その日、レーナとグレーテ、ヴィレムなど数人の軍人がある場所に視察に訪れていた。
そこは最前線より後方に存在する高地に設置された隠匿式司令所だった。共和国軍服を着るレーナに若干の白い目を向ける合州国軍人。それを横目にレーナは双眼鏡越しに眼下を走る大きすぎる軍用車両を見ていた。
『北方第三軍団は既に敵と接触。砲火を交ぜ合せつつあり』
『北方第四軍団はどうした?まだ動かんのか!?』
『我、独混四四旅団は予定通り144高地攻略を目指す』
地上では複数のジェガンや大型のフェルドレスが前進を続けていた。
平原の一区域では超大型の軍用車両が走り抜けていた。
キング・トレー級陸上戦艦一隻とアイランド・フォーク級陸上戦艦三隻で構成された第三陸上艦隊は主砲である大型三連装砲を左舷回転させ、砲身仰角を上げていた。
『我、味方進撃を支援し。解放の切り口となる』
直後に主砲発射用のベルが鳴り、砲撃が行われる。
ドォォン!!ドォォン!!ドォォン!!ドォォン!!
放たれた巨大な砲弾は前進するMSやフェルドレス部隊の前方に複数着弾し、凄まじい土煙をあげる。
砲撃が続く中、フェルドレスやMSは前進を続ける。
『他の部隊に遅れをとるなぁ!!』
前線指揮官がそう言い、徐々に速度を上げていくジェガンやジムⅢ。その間も砲撃が行われ、高地に数多の黒煙が上がる。
『最終弾ちゃーく!!』
『突撃!突撃ぃ!!』
『弾幕を突き破れ!!』
前進するMS部隊にザクの弾幕が殺到する。
ダダダダダダダダダッ!
シールドを構えながら前進するMS。そして黒煙を飛び出したMSは
『う、うわぁぁぁあああ!!』
『来るな!』
高地に掘られた空堀に転落してしまった。その瞬間、空堀に埋まっていた自走地雷が一斉に爆発し、ジェガンを撃破していく。かろうじて生き残ったMSが空堀から顔を覗かせるとそこに爆弾山盛りに積んだ自爆特攻専用の斥候型が飛び込み、爆発する。
後方からは止む事なく砲撃が行われ、高地麓を進む重機甲部隊やレギオンザクはその衝撃波や直撃を受けて次々に粉々になる。
その光景を見ながらレーナ達は高地に向かって全速で走り抜ける複数の大型フェルドレスを見た。
その機体は五対十本の脚を持ち、上部に連装式全周砲塔を備え。背面に観音開き式の扉を持ち合わせ、上部にRWSの一三.二ミリ重機関銃と同口径の同軸機関銃を持ったフェルドレスがいた。
砲塔はレーナのよく知る部隊で見たM61を大きくしたような見た目を持ち、独特の連装砲も健在であった。
「あれが、我が国初の本格的な戦闘用フェルドレス。《ハンティング・ドック》です」
横で合州国軍の下士官が説明をした。レーナ達は観戦武官として前線の視察に訪れていた。そこで合衆国初のフェルドレスやMSを見る為に・・・
しかし、そのフェルドレスを見た時。レーナ達全員が同じ事を思った。
「「「(あぁ、なんか残念)」」」
レーナ達がそう思ったのはその足回りにあった。脚部ユニットの周りに履帯が装着され、文字通り戦車に脚を生やした見た目をしていたからだった。少々キメラっぽい見た目から、フェルドレスの設計段階から脚部ユニットに自信がない合州国の内情が伺えた。
しかし、それ以外は全てにおいて性能は良好であり、なんなら他の国の物よりも性能は高いのではないかと言われている。
主砲に戦車型を真正面から貫ける強力な二連装二〇〇ミリ滑空砲を持ち、二千馬力級ハイブリットガスタービンエンジンを前方に二個配置していた。おまけに合計四千馬力と言う大出力は最高速度百キロを達成し、それでいて量産性や稼働率にも優れていた。
エンジンを前方に配置する設計はM61を踏襲していた。部品も共有でき、生産ラインもほとんど変える事なく大量生産が行われていると言う。
平原を走り抜けるキング・トレー級陸上戦艦とアイランド・フォーク級陸上戦艦は一年戦争時に活躍したビッグ・トレー級やヘビィ・フォーク級の設計を元にMS運用能力や、配備されるであろうフェルドレスの運用を取り入れた最新鋭の
士官から説明を受けていると司令部に通信が入る。
『敵、埋没トーチカ。58−00−16、18−18ー03。撃てぇ!!』
砲声が轟く。艦隊から発射された砲弾はトーチカとして埋没した重戦車型を木端にし、弾薬集積場らしき場所を吹き飛ばしたようで、ここからも見えるほどの大きさのキノコ雲を形成した。それに続く形でジェガンから無誘導ミサイルが放たれる。着弾した先にはまた別の重機甲部隊が走り、着弾したミサイルによって部隊は壊滅する。
「今日の
定期便というのはこの前線に襲来してくるレギオンの重機甲部隊の事を指す。ジークフリート要塞戦線が完成した今。本来は戦線突破用であるはずの重機甲部隊をレギオンは投入して来ていると言う。
斥候型や近接猟兵型も居るがこう言う砲撃で吹き飛ばされてしまうそうだ。だから最低限の斥候型を残して戦車型と重戦車型で構成された部隊が襲来してくるとの事。それに最近は鹵獲したレギオンザクと呼ばれる特殊MSも徐々にではあるが増えて来ているそうだ。
両手に改造した戦車型の砲塔を無理やり付けた見た目をしているらしい。腕のパーツを外して戦車型の砲塔を改造した半自動砲を装備し、元々のザクから色々なパーツがオミットされていた事からリソースの共食いを起こしていると推測されていた。
脚部ユニットに至っては90mm弾で撃ち抜かれたと言う報告も上がっていて、120mm以上だと過貫通を起こす程だと言う。
そんなザクの話を聞き、レーナ達は
前線基地には大量のアイスやコーラの詰まった冷蔵庫や、乾燥まで全自動でしてくれる洗濯機。アーケードゲームやサウナまで完備され、視察に行った自分たちは『ここはアミューズメント施設か何か?』と呟いてしまうほどに充実していた。
自分たちが知る前線基地とはあまりにも違いすぎたのだ。
「我が合州国は軍人に対する保証は極めて高いと言えましょう」
元々帝国の脅威に対抗する為に集まった大国家。その思想から軍に対する保護は他国に比べて手厚かった。自分たちの生活を守る軍人は国民からは英雄とも言うべき職種だった。
『困った時の入隊事務所』なんて言う言葉があるのが合州国だ。軍を退役した後も店で割引が適用される退役カードなる物があるのだ。今は戦時中と言うこともあり、一定以上の学力、体力や技術力があれば入隊事務所にて名前を登録しておけば、そこから仕事を与えられる。それが軍隊なのか、軍需産業工場になるのかは己の持つ運と力で決まっていた。
前線視察を終え、バスに乗り込むとグレーテが思わず呟く。
「帝国はこんな国と冷戦をしていたのね・・・・」
およそ三〇年前、内戦である一年戦争勃発時でもジオン公国軍と合州国軍は帝国を警戒し、侵攻してきた場合は一時休戦をすると言うほど、この国の国民は根底部分から帝国=脅威と言う認識なのだ。
合州国は広大な土地と、多種多様の気候、船が通れるほど太い河川や水路を多く持ち、地下には大量の資源が埋まっている。安い労働力となる移民がコロニー建設などで大量にやって来たと言うこともあり、国全体がもう一つの世界として一個の経済圏を作り出していた。それこそ自給率が常に八割超え、多くの安価で高品質の製品が外国に大量に輸出される位には。
戦前に比べ幾分か落ちたとはいえ、国民総生産は諸外国に比べてダントツで高かった。
帝国と合州国、その二強が大陸で猛威を振るっていた。移民の中でも技術者や科学者などはさらに手厚い対応をした為に科学も発展し、多くの新技術も持ち合わせていた。その最たる例がMS…人型機動兵器だろう。
人と同じ動きをし、銃を片手に戦場を走る。いわば人の形をした機械の巨人。まるでフェルドレスが地面を這いずる虫のようだ。一年戦争に造られたこの技術は今もなお発展し、レギオンと対等以上の力で今時戦争を戦っていた。
「(それに、殉職者の扱い方も当たり前だけど、全く違う・・・・)」
レーナはそう思い、殉職した兵士の扱いを思い出していた。
身元の判明した遺体は誰であろうと一人一人に葬式を行い、集団墓地。または生前に望んだ埋葬方法で埋葬される。
殉死した兵士に最大の敬意を払い、弔砲を放つ。慰霊祭などでは砲兵隊が多数の対戦車砲で弔砲を撃ち、亡くなった者の名前は必ず石碑に記される。
慰霊祭の日は全ての学校や仕事が休みとなり、各地で開催される式典に参加する。この国にとって軍人と言うのはそれ程まで丁重に扱われるのだ。共和国とは正反対のその姿にレーナは関心と呆れの二つの感情で混ざり合っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
バスに乗り、空港に到着したレーナはそこでグレーテ達とは違う道に入った。
「では、私はここで」
「ええ、せっかくの休暇だから楽しみなさいね」
そう言うとレーナはグレーテ達とは違う行き先のゲートを通過する。前線視察を終え、レーナ達はこれから休暇をもらう手筈となっていた。これから行く場所はどんな所なのかと思いつつ、レーナは航空機に乗った。
「シン達は何をしているんでしょう・・・・」
機内で彼女はそんな風に呟いていた。
諸事情で暫く休みます。
オペレーション・ハイスクールをやるか否か
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やってほしい
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やらなくていい