86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#5 援護

星暦二一四八年 六月十三日

 

その日、リノは〈ジェガン〉のコックピットで通信をしていた。

 

「〈ホーンドアウル〉、状況を報告せよ」

『はい……』

 

疲れた様子のテオが返事をする。その様子からリノは何が起こったのかなんとなく予想できてしまった。

現在、テオとクラウの二機は自分達の探知圏内、基地から南方八〇キロの地点で偵察と監視を行っていた。クラウはテオの周りをビーム兵装で撃破しているらしい。

 

『あの映像データを送ってから本部からの連絡が鳴り止みませんよ……』

「やはりそうか……」

 

リノは想像通りの展開に頭を悩ませていた。

 

『まぁ、私も映像を見ましたが、確かにこれは虐殺と捉えるものでしょう。本国が黙っていないでしょうね・・・・あと、クラウが大要塞壁群をぶち抜こうとしていたのを抑えるのに必死だった』

「そのままぶち抜いても良かった気がするが……」

『……司令部は取り敢えずこの情報は帝国侵攻まで秘匿するつもりの様です』

「……本気で言っているのか?」

 

リノの問いにテオは軍の方針を話した。

 

『ええ……軍としては二正面作戦になって戦力の分断が起きるのをを避けたいと考えている様です』

「それは難しい話じゃないか?合州国は共和国からの移民も多い、開戦運動が起こったら抑え切れないぞ……」

 

アストリア合州国は人口のおよそ二割が共和国からの移民であり、ついでギアーデ帝国からの移民が一割と言った所である。

国民の三割が移民の我が国であるが、共和国出身者は当然軍部にもおり、情報の徹底秘匿は不可能だろう。

そうなれば国民が黙っているはずがない、

 

 

合州国は国民の意思を第一に考える。

 

 

いくら大統領がテレビ演説を行った所で国民がその気になれば戦争を始めざるを得ない。それがこの国の歴史でもあった。

今はギアーデ帝国に怒りの矛先が向いているが、そこに共和国のニュースが飛び込めばどうなるか……考えたくも無かった。

今更ながら映像を送った事を後悔していた。

 

『一昨日から司令部からの連絡の回数が減っているので、おそらく漏れたと考えるべきでしょうね……』

「そのまま共和国開戦まで行かなければ良いが……」

『無理でしょうね』

「そこは上の手腕に任せるしかないな……」

 

リノは通信機越しにため息をついて基地司令の事を思い出していた。今頃大忙しだろうな、なんて思っていた。

この情報漏洩は後に《白の督戦隊》と呼ばれる悪魔の部隊が編成される事となるのだが、それは未だ彼らは知らない事であった。

テオと定時連絡を済ませるとコックピットがノックされ、エリノラが顔を覗かせた。

 

「連絡は終わった?」

「ああ、終わった。どうかしたか?」

「うーん、なんとなく来たって感じ」

 

エリノラは珍しく手袋を外した状態でリノを見ていた。エリノラの左手の薬指には銀色に輝く指輪が太陽光で反射し、光を放っていた。

それを見たリノは小さく口角を上げるとエリノラが飛び付いてきた。

 

「ドーン!」

「コックピットだから危ないぞ」

「大丈夫大丈夫、〈ジェガン〉のコックピットは広いから」

「全く……エリノラはいつまで経っても変わらないな……」

 

エリノラが抱きつく形で飛び込んだ影響でコックピットは少し窮屈になっていた。リノはそんな事を気にしていない様子で手袋を外してエリノラと同じ様に指輪を見せていた。

 

「それを言ったらリノ兄も変わらないよねぇ……」

「そうかな?」

 

二人はお互いに密着した状態でエリノラが子供の様にリノと話していた。

 

「人に見られるぞ」

「大丈夫、誰も居なかったから」

 

キッチリしているな。そう感心しながらリノはエリノラを見ていた。

自分にとっては妹のような存在のエリノラはリノに抱きつくとリノに聞いた。

 

「リノ兄、無理していない?」

「無理しててもエラにはバレてしまうだろう?」

「だからよ、嘘つき」

 

焔紅種の血を強く引き継いでいる彼女は人の体に触るとその人物の未来と過去を見ることが出来るという異能を持っている。

リノも軍に入った時にに未来視の能力を覚醒させたが、極偶にしか発動しないので無いも同然と言えた。

エリノラに指摘され、リノはやれやれと言った様子だった。

 

「はぁ、それほど無理をしているつもりはないんだがな……」

「だいぶ疲れているわよ、リノ兄」

「そうか……」

「後のことをやっておくから。今日はしっかり休んで」

「じゃあ、そうさせてもらうよ」

 

そう言うとリノは操縦席のボタンを押し、コックピットを閉じるとそのまま寝息が聞こえてきた。

リノは一度寝てしまうとなかなか起きないので、半ば閉じ込められる形となったエリノラは〈ジェガン〉の広いコックピットの椅子の裏にある即席椅子を開くとそこに座った。

最近は忙しくて構ってもらえないリノにエリノラはため息を吐いていた。

 

「(リノ兄は多分、ここにいる子供達を亡命させる気なんでしょうね……)」

 

そう思いながらエリノラはリノの寝息を聞いていた。

真っ暗なコックピットはリノの黒いスーツと合わさり、常闇のようであった。

そんな中エリノラはシン達を思い浮かべながら思っていた。

 

「(でも多分あの子達は……)」

 

エリノラが答えを思った時、エリノラは頭を張った。

 

「(私が考えることじゃ無いわね。全部子供達が選ぶのだから……)」

 

エリノラはそんな事を考えていると不意に椅子に座りながら寝てしまっていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

星歴二一四八年 六月十五日

 

『ハンドラー・ワンより戦隊各員。レーダーに敵影捕捉。敵主力は……』

『把握しています。ハンドラー・ワン。既にポイント四七八にて迎撃準備が完了しています』

 

シンの指示に従っていたが、本当に少佐よりも早く配置につけるとは……どう言う事なのか知りたくなってしまった。

 

そうこうしているうちに各々配置につき。準備ができた時、少佐がある提案をした。

 

『〈アンダーテイカー〉。〈ガンスリンガー〉を今より二時方向、距離五〇〇の位置に移してください。そこからだと隠れますが高台があります』

『了解、確認します。〈ガンスリンガー〉、その位置からは見えるか?』

『ちょっと待って……確かにある。移動するよ』

『稜線射撃になることに加え、主攻である第一小隊とはほぼ逆方向の位置取りになります。そのため、攪乱からの各個撃破に際し戦闘序盤の本隊位置の欺瞞にも繋がる筈です』

『成る程な、要するに囮ってわけか』

 

〈ヴェアヴォルフ〉がそう嗤う。

 

『戦車型は仰角が取れません。高台にいる〈ガンスリンガー〉を直接砲撃はできませんし、砲撃位置変更時にも地形が障害物になりますから』

「なるほど、地形には詳しいんだな」

『地図を見つけたんです。よかったら転送しましょうか?』

『良いのかよ、敵性市民に地図なんぞ渡して』

『構いません。活用しないでなんのための情報ですか。それから、あなた達はエイティシックスなどではありません。少なくとも私はそんな風に呼んだ覚えは……』

 

その時、リノは一瞬だけ表情が曇ってしまったが、〈ジェガン〉のレーダーに反応があった。

 

「早速お出ましか……」

『隊長、こっちは任せて』

「了解」

 

コックピットのレバーを持ってリノは戦闘の真っ只中に投入していった。

 

 

 

 

 

戦闘が激化する中、〈キルシュブリューテ〉は単機で戦車型の側面を突くために突入をする。

しかし、戦車型の位置がおかしい。咄嗟に声が聞こえる。

 

『そっちはダメです、〈キルシュブリューテ〉!』

『え?』

 

少佐の制止虚しく、キルシュブリューテを示すアイコンが不自然に止まった。

 

「ちっ、沼か……!!」

『〈キルシュブリューテ〉、そこから離れろ!!』

 

シンの声は聞こえているが、カイエの前にはゆっくりと戦車型が近づいてくる。今すぐにでも対応したいが、なにぶん戦車型が多くそっちには行けそうにもなかった。

 

『嫌だ……』

 

泣き出す寸前の幼い子供のような声が聞こえる。

 

『死にたく無い……』

 

そんな声が聞こえた時、もうダメかと思ったその時。

 

ドガァァァンン!!

 

戦車型が爆発した。

目の前で爆発し、熱風が〈ジャガーノート〉を襲う。

一体何があったのか。カイエは思ったであろう、スピアヘッド戦隊の面々もだ。

見れたのは〈ジャガーノート〉よりも視線が高いリノ達の〈ジェガン〉であった。

リノは知覚同調を切り、ヘルメットの通信機に電源を入れる。

 

「ーーナイスだったクラウ……」

『ほんと、危なっかしいわね……』

 

〈ジェガン〉のカメラをズームさせてやっと見える距離に、迷彩を施し、見えにくい場所に一機の〈ジェガン〉がいた。

 

「良くやってくれたよ。お陰で計画が上手くいきそうだ」

 

この距離であれば通信が可能だったので、リノは狙撃をしたクラウに言葉を述べた。

 

「帰ったら酒を奢るよ」

『それは嬉しい褒賞ね、一番良いのをお願いするわ』

「お手柔らかに頼むよ」

『じゃ、私はまた監視に戻るわ。また何かあったら連絡よろしく』

「ああ、頼むぞ」

 

そう言い残し、リノは通信を切り、知覚同調を起動させた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

レギオンが撤退をする。

それは即ち戦闘の終了を意味し、リノはカイエの〈ジャガーノート〉を湿原から引き上げていた。

戦車型が爆発したのは俺の撃ったマシンガンが偶々当たったと言うになっていた。

 

『戦闘終了、お疲れ様でした……今日は運がよかったです。リノ少佐の撃った弾が戦車型を破壊してくれて……』

 

少佐は心底ホッとした声でそう言うも、〈ラフィングフォックス〉が今までの不満を爆発させるように声を上げた。

 

『運が良かった?……あんたにしてみればエイティシックスの一匹や二匹どう死のうが家に帰ったらすっかり忘れて、夕食を楽しめる程度の話だろ』

 

その声には恨みがこもっているようにも思えるほど、〈ラフィングフォックス〉は苛立っていた。

 

『そりゃこっちだって暇だったからさ……あんたの自分だけは差別とかしません、豚扱いしませんって勘違いの聖女ごっこにどうでもいい時なら付き合ってやるよ。けどさ、こっちはたった今、仲間が死にかけたんだ。そういう時まであんたの偽善に付き合ってなんかいられないって、それくらい分かれよ!』

「……」

 

その罵声はリノ達の耳にも劈くように聞こえた。

 

『それとも何? 仲間が死んでも何とも思ってないとか思ってる? そうかもね、僕達はあんたみたいな高尚な人間様とは違う人間以下の豚だもんね!』

『ち、違います! 私は……!!』

『違うって何が違うんだよ? 僕達を戦場に放り出して兵器扱いして戦わせて! 自分だけ安全な壁の中で高みの見物決め込んで、その恩恵だけを享受してる今のあんたの状態が豚扱いじゃなきゃ、何だって言うんだよ!!

エイティシックスって呼んだことはない? 呼んだことがないだけだろ! あんた……僕達が望んで戦ってるとでも思ってるのか? あんた達が閉じ込めて戦えって強制して! この九年で何百万人も死なせてるんだろ!!』

『それを止めもしないで、毎日優しく話しかけてやればそれで人間扱いしてやれてるなんてよく思えるな!

そもそも、あんたは僕達の本当の名前を一回だって呼んだことないじゃないか!!』

 

その声は戦隊全員に轟くように聞こえていた。




モンストで五千円課金してアムロとバナージがやっと出たぇ・・・・

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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