86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#28 鹵獲品

キンッ!……キンッ!

ゴンッ!

ガキィン!!

 

街中で戦闘が行われている。

ガンダムと一機の銀色に輝く金属光沢に青いモノアイを動かして、唯ひたすらに持っていたヒートホークで攻撃を仕掛ける。

 

「チッ、レギオンの奴。どっからザクを持ってきやがった……!!」

 

ガァン!!

チュォォォォォンン!!

 

至近距離からビーム攻撃をするが、避けされてしまった。

 

湾曲した装甲に、剥き出しの動力パイプ。

 

特徴的なモノアイは見るものに強烈な印象を与えていた。

 

 

 

 

 

それは一年戦争時にジオン公国軍が通して使っていた傑作モビルスーツ……ザクⅡであった。

 

「なぜザクがこんな所にいやがる!!」

 

技術的には化石に近い代物だが、対モビルスーツ戦闘をやって来ていないリノは苦戦を強いられていた。

 

「オストリッチ!こっち来れるか?」

『何があったの?』

「ザクだ!」

『ザク?』

「奴ら、どこかからザクを持って来やがった!!」

『えっ……嘘でしょ!?』

 

クラウの驚く声が聞こえ、リノは攻撃してくるザクを蹴飛ばす。

 

ゴォォン……!!

 

重々しい音と共にレギオンのザクは飛ばされ、建物に突っ込む形でザクは建物を破壊する。

 

「とにかく、こっちに来てくれ」

『りょ、了解!』

 

クラウは慌ててこっちに来てくれると言う事でリノは一瞬だけホッとした。

 

「こうなったら本国に戻って対MS戦闘の訓練した方がいいのか?」

 

そんな事を呟きながらリノは銀色のザクをつかみ倒す。

 

無理にでも動こうとしているのだろう。ザクはゴゴゴと金属音を立てながらスパークを起こす。

 

熱量から使われているのはただのバッテリー……恐らく発電プラント型で充電したのだろう。

そんな推測を立てながらリノはザク相手にバルカン砲に引き金を引く。

 

ブォォォォォォォ!!

 

バルカンた直接ザクに当たり、モノアイを破壊した。

そして頭部動力パイプを掴むとそれを思い切り引っ張った。

 

バキバキッ!!

 

次に、右手に持っていたヒートホークを持ち出そうとしたが、すかさずそこにビームサーベルで腕ごと焼き切る。右腕の無くなったザクはこれでもかと起きあがろうとする。

 

「サンプルだ。……なるべく原型を留めたいのでね」

 

そう言い、リノはザクの胸部にビームサーベルを突き刺す。

 

ジュオ……

 

金属の溶ける音と共にビームサーベルを奥深くまで差し込む。

絶叫のような声が聞こえた気がしたが、気にせずにそのまま押し込む。

 

すでに破壊された頭部だったが、胸にビーム・サーベルを刺され、今度こそバッテリーが破壊された。

自爆シークエンスも行えないほど一瞬で制御系が焼け溶け、ビーム・サーベルは下まで貫通していた。

 

「はぁ…はぁ……」

 

リノはここで初めて今の戦闘で手元のレバーに金属が纏わりつき、合州国が開発し、研究を凍結させたあのサイコミュシステムのように意識しただけで機体を動かしていたことに気づいた。

 

「危なかった……」

『リノ!』

 

クラウの声が聞こえ、交差点からジェガンが出てくる。リノは一瞬体をビクッとさせるも、普通に返事をした。

 

「おう、少し遅かったな」

『何があったの?』

「これを見ろ」

 

そう言い、リノはクラウに襲ってきたザクを見せる。

 

『これって…』

「なぜかは分からないが。レギオンの奴、ザクを作っていた。電源はバッテリーのようだったがな」

 

そう言うとリノはザクを持ち帰るために移動させようとした。

 

 

 

 

 

《ダメージ蓄積危険値を突破》

《外装ユニット放棄 形状変《外部割込》《特記事項アルファ実行》》

 

 

 

 

 

それはいきなり起こった。

撃破したザクのビームサーベルの後から大量の流体マイクロマシンが重力に逆らうように噴き出す。

 

咄嗟のことにリノ達はビームサーベルを取り出す。

 

吹き出した流体マイクロマシンは徐々に形を作っていき、それが人……それも女性のものだと理解できた。

 

人の見た目をした銀色のそれは気味が悪いものだった。

 

目は無く、マネキンにようにも見えるそれは徐々に唇を形成し、それは合州国で作られた映画に出てくる液体金属のボディを持つロボットを彷彿とさせた。

 

そう言えばあれもロボット対人類の映画だったか……

 

そんな事を思っていると形成された唇が動く。

 

 

 

 

 

 さ が し に き て 

 

 

 

 

 

声はないが、唇の動きでそう言っているのだけは理解できた。

 

すると銀色の流体マイクロマシンは一気に飛散し、崩れ落ちる。

そして崩れた流体マイクロマシンは小さな蝶の形となって飛んでいく。

 

『……っまずい!!』

 

咄嗟にクラウの勘で持っていたビーム・サーベルを振って、できる限り銀色の蝶を焼く。

今の出来事に恐怖と驚きが混ざった様子で呆然としてしまっている。

 

「(今のは……)」

 

リノは先のことを鮮明に思い出しながらレコーダーに残っているであろう映像を後で見返そうと思っていた。

クラウも信じられないと言った様子で先の出来事を思い出していた。

 

 

 

 

 

数分後、通信が入り、レーナは状況整理を行なった。

どうやら地下制圧中に地蔵地雷ではない本物の人が混ざっていたと言うことらしく、レーナ達は困惑した様子であった。

 

『とりあえず確認をします。ファランクス戦隊が全滅。アンリエッタ・ペンネローズ技術少佐が〈レギオン〉に奪取。合州国の旧式MSが出現。〈レギオン〉に混じって所属不明の人間が作戦域を彷徨いている。……この認識で間違いありませんか?』

『最後の一つに相違なしです』

「MSに関しても同様です」

 

リノはあえてさっきの女性の一件は話さなかった。リノの勘がまだ話すべきではないと訴えているからだ。

しかし、かなり面倒なことになった。ファランクス戦隊を全滅させた攻撃の正体がわからなければ対策のしようが無いからだ。

おまけにエイティシックス達は人を殺すことに慣れていない。

 

レギオンを倒すことに抵抗はなくとも、人を殺すことには抵抗がある。

 

ハルト達がそうであったように。

 

リノが躊躇なく人を殺していたのを見て気分を悪くしていたように

 

彼らは人を殺せない子供なのだ。

 

そう思いながらリノは戦闘後で破壊された建物に身を隠しながら軽く軽食を取る。

シデンの話ではその作戦区域内にいた人というのは正気ではなく、恐ろしいほど汚なかったそうだ。

見た目と汚れ具合からして恐らく去年の大攻勢の時の逃げ遅れだと推測されていた。

 

「大攻勢か……」

 

共和国が滅んだその戦いで、いったい何人が亡くなったのだろうか。

まだ集計中ということもあり、これからどんどん数字は雪だるま式に増えていくだろう。

 

とりあえずの対応として火器照準レーザーを当てて逃げれば人、逃げなければ自走地雷であると判別するよう言明が下った。

一応ジェガンも二発程度であれば自走地雷の攻撃には耐えられるよう設計されていた。

 

「(後は彼かが帰ってくるのを待つしかないか……)」

 

リノはそんなことを思いながら現在地下で戦っている彼らの無事を祈っていた。

話を聞いているとどうもレーナは共和国人のために彼らを犠牲にしないという方針で、錯乱している共和国人の保護を後回しにしていた。

連れ去られたアンリエッタ少佐に事も後回しにしようとしたが、シンが口を挟んだ。

 

『大佐、ペンネローズ少佐は俺とスピアヘッド戦隊が向かいます』

『ノウゼン大尉……!?』

 

『自分たち共和国人のためにエイティシックスを殺す必要はないと思っているようですが。共和国の冷徹をあなたがする必要はない。大佐がそれを演じる必要はありません。だから、無理はしないでください。……大佐にそれは似合いません』

『……』

『発電プラント型に関してはブリジンガメンとサンダーボルト戦隊に任せます』

『いいのか?不戦勝って事にしちまうぜ?』

『勝手に競ってろ。もう馬鹿げた勝負をしている場合じゃない』

『わかってる、冗談だ……任せとけ』

 

本人達曰く『遺伝子レベルで仲が悪い』そうだが、ここだけはやることをわかっているようで、シデンも理解していた。

フレデリカが自信ありげにアネットの居場所の特定を行い、シンはリトに自動工場型の制圧を要請していた。

 

「大佐、そのファランクス隊が全滅した攻撃と言うのはどういったものかわかりますか?」

『あ、はいっ。えっと……』

『妾が見たのは一瞬で真っ二つにされたアイナの機体じゃった。コックピットブロック中央から真っ二つじゃ』

『大口径砲による狙撃でしょうか……』

『建物の中におった。狙撃は不可能じゃろう』

 

いろいろな推測が飛び交うが、レーナは指示を出す。

 

『当該の攻撃については情報収集を最優先とします。接敵しても可能な限り戦闘は避け、離脱してください』

「了解」

『りょーかい』

 

レーナの指示の元それぞれ作戦を続行していた。

 

 

 

 

 

リノはガンダムの中でクラウに通信をする。

 

「クラウ、今から使ってもいいか?」

『……何故?』

 

クラウはリノに疑問を呈する。

 

「状況把握のためだ。もしかすれば謎の攻撃の正体もわかるかもしれないだろう?」

『それだけ?』

「号持ちの子供達を一瞬で殲滅させた相手だぞ。確実に何かある」

『……』

 

クラウは一考すると口を開いた。

 

『二〇秒だけよ。それ以上は危険だわ』

「了解だ」

 

リノはガンダムのレバーから手を離すと右目に意識を集中する。

右の瞳が青く光だし、右目の視界が徐々に変化して行く。

次に見えたのは足を動かして移動する近接猟兵型の集団。そして銀色に包まれた見た事ない形状をした()()()だった。

 

「(あれは……)」

 

リノはその見た事ないナニカを凝視するとクラウの声が聞こえた。

 

『二〇秒経ったわよ』

「ああ……今のは……」

 

視界が急激に戻り、吐き気を抑えながらリノはつ呟く。

 

「…新型か……」

 

このザクと言い、謎の攻撃と言い、色々とありすぎてリノは腹がいっぱいであった。

 

ザクに関しては今頃、連絡が行き確認が行われているだろう。

戦前の情報は残っているので、奪還した国土にあるザクの確認が行われて三日もすれば結果は出るだろう。

そう思いながらリノはクラウに言う。

 

「見た事ないレギオンがいた」

『え?新型って事?』

「分からない。だが、明らかに異常な見た目をした()()()がいた」

 

リノは見た光景をそのまま伝えるとクラウは憶測を述べる。

 

『ファランクス隊をやったのは……』

「かもしれんな。現状はどうなっているか確認をするか……」

 

リノは知覚同調に手を当ててレーナに通信をする。

 

「大佐殿、現状報告できますか?」

『はい……現在、ペンネローズ少佐は第四層東ブロックの商業地区にいるので、スピアヘッド戦隊が向かっています。発電プラント型、自動工場型にも順調に進んでいます』

「そうですか……」

 

リノは確認を取ると途端にフレデリカの声が響いた。

 

『急ぐのじゃシンエイ!ペンネローズ逃げよ!足を止めるでない!』

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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