86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#3 上官への報告

シンエイ・ノウゼンと名乗った少年を見てリノはサンマグノリア共和国の現状を予測していた。

 

「(こんな少年兵が前線を張るほど軍は壊滅したのだろうか……?国が既に限界だから彼らの乗る戦闘機械はこんなにも弱々しいのか?)」

 

そんな事を思いつつ、リノはヘルメットの通信機の電源を入れる。

 

「テオ、クラウ。聞こえているな?」

『はい隊長』

『聞こえているよ』

 

二人の返事が聞こえるとリノは指示を出した。

 

「テオ、本国との通信は出来るか?」

『はい、臨時中継地点も問題なく稼働中。本国との通信は可能です』

「クラウ、何かあった時に備えて攻撃準備を」

『了解、常に射程に捉えているわ』

「何かあればこちらもすぐに撤退するテオは俺たちが見失わないように距離の測定と〈レギオン〉の索敵を」

『了解』

 

指示を出して通信を切ると基地に戻ると言うシン達について行った。後ろにはエリノラが付いてきており、リノに通信を入れてきた。

 

『リノ、あの子達を信用するの?』

「いや?完全な信用はしない。しかし……」

『しかし?』

「嫌な予感がする。とだけ言っておくよ」

 

そう言うと、エリノラは納得した上で答える。

 

『……了解、いざとなったら全部吹っ飛ばしてあげるわ』

「宜しく頼むよ」

 

幼い頃から同じ生活をしてきた二人はお互いに考えている事を察しながらジェガンを歩かせていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ロボット……ですか?」

 

サンマグノリア共和国内第一行政区で、白系種の少女が疑問を投げかける。

首の後ろでは青い光が髪を通して見え、独り言をしているようにも見えた。

 

『ええ、戦闘地域で偶然遭遇しました。俺たちはこうした事は分からないので少佐に判断を聞こうかと……』

 

「……分かりました。取り敢えず、詳しい話を聞かせて下さい」

『分かりました』

 

そうして部下である〈アンダーテイカー〉から語られる報告を聞いた。

 

『そのロボットは“アストリア合州国陸軍”と名乗っていました』

「アストリア……」

 

白系種の少女は国名を聞いて少しだけ手を顎に当てて考えていた。

 

「(合州国が東部戦線に?一体なぜ……?)」

 

白系種の少女はそう思うも、アンダーテイカーに現状を聞いた。

 

「今、そのロボットはどうしていますか?」

『基地に連れて帰っている途中です』

「そうですか……」

 

現状を把握した少女は〈アンダーテイカー〉に指示をする。

 

「状況は分かりました。今日、また話をする時に色々と済ませておきます。それまで大尉は監視をお願いします」

『了解しました』

 

通信を終えた少女は速やかに振り向き、元来た道を戻っていた。

 

「(共和国以外の国が生きていたなんて……)」

 

少女は驚きながらそう思うと、ある部屋の扉をノックして入った。

 

「失礼します」

 

少女の入った部屋には一人の男がペンを片手に書類を片付けていた。

 

「事前の連絡なしに何の用かね?」

「緊急の報告があったので……申し訳ありません」

「……どんな報告だね?」

「先ほどの入った報告です……」

 

そして少女は執務室の机で書類を片付けている男に先ほど聞いた話をした。

 

「スピアヘッド戦隊が戦闘中に他国軍と遭遇をしたそうです」

「……そうか」

 

「遭遇したのはアストリア合衆国陸軍と名乗ったそうです」

 

「アストリア……」

「小父様、私は遭遇したアストリア陸軍と連絡をしたいのですが……」

 

少女は男性にそう聞くと男は少し考えた上で少女に伝えた。

 

「予備で置いてある知覚同調を手配しよう」

「直接会いには行かれないのですか?」

 

するとその男は言う。

 

「この軍にまともに話せそうな者はいるか?

相手に不満を持たせずに話せる人がいるか?」

「……」

 

思わず黙ってしまった男は少女に話した。

 

「レーナ、間違っても直接あそこには行かない事だ。いくら他国の軍とはいえそれが彼らによる嘘の場合もある」

「そんな筈はありません」

「だといいがな」

 

そう言われ、少女は少し間を置いた後に敬礼をする。

 

「……詳しい話を聞きますので、ここで失礼します」

 

レーナと言われた少女はそう言い残して部屋を出て行った。部屋に残った男は危うく落としかけたペンを置くとため息を吐いた。

 

「アストリアか……」

 

資本主義の怪物と言われている彼の国を聞いて思わず男……ジェローム・カールシュタール准将は思わず外を見ていた。

 

「よりにもよって合州国が来るとは……」

 

カールシュタールは民主主義を始めて唱え、民主主義を第一と考え、サンマグノリアに続いて二番目に民主化が起こったアストリアを思い出し、そしてこの国の現状を思い返して思わず呟いた。

 

「〈レギオン〉に滅ぼされるか……合州国に蹂躙されるか……何方にせよこの国の未来は絶望的だな……」

 

できれば後者がましな結末だろう。そう思いながらカールシュタールは日の沈みかけの空を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『何これ……臨時野営地?』

「廃墟の間違いじゃないのか?」

 

二機の〈ジェガン〉のコックピットで思わずそう呟いてしまったのはリノとエリノラだった。

それもそのはずで、シン達について行き、辿り着いたのがボロボロに錆びついたプレハブ小屋に、落書きのされた二階建てのオンボロの建物。

廃屋と言っても間違いないくらい明かりはなかった。唯一、プレハブ小屋だけ明かりがついていた。

 

「ここが目的地?」

『嘘でしょ……』

 

二人が絶句していると明かりのついていたプレハブ小屋から何人かの人が出てきて〈ジェガン〉を見て驚いた様子だった。

そしてその人は〈ジェガン〉を見て驚き、シンを呼び出してアレはなんだと言っているようだった。

しかしシンはその人に何か言うとシン達の乗る機体、〈ジャガーノート〉と呼ばれるその機体は男の人の叱責を聞き流すとそのまま〈ジャガーノート〉に乗ってプレハブの中に入って行った。

敷地内は殆どが舗装していない地面の状態で、プレハブ付近だけが草がボウボウのコンクリの板がひかれていた。

〈ジェガン〉二機はプレハブに入らないと言う事でプレハブの外に誘導させ、横で駐機していた。

 

「雨晒しの駐機かよ」

『この際仕方ないわね』

 

〈ジェガン〉の電源を落とし、コックピットを開いた二人はシステムのオートパイロット機能で機体から降りた二人は辺りを見回して感想を言った。

 

「わぁ……すっごい森」

「これ、野営地も良いところよね」

 

と、隣でエリノラがそう言うと二人は声をかけられた。

 

「アンタらがシンの拾ってきた外人か……」

「貴方は?」

「ここの整備長をしているレフ・アルドレヒトだ」

「整備長……」

 

思わずリノは全身を見回す。

 

「ま、短い間だろうが。宜しくな」

「あ、はい……」

 

パイロットスーツの二人は現在、上にジャージを羽織り、片手にヘルメットを持っていた。

アルドレヒトに言われ、二人は案内をされた。

格納庫では〈ジャガーノート〉のコックピットが開いており、何人かの茶色の軍服を着た少年少女達が自分達を見ていた。

 

「……」

 

明らかに未成年しか居ないこの場所に思わず困惑しているとアルドレヒトは叫んだ。

 

「ガキどもはさっさと出ろ!」

 

そう言い少年少女達が出て行くとエリノラが思わず聞いてしまった。

 

「あの……少年兵しかいないのですが……正規兵はどうなったのですか?」

 

その問いにアルドレヒトはサングラスをかけたまま逆に聞き返した。

 

「若いの、ここから先はキツイ話だが。それでも聞けるか?」

「……ええ、お願いします」

「そうか……」

 

サングラスの下でアルドレヒトは目を閉じるとゆっくりと話し始めた。

 

「この国の正規兵は戦争序盤に壊滅した。レギオンによってな」

 

アルドレヒトの説明に二人は思わず目を細めた。しかし、これから聞いた話は二人の耳を疑わせるものであった。

 

「正規軍が壊滅し、レギオンの侵攻で追い詰められた共和国政府は白系種以外の人種……有色種と呼ばれる人種を敵性市民として市民権を剥奪した」

「「!?」」

 

驚くリノ達を他所にアルドレヒトは淡々と続ける。

 

「有色種と呼ばれ、市民権を剥奪された市民はそのまま強制収容所に入れられ、白系種は迫害した有色種に作らせた大要塞壁群の中に造られた八五個の行政区に逃げ込んだ」

「……」

「そして有色種はその要塞の外。八六区と呼ばれる外に放り出した」

「……」

 

リノは顔を顰めながら話を聞いていた。

白系種以外は何もないこの戦場に放り出す?そんなの人種差別の虐殺ではないか!!

込み上がる怒りを抑えながら二人は話を聞き続けていた。

 

「それで、八六区に放り出された有色種は五年の兵役を済ませれば市民権を得ると言っているが……

 

 

 

 

 

俺は一回もそんな奴を見たことがない」

「「……」」

 

持っていたヘルメットを強く握り締め、リノはアルドレヒトに聞いた。

 

「……外に出された八六区の人々は…どうなったんですか」

「……分からない。何せ政府はエイティシックスの死者の埋葬を禁じているからな」

「何ですって……?」

 

エリノラが怒りに任せた声でアルドレヒトに聞く、今にも殴りかかりそうなその拳を必死に抑えながら。

 

「白系種以外の人を外に投げ捨てて虐殺をして自分達は悠々自適に暮らす?何ふざけたこと言っているんですか?」

 

冗談じゃないのか?と問いたい気持ちだったがアルドレヒトの声は嘘をついているようには感じられず、余計に怒りが湧いてきた。

 

「共和国は……いや、サンマグノリアの()()()はこんな事を続けているのか?」

「ああ……」

 

アルドレヒトは話を聞いて小さく震えている彼らの拳を見た。するとリノがアルドレヒトに聞いた。

 

「彼らは、その事を知っているのですか?」

「……ああ」

「っ!!そうですか……」

 

リノは信じられないと言った様子で彼らの向かった方を見ていた。

 

「さ、行ってくれ。俺らはこれからこいつの整備があるのでな」

「……分かりました」

 

「失礼します」

 

そう言い残して格納庫を出て行った二人を見てアルドレヒトは二人のやってきた国を思い出していた。

 

「アストリア合州国……よりにもよってこの国かよ……」

 

アルドレヒトは今後起こるであろう最悪の展開を想像してしまった。

 

「(やれやれ、レギオン以外の敵を増やしたくねえもんだ……)」

 

アルドレヒトはそう思いながらアンダーテイカーのボロボロの脚部を見て無性に腹が立ってきていた。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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