86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#25 染み抜き

 

「では、これより作戦を説明する」

 

リュストカマー基地の格納庫の一室。

そこではリノが映し出した地図を見せる。

 

「今回、我々の目的はサンマグノリア共和国北部、シャリテ中央駅に存在するレギオン生産拠点の制圧にある」

 

そうして映し出されたのは南北に広がる無数のチューブ状の物にゴチャゴチャとしたナニカだった。

 

「このシャリテ市中央地下ターミナルの此処、第四層と第五層にそれぞれ自動工場型、発電プラント型それぞれの制御ユニットがあると連邦からの情報だ」

 

レギオンに関する連邦の情報は一応の信用はあったので、全員が疑うことはなかった。

そしてリノは地図全体を改めて見せた。

 

一四路線二五面のホームに線路、併設する大規模商業施設が七層分に別れて折り重なり、一部は併設する駅まで伸びており、まるで迷路の様に入り組んだ、かの悪名高き《シャリテ地下迷宮》の立体図だった。

 

「うわぁ……」

「本当に迷宮だなこれ……」

 

そんな声が漏れる中、リノは話す。

 

「今回の目的はこの二機のレギオンの破壊だが。これは合州国、連邦両政府からの要請で可能な限り最低限の破壊にして欲しいとの事だ。そして今回、我々に課せられた内容はこのシャリテ中央駅周辺地帯の制圧。及び第86独立機動打撃群の援護である」

 

作戦を聞き終えた隊員達の内、戦車小隊隊長のドミトルが質問をする。

 

「質問を宜しいでしょうか?」

「何だ?」

「先ほど報告にあった発電プラント型と言うのは我々がケリフォルニアベースで発見したものと同じでしょうか?」

 

ドミトルの問いにリノは資料の再確認をした。

 

 

ケリフォルニアベース

 

 

それは合州国が奪還した国土の中に存在したレギオンの一大拠点であった場所だ。

元が一大軍事基地だったこともあり、相当の被害が出た。

バグラチオン作戦の前に行われたケリフォルニアベース奪還作戦であるウォッチタワー作戦においてミサイルの飽和攻撃とMSの重攻撃を行い、そこで少なくない損害を出しながらもケリフォルニアベースの奪還に成功した。

 

ケリフォルニアベースには合州国が誇る大型マスドライバーが設置されており。その他、超大型輸送機《ガルダ》をも打ち出すことが出来る空軍基地や研究所、試験場などもあり、戦略上極めて重要な場所であった。

おそらくドミトルもそれに参加していたのだろう、発電プラントに関して情報を知っていたのだ。

あの時は核分裂炉と発電子機型による発電であった。

その時に、同じように自動工場型も確認し、中でレギオンの部品も大量に鹵獲していた。

 

「そうだな……この情報だと発電プラント型は核融合炉と思われるそうだ」

「駅丸々使った核融合炉ですか……」

「街に灯りでも付ける気か?」

「いやいや、電磁加速砲型をもっと高威力にする気だろう」

 

そんな予測を彼らは立てているが、それは現在MSの主機でもあるミノフスキー・イヨネスコ型核融合炉を基準に考えているからであって、諸外国ではこのサイズの核融合炉などあり得ないのである。連邦ですら核融合炉は試験段階だと聞いている。

 

この技術を開発したトレノフ・Y・ミノフスキー博士は今世紀一番の科学者だっただろう。

わいわいと憶測をする隊員達にリノは話を続けた。

 

「ともかく、我々は明後日の一一〇〇にここを経ち、共和国派遣軍駐屯地に向かう。それまでに支度を完了せよ」

「「「「「ハッ!」」」」」

 

リノの命令に全員が解散をするとリノは小さくため息をついた。

 

「はぁ、こうも疲れるな」

「大丈夫?」

「あぁ…今から胃が痛いよ……」

 

腹の部分を摩りながらリノはこれからの事を想像していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

なぜリノが胃をキリキリさせているのか。それはグレーテ大佐から渡された映像にあった。

どうやら俺たちに向けたメッセージだと言う事でパソコンでエリノラ達と共に見ていた。

そこには『エイティシックス達はうちらのものだから勝手に手を出すな!』と言う趣旨の発言がされ、これ以上補助をするのであれば合州国に宣戦布告をすると言っていた。

それを見たクラウやテオまでもが『バッカじゃないの?』と本気で呆れていた事からそのメッセージの酷さは察せる。

少なくともドミトル達に見せれば殺る気満々で共和国に総攻撃を仕掛けるだろう。そんな気がしてならなかった。

そしてメッセージの最後に《聖マグノリア純血純白憂国騎士団》首領と名乗り、俺たちにこのメッセージを送りつけた本人のイヴォーヌ・プリムヴェールと言う人は言い残した。

 

 

 

『貴方方合州国の有色種の加害者が我々白系種の被害者を殺したという事実は、千年変わることはないでしょう』

 

 

 

そう言い残して通信は途切れた。

流石に最後の言葉にはリノも呆れざるを得なかった。

 

「………なぁ、共和国ってこんなに馬鹿だったか?」

「さあ?豚箱の中にいたから外の世界を忘れたんじゃないの?」

「豚でもこんなこと言わんぞ」

「百あっちが悪いよね。こっちは情報も掴んでるし」

 

映像を見た四人はそれぞれそんな事を呟き、怒りを通り越して呆れていた。

まさかこんな事を堂々と言ってしまうとは……良いプロパガンダになりそうだ。是非とも今共和国にいる派遣軍にも見せてあげたい。と思ってしまうほどだった。

あまりにも予想外すぎる発言に若干の困惑も混ざっていた。

リノ達はこのメッセージ動画を現在会議が行われている国防総省に『是非すぐ見てください!』と言うメッセージと共に送りつけた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

一時間後にアーノルド少将が珍しく憤った声で電話をして来たのでありのままを伝えた。

なんと驚いた事にその時、大統領が会議に参加していたと言う事で幕僚会議は映し出されたその映像に幕僚達が物を投げ、暴言を吐くと言うカオス空間になったそうだ。

現在、幕僚会議が一時的に中止されて。大統領が緊急で閣僚会議を開いてこの情報次第では共和国から派遣軍を即時撤退させるかどうかを決めるかも知れないそうだ。

予想外の出来事にリノは驚きつつも『そうか……』と言い残して電話を切ったアーノルド少将に思わずその後と展開が予想できてしまうのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

二日後、共和国派遣軍司令部に本国から命令が発進された。

 

作戦命令書

 

四月に実施される共和国北部奪還作戦を最後に、共和国派遣軍は物資・兵装など全てを持って撤収せよ。

 

アストリア合州国参謀本部より』

 

 

命令というのはあまりにも適当すぎるその通信に指揮官は本国に問い合わせをすると本国からは憤った声と『本当なら今すぐにでも撤収させたい』『恩を仇で返された』など文句ばかりが帰って来て一体何があったのかと指揮官は疑問に思ってしまったという。工兵も全て帰還というのだから運輸部の連中が司令部に『俺たちを殺す気か!!』と怒鳴りに来ていた。

 

ともあれ、指揮官は正規の命令書なので現在八五区に居る八千名の兵士を物資の撤去をする様に指示をしていた。

プレハブは共和国に払い下げ、物資や機械は毎日やって来る貨物列車に乗せ、兵士は工兵部隊から順に撤収をさせていた。

現在、間借りしている駐屯地のもともと工作機械などが置かれていた場所には今度やってくるストライカー戦闘大隊のMSが置かれる手筈となっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後、駐屯地に噂の新型ガンダムがやって来た。

そう、試作機だけで終わったと言う。あのパイロット・ブレイカーである。

回廊作戦で見ていたが、いつ見てもその凄さには圧倒される物があった。

青と白に塗装されたガンダムからは黒を基調としたパイロットスーツに身を包んだ、ストライカー戦闘大隊を率いる若きエース。リノ・フリッツ中佐が降りて来て挨拶をした。

 

「三ヶ月ぶりですね。准将殿」

「ああ、回廊作戦以来だな」

「あれから共和国はどうでしたか?」

「いい加減、家に帰りたいと思っているよ。カローシしそうだ」

 

極東で生まれた仕事のしすぎで死ぬという意味の言葉を使いながら准将は苦笑していた。

それだけで派遣軍の現状を把握することができた。

リノは指揮官に数日間の予定だけ話すと駐屯地外に置かれた()()を見て隊員達は眉を顰めた。

 

『合州国は帰れ!』

『合州国は口を出すな!』

 

横断幕に書かれたそれは隊員達の怒りを増幅させるには十分であった。

こう言った横断幕などは憲兵が片っ端から薪の燃料にしているのだが、後を経たないという。

一部地域では顔を隠した共和国市民から瓦礫の破片を投げられたと言う情報もあるそうだ。

まぁ、そう言った者は片端からゴム弾の装填された銃を撃って()()()()をしているらしいが……

その影響か共和国内の警察署には()()()が大量に収監されているそうだ。

 

「やれやれ、気が滅入るわね」

「これ燃やしてもいいですか?」

「おう、ただし火事にすんなよ」

 

指揮官の許可をもらったテオは他の隊員達と横断幕を全て回収するとそこに火のついたマッチを放り込んだ。

横断幕に書かれた油性インキに勢いよく燃えひろがり、横断幕はよく燃えていた。

 

「これで魚焼こうぜ」

「やめろ、魚が不味くなるだろう」

 

そんな事をぼやきながら燃えている火を横目にリノ達元一一二小隊のメンバーは復旧作業の進む共和国行政区を見ていた。

安全の為に《プロテクトギア》と言う外骨格装甲とゴム弾が装填された自動小銃を持って……

 

「見事なまでに白いわね……」 

「リノが言ってた染み抜きってのも理解できる」

 

染み抜きとは、合州国で共和国による虐殺を指す隠語である。

どっかの兵士が呟いた言葉が今では隠語として広まっていたのだ。

今四人は隣接しているギアーデ連邦軍救援派遣軍駐屯基地に向かって歩いていた。

駐屯基地に到着するとリノ達の姿にギョッとしつつも事情を理解してくれたようですんなりと通してくれた。

 

「ず、随分と……物々しいですね……」

 

出迎えたレーナが苦笑しながらリノ達を見る。後ろで見ていたシン達ですら思わず苦笑をしてしまっていた。

 

「こうもしないと怪我をしてしまうのでね」

「安全第一。変なことで作戦に支障をきたす訳には行かないでしょ?」

 

プロテクトギアを取ったリノとクラウがそう言う。

今回やって来た四人はレーナの案内で作戦室に入るとそこにはすでに何人かの連邦や合州国の士官が待っていた。

 

「では作戦の説明をします」

 

レーナがそう言い作戦会議は始まった。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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