86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

36 / 186
#36 攻城戦

ストライカー戦闘大隊は今作戦にあたり殆どの兵力を外に出していた。

ベースジャバーも持ち出していた事は幸運と言えたであろう。

 

「機甲部隊はこっちで任せてもらっていいか?」

「ああ、その方が良い」

 

重装甲トラックの中でリノとシンはお互いに確認をするとレーナも賛同していた。

 

『その方が良いと思います。単純に火力も高いですし、何より相手は重機甲部隊ですから』

「今ある弾薬で八千のレギオン……おまけに補給の目処なしか……」

『なので、積極的に攻めるのは……』

「ああ、分かっているよ」

 

そう言い、レーナも理解した様子で返答をする。

一応今いる指揮官の中で一番年上なリノはそれだけ経験も多いのでレーナもリノの意見には耳を傾けていた。

 

「取り敢えずこっちは誘引して時間を稼ぐ。そっちは何とかして要塞内に登ってくれ。余力があれば戻ってくる」

 

「了解した」

 

そう言いリノは指揮車を降りるとそのままガンダムに乗り込んで移動を開始する。

白に塗装された機動兵器の群れは吹雪く雪の中を進み始めていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

移動を開始したリノ達は丘陵の影に隠れて様子を伺う。

 

「ホーンドアウル、状況を報告せよ」

『了解、センサー範囲内にレギオンと思わしき影は確認できず。レーザー通信を行います』

「了解した。各機に告ぐ、EWACとの通信を密にし、レギオンの重機甲部隊の足止めを行う。混成部隊は中央に展開。ジェガンA2型、第一リゼル、キャノンガン小隊は右翼、ジェガンD型、第二リゼル、ジムⅢは左翼に展開し、陣地を固守せよ。弾数は有限だ。慎重を期して実弾の砲撃を制限。ビーム兵器による砲撃を優先せよ」

『『『『『了解』』』』』

 

各小隊長がそう返事をし、それぞれ丘陵の影に隠れてEWACから入る情報を共有し、レギオンの攻撃に備えていた。

無人機であるM61戦車は少し離れた位置に存在する森の中に隠れていつでも走れるように待機していた。

するとリノの知覚同調に通信が入る。

 

『手伝いに来ましたっせ。隊長殿から援護に回れって言われたもんでね』

「ベルノルトさんですか」

 

視界に映る砲兵仕様のレギンレイブを確認したリノは丘陵の影からベルノルトに指示を出していた。

 

「今森の中に戦車が隠れている。その戦車が撃破されない様に援護を頼む」

『了解、行くぞお前ら』

 

そうして全機が雪の降る中、敵が来るのを待ち構えていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数時間後、日が落ちて辺りが暗闇に包まれた頃。センサーに反応があった。

 

『ホーンドアウルより全機、レギオン部隊を確認。重戦車型八〇、戦車型一二〇を確認』

「総員レギオンがキルゾーンに到達次第射撃開始。ノルトリヒト戦隊、砲兵隊は撃ち漏らしの狙撃を」

『了解です』

『キルゾーン到達まであと一〇秒』

「総員砲撃用意、距離九千、射撃後敵を釘付ける」

 

リノは見えてくるレギオンの青いセンサーの光を確認した。

 

『キルゾーン到達まであと五秒……四……三……二……一……』

「撃て」

 

命令と共に轟く砲声と何本もの光線。

稜線からの射撃で最前列にいたレギオンが一斉に擱座し、誘爆を起こす。

攻撃を察知し。レギオンが反撃に移るも稜線からの射撃な上に、斥候型がいないため。攻撃をしてもなかなか当たらない事態が起こっていた。

 

「次弾、炸裂徹甲弾。中央を狙え」

 

ロトはリノの指示通りに砲撃を行う。

 

ドンドォォン!!ドンドォォン!!

 

四発の八インチ砲弾はレギオンの隊列のど真ん中で炸裂し、砕けた破片は無慈悲に戦車型の装甲をズタズタに引き裂く。

 

『これはいい、狙いをつけなくても当たるぞ!』

『ボーッとすんな!次も来るぞ!』

 

稜線射撃では曲線を描く迫撃砲が望ましいが、生憎と今回は持って来ていないので、ロトによる砲撃でレギオン部隊を相手にしていた。

キャノンガンも四つん這いになって射撃をし、ジェガンは持っていたビームライフルを撃つ。

 

 

ビームが過貫通を起こし、一列にレギオンを貫く。

 

 

M61戦車の一五五ミリ砲弾が重戦車型を貫く。

 

 

リノは射撃を行いながら球体砲塔を動かす。

 

 

ピッピッピッピッ……「照準よし」カチッ

 

チュォン……ドンドォォォォォン!!

チュオン……ドンドォォォォォン!!

 

四つの爆発がレギオン部隊を一掃する。

レギオンの重機甲部隊はストライカー戦闘大隊のビーム攻撃で損害が大きすぎたのか撤退を開始していた。それを確認したリノは部隊メンバーに確認を取る。

 

「総員、残弾数と被害の確認を」

『こちらジェガン01小隊、実弾の使用なし。ビームマガジン残弾十。損傷無し』

『ジェガン02小隊、ビームマガジン残弾八、実弾十発使用戦闘に支障無し』

『リゼル第一・第二小隊、ビームマガジン残弾二〇実弾二〇発使用。他は問題無し』

 

そうして被害を確認したリノはベルノルトに伝える。

 

「ベルノルトさん、少しここをお願いします。こちらは要塞に向かいます」

『そうかい。じゃ、あとは抑えておきますよ。こっちはあまり活躍出来なかったもんでね』

「宜しく頼みます。……総員、ベースジャバーに搭乗して帰還する」

『『『『『『了解』』』』』』

 

キィィィィ……!!

 

止めてあったベースジャバーに乗り込んだ部隊はシン達の居たところにに戻るためにベースジャバーに乗り込み離陸をする。

大気圏用のホバークラフト型の白色のベースジャバーは歩くよりも高速で地面を滑走する。

その上でウェイブライダー形態のハミングバードが先に要塞へと戻る。

 

「戻ったら一回作戦を考える。それまでベースジャバーに乗ったまま待機せよ」

 

リノはそう言い残すとエリノラに指示を出す。

 

「エリノラ、今のうちにビーム兵器の充電をする様に指示を出しておいてくれ」

『了解』

「それとベースジャバーの燃料の確認も」

『……何考えているの?』

「何、過去の戦いを参考にしただけよ」

 

リノは何処か楽しそうな声を上げながら一瞬でシン達のいる場所に戻る。

 

「こっちの仕事は終わった」

『思っていたよりも早いな……』

『あの機甲部隊を片付けて来たの?』

「いや、残骸の山でバリケードを作って迂回せざるを得ない状況を作ってきた」

 

そう言うと呆れた声が聞こえた。

 

『頭おかしいわ』

『良くやるよ本当に……』

 

セオ達が半ば呆れる様にそう言い、リノのガンダムを見る。

ガンダムは涼しい顔で要塞を眺め、状況を聞く。

 

「状況は……芳しくなさそうだな……」

 

リノは知覚同調でヴィーカに通信を入れる。

 

「殿下、聞こえていますか?」

『ああ、聞こえている。何だ?』

 

殿下呼びにもはや突っ込む事をやめたヴィーカがリノに言う。

 

「殿下、要塞攻略においてですが殿下にある提案をしたく……」

『……言ってみろ』

 

そこから話された内容は一瞬だけヴィーカを驚愕させた。

 

『……貴様も随分と狸だな』

 

話を聞いたヴィーカがそう言い、苦笑する。リノもため息混じりにヴィーカに言う。

 

「それ以外の方法があると思われますか?」

『まぁ……そうだな……』

 

二人は理解し、リノはさらに続ける。

 

「攻城戦に関しては一番我々が熟知しております故に、一番槍はお任せを」

『そうだな……一年戦争で合州国は要塞攻略を二度も経験しておったな』

 

 

足止めのソロモン

 

 

王手のア・バオア・クー

 

 

諸外国ではその様に言われている現代の要塞攻防戦。

地獄とも称されたその戦いは合州国にMSの汎用性と現代における要塞攻略の難しさを知らしめた重要な戦いである。

一足先に死が待ち受けていると言われ、これを教訓にMSの本格的配備が進んだと言っても過言ではなかった。

 

「ええ、なので我々は我々なりのやり方で要塞攻略を行いたいと思います」

『ああ、了解した。それに合わせて貴殿の計画も実行に移そう』

「感謝します」

 

通信を切るとリノはストライカー戦闘大隊の全員に通信を入れる。

 

「隊長機より各機、明朝より作戦を開始する。補給コンテナより弾薬の補給、およびビーム兵器の充電を最優先。ベースジャバーの燃料も確認しておけ」

 

そう言い、MSがそれぞれ補給を行う中。リノは歩兵部隊とロトに指示を出す。

 

「アノラ大尉、聞こえていますか?」

『ええ』

「アノラ大尉とロトは要塞の外で砲撃を行ってください」

『まぁ、そうなるわね』

 

M61戦車は空挺を考慮していないので、出来るとすれば支援砲撃くらいだ。

アノラもそれを理解しての頷きであった。

 

「歩兵小隊はロトと合同で要塞外から砲撃をお願いします。その後は動き回って敵の撹乱と揺動をお願いします」

『了解。こっちも暇してたからちょうど良いわ。おまけに中にはまだ仲間もいるし……後を頼むわよ』

 

確かに今回の作戦でM61の運用要因としてつれてきた十二人は外におり、半分の十二人はまだ要塞内で戦っているのだ。本音としては要塞に入りたいだろう。

そんな事を思いつつもリノは指揮官として指示を出す。

 

「ええ、俺はこの部隊の指揮官故に。部下をみすみす死なせませんよ」

 

リノはいつに無く無機質な声でそう返事をした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「総攻撃ですか?」

「ああ、そうだ」

 

レーナとヴィーカは地下司令室でそんな事を話す。

 

「これ以上戦力を消耗すればその総攻撃もできなくなる。だから今のうちにやる必要がある」

「デスは、闇雲に突撃をさせてもそれは自殺行為では……?」

「だからリノとも話した。一時間後に始める」

「いつの間に……」

 

レーナは困惑した様子で呟く。対するヴィーカはリノと話した事を思い出して一瞬だけ目を細めた。

 

「彼奴も存外狐だな……(己の真意を微塵も感じさせないとは……)」

 

ヴィーカはそんな事を思うと指示を出す。

 

「ーーーレルヒェ、用意は?」

『出来ております』

「もうすぐ行われるはずだ。それに合わせろ」

『了解致しました。

 

 

 

 

 

我が王(屍の王)

 

 

 

 

 

この二日間で撃破された<アルカノスト>の残骸が転がる堀の上、雪が降る野とその城壁を臨み、連邦と連合王国のフェルドレス。合州国の戦車とMSが並ぶ。

その中のMS……ロトの内部ではアノラは通信席に座る。

 

「隊長より全車……」

 

外ではM61がエンジンから虎の唸り声の様な音を出し、砲塔が左に九〇度回転する。

 

砲身に仰角がつき、狙いを定める。

 

己の持つ一五五ミリ連装砲はかの凶悪なレギオンの重戦車、対戦車砲兵型と同じ口径。それが二門あるので火力は単純に二倍ある。

いくら骨董品とはいえ、その火力には絶大なものがある。

 

八つの砲塔、一六門の一五五ミリ砲身が一斉に要塞に照準を合わせる。

アノラは要塞南西方向の上空より飛来する猛獣達を確認し、手持ちのレバーを動かして通信を入れる。

 

 

 

「ーーーーこれより砲撃を行う。共和国の餓鬼どもに引導を渡してやれ」

『『『了解』』』

 

 

 

「砲撃を開始せよ……撃てぇ!!」

 

 

 

その瞬間、一六門の一五五ミリ砲弾は一斉に要塞に向けて飛翔をしていった。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

  • やってほしい
  • やらなくていい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。