵装やM61戦車、サブフライトシステムなどであった。

滑走路や宿舎は共用であるが、格納庫や倉庫などは全くの別物と化していた。

弾薬は連邦からも支給されることとなっており、一応弾薬の種類だけは連邦に伝えた様であった。

 

「ま、こんな状態だがよろしく頼むよ。ミリーゼ大佐殿」

「レーナで構いません。経験も年齢も上ですから」

「大佐、ここは軍です。一応の経緯は払わないといけませんから」

「面倒なものですね。規律というのは」

「軍は国家の盾であり、看板でもありますから。こういった所で国の良し悪しも判断出来てしまうのですよ」

 

そう言い残すとリノはレーナに敬礼をしてその場を去って行く。大隊長である彼は色々と忙しいのだろうと予測しながら、リノの最後に言った事にセオが思わず皮肉る。

 

「じゃあ、盾をしていない僕たちは軍人じゃないのかな?」

「そもそも俺たちに盾も何もねえだろう」

「それもそうだな。……ハルト達はそこら辺どうだったんだ?」

「あー……」

 

ライデンに問われ、レッカが答える。

 

「厳しかったわね。少なくともウチらが嫌になるほどには……」

「一体どんな事やったの……?」

 

レッカとハルトが遠い目をしながら呟きアンジュが若干引いた様子でそれを見ていた。

そんな二人は合州国の倉庫に運ばれて行く荷物の中であるものを目にしてギョッとした。

 

「げっ、あれ持ってきたのかよ……」

「まぁ……余剰パーツがありすぎるから、在庫処理じゃない?」

 

そう言い、二人が見たものをシン達も見る。

 

「なんだあれ?」

「フェルドレス?」

 

ライデンとクレナの疑問にレッカは頷いた。

 

「そう、合州国のね」

「なんか上が大きいな……」

 

その合州国のフェルドレスとやらにシン達は若干の興味を示した。

テクニカルほどではないが、ぞれでも雑に設計されたようなそのフェルドレスは見るからに不安定そうであった。

するとハルト達がそのフェルドレスを指差しながらシン達に聞く。

 

「あのフェルドレスは試作機なんだけどさ……」

「足元のところ、見覚えない?」

「「「「「んー……」」」」」

 

 

ハルトに言われその試作品の足元を凝視する。

 

「「「「「ああ!!」」」」」

 

少し考えたのち、全員が一斉に声を上げた。

 

「戦車型!?」

「なんで??」

「どう言う事だよ……」

 

シン達が驚くとハルト達はあの機体の説明をした。

 

「そう、型式番号XST−4。ハイブリットとかフランケンシュタインとか。メチャクチャなあだ名がいっぱいつけられた、合州国で一番()()()()フェルドレスよ」

「渾名の通り、上は合州国軍の戦車の砲塔。下はレギオンの戦車型っていうキメラみたいなフェルドレス」

 

するとハルト達はそのXSTー4の欠点を次々と暴露していく。

 

「戦車型に無理やりあのでかい砲塔を乗せたからまず装弾数が三十発しかない」デデドン!

「それでいて連装砲だから合計十五回しか撃てない」デデドン!

「あの砲塔がデカすぎて無理やり拡張したターレットリングにはタップリ燃料と予備弾薬が詰まっていて一発でも当たったらボカン」デデドン!

「足回りも増やしたターレットリングのせいでせっかくの機動性が死んでる」デデドン!

「機体がトップヘビーで下手にコケるとすぐに倒れる」デデドン!

「重すぎてワイヤーアンカーが意味を成していない」デデドン!

「十機の試作機が今じゃ二機しか残っていない」デデドン!

 

謎の効果音が脳内に響き、ハルト達はあの機体の欠点を言いまくる。

それでいて合州国で作られた中でも()()()()()なのだから他に一体どんなのが作られたのか想像もしたくなかった。

ハルト達が初めて〈レギンレイヴ〉に乗った時に『乗りやすい!!』と叫んでおかしな機動をしていたしていた理由が全て分かった。

 

「よくそんなの乗ったね……」

「だってそれしか無かったし」

「半分諦めたわよ」

「……大変だったんだな」

 

ライデンは改めてハルト達を慰めていると見ていたXSTー4は起動して倉庫の中に歩いて行った。

ハルト達の説明を受けて改めて見たそれはある種の珍兵器の様にも見えた。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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