86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#4 戦死者ゼロの戦闘

サンマグノリア共和国の東部旧市街地の一角。そこでは複数の戦闘機械が影に潜んでいた。すると全員に通信が入る。

 

『こちら〈レオーネ・ネロ〉、レギオンの誘導に成功。方位二三〇 距離四〇〇』

「了解、総員攻撃準備。レオーネが敵を誘き出した。出てきた所を叩け」

『『『了解!』』』

「……来るぞ」

 

ドガァァァン!!

ダダダダダダダッ!!

 

建物が崩れながら大きな土煙が上がり、その中から発砲炎の閃光が上がり、中から一機の青と白のロボットが飛び出してきた。

 

ドシンッ!ドシンッ!ドシンッ!

 

ロボットが走るたびに揺れる地面はもう慣れていた。

待ち伏せをした一人、〈ブラックドック〉の名を持つダイヤが思わずつぶやく。

 

『ひゃー、〈モビルスーツ〉ってスゲェな』

『本当、本当。あんなデカブツが戦車型の砲撃を弾くのよ。頭おかしいわよ』

『ロボットってかっけぇなぁ……』

『それに比べてウチは……』

『『『『はぁ……』』』』

 

思わずため息を吐いた声が響くと戦隊長からの声が通る。

 

『戦隊各位、各々の判断で撃破せよ』

『おう!』『了解!』『いつもの事だ』『後ろはまかせろ!』

 

彼らは戦場の真っ只中に突入して行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

なぜ、〈ジャガーノート〉と〈ジェガン〉が共闘しているのか。それは二週間前ほどまで遡る。

 

「共和国は客人に対してもこんな態度かよ……」

「呆れるものね」

 

リノとエリノラがそう呟くのはご丁寧にドローンに乗せられて運ばれてきたあるデバイスだった。

 

「知覚同調と言うのか……」

「首に付けるだけで良いの?」

 

添えられた紙をもとに二人は渡されたデバイスを付けると脳内に直接響くように声が聞こえた。エリノラはレクチャーを済ませるとそのまま女子達に腕を引っ張られてどこかに行ってしまった。

年上の女性という事で遭遇した昨日の内からエリノラは何かと少女達から話を聞かれていた。

 

『聞こえますか?』

「ええ、ハッキリと聞こえますよ。……ミリーゼ少佐殿」

「こちらも同じ様に」

 

リノはそう返答をするとレーナの声がはっきりと聞こえていた。

二人はシンからの話で、彼らの上官が話をしたいと言う事でこと知覚同調と呼ばれる機械を受け取ったのだ。

 

『始めましてリノ少佐』

「始めてましてミリーゼ少佐、お話は色々と伺っております」

 

シン達曰く物好きで、お喋りな指揮官らしい。普通の白系種とは違い、脳内お花畑で真面目な人らしい。

 

『アンダーテイカーから話は聞いております。越境して来たと』

「ええ、そうです」

 

これからどうするのかと思っているとレーナから意外な返答が返って来た。

 

『弾薬や食料に問題はありませんか?』

「……そうですね……圧倒的に弾薬が足りませんね」

『弾薬ですね、すぐに手配します』

「……あのー、少佐殿?」

『レーナで構いません。年はリノ少佐が年上ですから』

「あ、その事ではなく……」

 

リノはレーナにどうしてそこまで手厚い対応をするのかと聞いてしまった。するとレーナは呆れながら伝えた。

 

『そうですよね……おじ……上官が貴方方に対して手厚くする様に手配をしたそうなのです』

「そう…ですか…」

 

リノは少しだけ警戒心を出しながらも、通信機越しに聞こえるレーナの声は不思議に思っている様だった。

 

 

他国に自国の情報を知られたく無いから抹殺の為に弾薬を供給したのか。

 

 

それともその上官はこの国の現状を外に知らせたいがために滞在させるのか。

 

 

おそらく前者の方だろうが。どちらにせよ、二人も情報収集の為に適当な理由をつけて残る気だったので好都合でもあった。

取り敢えずリノはレーナに銃に必要な弾薬を伝えた。もし弾薬に不備があればビームライフルを使えば良い。あれは充電さえすれば何回でも使用できるからだ。最悪充電は〈ジェガン〉で発電したものを使えば良い。

そんな考えをしていた。

 

「……取り敢えず弾薬の設計図を送ります。どこに送れば良いですか?」

『あ、ではーーーに遅れますか?』

「分かりました。弾薬がくるのはいつくらいになりますか?」

『そうですね……最速で三日程だと思います』

「分かりました。色々とありがとうございます」

『いえ……私も、他の国が生き残っていた事に驚いていますから』

 

そう言い、レーナとリノは少し話をすると連絡を切った。

連絡の切れたリノはそのまま間借りしているスピアヘッド戦隊の宿舎に戻った。

至る所にヒビが入り、硬いベットは本国のそれと大違い大変寝にくいものだが一応客人扱いの様で一番良い部屋だそうだ。

 

「これがこの国の現状とはな……」

 

リノはため息を吐くと今頃外にいるエリノラの方を見ていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同時刻、知覚同調の使い方を学んだエリノラは川辺でスピアヘッド戦隊の少女達と女子会の様なものをしていた。

 

「元気ねぇ……」

 

エリノラは川で遊んでいる女子達を見てそう呟いていた。するとエリノラの足元でカエルの喉を潰した様な声が聞こえる。

 

「エ、エリノラ様…そろそろ時間じゃないでしょうか……」

「まだよ、あと十分」

「ギィィヤァァァァアアア!!」

 

足元で四つん這いになってエリノラの椅子と化している青玉種のダイヤは悲鳴を上げていた。

女子が水遊びしている所に覗き見していた所をエリノラが捕まえて、罰として一時間エリノラの椅子をさせられていた。

 

「わぁ、ダイヤが悲鳴上げた!」

「エリノラさん!こっちに来たらどうですか?」

「大丈夫よ、あまり太陽は得意じゃないから。あとこのエロ小僧のお仕置きがあと十分ある」

「あ、分かりました〜」

「おい!そこは助けろよ!!」

「だって面白くないし」

「見ていて清々するわ!」

「お、俺に味方はいないのか……」

 

ダイヤがそう言って絶望していると川辺で脚に水をつけていた少女の一人、レッカ・リンが声をかけた。

 

「エリノラさんエリノラさん」

「何かしら?」

「エリノラさんがやって来たアストリア合州国ってどんな所なんです?」

「ちょっとレッカ!」

「いやぁ、私たちここ以外を知らないし。ここまで来たなら色々見てきていそうだからさ。話してほしいなぁって」

 

たった一日でこんな事を聞いてくるのもなんだか不思議な気分だが、彼女らにしてみれば自分達自体が珍しい。

外の国から来たという事はレギオン侵攻以来無いと言うことだ。

珍しい話を聞きたがるのも理解できる。

 

「良いわよ、色々と教えてあげる。外の世界や、私たちの国の話……」

「「「本当!?」」」

 

全員が川辺から出て、エリノラの話を聞くために集まっていた。

全員が集まるとエリノラは外の世界で見てきたもの。

自分たちの国のことを話していた。

それを聞く少女達は面白そうに、興味深く聞いていた。

それはまさに子供の時によく聞いていた朗読会のようで、少女達はエリノラの話に夢中になっていた。

そしてエリノラが話を終えると少女達からは拍手の音が聞こえ、話の感想を言っていると全員に戦隊長の声が響いた。

 

『戦隊各員、()()来るぞ』

 

戦隊長の声に全員が行動に移していた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

サンマグノリア共和国旧市街地の一角、そこでは赤と青の二機のロボットが建物の影に隠れて様子を伺っていた。

 

「……状況は?」

『問題なし、敵は斥候型四〇、近接猟兵型三〇、戦車型二〇』

 

隠れて偵察を行なっている〈ホーンドアウル〉の情報をエリノラはリノに報告をする。

 

「鴨ネギだな……」

『リノ……まさかアレを?』

 

エリノラが疑問の声を上げて聞く。対するリノは心底楽しそうな声で返事をする。

 

「小さい的しかないならやるしか無いだろう」

『……はぁ、機体を壊さないでよ。替えの部品はほぼないんだから』

「分かってる……来たぞ」

 

建物から道路の様子を伺い、近づいてくるモーター音を確認した。

 

「先に出る。〈グリズリー〉は後ろに回り込め」

『了解、退路を塞ぐわ』

 

エリノラの〈キャノンガン〉はそう言い残すとややモッサリとした動きで建物を後にする。

彼女自身、自分と同じ高機動戦術の方が得意だったりするのだが、スタークジェガンの配備が間に合わなかったという理由で今回は余剰機体の〈キャノンガンDX〉に搭乗している。

自分たちの後方にはシン達スピアヘッド戦隊が待ち構えている。

レーナからの話で弾薬を渡す代わりにスピアヘッド戦隊に協力して欲しいとの事らしい。

いつまで、ここにいるかは分からないが。ただでさえ馬鹿高い弾薬を無償で提供してくれるというのだからここは大人しく従うことにしていた。

 

「(三……二……一……)」

 

バッ!ダダダダダダダダダダダダッ!!

 

ビルから飛び出したリノは手に持っている100mmマシンガンが火を噴いて巨大な音と横に空薬莢を落としながら射撃をする。

優先すべきはこちらを倒す術を持つ戦車型、ついで近接猟兵型だ。

斥候型は頭部バルカン・ポッドから発射される60mmバルカン砲で撃破している。

 

ブオオオオオオオオッ!!!

キンキン!ドォン!ドォン!

ダダダダダダダダダッ!!

ドゴゴゴォォォォンンン!!

 

マシンガンは戦車型を簡単に砕き、誘爆を発生させる。そして、マシンガンを仕舞うと今度は右腰から白い棒状のビーム・サーベルを取り出し、青白い光線を纏わせ、道路を走り出す。

さっきの誘爆で残っていた戦車型が走ってくるジェガンに向けて砲弾を放つ。

 

ドォン!シュンッ!

 

しかし、砲弾はジェガンの左肩の側をすり抜け、どこかに吹っ飛んでいった。

避けた事で、再装填に入ったところをジェガンは真上からビーム・サーベルを突き刺した。貫通された戦車型はそのまま擱座し、機能を停止した。

 

『……これうちら必要ある?』

『すげぇな……』

『モビルスーツってかっけぇ……』

 

スピアヘッド戦隊のメンバーは一連の動きを見て唖然としていた。

レーダーが動かないこの戦場で、単機でレギオン部隊を無傷で制圧していた。

その事に驚愕していると、〈ジェガン〉は不可解な行動をし始めた。

ビーム・サーベルを突き刺して擱座した戦車型の砲身を掴んで持ち上げた。

そして、それを持ってジェガンに向けて7.62mmを撃ち続けている斥候型に向けて叩きつけていた。

 

バキバキバキ!!ドォン!!

 

まるでモグラ叩きの要領で戦車型を潰している事にスピアヘッド戦隊は驚きを隠せなかった。

 

『ワ〇ワ〇パニック……』

『なんちゅう戦い方だ……』

『横暴すぎるよ……』

 

そして、全員が同じことを思った。

 

『『『『(絶対シンと同じタイプの人だ……)』』』』

 

そう思いながらスピアヘッド戦隊はリノ達の戦いを見ていた。

 

 

 

 

 

アホみたいな挙動で戦うリノは叩きすぎて砲身がパックリ割れてしまった戦車型を見るとそれを捨てるように放り投げると視線の先でカメラに映る戦闘機械を見ていた。

 

「(守るためではなく、殺すために戦わさる……そんなものは虐殺だ。いつの時代も虐殺が許されるわけではない。だが、国家単位で虐殺を認めてしまっては誰も止める術がない……)」

 

リノは〈ジャガーノート〉を見ながら思っていた。

この国の現状を知り、死ぬとわかっていても最後まで戦って誇り高く生き残ろうとする彼らはリノはとても美しく見えていた。

 

 

 

 

 

この国に来て一ヶ月半近くが経ち、彼が彼らと共に暮らしてきて感じた事であった。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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