86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#35 雪原での戦闘

雪が降る大地を、砲声が轟く。

 

 

 

 

 

雪原を白いモビルスールが走る。寒冷地塗装のされたMSは地上からビーム兵器による攻撃を行い、レギオンと雪を溶かしていた。

 

 

 

 

 

レーヴィチ要塞基地 第八格納庫

 

地下最下層に作られた要塞で一番大きい格納庫では機動打撃群、ストライカー戦闘大隊、連合王国の兵員がずらりと並ぶ。キャットウォークの陰に潜む待機状態の<ジャガーノート>の群。

 

「ーーさて、初対面の者が大半だな連邦に合州国の諸君。連合王国南方方面軍、ヴィークトル・イディナロークだ。階級はややこしいから覚えなくていい。そのうち変わる。直接卿らの指揮は執らんが、まあ、上官の一人だと思ってくれ」

 

イディナロークと聞き、合州国軍の兵士は一瞬だけ驚いた様子を見せたが話を聞く姿勢を崩さなかった。

逆にエイティシックスたちは誰?と言った様子で少し不敬な印象を持っていた。

しかしヴィーカは余裕そうに肩をすくめる。さすがは数千人の兵士を指揮しただけはある。

ちなみに、リノはモビルスーツ隊を前線で指揮する指揮官兼部隊長で、指揮系統上は大佐であるレーナの指揮下にある。

ヴィーカは声を張って兵士に作戦概要を伝える。

 

「本作戦は第八六独立機動打撃群、ストライカー戦闘大隊、南方方面軍第一機甲軍団の共同作戦となる。作戦目標は本基地より南方二〇キロ、<レギオン>支配域内。竜骸山脈、竜牙大山内の<レギオン>拠点の完全制圧だ」

 

映し出された地図に幾つかのアイコンが浮かび、その中で一際大きく記された物。

<レギオン>の最奥、に位置する大規模拠点。おそらく<レギオン>の対連合王国戦線の司令部の一つ。

 

「主攻は機動打撃群が担い、この挺身を第一軍団、ストライカー戦闘大隊が援護する。ーー具体的には第一軍団、ストライカー戦闘大隊が揺動として<レギオン>前線拠点を襲撃し、予備部隊を誘引し拘束。生じた間隙を機動打撃群が進出し、竜牙大山拠点に侵入、制圧する」

 

説明に合わせ、アイコンが動き、自分達を示すアイコンは右翼方面に展開し、前線拠点に超長距離砲撃を行うことになっている。

ただし、機動打撃群が侵入する竜牙大山拠点内部の地図はない。

それもそのはずで、ここはレギオン支配域になった後に作られた拠点であり、斥候もかろうじて竜牙大山にあると言うのが分かっただけである。

 

「なお、当該拠点の指揮官機 識別名<無慈悲な女王>については鹵獲を優先する。初期ロットの……と言っても分からんか。()()()()()だ。……あくまで推測だが、当該機は<レギオン>から人類への、何らかの情報提供を望んでいる可能性がある。それがこの戦争の終結につながる、極めて重要な情報である可能性も。故に、鹵獲だ。多少壊しても構わんが、中央処理系は無事に残せ。……ここまでで、何か質問は?」

 

ヴィーカの問いかけに答えるものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『やれやれ、単純な計画ね……』

『まぁまぁ、連合王国は切羽詰まっているから何振りかまってられないなんでしょう』

『うわぁ、隊長。俺この距離で狙撃ですか?』

「スナイパーカスタムなんだからそれくらい当たり前だ」

 

知覚同調でリノは隊員たちと通信をしていた。繋いでいるのは各小隊長と混成部隊のメンバーであった。

今回のために全員が真っ白に機体を塗り、レギオンから見えずらい様にして行軍していた。

おまけに足にはアイゼンを装着し、凍りついた雪の大地を破りながら歩いていた。

隊員たちが思い思いに話す中。リノは一人、シンたちの事を考えていた。

 

「(今回で、おそらく彼らは実感するんだろうな……無人機と言われた彼らは。<シリン>を見て、それが人と人でない者の境界線を知り、人はどんな存在か、何が人を人たらしめるのか……これから生きていく時に、彼らにはいい疑問にもなるだろうな……)」

 

その時、リノはふと思った。

 

 

 

 

 

「(シリンは……俺と似て違う存在か……)」

 

 

 

 

 

前線より後方三〇キロ。レギオン支配域。

 

雪深い平原に、レギオンは脚部兼用の反動吸収用鍬状部品を打ち込んで構える。

関節を全てロックし、背中からレールを展開。伸長し、実に九〇メートルにも達する巨大なレールを先端で分と風を切って北にーー連合王国との前線に向ける。

待機していた斥候型が七.六二ミリ汎用機関銃を廃し、一四ミリ機銃に付け替えた対軽装甲仕様をつけてレールに登る。

スターティングブロックにも似たシャトルと脚部を接続し、見構える様に伏せる。パチリと稲妻が走り、レールを這うように走る。

レールを背負うこのレギオンは長距離砲兵型、対空砲兵型同様前線に出てくる兵種ではない。それら砲兵種に比べ特別支援機であるそれらに、人類はまだその姿を観測されていない。

ゼレーネ・ビルケンバウム以下、帝立軍事研究所では構想と設計段階まで進んでいた、その支援用レギオンの開発コードを

 

 

 

 

 

電磁射出機型という。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「チッ、空から飛んでくるぞ!撃ち落とすか着地点を砲撃しろ!」

『なんで空からレギオンが!?』

『偵察はどうしたんだ!』

『いや違う……これは打ち出してきたやつだ!未確認の、射出機を持つレギオンだ!』

 

知覚同調で混乱が生じるも、落ち着いてレギオンに対処する彼らは自走地雷と斥候型を薙ぎ倒していた。

 

「来る、方位二四 距離一万五千 ロトとジェガンで迎撃」

『『『了解』』』

 

各小隊が返答をするとMSは空と地面に向かって砲撃をする。

するとともについて来たアルカノストが砲撃を行う。

その先には破壊された電磁射出型の姿があり、知覚同調でヴィーカが伝える。

 

『こちらで射出機を叩く、そちらはレギオンの掃討を求む』

「了解」

 

リノ達は砲撃を続行していた。

 

 

 

 

 

戦闘も終盤になりかけた頃、リノ達は突破したという戦車型と近接猟兵型で構成された部隊の迎撃を行なっていた。

電磁射出型を王国軍が引き受けてくれたので、後からレギオンが飛んでくることもなく、雑魚狩をしていたところに、ちょうど良い暇つぶしができたようにリノは迎撃に向かい、新武装の試射を行おうと思っていた。

 

「照準完了……本体からの電力供給も問題無し……照準ロックオン」

 

二つの四角い線はレギオン部隊丸々を収めるとリノはレバーの引き金を引いた。

 

「射撃開始」

 

チュオン……

 

右肩の球体の砲塔の十字に開き、中が桃色の光で満ちている砲口が一瞬だけ十字に光った。

 

その直後、

 

 

 

 

 

ドォォォォォン!!

 

 

 

 

 

巨大な桃色の爆炎と共に、雪の大地が吹き飛ぶ。

 

地響きが辺り一体に轟き、衝撃波が来る。

 

レギオン部隊が一撃で消滅し、地面に茶色い土が見える。

その威力は本国の試験場で行ったものと変わらない威力を発揮した。

 

「問題無し……か……」

 

爆発跡を確認してリノはガンダムを動かすとそのまま基地へと帰投して行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

基地に戻るとそこでリノはアンジュとダイヤがトラップにかかり一時的に通信不能な事態が起こった事を知った。

 

「……妙だな」

「おや、卿もか」

 

基地でレーナ、ヴィーカ、リノの三人はその話を聞き疑問に思う。

 

「エマ少尉達に見つかるまで起動しなかったと言うのが……」

「まるで、我が軍を孤立させるような行動だな……」

「阻電撹乱型の寒冷化もその一環なのではありませんか?」

「……それはある。真綿で締められている連合王国は無理してでも反抗に出ざるを得ない。その為に投入されるのは精鋭だ。雑兵は十分に得た。おそらく次にレギオンが欲するのは……」

 

黙考したヴィーカは首を振る。

 

「ーーー少し備えておくか。軍団の予備拘置戦力を増強させておく。万が一の時、戦場奥の兵士たちを救出してやれるように」

 

 

 

 

 

解散した後、リノは一人基地のコックピットに乗り込み瞑想のようなものをしていた。

 

「(レギオンの動向には注意したほうがよさそうだな……)」

 

リノは不意に右眼を淡く光らせてレギオンを視る。

そこには見かけない形をしたレギオンが一列に並び、その背に斥候型が乗る光景であった。

 

「(これが電磁射出機型か……)」

 

リノは見えたレギオンを確認すると視界を元に戻し、コックピットの無機質な全天周囲モニターが映る。

 

「ふぅ……(レギオンは何を考えている)」

 

リノはそんな事を思いながらコックピットを降りて明日の進軍に備えた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『ーーすまない、レーヴィチ要塞基地は陥落した』

 

聞こえて来たのはヴィーカの声だ。

リノ達ストライカー戦闘大隊は陽動のために持てる限りの兵装を持って平原でド派手に砲撃を行なっていた。

そんな中、通信が入り基地に帰還するとそこでは平原の上で停車するレギンレイブの数々と基地を見るシン達であった。

 

『うわ、この状態か……』

『想像以上に酷いわね……』

 

基地に戻って来たMSは基地の天蓋にいるレギオンに思わず苦笑する。

 

ヴィーカの話では天蓋に着陸したレギオンは観測塔から侵入。

地上区画の八割が制圧され、今現在地下司令部に全員が退避しているとの事だ。

うちの整備班も避難は完了していたようで、大きな被害もなさそうであった。

取り敢えず砲兵部隊が電磁射出機型を破壊したので空からレギオンが飛んでくることはないという事で、取り敢えずはホッとしていた。

 

『陽動部隊は重戦車型と戦車型で編成された部隊で壊滅したらしい』

「……」

 

重戦車型と戦車型で構成された部隊など、人では簡単に蹴散らされてしまうのが容易に想像できた。

合州国ですら重戦車型にはビーム兵器の使用が厳守されているほどの堅牢さを持ち合わせているのだ。

おまけに連合王国からの救援は最低でも五日後、しかしレギオンの重機甲部隊が到着するのは明日。まさに前門の虎後門の狼であった。

 

「控えめに言って絶望的だな……」

『機甲部隊の数は八千だって?』

『やり甲斐あるなぁ』

 

基地を見ながらストライカー戦闘大隊の面々はそんな軽口を叩いていた。

手持ちの武装で恐らく半分はいける。ビーム兵器の充電も考えれば意外と何とかなるかもしれない。

 

『うわ、よくそんな事言えるよ。僕たち本隊と分断されているのに……』

 

セオがそんな事を言いながら通信をし、少し引きながらMSを見る。

基地にいるのはほとんどが斥候型で、他には自走地雷、高機動型しか確認されていないという。

するとリノは若干ため息混じりにヴィーカに聞く。

 

「……で、殿下は我々に何を求めるのですか?」

『貴様分かっておろうに……』

 

ヴィーカは若干呆れたような声で言うと知覚同調越しに全員に伝える。

 

 

 

 

 

『攻城戦だ』

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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