86-エイティシックス- 獅子の来訪   作:Aa_おにぎり

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#62 鋼鉄の化け物

シン達が感動の再会をして居る一方で、二人が基地に来ると言うことは共和国人が居ると言うことになる訳で、そのことに喜べない者もいた。クレナはそんなエイティシックスの中の一人であった。

 

白系種にもマシな人間がいることも知って居る。シンやライデンを匿っていた神父や老婦人。レーナやアネットにダスティンも。

クレナ自身、両親を救ってくれようとした白銀種の軍人も忘れてはいない。クレナは幼くて名前も覚えていなくて探して貰えなかったが……

これから来る従軍司祭や補助教員も、きっと悪い人たちではない。

だが、それでも。最初のうちは会いたくない。怖いから……

 

クレナはずっと、これまでが恐ろしかった。

彼らだけは信じられる。シンや仲間達以外を信じる事が。

 

だって信用なんかしたら、きっとまた同じことをされる。

白系種なんて、人なんて。ーー世界なんて残忍だ。

きっと裏切る。信用なんてしたら行けない。

信じられない。

だから未来なんてものは本当は、あるはずが無い。

夢と同じだ。今夜はいい夢を見たいと、願うのと同じ程度のものだ。

見られるものなら、見てみたい。

けれど、見られなかったとしてもーーそれは仕方ない。その程度の。

 

「戦争なんて……」

 

きっとそれも、終わらないのだろうから……

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……そろそろ怒るぞ、ゼレーネ」

《いえ、その、悪いとは思っているのだけれど……あははは……!》

 

ゼレーネの収容されている統合司令部の地下研究所で彼女は笑い転げていた。ゼレーネは現在、会話以外の機能を制限、妨害するために遮蔽コンテナに密閉されている。

そのコンテナ内外の端子越しに有線接続された低感度のカメラとマイク、スピーカーが会話をする窓口なのだが……それらを収めた紙箱が何故かマジックで落書きされていた。

 

「帰っていいか?」

《あ、ごめんなさい待って頂戴。悪かったからもう少し話を……ふふっ》

 

吹き出してまた、電子音で大爆笑で笑い転げる。

文字通り話にならないさゼレーネを置いて、シンは諸悪の権化を睨む。いくらなんでもゼレーネが知っているはずがない。とすると……

 

「ヴィーカ、あとで覚えていろ」

「できるものならな」

 

面白がっている顔でヴィーカは鼻を鳴らす。ゼレーネは笑いを噛み殺しながら言う。

 

《話を戻すのだけれど》

「……戻さなくて良い」

《拗ねないの、戻さないとダメでしょう。……貴方そもそも、それを聞きにきたんだがら》

 

その時、カチリとスイッチが切り替わるようにゼレーネの声は冷気を帯びた。

 

 

《ーー大攻勢について》

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

連邦では、エイティシックスは本来任官前に受けるべき高等教育を従軍しながら学ぶ連邦特有の少年士官ーー特士士官の扱いだ。

本来教育を受けるときに教育をされなかったため、休暇中の通学期間以外でも可能な限り講義や自己学習の時間は設けられている。訓練期間は無論、それこそ派遣任務の間にさえ。

本拠であるリュストカマー基地に自習室があるのもこのためだ。少し前までは各大隊長や副長くらいしかなかったのに……

それが今は多くの人たちが補講を聞いていた。

 

「ーーーシンのやつ探して居るなら、神父さんとかの迎え以外に用事があるから今日は司令部から戻って来ねえよ」

「そうですか……あっいえ、別にシンを探していた訳じゃ無くて、その…人が多いなって」

「ああ、」

 

レーナの図星に気にした風もなく、ライデンは頷く。

 

「休暇が終わったあたりからこんなだぜ。……ちょっと前まではこの部屋のこと、苦手なやつばかりだったんだが……」

 

席の半分以上が埋まった自習室を見遣って言う。

 

「ーーエイティシックスじゃなくなれって、迫らせて居る見たいでよ」

「………」

 

おそらく、連邦もそう言う意図でこう言う教材やら職業図鑑やらを置いた訳では無い。ただ、その願いはエイティシックスにはまだ早すぎただけだった。それが今は、見ようとするものが少しずつ増えてきて居ると言うことだった。

そのことにレーナはホッとする。

 

「ライデンもお勉強ですか?」

「まあな、いい加減戦争が終わったらとか考えねえとなと思ってよ……つか、聞いて居るか?新任の補助教員」

「ええ、ライデンの昔の先生だって」

「課題いくつかすっぽかしてたのバレちまって……これからお説教と補修だとよ。相変わらず口うるせぇんだから……」

 

口をひん曲げてため息をつく。

 

「……レーナも補習、やっていかねえか?セオとクレナとかはあんまここ来ねえし。アンジュは選択科目が別だし、シンは今日はいねえし。その……ババァと俺一人で対峙したくねえし」

 

あの老夫婦より大きい図体で子供っぽい言い方にレーナは吹き出す。

 

「ライデン……何か、やりたい事はあります?戦争が終わったら、今は」

 

それは二年前と同じことを聞く。あの時は、お互いに何も知らなかった。ーー未来なんてないと、知らないままに。

 

「……レーナが前に二年前にシンに聞いた時はよ」

 

ーーさあ。考えた事もありませんね

 

「あの時、あいつは本当に望みはなかったんだ。もう時期死ぬからだけじゃなくて。兄貴を葬ってやりたいって、それしか無かったから」

「……」

「そう言うシンが、ーーこの前あんたに海を見せたいと望んだのは、だから奇跡みたいなもんなんだ。あいつはあいつなりに腹ぁ括って言ったはずなんだがな。それをもう少しレーナも汲んであげれば良かったんだが…… 」

 

レーナは穴があったら入りたいというのは。この事なのだろうと思った。

 

「どうして知っているんですか……」

 

可哀想なものを見る目で見られた。

 

「そりゃレーナ……残念ながら大体全員にバレているからな」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「ーー貴方の情報通りの兵器を、連邦軍が確認した。第二次大攻勢の兆候だろう、と」

 

〈レギオン〉の停止手段の代わりに公開ができる情報をゼレーネに要求した。それで得られたのが〈レギオン〉が現在、計画して居ると言う第二次大攻勢の情報だ。

 

《そうでしょうね。()()は〈レギオン〉が禁じられた航空兵器の代替として、総指揮官機達が考案し、開発させた兵器だもの。禁則事項が解けない以上、爆撃の代わりにはまたあれを投入してくる。確実に再建造は進んでいると、その程度の予想はつくわ》

 

ん?今、予想と言ったか?てっきり指揮官機だから()()なのかと思っていた。

 

《研究と開発の研究に関してのわたくしの担当は制御系。機密の関係で管轄外の情報は知らされないの。その……共和国で採取したサンプルを基にね》

「<放牧犬>か……」

 

ゼレーネが言いにくそうにし、ヴィーカが補足する。何とも奇妙な関係だ。

 

《それなら高機動型……じゃなくて高機動型(フォニクス)ね。……貴方達、面白い名前をつけたわね》

「待て。あの新型も卿の管轄……制御系研究の系列なのか?」

《そうよ、だから私が、貴方達の伝言を仕込めたもの……あぁ、因みに鹵獲したモビルスーツ……確かザクⅡも、わたくしの担当だった》

「あのオンボロと言っていたやつか……」

 

そう言い、リノ達がボロザクと称していたあのモビルスーツを思い出す。すると、ゼレーネは呆れたように言う。

 

《わたくしも驚いたわ。なにせ、重戦車型の一五五ミリ砲でも分厚いと至近距離か背後で無いと撃ち抜けない装甲なのよ?馬鹿げて居るとしかいえないわ》

「一五五ミリを?」

 

思わずヴィーカが聞き返してしまうと、ゼレーネは頷く。シンは何言って居るのかは何となくしか分からなかった。

 

《ええ、鹵獲したザクに使われていたえっと……超硬スチール合金?アレの硬さは圧延鋼板なんかよりもよっぽど、何倍も硬い》

「ちょっと待て、一五五ミリ砲弾で貫通しないだと?」

 

だったら今頃レギオンなんて化け物じゃないかと言おうとしたところで、ゼレーネは言う。

 

《当然、<レギオン>も素材の再現を行おうとした。だけど費用対効果が悪すぎたの。なにせタングステンやらニッケルやら…貴金属を大量に使って加工にも手間が掛かる割には合州国の機関砲で撃ち抜かれる始末。おまけにビーム兵器を防げる訳でもないし……》

「あぁ、なるほど……」

 

ヴィーカは<レギオン>にもそう言う考えがあるのかと理解しながら話を聞いていた。

 

《其の装甲を見て、わたくは『合州国にはどう足掻いても勝てなかった』と思った》

「まぁ、そんな装甲を持ったモビルスーツがいればそう思うのも納得だな……」

 

榴弾砲のレベルですら倒せないとなると、それはもう化け物だ。

 

《あの、モビルスーツという鋼鉄の化け物がいる限り、合州国が負ける未来はなかなか見えないわね》

 

そう言うと、少しだけ合州国と言う国に……リノ達の故郷の国が味方である事に内心ほっとしてしまった。

なお、この超硬スチール合金ですら、合州国にとっては既に旧式となった技術である事を知るのはもう少し先の話であった。

 

「……兵数は今回は、増強していないのか?これについては、今の所。どこからも報告があがっていない」

 

話を元に戻しながら、シンはゼレーネに聞く。第二次大攻勢に関しては、真偽も兼ねて各国でレギオン集団への情報収集が強化されていた。

シンにも何度か、連邦から索敵の要請が行われ。どの戦線でも兵力増強が行われていないとわかると話は変わって来た。

 

《ええ、<レギオン>は前回の大攻勢において、兵数増強では作戦目標を達成できなかった。だから第二次大攻勢では各兵種の改装と、性能向上を以て戦力を増強すると戦略を変更している》

 

例えば、阻電錯乱型の光学迷彩や天候操作。雑兵である<黒羊>の代替品の<放牧犬>。

 

《ただ、歴史上資源のない国が存在するように質を重視した訳でもないわ。第一次大攻勢は失敗した訳でもないから。……ところで、》

 

淡々と、ゼレーネは言う。

 

《貴方、<レギオン>の数や位置は見抜けても、遠隔地の<レギオン>そのものが見えて居る訳ではないのね》

 

シンはぴくりと顔を上げる。

彼女は所詮<レギオン>、必要以上の情報は渡していないはずだが……

 

《貴方のことはーーー特異敵性体バーレイグとして認識している。バーレイグは未知の手段で広域高精度の索敵能力を有し、ただし、兵種の把握はできない。凍結機の感知はできない。……そこまでの推測はできているわ。実際、レーヴィチの時はわたくしの罠を見抜けなかった》

「見抜けなかったのは、俺の失態だ、耳が痛いが。……まさか<レギオン>はノウゼン一人を警戒して戦略の変更に踏み切ったのか?」

《まさか、でもないでしょう?数年がかりで備えだ大攻勢の準備は見抜かれ、対策され。持ち堪えてしまった。<レギオン>の指揮官は貴方の価値を、貴方が思う以上の高く評価している。それ以上に早急に除きたいと、考える程度にはね》

 

だから。

 

《貴方の部隊の、次の作戦。どこで、なんて聞かないけどーーどこに行くにしてもどうか、気をつけて》

 

 

 

 

 

オペレーション・ハイスクールをやるか否か

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