86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#41 太陽が落ちる日

その日、リノは病院まで車を飛ばしていた。その理由は簡単でシンが病院に運ばれたからだ。作戦行動中のもので極めて軽症らしいが、念のためという事で搬送されたのだと言う。

助手席にはクラウが乗り込み、悪態をついていた。

 

「全く、相思相愛なんだからもうちょっとなんとかできんのかね?」

 

「それはご尤も・・・・見えた!」

 

病院が見えてきたリノは軽装甲車を病院の前で急停車させた。

 

キキーッ!

 

駐車場にダイナミック駐車をしたリノ達は車を降りるとそのまま病院に向かって走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

病院に着くと出口からレーナが目を少し赤くして出て来たので、後の事をクラウに任せるとリノは病院内に入って廊下でヴィーカと話しているシンに一言申した。

 

「おい、女の子を泣かせる糞野郎」

 

「いきなり爆弾持ち込みよったな。リノ」

 

ヴィーカが苦笑しながらそう言い、リノはシンに少しだけ叱っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、シンと喧嘩ねぇ・・・・」

 

車内でレーナが俯きながら言う。その横では同じ様に駆けつけたグレーテが乗り込んでいた。クラウはレーナからこうなった経緯を聞いて少し初々しく感じていた。

 

「(夫婦喧嘩は犬も食わないとはまさにこの事かしらね・・・・)」

 

これでいて二人とも気づいていないのだからもどかしいったらありゃしない。そう思っているとレーナが呟く。

 

「し、司令官が人前で泣くなんて・・・・」

 

「なぁに言ってんのよ。ウチらも含めてだけど、三十路にもならん人が殆どのこの部隊が異常なのよ」

 

クラウの言う通り、第86独立機動大隊やストライカー戦闘大隊に三十路を超えてくる人はほんと基地の食堂のおばちゃんか、ストライカー戦闘大隊の整備班や他数人くらいだろうか。

そんな感じでとにかく若手しか居ないこの部隊は経験不足というのも多いだろう。そんな部隊の司令官は明らかに経験不足と言えるだろう。

 

「そうよ、まだまだ貴方も、私たちも経験は浅いから・・・・」

 

「でも、これだけは言っておく。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

やや含みある声でクラウはどこか後悔する様に言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日も、阻電錯乱型は連合王国の空を飛んでいた。日の上らない夜は充電のために競合区域から支配域に戻り、朝になって戦場に戻る。と言うのを繰り返していた。

その日もいつもと同じく重層展開し、夜明けの朝日が銀の羽に反射し全天を血の真紅に染め上げていた。

 

しかし、今日は違った。朝日の日の光がいつも以上に眩く光り。その瞬間、上空を飛翔する全てのレギオン・・・・阻電錯乱型、警戒管制機型諸共消滅していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・ソーラ・システムの着弾を確認。誤差修正問題なし』

『第二射、射撃用意。目標座標変更、位置は・・・・』

『艦隊司令艦より通信。第二射射撃準備完了まであと三分』

『前線観測班より報告!当該地域の全てのレギオンの消滅を確認。作戦を開始を求めて来ています』

『作戦開始。〈スロゥネ〉射出せよ』

 

数多の通信が聞こえ、ぽっかりと空いた青空に火を吹く車輪を持った何かが射出された。

その麓では()()()()()()が背部のカタパルトにシャトルをつけていた。制御機構が破壊されたとはいえ、背中のカタパルトは十分使える。

ここ最近の作戦で戦車型の残骸と共にこの電磁射出機型を回収していたのだ。カタパルトからは多数のコードがはみ出し、待機状態のMSに繋げられていた。その中の数機ではレーザー通信で合州国軍の兵士が通信を行なっていた。

 

『第二射照準固定。発射用意完了!』

『第二射、攻撃を開始せよ』

『了解、第二射。射撃を開始する』

 

通信先は遥か彼方上空。高度一〇〇キロ、俗に言う宇宙空間と呼ばれる場所にあった。

そこには数多のミラーパネルが凹鏡面を作り出し、太陽を映し出していた。

そんなミラーの後方。地球を眺める様に何隻もの藤色の艦艇が繋げられていた。そのうちの一隻。大艦巨砲主義を体現した様な見た目のマゼラン級戦艦。その内部でレビルはミラーパネルを見ていた。

 

「やれやれ、ソロモンの時に使った兵器を見ることになるとは・・・・それも、こんな形でな・・・・」

 

そう呟くレビルの横で多数の士官が走り回って指示を出していた。ジャブローから射出されたレビル率いる特別艦隊は輸送艦にソーラ・システムを発動するためのミラーを積んで護衛のサラミス改と共に宇宙に上がっていた。

 

「第二射移動完了。射撃開始!」

 

「了解、照準合わせました」

 

「観測班より報告。G15、およびG16区域には射撃を禁止せよとのこと」

 

「了解した。第三射はどうだ?」

 

「はっ!必要なしとの事」

 

「そうか・・・・これで前線での資料は集まったか・・・・これから忙しくなりそうですな」

 

そんな士官の独り言にレビルも内心同じ事を思っていた。

 

「(戦争も変わらざるを得ないか・・・・)」

 

それはかつて、ルウム沖海戦でMS相手に大敗した時に呟いた一言であった。あれから世界は大きく変わった。戦後、レビル派と呼ばれるMS拡張を訴える派閥が合州国の軍を抑え、今ではレギオン戦争の戦いの主力はMSとなり、戦争を有意に進めていた。

 

「(それに、最近はそのMSですら無人化が行われていると言うではないか・・・・やれやれ、時代に置いていかれてばかりだな)」

 

おまけに、戦線には数は少ないが鹵獲されたザクが出ていると言う。歩く的だというがいずれは変わってしまうのだろう。撃破した機体は博物館から持ち出したと言うこともありランドセルや核融合炉すらなく、電源はバッテリーとエネルギーパックの状態だと言う。合州国ではこの復活させたソーラ・システムをそのまま合州国の競合区域に撃ち込む算段だろう。一昨年の大攻勢でところどころ突破を許したから、面で潰すと言う考え方に至ったのだろう。

なにせ大攻勢の時、戦線が突破された時にN2爆弾を使おうとしていたのだから、相当焦ったことが伺える。

今回は威力を落としたことから上空に展開している阻電錯乱型と下にいる筈のレギオンを燃やしたり溶かすだけで終わったが、こっちの方が連射も金属回収も出来ることから毎回この形になるだろう。

 

「(数ヶ月は地上に戻れないか・・・・)」

 

レビルは座乗艦である宇宙戦艦に乗り込みながら地上で活躍している若き英雄達を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわぁ・・・・』

 

『これは酷い・・・・』

 

それは出撃したセオ達が呟く一言であった。挺身した彼らは山脈の奥に光柱が落ちているのが見えて、それが合州国の兵器だと聞いていたが、その着弾跡を見て苦笑してしまっていた。

 

『うわぁ・・・・戦車型がドロドロだよ・・・・』

 

そこには待機していたであろう真っ赤に熱せられてドロドロに溶けたレギオンの残骸が山になっていた。森の木は全て消失し、雪が溶けて焦土と化していた。

 

「これが・・・・ソロモンを堕とした。かのソーラ・システムか・・・・」

 

指揮室で映像を見たヴィーカが呟く。太陽を使った戦略兵器。これでも出力は最高ではないのだから笑うしかない。

 

「単純な構造ゆえに増産も可能か・・・・恐ろしい兵器だな」

 

この攻撃を後に彼はこう綴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそれは、まるで太陽が落とされた様であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パンジャンドラム・・・・」

 

「お?卿、この兵器の元を知っているのか?」

 

「えぇ、まぁ・・・・珍兵器の代名詞みたいなものでしょう」

 

重装甲トラックの中、二人は呟く。現在リノ達の部隊はレギオン支配域奥の竜牙大山拠点に進出する為、作戦行動中であった。今回の作戦で投入されたスロゥネと呼ばれた兵器を見て思わず呟いてしまった。

 

「卿もよく知っておるな。あれは叔母上・・・・先代の紫晶が作り出したものだ」

 

つまり22世紀版パンジャンか・・・・

紫晶に関しては前に誰かが『頭のいいアホ』と言っていたが、あながち間違いじゃないかもしれない・・・・。少なくともこんな兵器を作ろうと思う時点でかなり頭がイカれているのだろう。それも、あのアバディーンにいる科学者と同じくらい・・・・

シン達の会話で横にいるヴィーカが結構真面目に動物爆弾を提案しようとしており、『あぁ、本当にイカれてる』と思ってしまっていた。

その視線の先、山脈奥では空からまた光が落ちて来ていた。

 

「(しかし、焦げ臭い。何もかも燃やしているせいか・・・・)」

 

リノは鼻につく焦げた匂いを少し嗅ぐとそう思っていた。実際、前進中の部隊からはドロドロに熱せられたレギオンの残骸が多数見つかっていると言う。

 

「(このまま上手くいけばいいが・・・・)」

 

そう思いながらリノはトラックを移動してコックピットの扉を開けて乗り込んだ。

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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