シリンのコンセプトは共和国と同じであった。
人ではないものを乗せているから、無人機。
だが、共和国と違うのはその乗るのが機械仕掛けの人形であるという事だ。
おまけに言えばシンが声がするといい、ヴィーカはシリンには志願者だけであるが死亡した者の脳が使われているという。
レギオンと同じ構造を持つシリンの説明をリノ達は聞き終えた。
シリンの事を話していた時、ヴィーカはチラチラとリノの方を気づかれないように何度も見ていた。
リノはその行動に疑問を感じながらも特に口出しする事なく、退室をしていった。
ストライカー戦闘大隊に貸し出された部屋には今回渡された資料の山に埋もれたエリノラ達がいた。
「すごいな……こんな大っぴらに人体実験の情報が渡されるとはね……」
そこにはシリンに関する情報が記されていたが、あのアバティーンにいる科学者でもやらなさそうな内容が書かれていた。
「こんな情報もらっても嬉しくないわね。どちらかというとフェルドレスの情報の方がありがたいわ」
「それはそう。何たってウチはフランケンシュタインしかまともなのが無いしね……」
隣でクラウやテオが頷きながら言う。
オマケにリノはシンと共にヴィーカに呼び出されて帰ってこないからリノのハミングバード一号機の
「早く戻ってこないかなぁ……」
「どうでしょうね、時間かかるんじゃない?王族って話すの長いイメージだし」
「まぁ、気長に待とうや」
部屋で三人は渡された資料を片付けていた。
同じ頃、リノは待たされていた。
王族の墓があると言うこの場所にシンと共に呼ばれたリノはヴィーカの命でここで待つようにと言われていた。
「(俺が呼ばれたのはなぜだろうか……)」
リノはヴィーカに呼ばれた理由を考えながら待っていた。
すると扉が開き、シンとヴィーカが出て来た。シンとはそこで別れるとヴィーカは今度リノの方を向いた。
「すまない、時間がかかったな」
「いえ、問題ありません。殿下」
「ヴィーカで良いと言っているだろう」
「いえ、貴方は一国の王子ですから」
「はぁ……リノも大概面倒臭そうな性格をしているな」
そうして、ヴィーカがリノを中に入れようとした時、レルヒェがヴィーカを呼び出した。
「殿下、ザファル王子がお呼びであります」
「…今リノと話そうと思っていたのだが……」
「緊急の御用との事であられます。レギオンの攻勢で貴族院から話があると……」
「そうか……すまんリノ、また後でいいか?」
「いえ、私はこれから用事がありますので。別日でも構いません」
「すまんな……行くぞレルヒェ」
「はっ」
「リノ、別の者に他の者もいるところまで案内する。少し待っていてくれ」
「了解しました」
そう言い、ヴィーカはレルヒェと共に何処かに向かって歩き出した。
「……どうだった?」
「概ね、普通だったと言えるでしょう。特に変化は無かったと思われます」
ヴィーカとレルヒェは少し歩いた所でそう話す。
レルヒェの報告を聞いてヴィーカは少しだけ顎に手を当てて考える仕草をとった。
「だが、さっきの青い目は気になったな……」
「はい、それがしも初めて見る光景であります」
「だろうな……」
ヴィーカとレルヒェはそう呟き。先程、レーナ達と話した時にリノが見せた淡く光る青い右目を思い出す。
「あの目はまるでレギオンのようだったな……」
「そうですな……」
ヴィーカはリノは合州国で作られたシリンのような物かと推測を立てたが。それにしては余りにも人間らしいと思い、事前に渡された情報にも違和感はないので、人であることには間違い無いのだが……。
「闇が深そうな奴だ……」
ヴィーカはリノに対し興味深く思い、少しばかりの警戒心を抱いていた。
王城から移動し、MSを駐機する場所に来たリノはマルコに提案した新武装の試験を行なっていた。
本国で試射を数回しただけだが十分使えると判断し、無理やりだがリノは今回持って来ていた代物だった。
リノは自機の右肩のビームカノンをの取り払って付けられた球体状の機械に目をやった。
出力の関係から使用中はビームカノンは使えないが、ビームカノンとはまた違う使い方が出来る新装備であった。
元がリノの提案な上に、あまりにも特殊すぎる兵装の為、リノの一号機にしか装備出来ないものであった。
リノはハミングバードに乗り込むとコックピットに追加されている武装メニュー欄を確認した。
「《試作無砲身砲塔》か…頼んでから半年くらいなのに……」
リノは大攻勢の後に、マルコに依頼した兵装がたった数ヶ月だけなのにできてしまった事に苦笑を隠しきれなかった。
「こればかりはマルコに感謝しないとな……」
リノはコックピットでそう呟きながら兵装選択で選択をするとヘルメットに四角い線が浮かび、リノは上下、左右に動かしてその四角い線を動かす。
それと同時に外の球体砲塔も同じように動き、下にいたクラウが確認の手を振る。
『確認したわ。問題ない』
「了解、明後日には移動をしているだろうから。隊員達には確認を取ったな?」
『ええ、リノが殿下に呼ばれている間にね』
「今は何している?」
『街に飲みに行ってる』
「じゃあ、俺たちも行くか」
『そう来なくっちゃね』
リノは確認を終えるとハミングバードから降りてそのままエリノラとも合流してアルクス・スティリエの街に飛び出して行った。
連合王国南方戦線 レーヴィチ観測基地
難攻不落
まさにこの言葉がピッタリな場所である。
四方を囲まれ、三百メートルから百メートルの穴があり、南北に菱形に伸びた頭頂部を持ち、岩壁の上に峻厳と立つ。特有の純白の岩肌は今は透明で急峻な氷雪の勾配に分厚く覆われ、岩壁の頂上をぐるりと取り巻く強化コンクリート装甲板の城壁。北の頂点からは百メートル近い高さの岩山が伸び、そこに支柱を厚く強固な岩盤の天蓋が、翼を広げた白鳥のように頂上部を覆う。
ゲートとそこに至る登攀路は軍団本部に向けて北西方向に一箇所のみ。異様なほどの急勾配と九十九折の道、それを見下ろす様に設置された無数の銃座。
元は国境の砦の一つで、今は弾着観測陣地となっているようだが、天蓋には穴が空いていた。
夕暮れに味方との交代に偽装して到着したこの要塞。
龍牙大山への挺身作戦の拠点、及びストライカー戦闘大隊、第86独立機動打撃群の拠点となる要塞。
元が砦というだけあり、隔壁で細かく分けられた内郭が階段状に配されたつくり。反時計回りに、天守閣である北の岩山へと至る。観測塔として使用されているという天守閣は北の砦の岩山を掘り抜いたもので、見渡せば要塞周辺の戦野の光景。
北には連合王国の砲撃陣地、南は競合区域。東西には機甲部隊の宿営。
周囲は数キロにわたって雪の平原だが、そこから先は不自然に針葉樹の森が広がり、龍骸山脈の尾根の線。
連合王国最後の盾の北の山脈と、今やレギオンの巣窟となったそれ。
内郭を区切る分厚い隔壁は合州国最大の要塞、ルナツーを彷彿とさせた。
「弾着観測ね……確かに此処は見やすそうだ」
要塞の一角の喫煙エリアでタバコを吸っているリノは要塞を見ながらそう呟く。
現在、ストライカー戦闘大隊は運び込まれたMSを要塞一区画に置かれ、作戦発動までこの要塞で待つ事となっていた。
これから数日間は演習を兼ねた実戦を行い、龍牙大山攻略のための行動に移る予定である。
リノはこれから社交のためにレーナと共に連合王国の食事会に参加する予定である。
食事のマナーに関しては孤児院で嫌というほどオバア教わっているので。そこは心配ないと言われているが、それでも気が重かった。
「はーあ、社交ってのも面倒だな」
リノはそう呟くと要塞内に割り当てられた部屋で横になる。
外に出ても連合王国軍人の嫌そうな視線がリノ達は気分が悪かった。
まるで、俺たちの戦場に足を踏み入れるなと言っているようで嫌な気持ちになった。
「やれやれ、面倒なものだな。派遣部隊というのも……」
リノはベットで特殊装備のマニュアルを読む。
この球体砲塔はシリンと同様、知覚同調で動く無人砲塔である。
現在、ジークフリート戦線の隠匿式砲台にも使用されている技術だが、それをMSサイズに小型化した試作機である。
共和国の知覚同調に関する技術は数年前に研究が禁止されたサイコミュに関する技術に代替する可能性があるとして科学者達の間で議論となっている技術であった。
この無人砲塔は知覚同調を使用するので、ニュータイプに覚醒していない者でも扱うことが可能である。
そのプロトタイプをリノは受領していた。試験運用を兼ねて明日から実戦で用いる予定である。
「やれやれ、初日から気が重いな……」
ただでさえ予定が詰まっているのに……
ドミトル達ガンタンクは現在ロトの乗り換えの為に本国で教習を行なっている。
ドミトルが何年も愛用して来たガンタンクだが、流石に登場から三〇年以上も経っているという事で部品が無くなって来てしまっているのだ。
ドミトルは最後まで粘るかと思われたが、意外にもすんなりと受け入れていたので少々拍子抜けしてしまったが、
『俺も時代の流れについて行かんとボケるからな』
と言い、今はロトの訓練の為に本国に残って教習を受けている。
今回送られてきたロト二機はそのガンタンクの代わりという事である。なので、この作戦が終わり次第またドミトルと交代となる。
リノはマニュアルを読んでいると軍服を着たシリンに呼ばれ、食事会へと誘われるのであった。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい